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会社にやってくるOL(オーエル)は毎日のように服装を替えてくる。男でもネクタイやシャツなどを毎日替えてくるようだ。しかも、外の人と同じものであっては困る。街で同じ服を着た人と出会うと拒否反応を起こし、二度とその服を着なくなる人もいる。
また、人は衣服の外にいろいろなものを身につけたり持ち歩いたりしている。時計、靴、指輪、イヤリング、バッグ、ウォークマンなどである。彼らはただ使えればよい、着られればよいという機能性だけでこれらの品物を買って、身につけているのではない。なぜならば、技術が進歩して質の高いクォーツ時計が非常に安い価格で買えるのに、ローレックスやカルチェなど、数十万円、数百万円の時計を買うからである。彼らは機能性と価格以外の基準で選んでいるのである。
では、きれいなものを見たいのだろうか。もし、そうならば、ファッションショーを見たほうがいいはずである。
実は彼らはタダで他人に見せるために、大変な出費をして、自分を着飾っているのである。タダで見せるのであるから、何か見返りを期待するに違いない。それこそが「評価されたい」「ほめられたい」「存在を認められたい」という強い欲求なのだ。これらの強い欲求を満たすために、人々は着飾るのである。
参考図書:井原哲夫(1989)「豊かさ」人間の時代,講談社現代新書, 講談社, p.13-14
(このTEXTは上記原著者と出版社の転載許諾を得て掲載しています。よって、無断転載を禁じます。にほんごのひろば主人・ 2003年9月17日)
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