◆台峰への道中┃北鎌倉…台峰 |
大船から横須賀線だとわずか3分で着いてしまう小さな駅、北鎌倉。これだけ近い距離にある割には、商業の盛んな大船に対して、北鎌倉のなんと閑散としていることか。しかし、この静かな空間こそが「鎌倉らしさ」というのかもしれない。
円覚寺とは反対側の出口を降りる。今回は学校の「町並み研究会」として、台峰と呼ばれる緑地をたずねることにした。台峰については後述するが、現在すでにここの住宅地化工事が進行しており、近隣の人々の反対運動もむなしく、まさに風前の灯といった状況にたたされている。
駅前でお茶を購入し、狭い路地を山のほうへと進む。あまりに狭いので、私道のようで入りづらい。しかしどこの町でもそうだが、メインストリートから一歩路地裏へ入ってみると、その町の顔、すなわち住んでいる人々の生活の様子や町並みなどが観察できて、面白いものである。
このあたりでは宅地開発があちこちで進んでいるが、その割に道幅が狭く、車も歩行者も危険である。道路拡張が進まないのは、川と民家にはさまれているためのようである。川といっても小川であるが、今のところ3面コンクリート化されてはいないようで安心した。川岸にはユキノシタやナズナなどの植物が育っていた。
沿道には曲がりくねったあぜ道のある田んぼが残っていた。「ここは鎌倉最後の田んぼかもしれない」という小宮先生の言葉にむなしさを感じる。また、完全に舗装されていないところにはすみれが、少しわき道に入ったところではらっぱ水仙などが植えられていた。もう少し歩くとN建設の看板が見えてきた。ここが台峰の入り口である。
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▲横須賀線・北鎌倉駅
▲道端に咲いていたすみれ
▲台峰の宅地化計画
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◆春の台峰を歩く┃台峰散策 |
山道をいくらか登り右に曲がると、急に視界がひらけて北鎌倉の町並みが眼下に広がる。手前には六国見山がそびえ、そのふもとには円覚寺が臨める。このような小高い山は都市近郊では次々に開発されて、開発前の面影を無くしてしまっている。こうした昔の面影を今に色濃く残している点でも、台峰の自然は守られるべきだと思う。
そこでしばし休憩をとった後、山道を降りていった。こんな山の中にも昔田んぼだったところが荒地となって残っていた。しばらく歩くと池が見えてきた。この池は谷戸池といって、農業用に造られた人工の池である。今ではコイなどが暮らす静かな池となっている。みんなで池のふちに近づいたとき、先輩が水辺の泥に足を取られてしまっていたので、水辺では足元に気をつけるというべしという教訓を得る。ここにはカワセミも生息しているらしい。
葦の生い茂る中を進み、左折すると、そこには野原が広がっていて、その脇を静かに小川が流れていた。この小川には珍しいことに、ミドリシジミというシジミが生息しているのだ。普通は海辺に住んでいるものなので、こんな鎌倉の山の中に住んでいるとは正直驚いた。砂を掘ってみると大量に見つかる。これは幸いにもアメリカザリガニが生息していないためだそうで、もしザリガニが入ってきたらここの生態系はすぐに崩れてしまうだろう。
ちなみに案内板によると、谷戸池やこの小川は宅地化後も残るらしいので、少し安心した。しかし果たして、自然味豊かなこの小川もコンクリート舗装されてしまうのか、心配である。
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▲鎌倉一の山、六国見山
▲台峰の谷戸池
▲シジミのいる小川
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- 今回の経路 -
北鎌倉…台峰…山崎バス停=(江ノ電バス)=大船 |