このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください
井上酒造(株) 宮崎県日南市南郷町
(2009.05.08)
家の用事で串間市に行く事があって、水分補給のために市街地のスーパーへと入る。
このお店の中には酒屋さんが入っているので、だいたい串間市に来たときには棚の焼酎の銘柄を覗くこととなるのだが、そんな中に見慣れないラベルの焼酎があった。
それが
井上酒造
さんが3月に出したばかりの“
赤飫肥杉
”であった。手に取ってみると原料にアヤムラサキを使用した焼酎なのだという。焼酎を飲まれる方にはご存じの紫芋の品種である。ただ、そのお店には運が良いのか悪いのか、“
赤霧島
”も普通に店頭に並んでいた。こちらは同じ紫芋でもムラサキマサリという品種を使用しているのだが、なんだか急に「どちらを買うべきか・・・。」という難題を突きつけられてしまい、お店で思考停止の直立不動・・・。お店の方からすれば「怪しい客だ。」と絶対に思われてしまっただろうが、しばし熟考し新商品のこちらを選んだというわけ。
ラベルを観察してみるが、意匠は同じ系列の櫻の郷酒造の“赤無月”とよく似ている。あちらは原料芋にトキマサリを使用しているとのことでまた違った味わいとなっているのだろうか・・・。現在の宮崎の蔵元の魅力は(
以前
も申し上げたかもしれないが)、新しい原料に対しての柔軟性にある。地元行政や国独立行政法人が甘藷の品種育成に熱心ということもあり、地の利を活かした取り組みへの果敢な挑戦がある。
巷では“農商工連携”という言葉が流行っているが、酒造りこそ昔からまさにそれを地で行っていた産業である。土地の資源を活用し、土地の魅力を作り出す。宮崎県内に限らず、各地の蔵元は生き残りをかけていろいろな弾を打ち出す。新規の商品の発売であったり、従来からの路線の堅持であったり・・・と様々。だが、そういった活動のいずれもが農業と有機的な関連に基礎を置いている。この銘柄についても原料芋こそ紫芋という“新式”の甘藷焼酎なのかもしれない。だが、大本の醸造技術については大昔から連綿と引き継がれてきたものだ。
それにしても、出たばっかりの銘柄を飲む事は非常にわくわくする物である。えいやっ!!と封を切ると紫芋焼酎特有の芳香が鼻腔をかすめる。口に含めば清涼感を感じるスパッとした飲み口であった。
さて、今日の“農商工連携”は(国の施策がそうさせるのだろうが)どちらかと言えばITであったり・・・とこれまで無かったような産業間の連携に目がいっているような気がする。地域資源の発掘、魅力の創出という点については新旧は関係ないはずだと考えるのだが、そうはならない歯がゆさというものはあると思う。
地元民は郷土の産業にもっと目を向ける事が必要だろう。都市にはない新たな魅力というのも必ず埋まっているかもしれない。焼酎に限って言えば、県下には30弱の蔵元が点在してる。もっと楽しまなければならない。
その様な事を考えてしまった紫芋の焼酎であった。
このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください