このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |
あの インクラプロジェクト から約一ヶ月。 我々は再び沢登りがしたくて仕方なかった。 いや、正確には沢登りがしたいのではない。 沢を遡って、その先にある滝を見に行きたかったのだ。 狭い沢をひたすら遡っていると、両側の断崖が徐々に前方に集束されてくる。 その一番奥には滝がある。 断崖の圧迫感と、狭い沢から抜け出た開放感が奏でる二重奏。 あの感覚が忘れられないのである。 そういうわけで今回白羽の矢が立ったのは恵庭市。 漁川の支流のモイチャン川が今回の舞台である。 アイヌ語で「鮭が産卵する川」を意味するこの川には、鮭が到底遡れそうもない滝が三つもひしめいているという。 一度にこんなに沢山の滝が見られるとは、なんてお得な川なのだろう、という理由もあってここが選ばれたのだ。 モイチャン川は漁川ダムによって出来たえにわ湖の脇から漁川に合流する川である。 えにわ湖から上流に遡った所に、今回の目的である三つの滝が鎮座している。 モイチャン川に沿って茂一安林道が伸びており、林道を行けば滝に辿りつけるように見える。 ところがどっこい、川と林道は険しい崖で隔てられており、林道から滝にアプローチすることは難しい。 そこで、林道と川との高度差がない下流部から沢を遡行することにした。 具体的にはイチャンコッペ川との分岐点が、入渓点である。 そこからモイチャン川を遡上し、三つの滝を制圧するというのが今回の目的である。 なお、これらのルートは 北広島山岳隊様のホームページ を参考にした。 我々は何も考えていない(謝)。 |
今回の参加者は私、源造、そして先輩のタートル氏の三人。 我々を乗せた車は札幌市から国道453号線で南下し、途中から地方主要道恵庭岳公園線に入り、えにわ湖の畔まで快走してきた。 車を茂一安林道の入口の空き地に停め、各自準備。 写真に写っているのは木精橋で、今回遡行するモイチャン川を跨いでいる。 天気は晴天で、暖かく、絶好の沢登り日和と言えるだろう。 茂一安林道に入る面々(奥:タートル氏 手前:源造)。 ちなみに今回は、各自の足回りが異なる。 私はスポーツサンダル、源造は長靴、タートル氏は地下足袋である。 どれが一番沢に適しているか、見ものである。 とりあえずは、まず入渓点へと向かわねばならない。 この辺りは、茂一安川と林道との高度差が開いているので、もう少し上流に向かう必要がある。 やがて林道は分岐点を迎えるが、写真の廃道然とした道が入渓点への道。 釣人が利用しているのか、うっすら轍の跡も残っている。 この道はすぐに川にぶつかる。 そして入渓。 冷た!! 冷たすぎるよ、これ。 源流の標高が高く、雪解け水が流れてきているからか、インクラの時とは比べ物にならない程冷たい。 スポーツサンダル、地下足袋ピンチ。 |
一時はピンチと思ったが、冷たさにはすぐに慣れ、じゃぶじゃぶと順調に進んだ。 長靴源造は、沢の深さのせいで浸水し、足を上げて排水作業を繰り返していた。 倒木が多く、身を屈めてくぐったり、跨がなければならない場面が多々あり、苦戦。 そして私はデジカメの命を守るために悪戦苦闘(他の2人のカメラは防水)。 カメラ持ってこなけりゃ良かったなあ。 なかなか一筋縄にはいかぬこの川。 我々の前にさらなる障害物が放たれた。 写真奥に写る砂防ダムである。 地図を見れば分かるが、滝までの道程には三つの砂防ダムがある。 その第一弾が登場したのである。 ゴウゴウと水を落とす砂防ダム。 古ぼけたダムの両岸は滑りやすい斜面になっており、迂回するのが若干困難。 各自軍手をはめ、四足歩行で堤の脇の斜面を登る。 砂防ダムの多さ、滝の多さ、倒木の多さから見ると、この川の険しさが分かる。 雨の日などはそれなりの暴れ川になるのだろうか。 今日の流れは非常に平和であるが、あちこちに転がる残骸を見るとモイチャン川の恐ろしい面が見える気がする。 そして2つ目の砂防ダムも同じように乗り越え、今最後の砂防ダムの堤を越えた。 あちゃー。 事前の情報で聞いてはいたのだが、最後の砂防ダムはやはり水をたんまり湛えていた。 深さは腰くらいだろうが、ヌップヌップと沈んでしまいそうだ。 岸辺を行くしかない。 我々はジャングルと化した岸の斜面を睨んだ。 スポーツサンダルが苦手とする、トラバースの始まりである。 おわっぷ!! これは厳しいぞ!! 斜面にへばり付く植物、枝を這わせる木々、滑りやすい土、そこに張りつく我々。 そのまま池へと滑落できれば、まだマシなのだが、この斜面は一筋縄にはいかない。 足を滑らせれば、枝や植物が絡み合うビーバーの巣の如き天然の罠に陥り、抜け出すのが困難になる。 出来るだけ太い枝に自らの体を預けながら、ゆっくりと進むしかない。 ここのトラバース区間は枝をくぐったり乗り越えたりするだけでは、乗り切れない。 時には枝から枝へと、猿のように渡らねばならぬ場所もある。 そんな池迂回区間ももう終盤。 いやぁ、手こずった手こずった。 何とか、川に戻る。 汚れた足を洗い、遡行を再開。 ここから先は小さな滝と釜の連続で、歩くルートが限られる。 困難の連続だが、命の危険を感じるような所は今のところない。 しかしリュックサックの中のデジカメの安否がやはり気がかりである。 滑りやすい箇所が幾つかあるが、「一転倒=デジカメ死亡」という公式はかなりのプレッシャーであった。 ん・・・? 重苦しい断崖が迫ってきた。 そして縦に落ちる水流が木々の間から・・・。 うお———!!!! 巨瀑!! |
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