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芥川龍之介 (あくたがわ・りゅうのすけ) 1892〜1927。




 (青空文庫)
短編。恋人の俊吉を妹・照子に譲り、別の男と結婚して大阪で平凡な生活を送る信子。久々に上京した信子は、俊吉と照子の新居を訪れるが…。「私は照さんさえ幸福なら、何より難有いと思っているの。ほんとうよ。俊さんが照さんを愛していてくれれば」、「じゃあ御姉様は——御姉様は何故昨夜も」──。冷やかな秋の空と、寂しい諦め…。二人が行き違うラストシーンが印象に残る恋愛小説。

アグニの神  (青空文庫)
掌編。中国人の少女・恵蓮(えれん)の体へ「アグニの神」というインドの神を乗り移らせて、金儲けをしている魔法使の婆さん。実は、恵蓮は、行方不明になっている日本人の少女・妙子で、婆さんの家に監禁されていた。「アグニの神」に乗り移ったフリをして、脱出を試みる妙子だが…。「日本の神々様、どうかお婆さんを欺せるように、御力を御貸し下さいまし」。上海を舞台としたホラー・サスペンス。
→芥川龍之介「妖婆」

あばばばば  (青空文庫)
掌編。海軍学校の教師・保吉がよく利用する商店。無愛想な若い主人に代わって、店の勘定台の後ろに坐るようになった娘じみた「はにかみ屋」の若い妻。しかし何処へどうしたのか、ぱったりと女は姿を見せなくなってしまう…。「さっきね、あなた、ゼンマイ珈琲とかってお客があったんですがね、ゼンマイ珈琲ってあるんですか?」、「ゼンマイ珈琲?」。素晴らしき女性の変化に祝福。微笑ましい小品。
→芥川龍之介「十円札」 →芥川龍之介「文章」

或る敵討の話  (青空文庫)
短編。剣術の試合に負けた恨みから、熊本藩士・田岡甚太夫を闇討ちにしようとした剣術指南番・瀬沼兵衛だが、人違いで老人・加納平太郎を殺してしまい、逃亡する。平太郎の子・求馬は、甚太夫や、念友・津崎左近、若党・江越喜三郎と共に敵討ちの旅に出るが…。「身ども今生の思い出には、兵衛の容態が承りとうござる。兵衛はまだ存命でござるか」。苛酷な敵討ちの世界を描いて印象に残る。
→森鴎外「護持院原の敵討」

或日の大石内蔵助  (青空文庫)
掌編。細川家にお預り中の大石内蔵助は、討入を果たした満足に浸っていた。しかし、江戸中で仇討の真似事が流行っていることを知り、また、敵を欺くために京都で放埓の生活をした自身のことを激賞された内蔵助は、不快さ、後ろめたさ、寂しさを感じる…。「手前たちの忠義をお褒め下さるのは難有いが、手前一人の量見では、お恥しい方が先に立ちます」。討入り後の心境を描いた「忠臣蔵」もの。
→吉川英治「べんがら炬燵」

芋粥  (青空文庫)
短編。摂政・藤原基経に仕えている侍の中に、某(なにがし)と云う五位があった──。風采が上がらず、皆から愚弄されている赤鼻の五位だが、彼の人生唯一の欲望は、芋粥(いもがゆ)を飽きるほど飲んでみたいということであった。「お望みなら、利仁がお飽かせ申そう」。同僚の藤原利仁に誘われて、はるばる越前の敦賀まで旅をする五位だが…。「何とも、忝(かたじけの)うござった。もう十分頂戴致したて。——いやはや、何とも忝うござった」──。期せずして欲望を満たしてしまった者が感じる心境をユーモラスに描いた名作。

