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私たち日本人はいつチップをあげるのだろうか。
最近は旅館や料理屋などで世話をしてくれる女性(昔は女中さんと言ったが、今は好ましくない言葉とされている)にチップをあげる人も減ってきたが、昔は、一般的に行われていたようだ。チップは日本語で「心付け」と言うのであるが、この心付けをいつ出すのか、これがけっこうおもしろいのである。
私の母は関西の出身で関東に嫁に来た。この母の話によると、関東と関西ではチップの出し方が違うそうだ。つまり、関東式と関西式があるということである。前者はサービスを受ける前にチップをわたすが、後者はサービスを受けた後で、チップをわたすのだそうだ。
こんな話をタイの友人にしたところ、タイでは明らかに関西式だと彼は言った。関東式だと、もらうものだけはもらっておいて、それ相応のサービスをしないかもしれないが、関西式ならば、チップをたくさんもらおうとして、一所懸命サービスするに違いない、だからチップはあとからあげるのだそうだ。彼は関西式のほうが合理的だと主張する。
しかし、一所懸命サービスをすれば、必ずチップがもらえるかというと、そうでもない。もらえない場合だってあるだろう。チップがもらえるか、もらえないかわからないのに、いいサービスをするだろうか。もらえない可能性が高そうなら、きっと、サービスしないに違いない。したがって、関西式だと、サービスが受けられない場合もある。それならば、初めからチップを渡しておいて、必ずサービスが受けられるようにしておいた方が、合理的だと言えるだろう。
さあ、あなたはどちらが本当に合理的だと考えますか。 |
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