このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

お気に入り読書WEB
あ行 か行 さ行 た行 な行 は行 ま行 や・ら・わ行 イラストでんしゃ図鑑 HOME


海野十三 (うんの・じゅうざ) 1897〜1949。




一九五〇年の殺人  (青空文庫)
掌編。バラバラ殺人事件を捜査する捜査課長だが…。「バラバラ屍体も二、三十分のうちに、元のピンピンした身体に縫いあげられる世の中では、殺人罪が流行りすぎてイカン」──。医療技術が極端に進歩してしまった時代の殺人事件を描いて面白いユーモア小説。

千年後の世界  (青空文庫)
掌編。冷凍睡眠の技術で、一千年後の世界に覚醒した科学者・フルハタ。出迎えてくれた若い女性・チタ教授の年齢が、九百三歳だと知り驚くが…。「あなたも古いだけあって頭脳がわるいのね」──。不老不死を実現させた人類の皮肉(自惚れ)を描いたSF小説。

大脳手術  (青空文庫)
短編。恋人の珠子の勧めで、自分の美しい両脚を売却してしまい、その代わりに安価な脚を移植した私。その美しい脚を珠子が買い取り、愛する別の男に捧げたと知った私は、脳以外の体の部位を全部売り飛ばしながら、その男の行方を探すが…。「貴様だな、俺の両脚から始めて両腕、臓器、顔などと皆買い集めてしまったのは…」。その男の意外な正体は? 人間の狂気を描いてオモシロ怖い。

断層顔  (青空文庫)
短編。科学技術が進歩した近未来(昭和五十二年)を舞台とした探偵小説。火星探検に出発したロケット流星号の危機を救い、英雄となった探検隊員・碇曳治と結婚した谷間シズカだが、断層のある醜い顔の男につけ狙われる。依頼を受けた老探偵・帆村荘六は、碇が二人いた流星号の密航者のうちの一人だったことを突き止めるが…。火星探検成功の裏で起きていた事件の真相を描いて面白い。
→海野十三「宇宙女囚第一号」

地球発狂事件  (青空文庫)
長編。
大西洋上にいた大型船が遠方の高い山の頂上まで吹き飛ばされるという奇怪極まる大事件が発生した。この事件の発見者であるアイスランドの記者・ハリ・ドレゴや、彼の親友である記者・水戸宗一、原子エネルギーの権威であるワーナー博士たちは、巨船を吹き飛ばすほどの怪力源がどこにあるのかを突き止めるため、調査船で大西洋を調べるが、護衛艦が爆発するという第二の怪事件が起きてしまう。
命がけの海底調査に乗り出したワーナー博士たちだが、海底に城塞を築いた地球外高等生物たちに襲撃されてしまう…。有史以来の危機に直面した地球人類のとるべき道は? 武力行使か? 平和的解決か?

「一体これからどうなるんだ、われわれ人間さまは……」
「ビフテキ——いや人間テキにされちまって彼等にぱくつかれらあな」

広大なる宇宙の中に真に渺(びょう)たる存在であるわが地球、その地球に棲む人類たちが、互いに反目したってそこに何の益があろうか──。軽快で楽しいSF冒険小説だが、非常に優れた反戦小説でもある。

地球を狙う者  (青空文庫)
短編。南洋の孤島・花陵島にある地震観測所に赴任した僕(理学士・大隅圭造)は、火星研究で有名な轟博士から、海底地震と火星との関連や、巨大な原動力を支配しているという火星の生物についての話を聞くが…。「ぼ、僕は、博士を撃ってしまった!」、「いいわ。だって正当防衛ですもの」。轟博士のメモに書かれた戦慄の内容は? 島で発生したバラバラ殺人の真相を描いたSFサスペンス。

千早館の迷路  (青空文庫)
短編。キャバレーの女・田鶴子と関わり、失踪した青年・田川勇を捜す探偵・帆村荘六は、田川の恋人・カズ子と一緒に、田鶴子が行った「千早館」へ向かう。雪山で遭難して死亡した子爵・古神行基が設計した、奇妙な形をした洋館「千早館」。迷路のような構造の建物の中に潜入する二人だが…。水銀灯の照明と殺人回転刀の恐怖! 在原業平の句に隠された謎! 手に汗握るホラー・ミステリー。