馬の脚  (青空文庫)
短編。脳溢血で(人違いで?)死んだ北京の会社員・忍野(おしの)半三郎が生き返った。しかも、死んでいる間に脚が腐ってしまったため、代わりに栗毛の馬の脚をつけられてしまった。「まあ、災難とお諦めなさい。しかし、馬の脚は丈夫ですよ。時々蹄鉄を打ちかえれば、どんな山道でも平気ですよ」。妻・常子や会社の同僚たちに馬の脚がバレないように、隠しながら生活する半三郎だが…。「常子、…」、「あなた!」。もう一つよく分からない所もあるが、不条理な運命による家庭生活の崩壊を描いた悲喜劇として読んで面白い。

お律と子等と  (青空文庫)
短編。病気の母・お律の死期が迫り、地方の高等学校に行っている兄・慎太郎に電報を出す弟・洋一。お律は父・賢造と再婚した後妻で、慎太郎はお律の連れ子だった。「僕はお母さんが死んでも悲しくない」。昔そんな事を言っていた慎太郎が、すぐ家に帰って来るのか不安になる洋一だが…。連れ子ゆえの母親に対する屈折した愛憎…。「お母さん。お母さん」──。ラストシーンが深く心に残る。

奇遇  (青空文庫)
掌編。編輯者に作品を催促され、「奇遇」という題の未発表原稿を朗読する小説家。それは、夢の中に出てくる美しい少女に恋をした青年・王生(おうせい)を描いた恋愛小説なのだが…。「どうです、こんな調子では?」、「ロマンティクな所は好いようです。とにかくその小品を貰う事にしましょう」、「待って下さい。まだ後が少し残っているのです」──。小説家と編輯者の会話が漫才みたようで面白い。

煙管  (青空文庫)
掌編。金無垢の煙管(きせる)を愛用することによって、百万石を自慢している加賀藩主・前田斉広(なりひろ)は、江戸城の御数寄屋坊主・河内山宗俊に惜しげもなく煙管をあげてしまう。これを機に坊主たちが次々と煙管を欲しがるようになり、困った斉広の家臣たちは対策を練るが…。「うん、煙管か。煙管なら、手前にくれてやらあ」──。優越感や虚栄心なんてものは、所詮、煙草の煙の如くなり。
→柴田錬三郎「河内山宗俊」

疑惑  (青空文庫)
短編。講演のため大垣に滞在している倫理学者の私は、中村玄道という見知らぬ男の訪問を受け、悲惨な身の上話を聞かされる。濃尾の大地震で梁(はり)の下敷きになってしまった妻・小夜を、生きながら火に焼かれるよりはと思って、やむなく打ち殺した玄道。資産家の令嬢との再婚話が進行する中、玄道は“ある疑惑”に苦しめられるようになる…。「では何故(なぜ)お前は妻を殺した事を口外する事が出来なかったのだ」──。我々人間の心の底に潜んでいる怪物…。人間の精神の危うさを描いて暗然とした気持ちになる。

蜘蛛の糸  (青空文庫)
掌編。散々悪事を働いた大泥棒の男・陀多(かんだた)が地獄の底でもがいていた。ある時、陀多が蜘蛛(くも)を殺さずに助けたことがあるのを思い出した御釈迦様(おしゃかさま)は、極楽から蜘蛛の糸を垂らし、陀多を助けてやろうと考えるが…。「こら、罪人ども。この蜘蛛の糸は己(おれ)のものだぞ。お前たちは一体誰に尋いて、のぼって来た。下りろ。下りろ」──。人間のエゴを描いた有名童話。
→菊池寛「極楽」

戯作三昧  (青空文庫)
短編。「八犬伝」を執筆している老年の戯作者・曲亭(滝沢)馬琴のとある一日。画家・渡辺崋山との交流…、銭湯で聞いた悪評…、作者の名前を呼び捨てにする本屋・和泉屋市兵衛への不快感…、弟子入り志望の身勝手な青年・長島政兵衛のエピソードなどを交えて、馬琴の創作の苦しみを描く。「この感激を知らないものに、どうして戯作三昧の心境が味到されよう。どうして戯作者の厳(おごそ)かな魂が理解されよう」──。孫の太郎の無邪気さに癒される場面が微笑ましい。 →国枝史郎「戯作者」 →邦枝完二「曲亭馬琴」

