このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください
つい先日のこと。勤めから帰ってきて、牛とじ丼をかき込んでいたときに急に電話が鳴り出す。「だれだれ〜・・・。」と食べるのを止め、電話を取ると、中国地方に住まわれている方からの電話であった。
「
私、○▲県の・・・。
」と自己紹介をされる。
「
実は粕取り焼酎の件でお電話を差し上げまして・・・。
」
初めは「?」と少し警戒をしたのであるが、話をお伺いすると、どうやら
先日の読売新聞の記事
を読んでくださっての電話らしい。「なぁんだそんなことですかぁ・・・。」と夕食を中断してウキウキと応対させていただいく。
聞けばそのお方、お年は50代。田植え後に粕取り焼酎を飲む“
さなぶり焼酎
”という習慣が残るまっただ中を生きられたそうだ。幼かった時分、田から上がった大人に粕取り焼酎を勧める役目をされていたらしい。大人の目を盗んで少し飲んでみた粕取り焼酎が「変わった風味で、とても美味しかった。」と懐かしそうな声が受話器の向こうから聞こえてくる。
その記事を読んで、あの粕取り焼酎の味をもう一度体験したいという気持ちになったという。で、近所の酒屋で買い求めたのだが、その焼酎の味はかつて自分が飲んだものとは似てもにつかぬ物であったという。つまり、飲みやすい吟醸粕取り焼酎だったとのこと。昔ながらの粕取り焼酎のことを色々とネットなどで調べていたときに、あの記事が読売新聞で掲載された。
結局、昔ながらの粕取り焼酎と言うことで、
鳴滝酒造
の“
ヤマフル
”と
杜の蔵
の“
常陸山
”をお教えし、しばらく雑談をしてその電話を切る。
・・・電話を受けた私自身ビックリしたのだ。いくら全国紙だからといってここまでの影響力があるとは思わなかったのである。まったく接点のない人から電話がかかってくる。しかも粕取り焼酎についてなのだ!!
この読売新聞を初め、近頃は前述の“ヤマフル”など古い造り、味わいを残した銘柄が“正調粕取り焼酎”として雑誌等で相次いで取り上げられている。多数の焼酎の銘柄を扱ったガイド本にも(やっぱり鹿児島の芋焼酎が中心だが)粕取り焼酎の銘柄が1つ2つと入るようになった。
芋焼酎(主に鹿児島の特定蔵、特定銘柄)ブームが加熱する一方、じわりじわりと米や麦、黒糖などの“芋以外の原料”で造った焼酎への注目が高まりつつあるのが現在の状況であろう。その中での粕取り焼酎の躍進。
九州焼酎探検隊
での粕取り探査が始まったばかりの頃を思うと、非常に感慨深いのである。あの文字通り“過去帳入り”寸前であった焼酎が世の中で認知されるようになった。酒造業界においてもその存在が見直されつつある。
粕取り焼酎は今、復権を果たそうとしているのである。
もう言っちゃいます。粕取り焼酎の波は確実に来ています。皆さん、その波に身を委ねましょう。そして独特のヌメりのある甘さに酔ってみようじゃないか。
(04.09.03)
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