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バスという交通モードの高度化を考える〜その1
神戸淡路鳴門道沿線のバスターミナルを見る(後編)
本四海峡バス |
前編では高速舞子から岩屋ポート、東浦ターミナル、津名港ターミナル、洲本高速バスセンターと辿り、四国徳島の松茂に到着したところで終わりました。この後編は徳島の3箇所と淡路の1箇所を巡って神戸に帰るまでです。
※写真は2006年1月撮影
●バスの駅はここまで来た・松茂、徳島とくとくターミナル
さて本日のハイライトとも言えるのがここ松茂町の徳島とくとくターミナルです。高松道、神戸淡路鳴門道関係の高速バスは鳴門ICからR11バイパスを通り徳島市街に向かいますが、その途上、徳島空港にほど近い松茂町に設置されたバスの駅で、国土交通省の「バスの駅」適用事業第1号として完成しました。
徳島とくとくターミナル全景 |
徳島方向に向かう側に立地しており、R11本線からいったん左折するような形で(すぐ先の信号機の影響は受けない専用車線で入る)3面ある降車ブースに着きます。
その対面にはタクシー乗り場、一般車送迎場と続き、物販店用の小振りな駐車場の奥には221台収容の高速バス利用者用の駐車場があります。
それだけだと今までも見られた形態ですが、さらに軽量鉄骨造りで頼りない外観ではありますが、物販が充実しているのが特徴で、どちらかと言うと必要最小限、ビジネスライクな形態が多かったここまで見てきたバスターミナルと違い、ある程度の賑わいも見られます。
R11側から進入路を見る | 到着ブースに大阪からの便が到着 |
R11側のブロックに店を構える喫茶店券ベーカリーの店先がきっぷ売り場になっていますが、淡路島内と異なり、JR系も民間(徳島バス)系も1ヶ所で承り、両者の発券システムを扱うため、利用者にとっては便利ですし、不慣れな利用者にとってはJR便の次は徳島バス系というように案内を受けるため、利便性が高いです。かつてはもっと喫茶店の片手間色が強かったのですが、今回の訪問では出札色が濃くなっていました。
しかしながら発券は融通を利かせているものの、掲示されている時刻表がJRグループ、徳バスグループと分かれているのは残念です。
チケットカウンター | 館内物販を見る |
さて、駐車場に停め、ここできっぷを買ったあとですが、往復6車線のR11を越える必要があります。
この歩道橋が結構辛く、バリアフリーのためスロープになっているので余計に距離があります。
実は残る3辺に横断歩道があるのですが、R11が赤になるのが近ければそちらを行ったほうが早そうと言うのは悩ましいです。
そうして向かったバス乗り場は2面が確保されており、やや大きめの待合室がありますが、ちょっと殺風景です。バスの到着は時間かっきりではないので、やや余裕を持って臨むことを考えると、ターミナルをこちらに置いて欲しかったのですが、用地の関係なのか反対側になってしまいました。自家用車の立ち寄りを考えても、徳島を後にする現在の反対側のほうがお土産購入にも都合がいいのですが、ここが松茂最大の欠点です。
出発側ブースと待合室 |
再びターミナル側に戻りましょう。到着バス停から高速バスには乗れませんが、出迎え用に等Xはく予定時刻が掲出されているのは親切です。何台か到着便を見ましたが、送迎車コーナーや駐車場から続々とクルマが出ており、理想的な形で使われていることが分かります。
しかし、便利さがまさに泣き所になっています。221台用意した駐車場が満車になるケースが目立つのです。日帰りから東京往復など数日間の利用もあるわけで、充分に見える容量も意外と埋まるようです。
この満車の問題、この日もそうだったのですが、対角の位置にある民間駐車場も満車となっており、この後訪問した広島ランプのパーク&バスライド駐車場の一部を開放したほか、遂には高速鳴門の駐車場へ誘導するチラシがターミナル内に置かれるほどです。満車リスクが高くなるとパーク&バスライド自体が頓挫しかねないので、駐車場の増設、高速鳴門のように自走立体式にするなどキャパシティの増大が急務です。
続々と出てくる送迎などのクルマ | 向かいの民間駐車場も満車 |
そろそろ去る時間がくるわけですが、このターミナル、一般路線バスの乗り入れは先ほどまで乗ってきた淡路交通の路線と、徳島空港リムジン、そして鳴門と徳島を結ぶ路線の一部しかなく、1時間から2時間はざらに空いてしまいます。事実上バス同士の乗り継ぎは考慮せず、純粋にパーク&バスライドに特化していると言えますが、ちょうどうっかり降りてしまったビジネスマンが往生しているシーンを見ると、一般路線もせめて毎時1本程度は乗り入れてもいいのではないでしょうか。
●通勤対策パーク&バスライド・最先端技術を導入した広島ランプ
その数少ない一般路線バスで広島ランプに移動します。R11が旧吉野川と今切川を一気に渡る区間の中州のような地域を旧R11、今のR28が交差しているのが広島ランプです。R11と違い集落を縫うR28が鳴門−徳島のバスのメインルートになっていますが、この先さらに吉野川本流を越えるなど自然地形による交通集中が目立つようです。
その道路の通行量を減らす目的でここにパーク&バスライドの原型が出来たのが1981年。当時は駐車場があるだけだったようで、利用が伸びず、目的外利用も目立ったことから、2001年に抜本的なリニューアルを行いました。
R11が被さる駐車場 | R28の両脇が駐車場 |
南北の河川を越える関係で高架になっているR11の高架下を利用してR28の南北に100台の駐車場を確保するまではどこでもある話ですが、利用対象を限定しました。
広島ランプを通るバス路線の定期券、回数券(ただしバス利用区間に制約あり)を購入した乗客に限定し、無料で開放しました。その際に設けたゲートに、何と非接触型ICカードを導入したのです。利用者はバスの営業所で定期券か回数券を購入し、申請することでこのカードが貸与され、利用が可能になります。
カード式のゲート |
利用が可能になるまでのハードルが非常に高く、利用率が半分程度に低迷しているばかりか、通勤利用が少ない土休日は閑散としているようで、実際訪問時も数台しかいませんでした。その分を松茂の臨時駐車場として20台だけ開放していますが、広島ランプから松茂への移動の問題があります。
ただ、いったんハードルをクリアすると使い勝手が良いであろうことは想像に難くなく、バスの定期券や回数券購入とセットにするのであれば、バスの利便性向上あっての話になります。
ただ、広島ランプから徳島中心街までのバスがバイパス経由もあれば旧道経由もあるというわけで、広島ランプからの速達性確保が今後の鍵になりそうです。
●あの手この手で地形を克服した・高速鳴門
広島ランプからはR28経由のバスが頻発しています。鳴門市街を抜け、小鳴門橋手前の小鳴門橋バス停は徳島バスの営業所、車庫併設です。隣りが鳴門競艇場なので鳴門市営バスの停留所は鳴門競艇場前を名乗ります。
道路標識は「鳴門撫養」とありますが、今や鳴門の新しい玄関口となった名前は高速鳴門。R28沿いにターミナルと駐車場を設けていますが、航路でもある目の前の水道(海峡)をひと跨ぎする神戸淡路鳴門道のバスストップがあるのは橋梁のレベルと同じ高さで、少し登ったところにある丘の上です。
R28から見た高速鳴門ターミナル |
海と丘に挟まれて土地がとれない厳しさのなか、ターミナルとバスストップの間に距離と高低差が残りましたが、それを克服するために導入されたのが簡易モノレールの「すろっぴー」です。要は無人車両が行ったり来たりする乗り物ですが、無料で、かつ呼び出して使うエレベーター感覚が手軽さを演出しています。まあ歩いても実はたいしたことはないのですが、あれば安心感があることは確かで、高速鳴門の利便性を高めています。
土地が狭いと言うハンデがあるので駐車場は3段の自走立体式ですが、そのため収容力がかなりあるようで、先述の通り松茂から誘導するくらいです。
バスストップ側で待つ「すろっぴー」 |
ターミナルは鳴門市の情報センターを兼ねており、比較してはいけないんでしょうが、小鳴門橋の営業所とは比べるまでも無いです。カウンターがありきっぷを発売していますが、JR系と徳バス系を分けない松茂方式。ただ時刻表は分かれていますが...
乗り場はすろっぴーを降りたところで上下線に分かれますが、下り線は降車専用なのでトンネルをくぐって上り線に向かうことになっています。落書きを消した後もあり、早朝深夜(夜行バスも出る)の利用に難がある感じですが、落書き対策を兼ねたギャラリーになっており、文楽の写真(傾城阿波の鳴門)が飾られていました。
ターミナル内部 | バスストップに停車中の関空リムジン |
バス停自体は特色も無く、降車側は非常に簡素なスタイルですが、ここはターミナルとの連絡が特色といえます。
欲を言えば、徳島線がここに停車し、高松線は鳴門西に停車すると言うことですが、統一して欲しい反面、そうなると駐車場の容量が心配です。まあ鳴門競艇の用地を「高度利用」すれば100台単位のスペースは捻出出来るので、考えて欲しいものです。
●インターミッション・阿波と淡路の狭間の瀬戸は
「鳴門秘帖」の謳い文句じゃないですが、高速バス系統が京阪神、舞子を向いているため、淡路島島内、さらに徳島県との行き来が非常に難しくなっています。明石と岩屋の間はフェリーが残りましたが、福良と鳴門の間は全滅。観潮船も互いの港に戻るだけです。
利用出来るのは6往復の淡路交通だけであり、場所や時間によっては冗談抜きで舞子まで戻った方が速いと言うような状態でしたが、2003年12月に大阪−淡路島−鳴門の「鳴門淡路エクスプレス大阪号」が開業し、福良、南淡庁舎と大塚国際美術館の間の区間利用を認めたことで、淡路と鳴門の交通がつながりました。さらに2005年7月には神戸線も開業し、日中毎時1本が確保されています。
鳴門公園まで徳島バスで出て、公園を散策して大塚国際美術館へ。陶板に焼き付けた世界の名画を収蔵しており、イミテーションと言いたくなりますが、ここまで一同に集めて複写すると価値があるようです。向かいには大塚グループの迎賓館である潮騒荘が存在感を誇示しており、徳島と言えば大塚グループと言うのを肌で感じます。
その「鳴門淡路エクスプレス神戸号」福良へ。区間利用者は無指定ですが、指定券所持者が来たら替わる様にとの注意。結局福良までは乗って来ませんでしたが、淡路島南IC(ここはなぜか区間利用不可)から一般道に出て、うねる県道を福良に出るのはちょっとした見もの。
福良はうずしおドーム前とのことでしたが、何のことは無く、淡路交通の営業所の向かい。観光客的には便利なサイドでしたが、相変わらずの「対立」です。
うずしおドーム前に到着 |
福良からは舞子福良線をこれも区間利用で西淡志知の陸の港西淡へ。2ドアエアロは私だけ。もっとも、三ノ宮行きの直行便が約30分あとに出るわけで、わざわざ各停便に乗る人はいないのも当然でしょう。
●究極の?バスターミナル・陸の港西淡
さてその陸の港西淡は、西淡三原ICのそばにあります。
神戸淡路鳴門道の西淡志知バスストップに隣接した場所に位置しており、利用者は西淡志知、陸の港西淡の両方を使えます。
そのせいか両方のバス停には、「何時何分発は西淡志知から発車」「何時何分発は陸の港西淡から発車」という案内があり、一体のバスターミナルになっています。
陸の港西淡 | 西淡志知バスストップ |
ターミナルの建物は立派ですが、売店が無く、周辺に商店らしき物もありません。駐車場は無料で、人気の程がうかがえるのはほぼ満車で、駐車スペースに停めきれず、通路に邪魔にならないように縦列駐車している車も多数あります。
