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海野十三 (うんの・じゅうざ) 1897〜1949。




生きている腸  (青空文庫)
短編。刑務病院の熊本博士を恐喝して、念願であった人間の腸(はらわた)を手に入れた医学生の吹矢隆二。リンゲル氏液の中で生きる腸を、大気中でも生きられるようにするという実験に成功した彼は、生ける腸を「チコ」と呼んで飼育し始めるが…。「ああ、生きている腸のことだろう。あれはいずれ発表するよ、いひひひ」──。腸との奇妙な同棲生活の顛末(思わぬ誤算)を描いて面白すぎる。傑作。

宇宙女囚第一号  (青空文庫)
掌編。婚約者・絵里子に会うためイー・ペー・エル研究所を訪れた僕だが、研究所長・マカオ博士に結婚を反対された挙句、博士の研究室で奇妙な生物を見せられる。電送写真の原理を応用して、立体の送受信に成功したマカオ博士だが、その発明には致命的な欠点があった…。「博士はこんな大発明をしながら、あまりよろこんでいらっしゃらないのは、どういうわけですか」。突飛さが面白いSF小説。

恐しき通夜  (青空文庫)
短編。航空学に関する実験の合間に、ここだけの話を告白する三人。川波大尉は、戦闘機が空中衝突するに至った三角関係の悲劇の話をし、星宮理学士は、独自の恋愛戦術で人妻と処女をモノにした話をし、大蘆原(おおあしはら)軍医は、中絶を希望する若い女性の話をするが…。「さあ、この野郎。ほざけるなら、ほざいてみろ!」。別々だと思われた三つの話が繋がっていく展開が巧い猟奇小説。

柿色の紙風船  (青空文庫)
短編。痔の治療で肛門に差し込まれた高価なラジウムをまんまと盗み出した私(丸田丸四郎)。捜査の網から逃れるため、わざと刑務所に入った私だが、帆村探偵に探られてしまう。肛門以外の隠し場所を発見し、出所する私だが…。「そうら見ろ。貴様がラジウムの在所を喋らずとも、貴様の身体がハッキリ喋っているではないか」。肛門を「肉ポケット」と表現していて面白い。楽しい完全犯罪もの。

 (青空文庫)
短編。七年ぶりに郷里へ帰って来た高層気象研究所の北鳴(きたなり)四郎。元恋人・お里とその夫・英三に恨みを抱いている失恋者の北鳴は、赤外線映画の実験と称して、避雷針のついた大きな櫓(やぐら)を建てさせるのだが…。「おお、荘厳なる雷よ! さあ、万丈の天空より一瞬のうちに落下して、脳天をうち砕き、脾腹(ひばら)をひき裂け!」。奇抜な殺人計画の思わぬ誤算を描いて面白い。

棺桶の花嫁  (青空文庫)
中編。元教え子の小山ミチミと幸せな同棲生活を送っていた元教師の杜(もり)だが、関東大震災で二人は生き別れになってしまう。焼野原の中、再会した二人だが、ミチミは見知らぬ青年と一緒に暮らしていた。倒壊した建物の下敷きになった人妻のお千を助けた杜は、バラックを建てて、所帯を持つが、何者かにお千は殺害されてしまう…。「ああ僕は、この手でとうとう人を殺してしまったのだ。ああ、もっともっと前に気がつかなけりゃならなかったんだ。そうだ震災になる前に考えて決行しなきゃならなかったんだ。ああもう遅い。とりかえしがつかない」。彼女についての“愕くべき事実”を描いたミステリー。震災の情景が凄まじく、作者の描写力の高さを証明。

奇賊は支払う 烏啼天駆シリーズ1  (青空文庫)
短編。「掏摸(すり)といえども代償を支払うべし」が信条の奇賊・烏啼天駆(うていてんく)から届いた脅迫状。闇成金・苅谷勘一郎の妻・繭子を誘拐するというのだ。探偵・袋猫々(ふくろびょうびょう)は、繭子に変装して、わざと烏啼に誘拐されるが…。「一体どうしたというわけですか。誘拐された先で、どんな目にお遭いなすったんで…」。烏啼が繭子を誘拐した理由が笑えて楽しいユーモア・ミステリー。

