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　 町でひろった日本語



町でひろった日本語（13）　Nihombashiは正しい表記ですか



先日、東京の地下鉄メトロ東西線に乗って気づいたことなのですが、日本橋駅の駅名ローマ字表記が「Nihoｍbashi」となっているのです。ひらがなでは「にほんばし」となります。この「ん」のローマ字表記です。一瞬目を疑ったのですが、明らかに「ｍ」となっていました。

ローマ字のつづり方の規則は以下のようになっています。

ローマ字のつづり方

まえがき

１． 一般に国語を書き表す場合は、第1表に掲げたつづり方によるものとする。（第１票はひらがな五十音図のローマ字表記版です。清音列、濁音列、半濁音列、拗音列）

２． 国際的関係その他従来の慣例をにわかに改めがたい事情にある場合に限り、第２表に掲げたつづり方によっても差し支えない。（第２表には、sha、shi、shu、sho、tsu、cha、chi、chu、cho、fu、ja、ji、ju、jo、di、du、dya、dyu、dyo、kwa、gwa、waの22例が挙がっている）

３． 前二項のいずれの場合においても、おおむねそえがきを適用する。

そえがき

　前表に定めたもののほか、おおむね次の各項による。

１．はねる音「ン」はすべてｎとかく。

[補注]　tenki　sannin　sinbun　sanmyaku　denpo

　以下、項目が6つありますが、今回のテーマとは直接関係がないので割愛します。

（新しい国語表記ハンドブック第三版　三省堂　219ページ参照）





　東京メトロ東西線の「日本橋駅」構内表示板です。
「Nihonbashi」ではなく「Ｎｉｈｏｍｂａｓｈｉ」と表記されています。
規則に従えば、「Nihonbashi」と書かなければなりません。




　ローマ字の表記規則では、「ん」は「ｎ」と書くのが正しいのであります。ところが、東西線日本橋駅のローマ字表記は「Ｎihombashi」となっています。
　では、他の駅の「ん」はどうなっているのでしょうか。以下、例をあげます。（東京メトロ案内図英文字版より）

（１）「ｎ」の後ろが「ｄ、ｚ、ｊ、ｃｈ」のもの

銀座　きんざ　ginza

神田　かんだ　kanda

新宿　しんじゅく　shinjuku

新宿三丁目　しんじゅくさんちょうめ　shinjuku-sanchome

方南町　ほうなんちょう　honancho



（２）「ｎ」の後ろが「ｇ、ｋ」のもの

泉岳寺　せんがくじ　sengakuji

本郷三丁目　ほんごうさんちょうめ　hongo-sanchoume

六本木　ろっぽんぎ　roppongi

明治神宮前　めいじじんぐうまえ　meiji-jingumae

千川　せんかわ　senkawa




（３）「ｎ」の後ろが母音のもの

新江古田　しんえごた　shin-egota

新板橋　しんいたばし　shin-itabashi

新高円寺　しんこうえんじ　shin-koenji



（４）「ｎ」の後ろが「ｍ、ｂ」のもの

神保町　じんぼちょう　jimbocho　

新橋　しんばし　shimbashi

東日本橋　ひがしにほんばし　higashi-nihombashi

外苑前　がいえんまえ　gaiemmae

新宿御苑前　しんじゅくぎょえんまえ　Shinjuku-gyoemmae



　以上、［ｂ］や［ｍ］といった両唇音の前では、現実の発音に忠実に［ｍ］と表記されているが、それ以外の子音の前はすべて　[ｎ]　と表記されている。

　また、［ｋ］や［ｇ］といった子音の前の「ん」は、鼻音化した［ng］となるのだが、これを、例えば、「ropponggi」とか「sengkawa」はさすがに表記しにくいので、［ｎ］のままにしたのであろうと思われる。







都営地下鉄「神保町」駅は「Jimbocho」と「ｍ」表記されている。（これは駅の入り口の看板です）




　次に国電(JR東日本)の表記はどうかというと、以下のようになっている。（JR東日本東京近郊駅の英文字版より）

shimbashi　（新橋　しんばし：山手線）

shim-misato（新三郷　しんみさと：武蔵野線）

jimbohara　（神保原　じんぼはら：高崎線）

shimmachi　（新町　しんまち：高崎線）

shim-maebashi　（しんまえばし　新前橋：高崎線）

gumma-soja　（ぐんまそうじゃ　群馬総社：高崎線）

kawasaki-shimmachi　（かわさきしんまち　川崎新町：南武線）

bentembashi　（べんてんばし　弁天橋：鶴見線）

shim-mobara　（しんもばら　新茂原：外房線）

kaihimmakuhari　（かいひんまくはり　海浜幕張：京葉線）

これも地下鉄の駅名表示と同様に、［ｂ］や［ｍ］といった両唇音の前では、現実の発音に忠実に［ｍ］と表記されている。そして、それ以外の子音の前の「ん」はすべて［ｎ］で表記されている。


国電山手線「新橋駅」の駅名表示。「Shimbashi」と「ｍ」表記になっています。




　では、道路交通標識の「ん」はどのように表記されているのか。今まで例に挙げてきた、「日本橋」「新橋」「神保町」が含まれている道路交通標識を紹介すると、以下のようになっている。



　
　すべて「ｎ」表記が使われ、鉄道とは好対照をなしている。面白いことに、地下鉄神保町駅を示す交通標識では「Jinbocho」と表記され、地下鉄神保町駅の看板では「Jimbocho」と表記されているのである。この二つの表示は、20メートルも離れていないところに位置している。


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