観光色は皆無で、まさに地元の実用に徹したパーク&バスライド拠点です。
クルマでにぎわう駐車場 |
夕方近くのバスターミナルに人影はまばらで、舞子福良線、そして三ノ宮行きと2、3人が乗る程度ですが、時間帯によっては混み合うんでしょう。
ここの特徴は、淡路交通、神姫バスの民間系と、例の「鳴門淡路エクスプレス」が設定されたことでJR系があるばかりか、日本交通系の日交シティバスとみなと観光による南あわじ特急線(陸の港西淡−三ノ宮−なんばOCAT)が入るトリプルトラックということです。
ターミナルにはカウンターがありますが、JR系の指定券発券をしているようには見えません。淡路交通系と日交系は予約制ではなく、ペラ券のチケットをもぎって発行するだけで、実に簡素です。
ターミナル内部 | 陸の港西淡の案内 |
さて神戸に帰る時が来ました。
最後はみなと観光の特急バスに三ノ宮まで乗ります。このみなと観光、実は神戸・六甲アイランドに拠点を置く同名の会社とは違う、淡路島資本、西淡(南あわじ市)は志知の会社です。それがもともと神戸のみなと観光が乗り入れる三ノ宮に進出したばかりか、六甲アイランド線で神戸のみなと観光と手を組む日交シティバスと手を組んでいるのですから紛らわし過ぎます。
その南あわじ特急線、ビジネスライクというか一般路線バスの延長線のような他社便と差別化を図るのか、車内には新聞やキャンディーのサービスがあり、座席も10列トイレ付とゆったり感を売りにしています。冷たいお茶のサービスもあったのですが、ホットの提供が出来ないので冬場にクレームがきたようで、春までサービスを中止と言う掲示には苦笑です。
みなと観光による高速バス |
陸の港西淡を出ると当初は三ノ宮までノンストップと、どういう需要調査で開設したのかと言う感じでしたが、今は洲本IC、北淡ICにも停まります。ただ、陸の港西淡の駐車場を見る感じでは、そこまで無理筋ではないようですし、三ノ宮23時半(陸の港西淡0時38分)野深夜便の設定など、積極的な?ニッチ狙いに来ています。また、陸の港を拠点に旧西淡町域をまわるコミュニティバス「せい太くん」も運行しており、西淡と阪神地区の需要はそれなりに木目細かく拾おうとしているようです。
洲本や北淡でも乗り込みがあり、10人はクリアして三ノ宮へ向かいましたが、北淡では目の前に淡路交通の大阪行きが先行しており(大阪洲本線。お馴染みの「タイルのダントー」の全面ラッピング車でした)、客の奪い合いにならないか、余計なことながら心配になりました。
●まとめにかえて
冬寒の土曜日、駆け足で回ったルポでしたが、神戸淡路鳴門道沿線のバスはよく利用されています。
見て回ったターミナルだけでなく、各ICのバス停、本線バスストップには大なり小なりの駐車場があり、パーク&バスライドの定着と言う意味では全国でも有数の地区かもしれません。
こうしたいろいろな設備を有機的に活かしたスタイルは、バスの高度化と言う意味では参考にすべきところが大きいです。しかし、こちらにいると当たり前のような感じで使われていますが、全国的に見ると「高速舞子」すら知名度がまだまだという感じですし、交通体系を総合的に見ていると自称する趣味誌でもマトモに取り上げられたこともないだけに、ここはやはり百聞は一見に如かずで、実際にご覧頂くことで理解を深めて頂きたいものです。
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