このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください


中国−12 大連・長春の食事編



 大連に着いた日のことである。中山広場でボケッとしている間に日はすっかり落ちた。そろそろ夕食でも取るか、と思って地図を頼りに繁華街のほうに歩いていった。美味しそうなレストランを天津街で探していたところ、懐かしい店を発見した。その店の名を「美国加州牛肉面大王」という。中国で「美国」とはアメリカのことで、「面」は麺のこと。つまりアメリカのカリフォルニア産牛肉が入った麺と言う意味だ。察するに「大王」というのは、これから店を大きくしていくぞ、という経営者李先生の意気込みであろう。なぜ経営者の苗字を僕が知っているのかと言えば、それは李先生のはにかんだような笑顔が看板に描かれているからである。大連だけでなく長春にも有ったので、チェーン店になっているようだ。
 「懐かしい」と書いたのには理由がある。1993年2月、大学の卒業旅行で僕は友人と2人で中国に行った。最初の宿泊地北京で、最初に2人で入ったレストランが美国加州牛肉面大王であった。2人とも第二外国語が中国語だったので、数字を中国語で話すくらいは出来た。それが裏目に出た。注文するときに、友人が「牛肉面2つ」と、中国語で頼んだ。注文を取りに来た小姐(若い女性のこと。何才までが小姐なのかはよく分からない。)が今度は僕の方を見た。僕は、「2人分まとめて、牛肉面2つだ。」と身振り手振りをつけて中国語で説明したつもりであった。10分後、小姐は牛肉面を4つ持ってきた。
 そんな感傷に浸りながら、店の中に入った。牛肉面と棒棒鳥と青島ビールで確か18元(=270円)だった。自分で書いていて安すぎる気もする。牛肉面だけで18元だったろうか?まあ日本よりはるかに安いのは確かだ。牛肉面は、醤油や味噌といった日本のラーメンとはまた違った味である。麺の上に香草が乗っているのが嬉しい。味を文字で再現するは難しいが、とにかく満足であったと書いておきたい。ビールがぬるかったのが玉に瑕だ。

 二日目。この日は韓国風焼肉に行ってみた。さすがにホテルの朝食が中華で昼も中華となれば、夜は別の物を食べようか、という気になる。僕が店に入り、メニューを指差しながら注文をした。すると小姐がやってきて、肉を焼き始めた。最初だけかと思ったが、小姐は僕につきっきりだった。別に僕が特別な客と言うわけではなく、どのテーブルにも小姐がついて肉を焼いてくれるというサービスである。
 最初は親切なサービスだと思っていた。小姐がテーブルの脇に立ち、皿の上の肉を鉄板の上に広げ、焼けたら取皿に置いてくれるのだ。僕は取皿の上の肉を取ってタレにつけ、それを食べるだけである。焼肉は自分で焼いて食べるもの、と考えていた僕にとっては非常に贅沢に感じられた。
 ところが、ちょっと経ってから問題が発覚した。僕がビールを飲んでようと、つまみを食べていようと、小姐はそれにお構いなくひたすら肉を焼き続けるのだ。油断すると、取皿に肉が溜まっていく.。「ちょっと待って。」と僕がお願いすると、小姐は数分待ってくれるが、取り皿の上の肉が減ったのを見て取ると、すぐに焼き始める。まさにわんこ焼肉状態だ。小姐はひたすら肉を焼き続け、僕はひたすら肉を食べ続けた。なぜか途中から戦っているような錯覚に陥った。残したら負けだ。僕が最後の肉を食べ終わったのを見届けると、小姐はにっこり微笑んで去っていった。言葉は通じなくても、想いは通じたはずだ。
 
 三日目の夕食は長春のホテルで、ルームサービスの 餃子 を食べた。

 四日目の夕食は長春のホテルのそばで、またも焼肉だった。この店も、やはりわんこ焼肉だった。わんこ焼肉に挑戦してみたい方、中国へどうぞ。一人前でも十分楽しめます。

(続く)
 

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