キド効果  (青空文庫)
短編。人間の興奮をその種類によって分析することに成功した理学博士・木戸信之は、測定した「興奮曲線」によって、殺人事件の犯人を見事に特定してみせる。さらに木戸博士は、「興奮曲線」の中から新たな曲線を摘出することに成功し、「人間は誰でも精神に異常を来す素質がある」という「キド現象」を発見するが、しかし…。木戸博士の失踪の原因(「キド現象」の意外な真実)を描いて面白い。

恐怖の口笛  (青空文庫)
長編。
頸部を喰い破り、吸血して殺害するという、恐るべき吸血鬼の犯行による連続殺人事件。事件が起きる時に必ず聞こえる恐怖の口笛の謎! 現れたかと思えばまた姿を消してしまう覆面の名探偵・青竜王(せいりゅうおう)の怪行動と、海外に逃亡していた兇賊・痣蟹(あざがに)仙斎が日本に帰って来た目的とは? そして、吸血鬼の正体は一体何者なのか?

「さあこれから久し振りに、生ぬるい赤い血潮をゴクゴクと、お前さんの頸笛(くびぶえ)から吸わせて貰おうよ」

弟を吸血鬼に殺された青年・西一郎や、人気プリマドンナ・赤星ジュリア、ジュリアの妹分・矢走(やばせ)千鳥、キャバレーの主人・オトー・ポントスなど、多彩な登場人物と満載の仕掛けで展開される吸血鬼事件のエピローグは? 理屈抜きで楽しめる軽快ミステリー。

金属人間  (青空文庫)
長編。
金属Qを創造する見込みのつきたる日しるす──。
理学博士・針目左馬太(はりめ・さまた)の邸で、女中のお三根が密室で殺害され、捜査中の刑事二人も知らぬ間に負傷するという奇っ怪な事件は、研究室の大爆発で針目博士が行方不明になったことで、迷宮入りしてしまう。
針目博士が作り出した“金属Q”──生命と思考力を持った生きている金属!──が事件の下手人であると推理した私立探偵・蜂矢十六(はちや・じゅうろく)は、茶釜やマネキンや死体などの中に入り込んで自在に動き回るという得体の知れない“金属Q”を追跡するのだが…。

「ここは、なにをするところだか、きみにわかるかい」
「さあ、ぼくにはわかりませんね」
「わからなければ、教えてあげよう。この機械は、金属人間を製作する機械なんだ。つまりここは、金属人間の製作工場なんだ。どうだ、おどろいたか」
「金属人間の製作工場ですって」

蜂矢探偵、絶体絶命のピンチ! 針目博士と針目博士が対決!? “金属Q”の恐るべき野望とは? 大々奇抜な海野ワールドが炸裂しまくる超絶SFミステリー。

空中墳墓  (青空文庫)
短編。二十年前に無着陸世界一周飛行に出発したまま行方不明になった松風号の機関士・松井田四郎太が何と生きていた。松風号の設計士だった相良十吉の依頼で、松風号失踪の真相を調べる探偵・栗戸利休だが…。松井田と共に松風号に搭乗した操縦士・風間真人はどうなったのか? 天文台の大望遠鏡に映し出された驚きの光景は? 何だか色々とぶっ飛んでいて面白いSFミステリー。

くろがね天狗  (青空文庫)
短編。旗本・国賀帯刀の娘・お妙に失恋し、五年前に失踪した若侍・高松半之丞の行方を捜す岡っ引きの虎松。夜な夜な不可解な辻斬りが頻発し、江戸の住民たちが恐怖する中、お妙の花婿である若侍・千田権四郎が、黒装束の殺人鬼「くろがね天狗」に斬り殺されてしまう…。「くろがね天狗の正体は、そも何者ぞや」──。オーソドックスな捕物帳かと思いきや、そこは海野十三、やってくれます。

軍用鮫  (青空文庫)
短編。大日本帝国と大戦争中である中国軍政府から、軍船撃沈のための新兵器を考案してほしいと依頼された楊(ヤン)博士。外国雑誌「SIN・SEI・NEN」に掲載された小説「軍用鼠」をヒントに、「軍用鮫」なるものを思いついた楊博士は、実戦において、みごとに軍船百七十隻を撃沈してみせるが…。「きゃつも科学のわからんやつじゃ」──。科学者ならでは(?)のオチが楽しいユーモア小説。

幸運の黒子  (青空文庫)
掌編。花街で性病になり、治療代に窮した不運の男・月田半平。「顔の右側に黒子(ほくろ)のある人は幸運」だと聞いた彼は、「幸運の黒子」を持った看護婦・唐崎みどりと出会い、運を掴むが…。「ななな、何が幸運の黒子だ!」──。オチが楽しいショートショート。

国際殺人団の崩壊  (青空文庫)
短編。科学者ばかりを狙った連続虐殺事件。国際殺人団の暗躍を阻止するため、事件を探索することになった椋島技師。科学者の鬼村正彦が出席する会合で、またしても毒ガス事件が発生し、椋島は犯人として逮捕されてしまう…。「今試作した毒瓦斯(ガス)は、直ぐ所長室へ送りこむんだ。そして一時間置きに、気圧計を読むんだぜ」。いつもの何気ない“習慣”が命取りになるというオチが面白い。

殺人の涯  (青空文庫)
掌編。「とうとう女房を殺してしまった」。妻の屍体を指一本残らず溶かしてしまうため、白い液体をかき回す男だが…。「私は、お前を殺したとばかり思っていたよ。お前は生きていて呉れて、こんなに嬉しいことは無い」。殺人の涯(はて)の報いを描いたショートショート。

三角形の恐怖  (青空文庫)
短編。三角形に対する恐怖を抱かせて、強迫観念を加速度的に増大させるという実験を思いついた私(大学生の宗夫)は、駅で偶然見かけた細田弓之助という三十三歳の男を実験台として選ぶ。実験どおり細田は「三角形の恐怖」に陥るが、その恐怖によって心臓麻痺で急死してしまう。自責の念に駆られた私は、先輩の須永助教授に一切を告白するが…。どんでん返しのラストが実にお見事。好編。

地獄街道  (青空文庫)
短編。三人の青年が相次いで犠牲になった「箱詰屍体事件」を調べる探偵の辻永と作家の私(山野)。辻永の探偵眼によって、バーで妖酒を飲んだ者が必然的にビール工場で箱詰めにされてしまう「地獄街道」があることが判明するが…。「この明るい東京の真ン中に、こんな恐ろしい街道があるのだ」。“風が吹けば桶屋が儲かる”式に次々に繋がっていくのが面白い。どんでん返しのラストも楽しい。

地獄の使者  (青空文庫)
長編。
知人の新聞記者・土居菊司から、殺人容疑で拘束された妹・三津子を助けてほしいという依頼を受けた私立探偵・帆村荘六。
被害者である鉱山所有者・旗田鶴彌の邸に駆けつけた帆村は、殺害現場である居間を調べ、「鼠の死骸」と「缶詰の空缶」に非常な興味を持つ…。

「どうも奇々怪々だね。旗田鶴彌を殺したのはピストルの弾丸だというんで、それを中心に調べていたところ、最後に至って、いや死因はピストルで作られたのではなく、心臓麻痺だった——というんでは、たいへんなどんでんがえしじゃないか」。

特異なる殺害方法と、恐ろしき「地獄の使者」は一体? 密室殺人事件に挑む名探偵・帆村荘六の活躍を描いた本格探偵小説。

「玄関の扉」や「鳥籠」の件(くだり)など、ちょっと消化不良の部分も目に付くが、全体的に良くまとまっており、登場人物たちの秘密の情交関係の発覚や、帆村が仕掛ける犯人逮捕のトリックなど、最後まで退屈することなく楽しく読める。チョイ役で登場する帆村の助手・八雲千鳥(ちどり)が作品に彩りを添えている。

十八時の音楽浴  (青空文庫)
短編。“音楽浴”によって人間の脳細胞を刺戟し、国民を画一的にコントロールしている地底国の大統領・ミルキ。姦通事件を起したミルキ夫人と科学者・コハクを容赦なく抹殺したミルキだが、それは女大臣・アサリの策動だった。権力を掌握したアサリは、一日一回だった“音楽浴”を、一時間ごとに実行させるが…。「科学は政治家に征服されてこそ、真の偉力を発揮するのです」。政治家vs科学者! 支配者におけるユートピア、つまり都合のいい“理想的な人間”のあるべき姿とは? とっても風刺的でめちゃ面白いSF小説の快作。

省線電車の射撃手  (青空文庫)
短編。エビスと目黒の間を走る省線電車の車内で、若い女性ばかりを狙った連続射殺事件が発生した。事件を調べる大江山警部だが、捜査は難航してしまう…。銃弾は車内で発射されたのか、それとも、車外から発射されたのか? 被害者が十字架と髑髏(どくろ)のついた標章を持っていたのはなぜか? 執念深い犯人のトリックを暴いていく青年探偵・帆村壮六の活躍を描いた本格ミステリー。

人造人間事件  (青空文庫)
短編。人造人間の研究で有名な竹田博士が就寝中に殺害された。何者かが鋼鉄製の人造人間を動かして、博士を撲殺させたのだ。しかし容疑者には完全なる現場不在証明(アリバイ)があった…。「なにかこう近代科学をうまく利用して、五、六丁はなれたところに住んでいる竹田博士を殺害する手はないものかネ」──。意外な方法による遠隔殺人を描いて面白い。名探偵・帆村壮六ものの好編。

振動魔  (青空文庫)
短編。美しい妻・呉子がいながら、恩人である白石博士の妻・雪子と不倫している社会教育家・柿丘秋郎。妊娠した雪子に、堕胎を拒絶され、恐迫された柿丘は、雪子が全く気のつかないうちに堕胎させてしまう方法──音響振動を利用した方法を思いつき、実行するが…。「どうです、この牧歌的な音色は……」。奇抜きわまるトリックと、どんでん返しの展開が面白い名探偵・帆村荘六ものの一編。

深夜の市長  (青空文庫)
長編。
深夜のT市は、昼間のT市とは全く別個の存在である。しかも極く少数の市民が住み、そしてその少数の人しか知らない不思議な都市である──。
趣味である深夜の散歩を楽しむ僕(司法官の卵である青年・浅間信十郎)は、業平橋近くで怪しい殺人事件の現場に居合わせてしまい、警察に追われる羽目に陥るが、「深夜の市長」と呼ばれる妙な老人に助けられる。
深夜のT市を統制している「深夜の市長」を敬愛している風変わりな科学者・速水輪太郎や、妖艶な年増女・お照らと共に、事件の真相を突き止めていく僕だが…。
T市長・高屋男爵と市議・動坂三郎の対立と、殺人事件との関連は? そして、昼間は所在が知れない「深夜の市長」の正体は?

「この子を生んだあたしはいいがア、この子を生ませたアあなたには、貸しがある、ヨイショコショ、忘れしゃんすなア……」

T市(東京)の市政をめぐる怖ろしい嵐に巻き込まれてしまった主人公の青年の活躍を描いて面白い社会派ミステリー。モガ崩れの美女・マスミの不幸と、太陽が嫌いな女児・絹坊の存在が、社会の裏面の象徴として印象に残る。

西湖の屍人  (青空文庫)
短編。自分は既に死んでいるのではないかという想念にとらわれた青年と出会った私立探偵の帆村だが、銀座裏の袋小路で彼の姿を見失ってしまう。「貴方様は、遂に亡くなられました」。呉王の末裔である青年・漢于仁(かんうじん)は、死後の世界で幻想生活を送るのだが…。中国の情勢に絡んだ事件を解決する探偵・帆村壮六の活躍を描いた探偵小説。ボラギノールって昔からあるんだね(笑)。

赤外線男  (青空文庫)
中編。理学士・深山楢彦が開発した「赤外線テレヴィジョン装置」によって、人間の肉眼では見えない「赤外線男」の存在が明らかになった。赤外線男の犯行と思われる事件が頻発する中、深山の研究室が襲撃され、捜査関係者が相次いで殺害されてしまう。赤外線男は深山の創作だと考えていた探偵・帆村荘六だが、深山も殺害されてしまったため、赤外線男の存在を肯定せざるを得なくなる…。「赤外線男!」、「ああ、あいつの仕業だ」。赤外線男の正体が暴かれるラスト(帆村探偵が仕掛けるトリック)が面白い。傑作ミステリー。

赤耀館事件の真相  (青空文庫)
短編。東京の郊外にある洋館「赤耀館」の主人・松木亮二郎が語る「赤耀館事件」の真相とは?──赤耀館の当主であった丈太郎(亮二郎の兄)の恋敵であった笛吹川画伯が変死した。さらに、丈太郎と妻・綾子も相次いで変死してしまう。湿度やX線などを分析して、事件の真相を突き止める私立探偵・赤星五郎だが…。犯人や登場人物たちの意外な正体が判明する二転三転の結末がめちゃ面白い。



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