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国枝史郎 (くにえだ・しろう) 1887〜1943。




赤格子九郎右衛門の娘  (青空文庫)
短編。父・九郎右衛門(海賊・赤格子)を獄門に掛けた志摩卜翁(元・大阪町奉行)に復讐するため、敢えて卜翁の愛妾となったお菊(盗賊の頭領)。お菊の正体を知った小間使い・お袖の殺害を命じられた手下の忠蔵だが…。「変心しないその証拠に今夜お袖をしとめておしまい!」、「え! 罪もねえ妹を」。忠蔵とお袖の因果な身の上と悲しすぎる運命…。長編で読みたいと思わせる内容。どんでん返しのラストも楽しめる一級の時代小説。海賊・赤格子九郎右衛門つながりで、国枝史郎「名人地獄」、岡本綺堂「心中浪華の春雨」も。

怪しの者  (青空文庫)
短編。乞食に身をやつし、隠密活動をしている尾張藩士・旗頼母(はた・たのも)と、職人風の男に身をやつし、江戸からやって来た隠密・鶴吉との対決! 「汝(おのれ)この場で消えてなくなれ」、「ナ、なんだと?」、「汝(おのれ)に生きていられては都合が悪いと言っているのだ」──。江戸幕府(八代将軍・吉宗)に対して反感を抱いている尾張家・徳川宗春の秘密の企てとは? やはり徳川宗春が登場する中編「天主閣の音」も読むべし。

怪しの館  (青空文庫)
短編。何やら誘拐を企てている謎の浪人・花垣志津馬…、何やら妻の呪縛にもがき苦しんでいる財産家・三蔵琢磨…。琢磨の娘・葉末を助けた剣客・結城旗二郎は、すっかり琢磨に気に入られ、屋敷に泊まることに…。「どっちみち怪しい屋敷らしい。思い切って様子を探ってみよう。一室に籠もって酒を飲んで、事件の起こって来るやつを、待っているのは消極的だ。こっちからあべこべに出かけて行き、屋敷の秘密を探ってやろう」。事件の原因となった「四ヵ条」の内容とは? 期待を持たせた謎めいた展開が楽しい。プラトニック・ラヴ・ストーリー!?

犬神娘  (青空文庫)
短編。幕府の捕吏から逃れるため、薩摩の西郷隆盛らと共に京都を脱出した勤王討幕の志士・月照(清水寺成就院の住職)。何とか無事に福岡までやって来た月照だが、犬神(いぬがみ)の娘・お綱の法力によって、犬神の屋敷に監禁されてしまう…。「でも犬神もこんなご時勢には、ご祈祷ばかりしていたんでは食えないのさ…。犬の字通り隠密(いぬ)にだってなるのさ。…取っ付きとさえ云われている犬神、こいつが隠密(いぬ)になったひにゃア、どんな獲物だって逃がしっこはないよ」──。犬神の祈祷所での恐ろしい光景! 犬神の娘の狂気じみた恋と、西郷と入水するに至る月照の運命を描いた幕末もの時代小説。

鸚鵡蔵代首伝説  (青空文庫)
短編。旧家・納谷家に嫁した姉・お篠に会いに来た少年・菊弥だが、「代首(かえくび)」と呼ばれる生首の人形を洗っている妖怪じみたお篠の姿を見て、肝を潰す。病気養生のため長旅に出たという納谷家の主人・雄之進…。返辞を返してくる怪体(けったい)な土蔵「鸚鵡(おうむ)蔵」の不思議、お供えが消えてなくなる「飯食い地蔵」の謎の正体は? 「首がない! 妾(わたし)の首がない! 男ばかりの首の中に、たった一つだけある女の代首! それが妾に似ているところから、旦那様が、お篠、これはお前の首じゃと云われ、日頃いっそう大切にお扱い下された首! その首がないのじゃ!」。古い伝統を持った旧家の秘密を描いたホラー・ミステリー。

大鵬のゆくえ  (青空文庫)
中編。
「吉備彦の素敵もない財宝は六歌仙の絵巻に隠されている。絵巻の謎を解いた者こそ巨富を得ることが出来るだろう」──。
六歌仙の絵巻にまつわる伝説の顛末と、奇怪な巨大な鳥・大鵬(おおとり)の行方を巡る騒動を軽快なタッチで描いたエンターテイメント時代小説。
鷹狩の最中、大御所・徳川家斉を激怒させた一羽の化鳥・大鵬を、見事、吹矢で射た貧乏旗本・藪紋太郎。
「…邸を見張ろうか? 駕籠を尾行(つけ)ようか? どうもこいつは困ったぞ。…えい思い切って駕籠を尾行(つけ)てやれ!」。
画家・谷文晁(ぶんちょう)の邸から出立した怪しい駕籠を、好奇心から尾行する紋太郎だが…。果たして重そうな荷物の中身は大鵬の死骸?
六歌仙の絵巻を盗み集める「貧乏神」と名乗る奇怪な老人と、美しい小間使い・お菊の意外なる正体は?
「おおあなたは貧乏神様で?」
「さようさようその貧乏神じゃ。ふむふむ、景気がよいそうな。それは何より重畳(ちょうじょう)重畳。みんな私のお陰じゃぞよ」。
貧乏神のお蔭(?)で出世していく紋太郎の姿や、谷文晁の邸に集結した「百鬼夜行」の秘密、欲心をあざ笑うようなラストなど、意外性に富んだストーリーが底抜けに面白い。

大捕物仙人壺  (青空文庫)
中編。
若旦那に見初められ、日本橋の酒屋「伊丹屋」の養女となった女軽業師のお錦(きん)。
「これをお前に遣ることにする。大事にしまっておくがいい。そうして俺が死んだ後で、窃(こっそ)りひらいて見るがいい。お前を幸福(しあわせ)にしようからな」。
見知らぬ老人「爺つあん」から謎の手箱をもらったお錦だが、香具師(やし)の親方「釜無(かまなし)の文(ぶん)」に捕まってしまい、お錦から手箱を預かった清元の名人・小堀義哉(よしや)も、勤王派の浪士たちに捕まってしまう…。
「この壺には世にも怪しい、一つの伝説がまつわって居ります。よろしければお話し致しましょう」──。
「仙人壺」を巡る騒動を幕末の騒乱の中に描いた時代小説。お錦の出生の秘密や勝海舟の活躍など盛り沢山の内容で楽しい。

十二神貝十郎手柄話  (青空文庫)
連作長編。
与力・十二神(オチフルイ)貝十郎の活躍を描いた捕物帳。「館林様」こと遊侠・松平冬次郎や、六人の盗賊たちを絡ませながら描く。独立した五つのエピソードで構成。妖艶な盗賊・女勘介にMIP賞(Most Impressive Player)をあげたい(笑)。

「第1話・ままごと狂女」……恋人・お品が松本伊豆守の妾にされたと知った旗本の次男・新八郎。果たしてお品は、賄賂政治で悪名高い老中・田沼主殿頭(とのものかみ)の「ままごと」の音物にされてしまうのか?

「第2話・現妖鏡」……真夜中になると急に胸の痛みに襲われる奇病に取りつかれた柏屋の娘・お島。叔父・勘三の企みと、小間使い・お菊、祈祷師・大日坊の正体は?

「第3話・海外の歌」……妖艶な女・お蝶と出会った塩屋の倅・京一郎。海の歌を途中まで歌うお蝶。歌の続きが分かれば大金が得られるという。京一郎の父・嘉右衛門が歌の続きを知っているというが…。

「第4話・木曽の旧家」……誘拐されそうになった旧家の娘・お三保を助けた与力・貝十郎は、征矢野(そやの)家の秘密を知る…。お三保の恋人(?)・鏡太郎と謎の女・お豊の二人の関係と企みは?

「第5話・妖説八人芸」……名古屋にやって来た「館林様」こと遊侠・松平冬次郎が、浪人たちを集めて何やら大事を起こそうとしていると知った与力・貝十郎。「館林様」に計画を諦めさせる意表の方法は?

仇討姉妹笠  (青空文庫)
長編。
廻すと隠語(かくしことば)が現われる不思議な独楽(こま)を手に入れた美貌の青年武士・山岸主税(ちから)だが、そのために怪しの浪人・飛田林覚兵衛の一味に命を狙われてしまう。

「…ほんの妾(わたし)の悪戯(いたずら)心から、差しあげた独楽が原因となって、こんな恐ろしいことになるなんて」。

主家(田安家)で起った盗難事件の内通者が、恋人・お八重だったことにショックを受ける主税。腰元・お八重の素性と、二人の恋の行方は?

「八重は死にます! …殺して下さりませ! …八重は盗人でござります! …深い事情がありまして…あるお方に頼まれまして…お館の数々のお宝物を、盗んだに相違ござりませぬ」。

曲独楽使い・浪速あやめと女猿廻し・お葉──双子の姉妹(きょうだい)が抱く怨恨(うらみ)! 豪商・淀屋が遺した巨財の隠し場所を探る悪家老・松浦頼母! 悪漢毒婦である主馬之進(頼母の弟)と松女(姉妹の母)の意外な事の真相!

