このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

中国(上海・蘇州・無錫)−11 寒山寺編

 「蘇州夜曲」で有名な寒山寺。「蘇州夜曲」について学ぶため、僕は今回の旅行に備えて「SP盤復刻による懐かしのメロディ 李香蘭」というCDを買った。
 この歌は戦前に李香蘭と長谷川一夫が競演した日中合作の「支那の夜」の主題歌だったが、当時李香蘭はテイチクの専属であるという理由で、コロムビアの服部良一の作品をレコードでは歌うことができず、かわりに渡辺はま子と霧島昇が歌って大ヒットした。李香蘭は劇中で歌っており、その後ステージでは歌っていた。戦争が終わって昭和28年に東宝映画「抱擁」の主題歌となり、今度は李香蘭バージョンで発売された。ただ、原曲では一番の「恋の歌」の部分は「鳥の歌」となっており、どういう経緯で李香蘭がこのように歌ったのかは不明だそうだ。
 かえすがえすも、昨年 長春 に行ったときに、時間が無くて長春電影宮に行けなかったことが悔やまれる。その前身は1939年設立の満州映画株式会社である。満映最大のスターが李香蘭であった。
 李香蘭こと山口淑子は中国の奉天(現在の瀋陽)の近郊で生まれている。山口家は中国の李際春将軍と親しくなり、彼女は形式的な養女となり、李香蘭の中国人名をもらった。
 日中間の政情がだんだん悪化していく中、彼女の美声がラジオ局の目にとまり、中国人女優李香蘭としてデビューすることになる。当初は中国人としてふるまっていたが、やがて日本人であることを知られると、「日本人のくせに中国人名を名乗ることはけしからん。」などと罵声を浴びることにもなった。しかし、彼女は国境を超えたスーパースターとなり、多くの主題歌は大ヒットとなる。中国人の多くは彼女が中国人であることを信じて、日本人は満州国の生んだスタートして親しみを感じていた。
 戦後は日本にやってきて、映画にも何本か出演した。黒澤映画の最高傑作「七人の侍」の主題歌を歌っていたとはこのCDを買うまで知らなかった。映画の中でメロディは流れるが、歌声は入っていないためだ。(最近、道路関係四公団民営化推進委員会に「七人の侍」という言葉が使われ、ニュースのBGMに七人の侍のメロディが流れるのは腹立たしい。天国の黒澤明も怒っているのではないだろうか。)

「蘇州夜曲」
作詞 : 西條八十
作曲・編曲 : 服部良一


君がみ胸に 抱かれて聞くは
夢の船唄 恋の歌
水の蘇州の 花散る春を
惜しむか柳が すすり泣く

髪に飾ろか 口づけしよか
君が手折りし 桃の花
涙ぐむよな おぼろの月に
鐘が鳴ります 寒山寺




 寒山寺は517年の建立だが、何度か焼失し、現在の建物は清代の建築である。なお、左下の鐘が蘇州夜曲で歌われた鐘である。日本から「除夜の鐘を突くツアー」が組まれるというからすごい。この鐘を一突きすると寿命が10年若返るそうだ。

鐘楼の鐘
右に「寒」、左に「山」の字があることに注目。小銭を払って突くことができる。


 話は変わって、文豪森鴎外の作品に「寒山拾得」というものがある。寒山というのは唐代の僧であり、彼が住んだことからこの寺が寒山寺と呼ばれるようになった。拾得は寒山の学友だ。「寒山拾得」は、ある武将が寒山と拾得を訪問するという話と記憶しているが、正直言って面白くない。教訓なのかどうかもよく分からない。解説を読んでもよく分からなかった。この話をどう解釈すべきか、ご存知の方は教えてください。

この中に寒山・拾得の像がある。




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