電気看板の神経  (青空文庫)
短編。カフェ・ネオンの女給たちが次々に惨殺される連続殺人事件が発生した。殺害トリック(高圧電気による感電死)を見抜いた警視庁は、電気商の若主人・岩田京四郎を検挙するが、電気恐怖症の男・岡安巳太郎も絡んで…。「あの電気看板は、早く壊してしまうがいいぞ。あの電気看板には神経があって、人間の殺されるのが判っていたのだ」。敵(かたき)同士の不思議な共軛関係が面白い。

透明猫  (青空文庫)
短編。草むらで透明猫を拾った少年の青二は、猫を家に連れて帰るが、彼の身体は次第に透けていってしまう。悲嘆して家出した青二は、知り合いになった青年の六さんに透明猫のことを話す。六さんは猫を見世物にして大儲けするが…。ユーモア・パニック小説。

時計屋敷の秘密  (青空文庫)
短編。長い間、空き家になっていた時計屋敷で、村人たちが行方不明になるという怪事件が起きた。幽霊屋敷と怖がられている時計屋敷の秘密をさぐるため、少年探偵団を結成した小学生・八木音松たち五人だが、時計屋敷の中はカラクリ仕掛けだらけの危険極まりないところだった…。時計屋敷がこの場所に建てられた理由と、怪囚人の正体は? 少年たちの活躍を描いたホラー&アドベンチャー。

特許多腕人間方式  (青空文庫)
短編。機械的な腕を取り付けて、人間の腕を三本にする画期的な大発明をしたという依頼人の田方から、特許出願を頼まれた弁理士の加古だが…。もう一本の腕をどこに取り付けるかについて、百円紙幣(なぜか女性)と問答する件(くだり)が楽しい。ユーモア小説。
→太宰治「貨幣」

仲々死なぬ彼奴  (青空文庫)
短編。世話になった金満家の大熊老人を亡くし、悲嘆にくれる薬学家の喜助は、水に反応して爆発する金属ソジウムを利用して自殺しようと決心する。葬式に使う花筒に細工を施すが、なかなか爆発してくれず…。カタストロフィーなドンデン返しのオチが何とも凄い。

人間灰  (青空文庫)
短編。空気工場の雇人たちが、強い西風が吹く日ばかりに、次々と失踪するという怪事件。そして、工場主・赤沢金弥の妻・珠江が七人目の犠牲者に…。「話によると、どうやら犠牲者の屍体を粉々に砕いて、気球の上から撒くいう仮定を考えているようじゃったが、一体そんなことは出来るのかしら?」。容疑者として捕まった血まみれの怪漢の意外(?)な正体と、“人間灰事件”の真相を描いて面白い。

ネオン横丁殺人事件  (青空文庫)
短編。新宿・ネオン横丁にあるカフェの主人・虫尾兵作が天井裏の節穴から狙い射たれて殺害された。ネオンサインの看板屋・大久保一平が犯人だと推理した探偵・帆村荘六だが、彼には鉄壁のアリバイがあった…。江戸川乱歩「屋根裏の散歩者」へのオマージュ。

脳の中の麗人  (青空文庫)
短編。黒木博士による大脳移植手術を受け、退院した宮川宇多郎は、怪しい青年・矢部に尾行される。矢部は大金ほしさに脳髄の一部を宮川に提供した人物であった。記憶にない自分の日記の中に登場する女性Yに惚れた宮川は、矢部の恋人・美枝子がYであると確信するが…。「博士、あの矢部君の残りの脳を買いとって、私のここに入れてください」。脳移植の功罪をコミカルに描いて面白い。

 (青空文庫)
短編。蠅(はえ)を題材にしたショートショート集。全7話。特に「第3話」と「第7話」が優れている。
「第三話 動かぬ蠅」……新築の邸宅と美しい新妻を手に入れた秘密映画観賞会の会員・目賀野千吉は、あらゆる角度から妻の味を堪能するが、やがて倦怠期を迎えてしまう。刺戟を求めて、久し振りに秘密映画を見に行く彼だが…。天井の蠅にはご注意を(笑)。
「第七話 蠅に喰われる」……新薬「生長液」と「縮小液」を手に入れた私。実験で蠅に「生長液」を垂らしてみるが、際限なく蠅が巨大化していく事態に陥ってしまう。蠅を叩き殺すため、「生長液」を飲んで巨大化する私だが…。「ぎゃーッ」。皮肉なラストが面白い。

蠅男  (青空文庫)
長編。
背丈はおよそ八尺もありながら、密室の中を煙のように自由に出入りする!?稀代の怪人「蠅男」──その恐るべき殺人魔の正体は?

大阪・帝塚山の奇人・鴨下ドクトルの邸で身元不明の焼死体が発見されたのに続き、天下茶屋の富豪・玉屋総一郎が、警官隊による厳重な警戒にもかかわらず、自邸で殺害されてしまう。どちらの事件も、蠅男からの脅迫状のとおりに実行されたものだった。そして、事件を捜査する青年探偵・帆村荘六のもとにも遂に蠅男からの脅迫状が!

「うむ、今はじめて見たんだが、あれこそ蠅男に違いない」
「ええッ、蠅男! あれがそうだすか」
「残念ながら一杯うまく嵌(は)められた。まるで、ジゴマのように奸智(かんち)にたけた奴…」

オート三輪でのユーモラスな追跡の様子や、蠅男との手に汗握る格闘場面…、玉屋総一郎の娘・糸子とのロマンス…。

「よオし、こうなれば、誰が死のうとこっちが殺されようと、一直線に蠅男の懐にとびこんでみせるぞ」

鴨下ドクトルの日記に書かれた愕くべき秘密と、蠅男の恐ろしき犯行動機は?

「なんだ、その貴様の左腕は何処へ置き忘れて来たのだッ」
「呀(あ)ッ、こいつを知られたかッ」

奇想天外なる海野ワールドを堪能。怪奇探偵小説の快作。こんなに面白くて嬉しくなっちゃう。やったね。

爆薬の花籠  (青空文庫)
長編。
「あたしのお父さま、お母さま。日本へかえったら、こんどこそ、めぐりあえるでしょうね」。
メキシコから横浜へ帰朝する曲馬団のメンバー(孤児の房枝や乱暴者のトラ十など)を乗せた汽船・雷洋丸が爆発し、沈没してしまう。花籠の中に仕掛けられた爆薬を何者かが爆発させたのだ。
ある重要任務を帯びた名探偵・帆村荘六も爆沈事件に巻き込まれるが、命からがら日本に辿り着く。生き残った房枝たちは、東京で興行を打つが、またしても爆破事件が起きてしまう…。

「ああ、房枝さん。僕たちはとんでもない怪事件の中に、まきこまれてしまいましたよ」。

花の慰問隊を結成して、東京中の工場に花籠を配るターネフ師父と姪のニーナ嬢の恐るべき正体は?
秘密結社「世界骸骨化クラブ」が企む荒唐無稽な陰謀だけでなく、まだ見ぬ両親と房枝のめぐり合いというハートウォーミングな要素を絡めたところが高得点! 壮大なスケールのサスペンス・ストーリー。

爬虫館事件  (青空文庫)
短編。行方不明になった動物園の園長・河内武太夫の捜索を依頼された私立探偵・帆村荘六。最後に園長を目撃した人物である爬虫館の研究員・鴨田兎三夫(とみお)を疑う帆村は、バラバラにした死体を大蛇に食わせて処理したのではないかと推理するが、蛇は死んでいるものは食べないと知り、落胆する…。大きなタンクの驚くべき秘密と、犯人の殺害動機は? 完成度の高い本格推理。傑作。

一坪館  (青空文庫)
短編。「さあ、ここで、ぼくはすばらしい仕事を始めるんだ」。戦争で焼野原となった銀座の一角に、土地一坪を譲り受けた少年・飛島源一は、花屋を始めるが思うようにいかない。青年の犬山画伯が描いてくれた看板のお蔭で客が来るようになるが、銀座が復興していく中、テントのままの源一の店は廃れてしまう…。様々な人々との出会いによって夢が膨らんでいく少年の姿を描いて素晴らしい。