「淀屋の独楽を巡って、幾十人の者が長の年月、悲劇や喜劇を起こしたことか。…でも、いよいよ淀屋の独楽が、一所に集まる時期が来た」──。

三個(みっつ)の独楽を巡る因果応報に巻き込まれた青年武士の活躍を描いた大衆娯楽時代小説。多彩な登場人物たちを活かしきれていない部分もあるが、何度も生き返る三下悪党・勘兵衛や、主税を助けるお葉の飼猿・藤八の活躍など、軽くて、読みやすくて、面白い。

弓道中祖伝  (青空文庫)
短編。「宿をお求めではござらぬかな、もし宿をお求めなら、よい宿をお世話いたしましょう」。応仁の乱ですっかり荒廃した京都にやって来た遊歴の若武士・日置正次(へき・まさつぐ)。老人にすすめられるままに、荒れ果てた館を訪れるが…。「これはどうやら無住の館らしい。とするとどうしてあの老人は、こんな所を世話したのであろう?」。弓術「日置流」の創始者・日置弾正正次を描いた作品。引き続いて「日置流系図」を読むといいかも。

戯作者  (青空文庫)
掌編。「こいつアどうも驚いたな。いや実に甘(うま)いものだ。この力強い文章はどうだ。まず一流という所だろう。……三十年五十年経った後には山東京伝という俺の名なんか口にする者さえなくなるだろう。……これこそ本当に天成(うまれながら)の戯作者とでもいうのであろう」──。戯作者・山東京伝に弟子入りした曲亭(滝沢)馬琴は、京伝の代作がヒットし、一躍、第一人者となる。いよいよ「八犬伝」を書き始める馬琴だが、にわかに行き詰まってしまう…。面白キャラの十返舎一九も登場! 名作「南総里見八犬伝」の誕生秘話を描いた作品。 →邦枝完二「曲亭馬琴」 →芥川龍之介「戯作三昧」

甲州鎮撫隊  (青空文庫)
短編。病気(肺病)のため、甲州鎮撫隊(新選組)に参加できず、江戸で静養している隊士・沖田総司。浪人の斬り合いに巻き込まれた女・お力を匿(かくま)ってやった総司は、彼女の介抱を受けるが…。「妾(わたし)を何う覚召して?」、「親切な人とは思うが…何んとなく怖い!…それにわしにはお千代というものがあるのだから…」。近藤勇の命でやむなく別れた恋人・お千代への未練…。本能そのもののような女・お力の意外なる正体は? 幕府の崩壊を背景に、沖田総司の最期を、彼を巡る二人の女性の姿を通して鮮やかに描いた時代小説の秀作。

郷介法師  (青空文庫)
短編。秀吉や五右衛門も一目を置くほどの盗賊・磔(はりつけ)柱の郷介。気味の悪い磔柱を使って、相手を不安と恐怖に陥れ、金品をせしめる郷介の手口。なぜ彼は、磔柱を威嚇の道具として使うのか? それは過去のある出来事に起因していた…。「案じた通りだ。…俺は親殺しだ。…恐ろしい運命。…」──。山本勘助を彷彿とさせる郷介の知謀ぶりが見事に面白い。長編でも充分いけそうな題材だ。「世間で何が恐ろしいかと云って、我無洒羅(がむしゃら)な奴ほど恐ろしいものはない」。 →菊池寛「謀略」

紅白縮緬組  (青空文庫)
掌編。白縮緬(しろちりめん)で覆面をした怪しい十人の武士──。深夜に町家へ押し入り、押し借りする白縮緬組の御殿女中の正体と、そんな白縮緬組を懲らしめる紅縮緬組の杜鵑之介(ほととぎすのすけ)の正体は? 「お犬様を畜生とは吠(ほざ)いたりな!」、「畜生で悪くば獣といおうぞ」──。元禄時代の江戸を舞台に、吉原の遊女・浦里を身請けする豪商・奈良屋茂左衛門の話を絡めながら描く。短すぎるのが勿体ない。

猿ヶ京片耳伝説  (青空文庫)
短編。耳の痛みに耐え切れなくなった松乃は、猿ヶ京の温泉宿・桔梗屋で一泊することに。「こんな気の毒な男があるのですよ」。女の身勝手な過失が原因で、片耳を切り取られてしまい、その後、大泥棒「三国峠の権」になってしまった男の話を、湯治客から聞いた桔梗屋の娘・お蘭。明るく心の綺麗な美少女・お蘭が入る湯殿に、突如現われた男の正体は? 「あたし客商売の温泉宿(ゆやど)の娘でしょう。ですから、悪い人かいい人か、贋物か本物かってこと一眼見ればわかるわ」、「なるほどなア、それで俺(おい)らを…」、「いい人だと睨んだのよ。だってそうでしょう、女と一緒にお風呂にはいるの恥ずかしがったり、顔見られるの恥ずかしがって、頬冠り取らなかったりするあなたですものね。恥ずかしがり屋に悪人ってものないわ」──。救いを描いた感動作。



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