自宅を5時半に出発し、東北線、両毛線と乗り継いで群馬県の桐生に到着したのは9時20分過ぎであった。朝からやたら元気な高校生たちに混じってホームに降り立つ。まぶしい北関東の朝日が眠い目を覚ましてくれる。
今回乗車する「わたらせ渓谷鐡道(以下、わ鉄)」はこの桐生から出ている。わ鉄はその名の通り渡良瀬川に沿って走るローカル線で、元々国鉄の足尾線だったものが第3セクター化された鉄道である。今回はこのわ鉄に乗って、かの有名な足尾銅山の今を見に行った。
発車の約10分前に到着した列車はチョコレート色のかわいらしい気動車であった。平日朝の下りにしては、10人程度とそこそこの乗客数である。9時38分に定刻どおり、終着の間藤に向けて走り出す。
しかしながら乗客の多くは観光客と思しきオバサマ方で、地元の人の姿はさほど多くない。みなおそらくお目当ては渡良瀬渓谷の紅葉であろう。僕も密かにそれを楽しみにしてきたのだが、その出鼻をくじくように、「…なお、今年の紅葉は時期が遅く、11月に入ってからとなる見込みです。」とのアナウンスが流れ、みんな一様にがっかりしていたのが面白かった。
アナウンスといえば、車内では観光案内といった趣きの放送がちょくちょく流れてくるが、いかにも観光列車という感じがして僕はあまり好きではない。こういうローカル線では一人静かに列車の時間を楽しむのが好きなのだけど…。
列車は大間々駅から川沿いを走るようになるため、眺めが非常に良い。ただし、上流に大規模な銅山があったくらいだからこの辺りもかなり人の手が加わっていて、自然の景色を楽しむという観点からは少々物足りなかった。(ただ、もちろんそれは全体を通して言った話で、実際には何度か「おっ!」と思うような素敵な景色も見られる)
しかし人の手が加わえられていることは必ずしも悪いことばかりではない。上神梅などの駅のホームには彩りの良い花がきれいに並べられていて、見ていて気持ちが良かった。そういえば各駅の駅名表示板も手造りのものである。こういう細かな気遣いがあればこそ、ローカル鉄道の“味”というものが生まれてくるのかもしれない。
| |
▲桐生に停車中のわ鉄列車
▲上神梅駅ホームの花壇
▲雨にけぶる渡良瀬川
▲通洞駅
|