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今年はスイカの当たり年で、権兵衛さんの畑では、今日も市場へ出さなければならないスイカが10個もとれた。この権兵衛さんは、いつも仲買いの次郎作に手間賃を払って市場へ売りに行ってもらうのだが、数字に弱い権兵衛さんは、ずるがしこい次郎作にいつもだまされている。今日もまた次郎作にだまされるのかと、市場へ持っていくスイカを前にして、権兵衛さんは困っていた。そこへお寺の和尚さんが訪ねてきた。
事情を聞いた和尚さんは、それでは、10個のスイカをみんな次郎作に渡さないで、1個は病気のおかみさんに食べさせるからと言って、(1. )個を次郎作に渡しなさい、そうすれば、全体の値段は9の倍数になるから、その数字の和も9の倍数になるだろうと入れ知恵をした。
さて、和尚さんが帰ると、入れ替わりに次郎作が来た。
権兵衛と次郎作はいろいろ話をして、結局、今日の市場での売り値は1個80円、そして、次郎作の手間賃は1個につき7円と決めた。したがって、権兵衛さんは次郎作にスイカを1個(2. )円で9個売り渡すことになった。悲しいかな、権兵衛さんはかけ算ができない。そこで次郎作はそろばんを使って計算をした。ずるがしこい次郎作はうそをつき、ある位の数字を一つ少なくして権兵衛に見せた。
「ほれ、全部で(3. )円だな」
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ここで、権兵衛さんは和尚さんから教えてもらった秘法を応用した。次郎作が言った三つの数字の(4. )と(5. )と(6. )を足してみると、18に1足りない。権兵衛さんは次郎作が計算をごまかしていると主張した。驚いた次郎作は、権兵衛さんが数字に弱いのにつけ込んで、それならおまえが正しい答えを出してみろと怒った。
権兵衛さんは「おまえの言った答えの(4. )と(5. )と(6. )の三つの数を足すと、(7. )になって、18に1足りない、だから、どの位かはわからないが、三つのうちの一つを少なく言っているに違いない、しかし、おまえは欲張りだから、きっと、(8. )の位の数字を一つ少なく言っているだろう」と見事な推理をして、答えは(9. )円のはずだと言った。
こうして、権兵衛さんは(10. )円をだまし取られないですんだ。
参考図書:矢野健太郎(1988)「数学のたのしさ」新潮文庫, 新潮社, pp.186-187
(このテキストは上記原著者及び出版社の転載許諾を得て掲載しています。よって、無断転載を禁じます。にほんごのひろば主人・2003.9.17)
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