このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください
○製造元:菊正宗酒造(株)
神戸市東灘区御影本町
1−7−15
○度数:25度
○原材料:清酒粕・甲類混和
○製品の特徴:甲類混和に意義
アリ。爽やかで飲み
やすさが売り。
レッドブック度:現存
(甲乙混和)
(05.01.14)
■当該銘柄について
現在の焼酎ブームにおいて、芋焼酎や黒糖焼酎、泡盛と比較するともっとも個性が強いにもかかわらずいまいち知名度が伸びないのが、清酒粕と原材料に記す粕取り焼酎であった。その理由としてはその強烈な『におい』にあるのではないだろうか。そして、あまりにも過去の産物になりすぎてしまったという点。しかしながら、
九州焼酎探検隊
の“
粕取りまぼろし探偵団
”による粕取り再発見プロジェクトや、東京都江戸川区の
酒のこばやしさん
による積極的なプッシュの甲斐があって、ここのところ焼酎本をはじめとしたメディアでの紹介の機会が増えてきた。
このように粕取りにとって追い風が吹き始めようとする中、日本を代表する醸造地帯である灘の大手、“
菊正宗酒造株式会社
”よりこの粕取り焼酎が発売された。昨年の初秋。同社のプレスリリースにこの“酒滴”が載ったのである。
菊正宗酒造といえば、「
き〜くまっさぁ〜むうねぇ〜・・・
」というテレビコマーシャルでも全国的に有名な醸造元である。創業は万治2年(1659年)。19世紀には1万石近くも酒を造っていたというエピソードからも品質の高さに定評がある。私にしても同社の清酒を飲んだことはないが、同社のCMから“辛口の高そうな”の酒を造る蔵元というイメージは持っている。
現在、同社はアメリカをはじめ、香港・シンガポール・オーストラリアそしてヨーロッパにも自社製品を輸出しているという。このような会社から粕取り焼酎が発売された物だから、
先日
思わず手に取ってしまったのだ。
今日、中小の蔵元が細々と蒸留を続ける粕取り焼酎界において、稀少ともいえる大手蔵元の意欲作である。その実力やいかに!?
■ボトルデザイン
濃淡の青のグラデーションの瓶が非常に美しい。ラベルの方も同製品のリリースから引用すれば、『
華やかな主張を水のごとく調和し・・・
』というフレーズは非常にしっくりと来る。そして、原材料表記に目を移すとなんと『
甲類・乙類混和
』の文字。これには瓶を手に取ったときには本当にビックリした。
『カストリ』というカタカナ表記にも驚かされました。昔なら粗悪品の代名詞。今の時代、新しい焼酎として認知されるのだろうか・・・。
それにしてもこのボトル。「シンプルで美しい」の好例である。
■香り
甲類焼酎混和による作用が大きいのだろうか。粕取り焼酎が持つ万人向けとは言えない香りと比較すると、爽やか過ぎるの一言である。その奥にわずかながら粕取り焼酎っぽい香りを見つけることができ、ちょと安心した。
■味わい
この“
酒滴
”。上撰クラスの酒粕に水を加えて発酵させたもろみを減圧蒸留したものという。味わいも香り同様、スッキリとした感じに仕上がっている。リリースでいうところの甲類焼酎を『最適割合でブレンド』したのがどの程度かは知らないけれども、口に含んだとたんに酒粕由来の香味がかすかながらも抜けていった。
製品のコンセプトは「まろやかですっきりとした飲み口」を得るために甲類焼酎を添加している。かつて甲類焼酎に付加価値を付けるために粕取り焼酎を添加した時代があったが、その目的は違えど微妙に時間軸が交わっている点は興味深い。
■レッドブック度
発売されたばかりの製品と言うことで現役の銘柄であることは間違いなかろう。甲類焼酎が添加されているという製造上特筆される点も考慮し、判断が難しいところではあるがカテゴライズは『
現役(甲乙添加)
』としたい。
心配されるのはそれが大手の商品戦略野の中から生まれた粕取り焼酎であるという点。全国津々浦々で消費される粕取り焼酎と違い、決まった飲み手がいないという弱さを持つ。私自身、この製品はコンビニ店頭でしか見かけたことがない。売れ行きによっては整理→消滅という流れをたどる可能性がある。
同社には
樽貯蔵の粕取り焼酎“ランプ”
もあることから、これを含めて販売の継続を期待したいところである。頑張ってください。
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