コロへ
けーち、元気かな?いまはどこにいるのかな?跳んだり跳ねたり走ったり、ゆっくり楽しく過ごしているかな?お友達は出来た?コロは人見知りがすごいから、それが一番心配なんだ。みんなと楽しく過ごしてくれるといいな。こっちの事はなんにも心配しなくて大丈夫だよ。コロが心配する事は、なんにもないからね。
そうだ、コロがいなくなってからの事を少し教えるね。覚えてるかな?あの日、コロは朝から元気がなくて、なんにも食べなかったんだよね。呼吸も荒くてさ、でもいっつもコロは休んでいれば少しして「にゃ」って。お腹すいたよ〜って。言うんだもんね。
だからちょっと休んで・・・って思ってたんだ。抱っこした時には辛そうだったから、抱っこはちょっとだけだったけどね。それでも何度かお話ししたよね。この調子なら今日の夕飯は!って思ってたんだよ。そして夕方、コロが呼んでるみたいだったから、コロの横に行って手を握ったんだよね。でも。
だんだんと遠くなっていく意識の中で、コロは最後に何を言いたかったのかな?声のでない「にゃ」を何回か繰り返してたよね。そして呼吸の間隔が長くなって・・・・・・・精一杯生きようとしていたコロの、どんな事にも負けなかったコロの、ほんとうに最後の時が訪れたことに、兄ちゃんは気がついたんだ。
自然に、ほんとうに自然に、コロは消えていったんだよ。大好きなお布団の中で、兄ちゃんと手をつなぎながら。
その後少しあわてちゃったけど、コロは教えてくれたのかもしれないね。これでいいんだよって。コロを見ていたら、もう戻ってこないんだ、もうお別れなんだ、って事に気がついたよ。ほんとうは、ゆっくり眠ってほしいから、眼を閉じようとしたんだけど、顔が腫れていたからかな、閉じないんだよコロのお目目。だから横に並んで、いつまでもみつめあっていたんだ。けーちゃんの眼の中には、兄ちゃんが映っていたんだけど見えたかな?見えていたらいいなっておもってたんだ。
そのあと、小さな小さなお葬式をしたよ。けーちゃんと母ちゃんと兄ちゃんだけの。もしかすると父ちゃんも来ていたかもしれないね。眠るけーの顔に白い布をかけて、お線香と猫缶とチーズに牛乳を供えて、兄ちゃんが知っているお経の全部を読んだんだ。静かにゆっくりと時は流れて、コロのお葬式は他のどんなお葬式よりも心がこもっていたと思うんだ。あれからけーちゃんは小さく軽くなって、今はみんなと一緒に眠っているね。そしていつまでもみんなを見守っててね。
けーちゃんがいなくなった家の中は、けーちがいた時とあんまり変わっていないんだよ。けーちが眠っていたお布団と枕は、今はしまってあるけれど、使っていた爪とぎも、たくさん食べ物が入っているカラーボックスも、すぐに取り出せるペットシーツとおむつも、ベランダの柵につけた網も、そのまま残ってる。さんぽひももノミ取ブラシも、爪切りも、全部そのままの所にしまってあるんだよ。けーのトイレは、普通の排水溝に戻ったけど、トイレの時間を書いていたホワイトボードは、動物霊園に供えてある猫缶の覚え書きになったんだ。けーちがいなくなったからって、すべてを無くすことはできなかったよ。困った兄ちゃんだね。
そうそう、けーちゃんは直接逢った事はないけれど、時々食事に来てくれるチッコちゃんに、けーちのお皿貸してるからね。
けーちゃんは今ごろどうしているのかな。とってもいい子だったから、もうこっちで暮らさなくてもいいのかな。それとも今度は、兄ちゃん達みたいな人間になって産まれてくるのかな。元気に走りまわれる猫ちゃんかも知れないね。またしあわせな暮らしができるといいね。兄ちゃんと暮らしたのよりも、もっともっとしあわせになってね。けーなら大丈夫だよね。もしも、しあわせじゃなかったら、兄ちゃんに逢いに来てもいいよ。でも、兄ちゃんは鈍感だから、ちゃんと「コロだよ」ってわかるようにしてくれるとうれしいな。
それじゃあ、またね。
おそらの上のお誕生日、おめでとう。
平成13年 春 彼岸の中日
21回目のコロの誕生日
兄ちゃんより 合掌
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