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- 25時の街 -
(2004年10月11日)

【24時】 文明社会の弊害

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気がつくと電車はすでに運転をやめていた。夜の車内に一人取り残された僕は、なんだかわけがわからないままに辺りを見回す。頭が重く、車内の蛍光灯が妙にまぶしい。

ここは横浜駅なのか。ぼんやりとした頭を150度くらい回転させて、ホームに書かれた駅名を確かめる。


——「おだわら」




コトの起こりはこうだ。前日に東京であった卓球の試合。その後の打ち上げが品川で行われ、「試合における喜びや悔しさを分かち合う」と称してムダに飲まされ、すっかり出来上がってしまった僕。分かち合える喜びがなかった僕としては飲む事で仲間に入るしかなかったのである。(もちろん、そんな寂しい話は冗談だが)

そんな中でも思考回路だけはしっかりしている。すなわち、今夜は千葉ではなく、実家のある横浜に帰るのだということは覚えていたのである。そんなわけで、品川でみなと別れ、東海道線下り電車に乗り込む。その辺、酔っても電車を間違えたりしないのが自分の売りなのだ。

しかしこの辺りから先ほどの酒が徐々に思考回路を侵し始めた。まばらな乗客の中、座席を見つけて座り込み、そのまま夢の中へ。まるでトイレの水を流すような急激で、かつスムーズな意識の移行だ。あれほど急激な意識の低下はこれまでで初めてかもしれない。

——まったく、便利な世の中になったものだ。東海道と言えば昔は15日間もかけて京都まで歩いていったわけだが、今では2時間で行けてしまう行程である。ましてや小田原など東京の庭のようなものだ。だから行きたくなったら深夜でもぱっと出かけることができる。行きたくなくてもまた然り。



そんなわけで、僕は今小田原にいる。もはや上り電車などない。便利になりすぎた世の中の弊害がこんなところに表れるとは・・・。まさに現代文明の犠牲者と言えよう。

駅構内をぶらぶらしているうちに時計の針が1時を回る。もはや徹夜は覚悟している。駅自体は夜でも明るいままだが、すこしは外の空気も吸ってこようと言うことで外に出てみる。

小雨のぱらつく休日夜の小田原。街は暗く、雨は僕の心をあざ笑うかのごとく、しとしとと降り続ける。文字通り、街は眠りについていた。


25時の街で、僕は途方にくれた。


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