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(13)行き違い 中文読解 内容(13) 2004年4月4日 制限時間10分


TEXT

 日付の書き方は国によってずいぶん違うようです。日本では平成8年8月8日のように、「年−月−日」の順です。中国や韓国も日本型です。これに対してヨーロッパでは、「日−月−年」の順です。また、アメリカでは、「月−日−年」となっているようです。どれがいいかは、簡単には決められませんが、とにかく、いろいろな習慣があることを知っておいたほうがいいでしょう。そうでないと、いろいろ悲劇が起こります。
(あなたの国ではどのスタイルですか) 

 大分昔、リーダーズダイジェストに出ていた話です。あるヨーロッパの観光地でアメリカの男がヨーロッパの女と恋に落ちました。別れる時、二人が初めて会ったレストランで来年も会うことにし、その日は電報で知らせることにしました。さて、一年がたってその日が来ました。男はそのレストランで一日待っていましたが、彼女は来ませんでした。傷心の男はアメリカに帰って、やがて外の女性と結婚しました。それから二十数年、その男は当時の自分と同じ年頃の息子をともなって、そのレストランに行きました。見ると、ウェイターたちを指揮してまめまめしく働いている女性は、間違いなく昔の恋人でした。男は彼女の働くのを目で追いながら、以上のような話を息子にしました。

 息子はしばらく考えていましたが、お父さんはいったいなんと電報を打ったの、と聞きました。10-11というのがその電文でした。息子は、それだと叫びました。きっと、月日を間違えたにちがいない。昔の恋人を呼び止めて聞いてみると、やはりそうでした。青年が去ってから約一か月後、今度は娘さんが来てやはり一日待っていました。すっかり悲しんでいる娘さんをかわいそうに思った店の主人は、家に連れて帰って事情を聞きました。そしてやがて、その主人の息子と結婚して、今はこのレストランのご主人の奥さんになっていたのでした。

 こういうことを昔の恋人たちが話すのを聞いて、その息子はちょっと変な気がしました。このような行き違いがなくて、すべてうまくいっていたら、はたしてこの自分はこの世に存在していただろうか。

参考図書:野元菊雄(1978)「日本人と日本語」筑摩書房, pp.129
このTEXTは上記の原著者及び出版社より転載許可をもらって掲載しております。したがって、無断の転載、転送、書き替えなどをしてはいけません。2004年4月4日にほんごのひろば主人


QUESTION :昔の恋人たちはそれぞれいつレストランに行ったのでしょうか。

男:

女:


WORDS

1.行き違い(ゆきちがい) misunderstanding
2.リーダーズダイジェスト 雑誌の名前
3.恋に落ちる(こいにおちる) fall in love
4.傷心(しょうしん) sad,sorrow
5.当時(とうじ) at that time
6.ともなう   take
7.ウェイター  waiter
8.まめまめしい as busy as bee
9.目で追う(めでおう) gaze at
10.以上(いじょう) above
11.呼び止める(よびとめる) call to
12.去る(さる) leave
13.はたして really




(ゆき違(ちが)

TEXT
(漢字の読み方がついています)

 日付(ひづけ)の書き方は国によってずいぶん違(ちが)うようです。日本では平成(へいせい)8年8月8日のように、「年(とし)−月(つき)−日(ひ)」の順(じゅん)です。中国(ちゅうごく)や韓国(かんこく)も日本型(にほんがた)です。これに対(たい)してヨーロッパでは、「日(ひ)−月(つき)−年(とし)」の順(じゅん)です。また、アメリカでは、「月(つき)−日(ひ)−年(とし)」となっているようです。どれがいいかは、簡単(かんたん)には決(き)められませんが、とにかく、いろいろな習慣(しゅうかん)があることを知っておいたほうがいいでしょう。そうでないと、いろいろ悲劇(ひげき)が起(お)こります。
(あなたの国ではどのスタイルですか) 

 大分
(だいぶ)(むかし)、リーダーズダイジェストに出ていた話です。あるヨーロッパの観光地(かんこうち)でアメリカの男がヨーロッパの女と恋(こい)に落(お)ちました。別(わか)れる時(とき)、二人が初(はじ)めて会ったレストランで来年も会うことにし、その日は電報(でんぽう)で知らせることにしました。さて、一年がたってその日が来ました。男はそのレストランで一日待(ま)っていましたが、彼女(かのじょ)は来ませんでした。傷心(しょうしん)の男はアメリカに帰(かえって、やがて外(ほか)の女性(じょせい)と結婚(けっこん)しました。それから二十数年(にじゅうっすうねん)、その男は当時(とうじ)の自分(じぶん)と同じ年頃(としごろ)の息子(むすこ)をともなって、そのレストランに行きました。見ると、ウェイターたちを指揮(しき)してまめまめしく働(はたら)いている女性(じょせい)は、間違(まちが)いなく昔(むかし)の恋人(こいびと)でした。男は彼女(かのじょ)の働(はたら)くのを目で追(お)いながら、以上(いじょう)のような話を息子(むすこ)にしました。

 息子
(むすこ)はしばらく考(かんが)えていましたが、お父さんはいったいなんと電報(でんぽう)を打(う)ったの、と聞きました。10-11というのがその電文(でんぶん)でした。息子(むすこ)は、それだと叫(さけ)びました。きっと、月日(つきひ)を間違(まちが)えたにちがいない。昔(むかし)の恋人(こいびと)を呼(よ)び止(と)めて聞いてみると、やはりそうでした。青年(せいねん)が去(さ)ってから約(やく)一か月後(ご)、今度(こんど)は娘(むすめ)さんが来てやはり一日待っていました。すっかり悲(なか)しんでいる娘(むすめ)さんをかわいそうに思(おも)った店(みせ)の主人(しゅじん)は、家に連(つ)れて帰(かえ)って事情(じじょう)を聞きました。そしてやがて、その主人(しゅじん)の息子(むすこ)と結婚(けっこん)して、今はこのレストランのご主人(しゅじん)の奥(おく)さんになっていたのでした。

 こういうことを昔
(むかし)の恋人(こいびと)たちが話すのを聞いて、その息子(むすこ)はちょっと変(へん)な気(き)がしました。このような行(ゆ)き違(ちが)いがなくて、すべてうまくいっていたら、はたしてこの自分(じぶん)はこの世(よ)に存在(そんざい)していただろうか。
 



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