ヒルミ夫人の冷蔵鞄  (青空文庫)
短編。画期的な整形外科技術を開発した医学博士のヒルミ夫人は、五つ年下の美男子・万吉郎と結婚する。実は万吉郎は、ヒルミ夫人に顔を修整されてしまった不良少年・モニカの千太郎であった。万吉郎を狂愛するヒルミ夫人と、彼女から逃げ出したい万吉郎。万吉郎が本物の彼であるかどうかという疑惑に囚われたヒルミ夫人は、ある考えを実行するが…。医術の進歩の功罪を描いて面白い。

不思議なる空間断層  (青空文庫)
短編。大きな鏡のある風変わりな部屋で、かつて愛人だった女をピストルで射殺してしまうという夢を見た乃公(おれ=友枝八郎)。再び同じ夢を見た乃公は、やはり女を射殺してしまうが、女は愛人ではなく、友人の細君であった。夢の中で刑務所に入れられてしまった乃公だが…。「そうだ、そうだ。私はやっぱり夢を見ているのだ」──。夢の中で起きた殺人事件の真相(トリック)を描いて面白い。

麻雀殺人事件  (青空文庫)
短編。雀荘で麻雀をしていた慶応ボーイ・松山虎夫が何者かに毒殺された。隣の卓子にいた名探偵・帆村壮六は、犯行方法を解明するが、犯人を特定できず、事件は迷宮入りしてしまう…。松山の麻雀仲間の三人(助教授の星尾信一郎、松山の援助を受けていた川丘みどり、美少年の園部壽一)のうち、犯人は誰だ? 証拠物件である脱脂綿が、容疑者たちの間を複雑に行き来する様子が面白い。

見えざる敵  (青空文庫)
短編。新聞社の社長・ウルランド(実はギャングの首領・ウルスキー)は、楊(ヤン)博士が発明した「消身法」の実験装置を奪おうとするが失敗。楊博士から聞き出した「珍しい毛」を特ダネとして新聞にすっぱ抜こうとするが…。楊博士の“復讐”が楽しいユーモア小説。

密林荘事件  (青空文庫)
掌編。親友の熊井を連れて山荘「密林荘」へやって来た青年の柴谷。二人は別々の場所で釣りを楽しみ、柴谷が山荘へ戻ると、既に熊井は青酸加里を飲んで自殺していたという。旗田警部は柴谷の陳述に矛盾があることを見抜く…。クイズ形式による楽しい推理小説。

什器破壊業事件(ものをこわすのがしょうばいじけん)』  (青空文庫)
短編。青年探偵・帆村荘六に頼まれて、ある鉱山成金の男の家に小間使として潜入した女探偵・風間光枝。「コーヒー茶碗とか、花瓶とか、灰皿とか、スタンドとか、そういったものを、あれっとか、あらっとかいいながら、じゃんじゃん下に墜(お)として壊してください」。理由が分からないまま、帆村の命令どおりに、大花瓶を壊してしまう光枝だが…。帆村と光枝のやりとりが楽しいユーモア・ミステリー。

遊星移民説  (青空文庫)
掌編。許婚がいる美貌の女性記者。三十八階(屋上)にあるゴーゴンゾラ博士の研究室を取材のため訪れた彼女だが…。地球に愛想をつかした人々が他の遊星に移住する「遊星移民説」の話をする博士…。「此の窓から、外を覗いて御覧」、「もしや」。オチが楽しい。

夜泣き鉄骨  (青空文庫)
短編。第九工場の巨大なクレーンが、真夜中にキィーッと音を立てて泣く──そんな噂を耳にしたわし(工場の組長)は、化け物の正体を確かめるため、職工たちを集めて工場の中を調べるが…。「ク、クレーンが…」、「ひえーッ」。電気なしで動くクレーンの謎と、熔融炉に飛び込んで自殺した組長の妾・おせいとの関連は? 怨霊の仕業だと思われた事件の意外な真相を描いたホラー・サスペンス。



このページのトップへ      HOME





お気に入り読書WEB   Copyright (C) tugukoma. All Rights Reserved.   イラストでんしゃ図鑑


このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください