このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

粕取り焼酎 in FOODEX JAPAN 2008
(08.03.29)
FOODEX JAPAN ”と言えば、1976年より開催される東アジア最大級の“食のトレードショー”である。催しの性格上、どうしても食品を取り扱うバイヤーや各飲食店、メディアや行政機関・・・といった職種に入場が限られるのではあるが、先日、2008年3月11日から14日の日程で開催された平成19年度のFOODEX JAPAN 2008では会期中、96,000人あまりの人が入場したという。日本をはじめ古今東西65の国と地域から2,412社が出展を行ったという会場では、そういった分野のプロによる商談、情報収集・・・が熱心に行われており、行き来するプロへの売り込みの声が飛び交う。幕張メッセという広大なスペースは熱気渦巻く空間と化したのであった。

かくいう私も後学のために先日の上京の際に入場する事が出来たのだが、国内の食材を集中して扱った展示スペース“全国食品博”の一角にたくさんの人を集めていたブースがあった。 日本酒造組合中央会 のブースである。

このブースの様子は 『本格焼酎忘備録』 を主催される
しばたにさんが既にレポートされているので参照願いたいが、かなりの数の銘柄試飲と芋、米、麦、蕎麦、泡盛を題材にしたブラインドテストである。後者は5問全て正解すれば焼酎・泡盛が1本もらえるという物。これはなかなか難しく、ほとんどの人が参加賞の特製グラスを獲得していたようであった。

さて、ここで紹介したいのは前者である。やはり芋焼酎に人気が集まっていたようであったが、泡盛も米も麦も相当な数が並んでいた。私はと言えば、(仕事で来ていることもあり)どうしても広すぎる会場を隅々まで見ておきたかったので、どの様な銘柄が並んでいるかと言う事はあまりチェックが出来なかった。後日、当日ブースに並べられた焼酎の銘柄リストを入手する事が出来たのだが、同一銘柄で度数違い、容量違いといった重複はあると思われるが、米焼酎130銘柄、麦焼酎154銘柄、芋焼酎194銘柄、泡盛104銘柄、その他の原料による焼酎133銘柄、合計715銘柄という驚愕の種類の焼酎が全国津々浦々から集められていた。

さて、この項の主役である粕取り焼酎は「その他の原料による焼酎」というコーナーに並べられており、お馴染みの銘柄から初見の物までたくさんの瓶が並べられている。先の焼酎ブームで伝統ある粕取り焼酎はスポットライトを浴びた。ブーム沈静化からの時間の経過に伴い消費量の減少が伝えられる事もあるが、その日、ブースに並んでいたのは34銘柄。・・・あ、リストをよく見ると米焼酎に粕取り焼酎をブレンドした 鳴滝酒造 さんの“
羽化登仙”も入っていたので、正確な意味では33銘柄が並んでいた。

せっかくなので34種類をリストの中から抽出してみる事としようか。本当ならば写真の1枚でもあれば会場の様子をお知らせする事が出来るのだが、残念ながらFOODEXの会場内撮影禁止であったので申し訳なく思う。

リンク 先を見て頂きたいのだが、どちらかと言えば吟醸粕を使用したものがそうであるように、やはり飲みやすさ、清涼さを前面に出した銘柄が多かったように思える。そして、黒麹仕込みや樽貯蔵といった差別化を狙った銘柄も見られた。これら銘柄というのは瓶も今風の瓶が使用されてたりと目立つ存在で、どうしても人々の関心を集めていたようだった。

だが、正調粕取り焼酎も負けてはいなかった。上記の鳴滝酒造さんの“
ヤマフル”はもちろん、清酒千代鶴で知られる大分県久住の佐藤酒造さんの“碧雲”は陶器瓶での登場であった。山形の 樽平酒造 さんの“たるへい”はレギュラー(25度)に加えて10年貯蔵の物(25度、40度)を並べるなど気合いが入っていたように思える。その他にも “辰泉”、“錦川”・・・と魅力的な正調粕取り焼酎は約10種類ほど並べられていた。何もなければ意地汚く全種類の試飲に挑戦するところであるが、さすがそれは叶わない。泣く泣くブースを後にしました。

その日本酒造組合中央会からあまり離れていないところに 福岡県酒造組合 の独自ブースがあった。そこでは同組合に所属する蔵元の清酒、焼酎を数多く試飲出来るのだが、さすが清酒文化圏といいますか個性ある蔵元が多い福岡県である。焼酎よりは各蔵の吟醸酒、純米酒に多くの人がトライしていた印象がある。ただ、米や麦焼酎に良い銘柄が多いのも特徴。常圧、減圧関わらず、多数の銘柄に挑戦する様子が見受けられた。

その様な中、粕取り焼酎はと言えば 杜の蔵 さんの“
吟香露”を発見。「まだ無いのか?もっとすごいのは無いのか?」と騒いでおったところ、おもむろに担当の方が出してくださったのは 焼酎盆地 SASANABA師 以前 紹介されていた同組合渾身の作である大吟醸粕正調粕取り焼酎“ふくよか”であった。博多献上帯で着飾った姿は艶やかの一言に尽きる。せっかくの機会であったから、少しグラスについで戴いた。大吟醸酒粕を使用したという事もあり、香りは高く上品である。味わいもその香りのまま・・・と思っていたのだが、そうではなかった。第一撃は鼻腔を吟醸香が抜けていく。だがそれに続いて、正調粕取り焼酎ならではのあの風味が間髪入れずに追いかけてくるのだ。正直、うまい。噂には聞いていたが、こんなにもうまいとは思わなかった。

最後にこのイベントの意義を考えてみようか。

上述の通り、粕取り焼酎の消費は年々下がりつつある。焼酎の有り様を見れば芋焼酎一人勝ちの状況だ。だが、それにくさびを打ち込むという意味ではとてつもなく大きな意味を持っているように思える。粕取り焼酎に必要なのはやはり露出の多さである。当方、あまり粕取り焼酎に関する情報を流しきっていないことについては反省するのだが、人の目に触れてなんぼなのだ。更にこのFOODEX JAPANでは見るだけでなく自らの舌で味わう事が出来る。

そういった意味で、わずか4日間の催し物に30銘柄余りの粕取り焼酎が出店されたということのすごさを感じたのだった。


※最後になりましたが、当日出品銘柄のリストを提供してくださった日本酒造組合中央会様に心から感謝をいたします。
>Index

このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください