このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください
柳田酒造(名) 宮崎県都城市
(2010.12.28)
さて、
先日
、宮崎県で古くから栽培され、時代の変遷と共に人々の記憶の彼方に消え去っていったハダカムギ“ミヤザキハダカ”を用いた焼酎醸造の取り組みについて紹介をさせていただいたところだ。
上記リンク先を参照願いたいのであるが、ミヤザキハダカの本格的な栽培は2年目になる。霧島連山の麓に広がる宮崎県西諸県郡は高原町の集落営農法人“はなどう”の手によって、1.2haの畑に麦の種が播かれたばかりだ。それは11月25日のこと。その後の生育は順調であり、12月上旬には発芽を迎えたという。
三股町にある
(有)宮崎上水園
さんとの二人三脚による復活プロジェクトが2007年の事であるから、この古い麦を使用した焼酎が実現するのに3年がかかった。近頃は『農商工連携』といった言葉が都会や農村を飛び回っているけれども、その実現が如何に難しく、実現までの長い時間を耐える強い意志を必要とするかおわかりいただけるだろう。造り手である
柳田酒造
さんはその様な苦労を買ってくれた農家の心意気を十分にわかって居らっしゃる。本来ならば十分な貯蔵期間を経ていないと流通に乗せることのない“新酒”を「栽培を受託してくれた高原町という土地に感謝したい。」と“
干支焼酎
”という形で具現化してくれた。原酒の量もあって、1升瓶にして100本程度というわずかな流通量である。その大半が柳田酒造さんの願いの通り、栽培を請け負った集落営農法人のある高原町内で味わわれたのだ。
記念すべき1本であるので、なんとか予約を受け付けてもらって買い求めたのだ。2000円という値段設定は柳田酒造さんから高原町への恩返しの意味(「続けて買い求めてもらえる価格でないといけない。」と柳田さんは仰られていました)が強いそうだが、破格でないか・・・と思う。柳田酒造さんが願い、追い求める“オール宮崎産”の焼酎を意識し、酵母も平成宮崎酵母を使用している事については触れたことがある。柳田酒造さんではミヤザキハダカを用いた焼酎の可能性を探るために常圧、減圧と異なる蒸留を試したそうだ。ミヤザキハダカ製の焼酎については、県工業試験場での試験醸造段階で芳香に富むという特性があることがわかっており、常圧よりも減圧蒸留でその傾向が顕著なのだと聞いた。これを受けてだろうか。今回の新酒は減圧蒸留によるものである。
今回は、どうしても麦の品種間での飲み比べをしてみたかったので、似た条件で蒸留されて居るであろう通常バージョンの“干支焼酎”も購入した。そしたら、これがまったく違う方向を向いているのでびっくりしたのだ。
つまりは、通常バージョンが麦焼酎らしい味わいが前面に出ているのに対して、ミヤザキハダカのそれは一段上を行っており、特に香りは今まで感じたことがないほど華やかに感じた。味わいについても述べさせていただければ、通常バージョンでは上記のように麦焼酎らしい味わいが出ていた。だが、ミヤザキハダカのものは甘みを強く感じるのに加えて、ひっかかりの無いスムーズな飲み口が印象に残る。言葉で表現するのであればまさに“甘美”という2文字がぴったり。今回は麦の収量の関係で麹の全量と掛け麦の一部にミヤザキハダカを使用していると言うが、麦焼酎の持つ可能性、懐の深さにびっくりしたのだ(何度も書いてすみません)。
柳田さんから伺ったところでは、この焼酎は発展途上なのだという。上に書いたとおり、ミヤザキハダカの持つ特性をより引き出すためにもっともっと工夫をしていくそうだ。蒸留の差もあるが、仕込みの際の温度、麦の蒸し方・・・。試行錯誤を重ねていくとのことであるので、ファンとしてはワクテカが“I can't stop !!”なのである。
このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください