このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |
北海道で最高の滝は何処か? そんな問いに対して、ある者は「羽衣の滝」と答え、またある者は「賀老の滝」と答えるだろう。 そして、一部の滝愛好家はこう答える。 社台滝と…。 私も滝好きとして、社台滝に関しては様々な情報を得、以前から訪問を熱望していた。 しかし、その情報は社台滝の魅力ばかりではなく、恐ろしいものも数多くあった。 「悪魔の顔」という異名を持つ。 ヒグマと落石の巣窟。 そしてそこへ至る道は車道はおろか、歩道さえない。 そんな恐ろしい情報は、私をさらに奮い立たせた。 ほとんど人の目に触れない秘境に、巨大な滝が眠っている。 動機はそれだけで十分であった。 ネット上に転がる社台滝の情報に目を走らせ、地形図と睨めっこする日々が続いた。 そして2007年9月、遂に挑戦の時が来た。 舞台は インクラの滝 と同じく、白老町。 強力な仲間と共に向かった。 |
モミアゲ 南アルプスの麓で育ったバリバリのアウトドア派。 釣竿とクマ除けスプレーを持って突き進む頼れるリーダー。ヒグマ研究会。 源造 最近登山を始めた。勢い重視の切り込み隊長。ガラナがエンジン。 左のは釜に飛び込んでいる写真であるが、実は泳げない。 ジョナサン 本格的な沢登りは今回が初めてという、期待のルーキー。 面白い動きで周りを盛り上げるエンターテイナー(天然)っぷりには定評がある。 天空開発 筆者。ただの滝キチガイ。滝があれば頑張る。 高所恐怖症、脚力無、腕力無…と全然沢向きじゃない。 |
大きな挑戦となるこの日、胆振地方は快晴。 この上ない沢日和となった。 源造のスカイラインで国道36号線を西進、白老町に入ったところで、右折しインクラの滝方面の林道に入る。 高速道路をくぐると、周囲の雰囲気は一転し、鬱蒼とした森となる。 林道は別々川が刻む、深い谷の底を進む。 この辺り一帯は樽前山の火山灰が降り積もって形成された社台台地である。 幾筋もの水流が長年かけて火山灰層を削り、見上げるような大断崖に囲まれた谷を作り上げた。 そして、その最奥部に幾つもの大瀑布が生まれたわけである。 社台滝、インクラの滝の他にも、白老町には知られざる滝が多くあるという。 左の地図を見ていただきたい。 今我々は、別々川に沿う林道を、車で進んできた。 インクラの滝に行くためには、林道脇の広場に駐車し、別々川を遡っていけば良い。 しかし社台滝はさらに奥。 林道をさらに進み、尾根を二つ越え、社台川を二時間以上遡上しなくてはならない。 地図を見ると、社台滝のすぐ近くまで延びている林道があるが、実際は高さ100mの断崖に阻まれており、社台滝の足元に辿りつくことはできない。 つまり林道で社台川まで行き、そこから川を延々と遡らねば社台滝のもとには行けないのだ。 ところが—。 あちゃー。 「インクラの滝駐車広場」の所で、ゲートは堅く閉ざされていた。 一気にモチベーションが下がるメンバーたち。 ただでさえ困難な社台滝に林道歩き往復6kmが上乗せされたのである。 面倒くさいが仕方ない。 先日購入した沢靴を履き、退屈な林道歩きが始まった。 ※「源造」と書かれている画像は、源造が提供してくれた写真です。 一つ目の尾根を越える。 尾根と言っても、標高は150m程度であり、社台台地上部とはまだ100mくらいの高低差がある。 沢靴は靴底がフェルトという繊維で出来ているため、砂利を踏むと、その感触が直に伝わってきて痛い。 新品同様の私はまだマシだが、使い込んでいるモミアゲは大変そうだ。 一気に下り、川を渡る。 最初、この川を社台川と勘違いしてしまったが、これは無名の沢。 奥に何があるか分からない沢を詰めるのも面白そうだが、今日は標的がいるため、スルー。 二つ目の尾根を越える。 チリンチリン熊鈴を響かせながら歩く。 沢では水音にかき消されてしまう鈴の音も、林道では絶大な効果を発揮する。 むしろ沢では鈴は全く役に立たないらしい。 「沢には熊笛が良い。」と南路屋のマスターは言っていた。 二つの尾根を越え、社台川に架かる橋に辿りついた。 談笑しながら歩いていたら、いつの間にやら着いていたという感じだ。 シカやキツネの痕跡はあったが、幸いにもヒグマのものらしきものは見当たらなかった。 林道歩きが良いウォーミングアップになったようで、体が温まり、心にも余裕がでてきた。 これが社台川の流れだ。 砂防ダムが見えているが、地形図によると、この上流にも幾つかあるらしい。 恐らく最上部の砂防ダムを越えれば、人工物がない美しい川が広がっていることだろう。 早く川を遡って、社台川の核心部へと踏み込みたい。 気温も上がっていたし、早く入渓したかったが、まだ早い。 社台川に沿って上流へと延びる社台本流林道を使って、少しでも時間を短縮しようと思う。 渡渉したり、ゴロ石の河原を進むよりも、砂利道のほうが幾分か速いはずだ。 林道は社台川と離れたり近づいたりしながら、上流を目指す。 ただ、すぐに行き止まりを迎えることは地形図からも明らかであったので、何処かで林道から外れないとならない。 地形図で、林道の線形と川の流路を見比べながら歩く。 厚着の源造は、早く川に入りたそうである。 これ以上進むと、林道と川との高低差が広がってしまうところで、入渓することにした。 足元をよく見ると、藪の中にわずかな踏み跡があり、釣り人の利用があることが分かる。 すぐに藪を抜け、河原に出た。 そこは中州になっていた。 砂が積もったそこは、程よく植物が生えており、まるでオアシスのようだ。 砂に刻まれた無数の穴は、シカの足跡である。 出発前に、この中州で休憩することにした。 皆思い思いの時を過ごす。 パンを食べたり、飲み物を飲んだり。 モミアゲに至っては、寝転がって「俺ここで寝てるから、滝行ってきてよ。」と言い出す始末。 あまりに気持ち良い場所。 みんな骨抜き。 大丈夫か!? |
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