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ラクダも呆れるパークアンドライド
シャトルバスの渋滞遅延を放置する当局を糺す


エル・アルコン  2006年5月9日

オアシス駐車場でのシャトルバス
バス待ちの行列は右手奥まで伸びており、このバスには乗れませんでした



※この作品は「交通総合フォーラム」とのシェアコンテンツです。
※続編として 「兵は拙速を尊ぶ〜鳥取砂丘P&R問題続編」 もご覧下さい。


今年のゴールデンウィークは、暦にも恵まれて各地の行楽地は賑わいました。特に後半の5連休は学校も休みになり、最終日の日曜日を除いて天候にも恵まれたため、特に賑わいました。

さて、私もこの連休、家族旅行をしてきました。目的地は鳥取。鳥取砂丘の雄大な自然を楽しもうと訪れたのですが、訪れたのが連休2日目の4日、前日が強風と砂丘観光にはいまひとつだったこともあり、よく晴れて汗ばむ陽気の中、案の定周辺の道路は激しく混んでいました。
前夜は東隣りの町に泊まっていたこともあり、R9を駟馳山峠の先で右折し、東から砂丘にアプローチすると、砂丘まではまだ距離があるはずの砂丘オアシス広場のところでなにやら規制しています。
この先砂丘周辺の駐車場が満車なので、ここで駐車してシャトルバスに乗ってくれという話で、駐車料金は無料ということもあり、泊めることにしました。

さてシャトルバスはというとこれが有料。砂丘周辺の駐車場なら1台410円のところ、大人200円、子供100円を乗り場で支払えば帰りは無料とのことですが、チケットが出るでもなく、どうやって料金授受を確認しているのか、並んでいる乗客からも訝しむ声が上がっており、お金を取るのであれば不公平のないようにきっちりしてほしいものです。歩いたらどうかと質問する家族連れもいましたが、1.5kmほど離れているそうで、この陽気に小さい子供を連れて歩くのも、ということでシャトルの人気が高かったです。

駐車場に続々とクルマが入る中、シャトルバスが来ましたが行列は長く、結局積み残されて1台待ちました。シャトルだしそんなに距離はないはずだからすぐ来ると思っていたのになかなか来ません。
オアシス入口で堰き止めていたはずの誘導員がなぜかクルマを砂丘方面に流しているのを見て、こういう時は得てして最寄りの駐車場に案外とすんなり入れるものだという経験則が頭を過ぎりました。
まさか1台でピストン輸送じゃあるまいなと思った頃にようやく現れた次のバスは「2」の掲示があることから、どうも2台で回しているようです。
家族連れで通路までぎっしり詰め込んで出発しましたが、砂丘道路に戻ると500mも進まぬうちに渋滞の最後尾です。

遅々として進まぬ様子に、案外と入れるどころか全然開いていないのだろうと見当がつきます。それにしても渋滞の車列と一緒ならば、自分のクルマのほうが、ぎゅうぎゅう詰めの車内で立つよりははるかにマシです。
数分間全く進まない様子に、痺れを切らせた家族連れが運転手に降りるといって降ろしてもらっていましたが、その小さい子供連れの姿が前方に消えても進みません。

更にどのくらい待ったでしょうか。1台前のシャトルがようやく折り返してきたのを見て、駐車場で待った時間差=ここから砂丘会館に着いて客を降ろして戻ってくる時間、という現実に愕然となり、もう限界、降りようと思った時、やおらバスはハンドルを切り、対向車線に出ました。
見ると前方の反対車線に誘導員が立ち、渋滞の車列を尻目にバスを砂丘会館前のバス乗り場に誘導したのです。まともに走れば他愛のない距離で、さっきの子供連れもギリギリで交わしての先着でしたが、それでも相当な時間を費やしましたし、オアシスのバス待ちの行列がどのくらいになったのかを考えると背筋が寒くなります。

砂丘で遊んで駐車場に戻る時にも砂丘会館前の駐車場を先頭に両方向が激しい渋滞です。
それでもシャトルは反対車線の逆走が定着しており、若干名を積み残す程度で、次のバスが適宜来るタイミングなので助かりました。反面、鳥取市内から来る「ループ麒麟獅子」などの路線バスは無ダイヤ状態のようで、バス停の係員がタクシーが来たら迷わず乗ったほうがいいと諦め顔で、なんとかP&Rが機能していたのが救いです。
オアシスまで戻る途上はクルマがびっしり。オアシスの入口で砂丘道路を規制してシャトルバスが出られないというようなことは無くしているのでシャトルバスが機能しているようです。

帰りは砂丘道路を引き返し、ラッキョウ畑を突っ切る新道をR9に抜けて鳥取市街のほうに向かいましたが、渋滞も無く快調です。
砂丘道路とR9が交差する立体のところでは、R9の東行きに砂丘道路に向かう車列が渋滞しており、砂丘道路はR9に入る帰り車も長い車列となっており、オアシス側でのP&Rは有効だったと判断できました。

