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ロボット
<平成12年8月1日>
事故後、コロの命の長さが告げられて、まさにその期限が近づいてきた1998年夏のある日、コンビニで立ち読みした雑誌の中に「SONYが4足歩行型エンタテインメントロボットを開発」と書かれた記事を発見した。その記事を読み終えた私は、密かにその「4足歩行型エンタテインメントロボット」の購入を考えていた。まだ発売日も価格も発表されていない時期だった。
コロとの永遠の別れ、その後に待ち受けているであろう、悲しみを和らげる為の手段として。方法はいろいろと考えられる。新しい子猫を迎えかわいがる方法で、コロとの想い出を薄めていく方法。ぬいぐるみなどを飾り、コロとの想い出を薄めていく方法。その様な方法の中で、「4足歩行型エンタテインメントロボット」は、一番良い選択に思えた。
新しい子猫を迎える事を、今の時点では考えていない。もちろんその時が来なければ、実際の選択はわからない、しかしコロとの想い出があまりにもおおきすぎ、その新しい子へ、コロへの愛情と同じおおきさの愛情を注げる自信がないのだ。また、亡くなった後も、コロの残った魂に対して、なんだか悪い気がする。たぶん、私には見る事のできないコロは、その新しい子に対して威嚇をするのではないか、と考えてしまう。動く事のないぬいぐるみでは、物足りなさが残るのであろう。
そんな時に、「4足歩行型エンタテインメントロボット」の記事が私の眼に飛び込んで来た。病気になる事もなく、亡くなる事もない。お腹が減れば充電し、故障をすれば修理する。ロボットは文句を言う事もなく、必要な時に遊べば、コロとの想い出は薄れていくのであろう。
その約1年後の1999年6月1日午前9時、「4足歩行型エンタテインメントロボット」は「アイボ(AIBO)」と名前を変え、予約販売が始まった。その反響は大きく、25万円と言う価格にも関わらず、日本では予定台数の3000台が20分で売り切れ、アメリカでは2000台が予約開始後4日間で売り切れた。その後の11月1日にも1万台が予約販売され、こちらも3時間で売り切れとなり、今では日本をはじめ、アメリカやヨーロッパでもアイボたちは可愛がられている。
しかし私には、その「アイボ」を予約する必要はなかった。
私の目の前には、スヤスヤと眠るコロがいるのだから。
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