袈裟と盛遠  (青空文庫)
掌編。人妻である袈裟御前と関係を持った遠藤盛遠(文覚)。彼女を蔑み、恐れ、憎みながら、それでも袈裟を愛している盛遠は、罪のない彼女の夫・渡(わたる)左衛門尉を殺すという呪わしい約束を彼女と結ぶ。一方、盛遠によって自分の醜さを知ってしまった袈裟は、夫の身代わりに立つという名の下に、自分のために愛する男に殺されるという道を選ぶ…。男と女の愛憎をそれぞれの視点で描く。

好色  (青空文庫)
短編。美人の侍従(じじゅう)に惚れた好色の天才・平中(へいちゅう、平貞文)は、何十通もの恋文を書くも、相手にされず、彼女の部屋を訪ねるも、いいようにあしらわれてしまう。侍従のことを思い切るためには、「たった一つしか手段はない。それは何でもあの女の浅間しい所を見つける事だ」と考えた平中は、侍従の局の童女から筐(はこ)をひったくるが…。「そうだ。この中を見れば間違いない。百年の恋も一瞬の間に、煙よりもはかなく消えてしまう」──。平中を翻弄し倒す侍従の小悪魔ぶりが面白い。何とも凄いオチ(笑)。

黒衣聖母  (青空文庫)
掌編。「この麻利耶(マリヤ)観音には、気味の悪い因縁があるのだそうです」。ある悪意を帯びた嘲笑をたたえている観音像の「妙な伝説」とは? 新潟県のある町の稲見という素封家の八歳の男児・茂作が重い麻疹に罹ってしまう。親代りである茂作の祖母は、聖母像に祈祷するが…。「せめては私の息のございます限り、茂作の命を御助け下さいまし」。運命に逆らっちゃダメですよってことかいな。

猿蟹合戦  (青空文庫)
掌編。お伽噺しか知らない読者は、悲しい蟹の運命に同情の涙を落すかも知れない。しかし蟹の死は当然である。それを気の毒に思いなどするのは、婦女童幼のセンティメンタリズムに過ぎない──。怨敵である猿をやっつけた蟹や臼(うす)たちだが、主犯の蟹は何と死刑になってしまう…。事件についての識者たちの意見や、蟹の遺族のその後が何とも面白い…。パロディー・ユーモア風刺小説。
→芥川龍之介「桃太郎」

三右衛門の罪  (青空文庫)
短編。闇討ちを仕掛けてきた若侍・衣笠数馬を、逆に斬り殺した加賀藩士・細井三右衛門。事件の数日前、数馬の剣道の試合で行司役を勤めた三右衛門だが…。「すると数馬はそちの行司に依怙(えこ)があると思うたのじゃな?」、「さようでございまする。わたくしは依怙は致しませぬ。しかし数馬は依怙のあるように疑ったかとも思いまする」。生真面目すぎるがゆえの意外な“えこひいき”が面白い。

地獄変  (青空文庫)
短編。あの地獄変の屏風の由来程、恐ろしい話はございますまい。芸術(画)のためなら道端の屍骸をも写す傲慢な絵師・良秀(よしひで)は、堀川の大殿様から地獄変の屏風を描くよう命じられる。画を完成させるため、女を乗せた牛車を実際に燃やしてくれるよう大殿様に願い出る良秀だが…。「車の中の女が、悶え死をする──それを描こうと思いついたのは、流石に天下第一の絵師じゃ。良秀。今宵はその方の望み通り、車に火をかけて見せて遣わそう」。大殿様が良秀の愛娘に想いをかけているという噂…。超弩級の衝撃作!
→芥川龍之介「邪宗門」

邪宗門  (青空文庫)
中編。美人で奔放な中御門(なかみかど)の姫との恋がかなった堀川の若殿。邪宗である「摩利の教」を広めている異形の沙門(しゃもん)・摩利信乃法師(まりしのほうし)が、中御門の姫と接触をはかっていると知った私(若殿に仕える老侍)は、摩利信乃法師を闇討ちにしようとするが…。 「方々(かたがた)にもの申そう。これは天上皇帝の神勅を賜わって、わが日の本に摩利の教を布(し)こうずる摩利信乃法師と申すものじゃ」──。 圧倒的なキャラクター・摩利信乃法師の神変不思議な法力(ほうりき)に太刀打ちできる者は果たして…。摩利信乃法師の正体は実は行方不明の菅原雅平か? これから対決(?)という一番面白いところで、残念ながら未完(悲)。
→芥川龍之介「地獄変」

十円札  (青空文庫)
掌編。「実はその——貧乏なんです」、「常談(じょうだん)でしょう」──。月給の他に原稿の収入もあるのに、毎週、東京へ遊びに行くため、金欠状態に陥っている英語教師・堀川保吉。成り行きで先輩教官の粟野さんから十円を借りてしまった保吉は、早く金を返して、粟野さんの前に威厳を保ちたいという心理に駆られる…。一枚の十円札のために思い悩む姿が利己的で面白い。楽しい保吉もの。
→芥川龍之介「あばばばば」 →芥川龍之介「文章」

俊寛  (青空文庫)
短編。「有王。おれはこの島に渡って以来、何が嬉しかったか知っているか? それはあのやかましい女房のやつに、毎日小言を云われずとも、暮されるようになった事じゃよ」。鬼界が島(きかいがしま)に流された俊寛のもとを訪れた忠僕の有王は、笹葺(ささぶ)きの家で悠々と暮らす俊寛と再会を果たす。「変わらぬのは御姿ばかりではない。御心もやはり昔のままだ」。都の噂では、一人だけ赦免(しゃめん)が許されなかった俊寛が、遠ざかっていく船に何度も手招ぎをしたというが、果たしてその真相は? 芥川版「俊寛」。
→倉田百三「俊寛」 →菊池寛「俊寛」

(しらみ)』  (青空文庫)
掌編。長州征伐に加わるため、船を走らせる加賀藩の船だが、船の中は虱(しらみ)だらけ。皆が虱取りに精を出す中、森権之進という侍は、「虱に刺された方が、体が温まって、寝付きも良くなり、風邪もひかない。だから虱を飼うべし」という理論を展開し、皆の支持を集める。しかし、井上典蔵という侍は、「森の虱論」に反対し、虱を食べてしまう…。ラストの一文が人間の愚かさを際立たせて効果的。
→横光利一「蝿」

捨児  (青空文庫)
掌編。「おお、これは可愛い子だ。泣くな。泣くな。今日からおれが養ってやるわ」。寺の門前に捨てられていた男の子に、勇之助という名前を付けて、わが子のように育てる浅草・信行寺の住職・田村日錚。「私はこの子の母親でございますが」。五年後、母親だと名乗る女が子供を引き取りにくるが…。母以上の人間、子以上の人間…。ラストの台詞に涙…。親子以上の親子の恩愛を描いた名編。

煙草と悪魔  (青空文庫)
掌編。フランシスコ・ザビエルに仕える宣教師に化けて日本にやって来た悪魔は、日本人を誘惑するまでの暇つぶしに園芸を始める。見知らぬ植物に興味を持った牛商人は、植物の名を当てる賭けを持ち掛けられ、うっかり悪魔の手に乗ってしまう…。「では、あたらなかったら——あなたの体と魂とを、貰いますよ」。煙草が日本に渡来した顛末を描いた喜劇。煙草って悪魔の誘惑だったのね(笑)。



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