***
さて、最繁忙期のP&Rを期せずして体験できたのですが、この日の出来事が思わぬ波紋を呼んでいます。
5月9日付の日本海新聞 は、この「反対車線逆走」に鳥取県警が事情聴取も辞さない構えと報じています。
記事は、「鳥取市が大型連休中、鳥取砂丘周辺での渋滞緩和策として通称・砂丘道路で運行したシャトルバスの一部の便が、はみ出し禁止区間にもかかわらず、渋滞する車を追い越すため対向車線を走っていたことが八日、分かった。市職員が運転手に指示したもので、鳥取県警などは「常識では考えられない」とかんかん。近く、道交法違反の疑いで関係者から事情を聴く方針。」と報じていますが、鳥取市の観光コンベンション推進課がチャーターした日本交通の運転士に指示したようで、私が体験したように、「警備員を配置した上で、運転手に対向車線の走行を指示。対向車線を複数回、最大で数百メートルを走ったという。」(記事本文)形で運行したのです。

記事では、バスを運行した日本交通営業部の係長の「警備員が対向車の流れを止めており、そんなに問題だとは思っていない」という談話も掲載していますが、全くもってその通りであり、その場にいてあれがいけないことと思う人は誰一人いなかったのが現実です。実際、砂丘会館前を先頭にした両方向の渋滞ですから、通り過ぎた先の車線にはクルマはいないわけで、そこを誘導員が封鎖してシャトルバスを逆走させても、交通の阻害にもならない状態でした。
ところが「当局」の意識は全然違うようで、記事によると、中国運輸局鳥取運輸支局輸送課の課長は「事実だとすれば明らかな違反」と強調しており、県警も「関係者から事情を聴いて対応を取りたい」としているなど、事情を斟酌することも無い取り付くしまも無いコメントを見る限りでは、P&Rのバスが渋滞に埋もれるのが当然というに等しい発想であるとしか言いようがありません。

はっきり言ってしまえば、駐車場が満車なのに片側1車線の道路に立ち止まって空き待ちをするクルマを取り締まろうともしていない県警が、安全確保をして定時運行に努めようとした公共交通を咎めるというのは言語道断です。
シャトルバスはそれでも動きましたが、鳥取駅方面から来る、また、帰る観光客は両方向とも動かない砂丘道路を行くバスのなかで長時間我慢したり、観光用のラクダもへたるような陽気の砂丘会館前でいつ来るかも分からぬバスを待っていたわけで、救いが無かったのです。
この人出はさすがに「絵」になったのか、ちょうど日本海テレビの取材クルーがオアシス駐車場で利用者にインタビューしてましたし、渋滞にはまって動けないシャトルバスを何度も撮影してましたが、私たちと同じ目線、同じ空の下で歩いて取材していた彼らがどう報道したか、また県警の反応をどう見ているか、興味があるところです。

振り返ってみれば、砂丘会館前も、オアシスの駐車場も、そして砂丘から相当離れたR9鳥取バイパスで砂丘道路に向かう渋滞の車列でも、案内に立っていたのは市側の要員でした。鳥取県警が誘導したり、砂丘道路から砂丘に乗り入れて路駐していたクルマを取り締まっているのは全く見ていません。満足な対応や規制もしないでいた県警が、よしんばそれが違法であっても万全の態勢を持って実行した市側を罪に問うというのは、あの日シャトルバスを利用した側としては、どう考えても理解できません。

そもそもパークアンドライドのシャトルバスや一般路線バスが観光地などの渋滞発生時に、適切な誘導員(これは必ずしも警察官とは限らない)の指示の下に反対車線を短区間逆走することは前例が無い話ではありません。
昨年冬、六甲山で「六甲山 氷の祭典」が行われたときは、六甲ガーデンテラス手前の県道で六甲摩耶鉄道の路線バスが県道を逆走しましたし、他にも幾度と無く経験しています。

警察に無断で逆走を実行したから、というのであれば、まさに了見が狭すぎる話ですし、対価を取って運行する今回のシャトルバス、まさか「ヤミ運行」のはずはないでしょうから、警察も運輸局もその存在をしっていたはずです。そして一般国道やバイパスのような幹線道路でロードサイド店の「誘導員」が勝手に交通を遮断して駐車場の出入りの便宜を図るようなケースを黙認していて、より公共性が高い今回のケースを罪に問う理屈が立ちません。

鳥取運輸支局のコメントにいたっては開いた口がふさがりません。中国地方の運輸局は、公共交通に対する理解が比較的高いという定評がありますが、今回のコメントは、パークアンドライドの展開に水を注しかねないものです。
そもそも渋滞していても自分のクルマであれば、時間が許せばそれなりに快適に待てるのです。
それをパークアンドライドなどによって公共交通機関に誘導するにはそうとうなインセンティブが必要なのに、肝心なバスが渋滞に巻き込まれても構わないという発想では、パークアンドライド利用も公共交通利用も到底定着などしないと断言できます。






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