このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

原料芋を食べてみた
いつのことだったか、焼酎原料として使用されるかんしょの品種“ダイチノユメ”を食べてみよう・・・というレポートを ご披露 させていただいた。結果としては、雑誌などで紹介されているとおりでして、私たちが石焼き芋やらで知っている“甘み”を余り感じない食味には向かない品種であった。

その時も書いたと思うのだが、私は焼酎原料として使用されるかんしょの品種を食す・・・という野望を持っていた。ダイチノユメを攻略した後もチャンスを待っていたのですが、これが一向に訪れないのですよ。畑を見渡してみれば後述する 霧島酒造 さん向けの紫芋がどこそこ・・・に植わっているのであるが、勝手に持ち出せばいいじゃなイカ?という訳にはいかない。それをやったら警察屋さんの御用になってしまう。

で、4年が経過するのだ。

念ずれば花開く・・・と言いますが、私はと言えば、日々、ドタバタと動き回っておりました。たまたま都城市の現場を回る機会がありまして、焼酎原料となるかんしょの畑を見させていただいたのですよ。そこでいろいろとお話をお伺いしている内に、「持って行きない?」と手渡されたのがこの項のtopを飾っております3種類のかんしょだったりするのである。

詳細についてはそれぞれ紹介させていただきますが、かんしょの品種名は画像左から“
タマアカネ”、“べにはるか”、“ムラサキマサリ”。ムラサキマサリについてはもはや紹介する必要がないくらい有名ですが、前2つはここ数年で品種登録されたばかりのかんしょ。べにはるかは食味が良い・・・とだんだんと流通にのってきているようですが、まだまだ馴染みのないかんしょであることは間違いないと思います。

畑から掘り出したまんまのものをいただきましたので、まずは洗ってみました。タマアカネの形状が特徴的ですが、伺ったところ、野球ボール大の球状の芋が鈴なりに育つようです。べにはるか、ムラサキマサリは見慣れた紡錘形。べにはるかのヘタの部分が黒ずんでいるのはヤニ成分。ヤラピンという物質らしいのですが、べにはるかは殊に多いそうです。実際に、掘り出す際も茎の断面から白濁の液体が溢れていました。時間が経つと、黒ずむのですね。


実はここからハプニングが発生するのだが、撮影のためにかんしょの表面が乾くのを待っていた間に嫁女が包丁の餌食にしてしまったのである。
・・・結果としてこうなりました。

まぁ、断面を見ていただいて、品種の差をご覧いただくには都合が良かったのですが、あんまりじゃなイカ!?

猛烈抗議を差し上げましたが、「置いたままにしているのが悪い。」と一蹴・・・。
はい。せっかくなので断面が見える様に並べてみました。

手前からムラサキマサリ、べにはるか、タマアカネとなります。ムラサキマサリのアントシアニン由来の紫色の発色に目が行きますね。そして、タマアカネ。このかんしょ。β-カロテンの含有に富むというのが最大のウリです。球状の形状といい、名は体を表す・・・と申しますか、その橙色の肉色は茜色の空を連想させますね(・・・上手いこと言いました)。

べにはるかは赤い皮+黄白色の肉色。いかにも美味そうな組み合わせ。
これを蒸し上げていきます。

蒸かすのに用いりたりますは、“伝説”のタジン鍋でございますのよ。

何が伝説なのか・・・と申し上げますと、先の平成23年9月23日。宮崎神宮境内にある神宮会館で催された 石原けんじ大佐先生 の結婚式+披露宴の2次会において拝領したという由緒正しい御品なのだ。
当日の様子なのですが、2次会のムフフ画像まで含めてちょくちょくと記録しておったりします。これを私はどうすればよいのでせうか・・・・・・・・・(爆)。
水100ccを注ぎ、待つこと15分間。蒸し上がりましたよ。べにはるかはちょっと大きめのサイズだったので、ちょっと芯が残っている感じかな・・・。ま、大丈夫か。

これをさっそく食べていくこととします。
タマアカネ。

調べてみると2010年に品種登録がなったようである。とても新しい品種です。

焼酎の世界では 黒木本店 さんや
落合酒造場さんがこの品種で仕込んだ銘柄を世に出しております。
蒸し上げると橙色の肉色がとても鮮やかに変化。香りについては、どの芋もちゃんと“かんしょ”していたのですが、食べた際の印象は違っていました。このタマアカネですが、粘質の品種特性を持っておりまして、画像を拝見していただければねちゃ〜・・・とした感じがおわかり頂けると思います。食味の方は甘さ控えめで、β-カロテン系のかんしょで仕込んだ焼酎を飲んだ際に感じるニンジンを思わせる香りが飲み込んだ後に残るのですよね。まぁ、あまりおいしい芋とは言えません。
続いてはムラサキマサリ。品種登録は2001年で、 霧島酒造 さんの“ 赤霧島 ”を筆頭に県内外の焼酎蔵元で原料芋として用いられています。

蒸し上がった芋を見て、「これを食べるのか・・・。」と躊躇してしまったことは秘密ではありますが、この鮮やかな紫色はともかく驚愕でした。

それでも食べなければ何も語れませんしね。「興味津々。突撃摂取!」の精神で突撃してみたいと思います。芋の肉質は粉質なのでしょうか。食べてみて、結構もふもふ・・・します。味わいは「かんしょだぁ・・・。」と感じる部分はあるのですが、かすかに甘さを感じる程度です。元々が色素、加工用に育成されてきた品種ですので、あまりおいしい芋ではありません。

それにしても、アントシアニン。すごいなぁ・・・。食べ終わった後に鏡を見ましたが、舌が紫色にちょっぴり染まっていました。
最後に口直し・・・と言うわけではないですが、べにはるかを食べてみます。

芋を割った断面を見てみますと、なんというか非常に安心できる黄色をしておりますよ。

肉質はやや粘質が感じられながらもほくほく・・・さが残っております。
味については、育種した独立行政法人の 九州沖縄農業研究センター も太鼓判を押しているとおり、ともかく甘いです。この品種を栽培された農家のお言葉を借りれば「お菓子」とのことですが、ついつい手が伸びてしまう甘さ。品種育成の段階で、母には外観重視の九州121号、父には食味重視の春こがねを用いているそうです。鹿児島県の奨励品種として栽培面積を増やしているそうで、いつだったか、某道の駅では店先に並ぶかんしょのほとんどがこの品種・・・と聞いたことがあります。それだけ農業の現場においてはインパクトのある品種だったということでしょうか。

焼酎の世界に触れますが、 大浦酒造 さんがこのかんしょを用いた焼酎を世に出しています。




さて、この様に焼酎の仕込みに用いられる3品種のかんしょを食べてみましたが、加工用、食用・・・とその用途によって全く違った性格を持っているのだ・・・ということを身をもって体験いたしました。ここに来てなお不思議だな・・・と思うのは微生物の作用。デンプン含量があれば、それを糖化しアルコールへとつなげていく・・・という連係プレイにただただ脱帽するのですね。微生物の働きを引き出すという点については焼酎蔵元の技術力の具合に因るところも当然ながら大きいのだと思います。

目の前にある原料を用いて、新しい酒を造り出していこう、新しい価値観を世に問おう・・・というフロンティア精神に感服しっぱなしなのですが、そこにある技術は日進月歩。飲んべえである私たちはその可能性を楽しみに待とうと思います。


・・・今回は結構大型企画でしたが、今後も焼酎原料に使用されるかんしょを食する機会ありましたら積極的に紹介していこうと思います。お楽しみに。
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(11.10.12)

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