このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください






西山天王山の使われ方
半年近くが経ち見えてきたもの


この先に折り返し場


2013年12月21日に開業した阪急西山天王山駅と、接続する高速長岡京BSについては、開業直後と翌月の様子を元に拙サイトで 「交通結節点のショーウィンドー」 としてレポートしています。
このほど、現地がどのようになったのか、ある程度落ち着いたであろう時期と判断して、5月中旬に再訪してきました。なお、当時の見落としも併せて見てきています。

※特記なき写真は2014年5月撮影


●開業から5ヶ月
2013年12月21日の開業から5ヶ月あまりが経ちました。
鉄道のほうは変化がないですが、バスのほうは停車系統が徐々に増えてきており、名神から山陰方面への京都縦貫道に入るという位置が微妙ですが、名神からの立ち寄り路線を中心に増えているのは意外な効果です。

特にウィラーエクスプレスが大阪−名古屋線の一部を高速長岡京、京都経由にすると聞いており、結果次第では一気に増加する可能性も秘めています。

当時のルポではいろいろ粗も目に付いており、いくつか指摘をしていますが、その後細かい部分で変更が出ていると言う話も聞こえてきました。当時でも12月から1月の1ヶ月程度の間で変化点が出ており、実運用上の手直しで利便性を向上、改善することはウェルカムです。

●まずはアプローチ
前回の訪問時には「見るだけ」でしたが、堅調な利用状況が伝えられる阪急バス、京阪バスのJR長岡京−阪急長岡天神−阪急西山天王山−京阪淀のバスをアプローチに使ってみました。

京都に近いエリアなので新幹線にすればよかったのですが、諸般の事情がありいつも通り空路で伊丹インの行程。予報通りとはいえ汗ばむ陽気に上着を持て余しながら蛍池、梅田乗り換えで淀屋橋に出ました。

大モノで門真市に出れば乗り換えが少ないのですが、そこが「諸般の事情」と絡み、かつ門真市経由だと結局は普通もしくは準急に乗り通しになる、というあたりは、堺筋線から西山天王山への状況と似ています。

淀に着くとちょうど京都競馬の開催日。競馬場への臨時改札口の通路はゆったり広いのに、正規の改札口へは階段も通路も狭く、さらにバスロータリーへは横断歩道経由、というか、淀屋橋寄り最後尾にもう一つ階段と改札があり、天皇賞や菊花賞の舞台という中央競馬の需要の太さと、日頃の利用実態が見て取れます。

●淀からのバスルート
その「メイン改札」とバスロータリーの間の道路を馬匹輸送車が行きかうなど交通量が多いですが、中山などと同様に大勢の誘導員を出して整理しています。人海戦術が可能であれば信号よりもきめ細かい対応が可能で、横断者がいなければクルマを流し、横道からのクルマも適時に流せます。

駅の向こうに競馬場。ロータリーに面した改札は端っこ

ロータリーでその道路を見て気付いたのが、「淀とを結ぶ」という意味です。
道路を頻繁に行き来する京阪バスの臨時便。そう、淀川を渡って右岸からのシャトルバスが結構な頻度で走っているのです。

開催時で15分ヘッド、場外発売日でも20分ヘッド

考えてみれば京阪沿線の京都競馬場へJRや阪急沿線からアプローチしたい需要は絶対にあるわけで、JR山崎と阪急西山天王山(開業までは阪急水無瀬)からのシャトルバスがあるのです。

シャトルバスの賑わいに比べると路線バスの乗り込みは少ないですが、毎時1本の割に5人以上とまあ乗っているほうでしょうか。ロータリーに出入りする宇治方面のバスなどにも待つ人が見えており、交通拠点として機能しています。

発車を待つ阪急西山天王山方面JR長岡京行き

ちなみにこのバス路線、京都縦貫道の一般道部分の開通で設定されたのかと勘違いしていましたが、昔からある宮前橋を渡ります。駅近くの変則交差点である納所交差点を宮前橋方面に進路を取ると、後は一本道。R171西行きが名神の東側から西側にクランク状に回りこむ勝竜寺交差点も直進し、西山天王山駅手前の調子八角交差点を直進すればすぐ西山天王山駅のロータリー入口です。

西山天王山に到着

こうなると、西山天王山はともかく、JR長岡京を経て阪急長岡天神へのバス系統がなかったことのほうが不思議です。京阪バスは枚方市駅と阪急高槻市、JR高槻を結ぶバスがドル箱であるように、並行路線を結ぶバス路線への需要が高いはずで、西山天王山の有無にかかわらず設定があってもおかしくない区間です。
なお京阪シティバスには競馬場シャトルと同様に京阪淀からJR山崎を結ぶ路線がありますが、もともと1日5、6本と使い物にならないようです。

●競馬需要をみる
こうなると「交通結節点」という名目も、需要の太宗を考えると要は競馬需要への対応に見えてきます。
それが悪い、と言うことではなく、最初からそう言っていれば、対応の意義も正確に理解できるのであり、誤解も発生しません。

シャトルバスが何台も

中山でも旧市川松戸有料道路沿いに地主が私設駐車場を整備して、公共交通利用を呼びかけるJRAの対応を尻抜けにしていますが(武蔵野線船橋法典駅の専用改札と内馬場に抜ける通路、JR西船橋、京成東中山からのシャトルバスが旧市川松戸有料道路の北行きで降ろして、地下通路を通り南行き側から乗車するといった奢った対応をしている)、京都(淀)もそんな感じです。

ただ中山と違うのは、大河に囲まれた土地柄ゆえか用地が少ないようで、淀川を渡った先に駐車場があり、延々と歩く人が少なくないこと。そうした競馬客を見ると、シャトルバスの意義は高いですし、西山天王山のP&Rも競馬場シャトルとの結節という意味で機能していると考えれば理解しやすいです。実際、障害者向けやEV充電用を除けば満車でしたし、駅周辺の駐車場も盛況でした。

●駅とBSの変化点を見る
初夏の陽気となった休日の昼下がり、気だるい雰囲気の駅前で賑わうのは競馬場シャトルの乗り場です。広電の路面電車のように乗り場にバス用の料金箱を置いて乗車時に運賃を徴収しているのが目新しいですが、大量の乗客を素早く捌く工夫です。

乗り場で運賃徴収

そして西山天王山駅の変化点ですが、改札を出たところのバス停の庇にある高速バスの乗り場案内が変わりました。「下り」「上り」の案内に方面を加えており、「下り」は美山、北近畿・天橋立、中国方面、「上り」は関東、信州方面と加えることで自分の乗るバスの行先と照合判断できるようにしています。

方面が加わった案内開業当初は上り下りのみ(2013年12月撮影)

これは上下線のEV塔の入口も同様で、ただでさえ分かりづらい「上り」「下り」がしかも京都縦貫道の向きにあわせて案内している、という問題を解決しています。

エレベーター入口にも

このあたりは初動で失敗したらリカバリーが難しい構造への対応が取られたと言うことです。

EV塔入口の時刻表(左・上り線、右・下り線)

あとは「上り線」のEV塔1階の「待合室」が、終日開放しております、という長岡京市土木課名での貼り紙。一時期破損などを理由に夜間閉鎖だったと聞いていましたが、いちばん需要があるのが夜行バス対応であり、防犯対応などをして再開放したと思われます。

終日開放のお知らせ


●高速バスの折り返し場
前回の訪問で見れなかったのが名神からの折り返し便が折り返すポイントです。
上り線EV塔の2階に接続する歩道橋伝いに高速長岡京IC出口からの信号交差点を西側のスロープから降ります。

ありがちな車道と歩道が完全分離でアプローチできない構造に見えましたが、折り返し場のすぐ手前に横断歩道があり、折り返し場自体もフェンス越しではありますが歩道と接していました。

後方僅かに見えるゼブラゾーンのあたりが入口

信号交差点(川向井交差点)を絡めた構造と思っていたら(信号交差点の手前か先で左折し、折り返し場から交差道路側に出て、交差する信号が青で復帰)、信号の先に単純に左側のスペースに出入りする構造です。出るときに信号がないので、大きなミラーを左右に置いているのが特徴ですが、交通量が少ないので杞憂に終わっています。

折り返し場

単純な折り返し設備と思ったら、案外と広く、さらにバリケードで仕切られていますが、砂利敷きのスペースにバスが2台待機できるスペースがあります。まさか高速長岡京折り返しを想定しているとは思えませんが、早着時の時間調整での使用を想定しているのでしょうか。

謎の待機スペース


●観光案内所
駅舎に隣接し、本来は高速バスの待合室などに充てるべき、と指摘した長岡京市の観光案内所ですが、改めて見ると微妙な存在です。

見た感じでは駅舎も凌ぐ存在感ですが、中身が外見に合っていないのです。
ようは「スカスカ」なのです。長岡京市の係員が座るカウンターも、その後ろにデッドスペースが寒々と広がっています。

案内所の奥のデッドスペース

各種補助金を見合いにして整備したのにこんな無駄な使い方と言う話もないわけです。もちろん観光要素が長岡京市に無いとは言えないわけで、市名にもなった未成の都「長岡京」があるのですが、大内裏は長岡天神どころか西向日の近くと離れているのがネックです。

その長岡京の案内と、周辺の古代遺跡のパネルや模型の展示しかない現状は、どう見てもアンバランスであり、無理矢理隙間を埋めたけど埋めきれない、という様子がありありです。

そういう現状を見て、高速バスの乗り入れが増えた段階でこの施設が「バスターミナル」化する、と言う観測もあります。待合室を設置し、現在観光案内係が座っているスペースが発券カウンターになる、というものです。

確かにその可能性は考えられる現状ですし、各種補助金を受けてこの利用法が恒久化するのでは補助金返還請求もありえます。
ただ、最終的にバスターミナル化を考えているのなら、なぜ最初から待合室だけでも用意しなかったのか。あの通路にベンチを置いただけの待合室では、一度使ってもう懲り懲り、と言う反応を招きかねませんが、一時期破損行為を理由に閉鎖するような治安状況であれば二の足を踏んだのかもしれません。もっとも、そんな状況であり、それを放置してしまうと、高速バスの利用自体に影響するのですが。

●残る問題点
開業から訪問時点で5ヶ月近く経ち、指摘された問題点もだいぶよくなりました。
一方でまだまだ、と言う部分もあるわけで、1機のEVに頼るアクセスはどうしようもないとはいえ、今後の高速バスの拡充を考えるとネックです。

その階上の乗り場ですが、EVを降りてバス乗り場へは自動ドアを通ります。
その時、EV塔と屋外の明暗の差もあり、屋外のバス降り場がくっきりと見えるので、ガラスの存在に気がつきにくいのです。

悪いことに自動ドアの位置は手前にガラスの壁があっての向こう側。これはEV前の滞留を考えたら合理的な仕立てですが、指摘のようにガラスが目に入らず、センサーで開く場所でもないとなると、激突の危険性が高いのです。

手前はガラスの壁。自動ドアはその向こう

こういうケースでは目線の高さにテープを張るなど注意喚起をするのが一般的であり、本件もその対応が望まれます。

あとは駅やBSそのものに関係ないですが、せっかくのP&R拠点を活かしていないと言うこと。京阪淀から京阪神間の幹線国道であるR171と交差してくる道路沿いに西山天王山駅があるわけですが、駅を目前にした調子八角交差点の手前に、なんとJR長岡京にある市営駐車場への案内看板が立っているのです。

後方に調子八角交差点、西山天王山駅が見えるが

おそらく西山天王山駅と駐車場の開業前からあって撤去し忘れたんでしょうが、なんとも不細工な話です。まあ西山天王山の駐車場はキャパからしても遠方からの利用を集めるというよりも、「知っている人が使う」レベルの規模なので、敢えて残しているのかもしれません。

●西山天王山の評価
さて、おしまいに西山天王山(高速長岡京)の評価をあくまで「中間」「中途」ですがしてみましょう。

まず、「交通結節点」としての本音の部分としての競馬需要対応。これが下地にあるから全くの空振りにならない勝算があってこうした取り組みが出来たと言えます。
さらに言えば、並行路線を結ぶバス路線の整備という意味でも、京阪淀という一大目的地に直結することで、需要をつかみやすかったわけで、建前論ではなかなか出てこない部分に「隠し味」がありました。

シャトルバスはどれも大型

そして小技に属する部分としてはサントリーのビール工場への送迎バスが西山天王山発着になったことも大きいです。
工場から駅まで一本道。工場見学(ビール試飲)という公共交通でないと、という需要をうまく重ねることができました。

サントリーのビール工場(後方)の送迎バス

そして高速バスが意外な成長を見せつつあります。

時刻だけで間が持つようになった
(当初は停車停留所の案内まで書く余裕があった)

これは私としても予想外でしたが、都心部のターミナルがP&R対応が難しいこともあるでしょうし、さらにはウィラーの停車に代表されるように、都心部でのバス停確保が難しい新高速バスにとっては、こういう確保しやすい新規の停留所が交通結節点として整備されたということは一大商機であり、少々のデメリットには目をつぶって「ターミナル化」を図る事が考えられます。

集中工事による長岡京IC閉鎖のお知らせ

ただ、ネックとしては、名神で定期的に実施する集中工事の際、大山崎JCTが使えなくなると高速長岡京BSに立ち寄れなくなってしまうこと。この5月の集中工事でも全便通過の扱いになっています。(第二京阪経由にしたのか、名神高槻なども通過になっている)

通過扱いの内容

こうなるといろいろあるショーウィンドーからどこを伸ばすか、という課題については、案外多くのメニューが対象となりそうです。
そしてそれが花開くかを、気長に見て行きたいと思います。







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