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混雑とのつきあい方〜〜USJ・京都・万博記念公園





■ツアー決行まで

 日本の多くのテーマパークのうち、筆者
は Universal Stadios Japan(以下USJ)には好感を持っているわけではなかった。東京ディズニーリゾートの完成度が極めて高いのと比べ、後発ゆえに刺激を追い求めている印象が強かったのである。

 しかしながら、こどもらの感覚は大人とは当然違う。出費が嵩むことを理由におさえてきたものの、妻まで「広島の知人は大阪で途中泊してまでUSJに行っている。うちでも行こうよ」などと裏切った(苦笑)ものだから、こうなると多勢に無勢である。

Universal Stadios Japan
回る地球像(背景は京阪・近鉄系列のホテル)


 偶然にも無料同然の宿泊先を確保できた(謎笑)ので、シルバー・ウイークを活かして遠征した次第。その際、 昨年の家族旅行 で行きそびれた、京都の名刹や「太陽の塔」などにも行こうと企画してみた。本稿はその体験記というよりもむしろ、三箇所を回った混雑対応の比較記事である。

 なお、以下の記述における時刻表示は記憶に基づく再現であり、厳密なものではないので、あしからず御了知のほど。



   USJ(一日目)
   USJ(二日目)
   京都名刹
   万博記念公園
   ルーヴル美術館展(京都市美術館)






■Universal Stadios Japan

 USJの開園は平成13(2001)年。開園から既に 8年以上が経過しているわけだから、筆者如きが今さら感想を記したところで役には立つまい。ただ一言のみ結論を記すことが求められるならば、「USJはTDRより面白い!」と断言する。

Universal Stadios Japan
回る地球像遠景(映画のクレジット画面そのもの)


 USJはアトラクションの数が少なく、特に乗物は 8つしかない(うちバック・トゥ・ザ・フューチャー・ザ・ライドは乗物と呼べるかどうか疑問だしペパーミント・パティのスタント・スライドはただのウオーター・スライダーにすぎない)。一般論としていえば、テーマパークとして致命的になりかねない要素がUSJにはある。

 ところが、観客を「強制参加」させる乗りの良さはすこぶる刺激的で楽しく、観客自身の感覚に訴求して演出するため、「楽しい場所」と言い切れるのである。特にウオーター・ワールドの「体育会系の乗り」は傑作中の傑作で、次回来訪時には水着にゴーグルで青椅子に座ろうかと考えているほどだ(笑)。



【一日目】

開始時刻イベント終了時刻
9:20のぞみ217号(東京→新大阪)11:56
12:30チェックイン・昼食など14:00
14:07宝塚線直通(新大阪→大阪)14:11
14:18大阪環状線(大阪→西九条)14:23
14:28 桜島線 (西九条→ユニバーサルシティ)14:33
14:40発券・入場15:00
15:10 アメージング・アドベンチャー・オブ・スパイダーマン・ザ・ライド 16:10
16:15 ジュラシック・パーク・ザ・ライド 17:35
17:45 ジョーズ 18:45
18:50ペパーミント・パティのスタント・スライド19:20
19:25男: ハリウッド・ドリーム・ザ・ライド
女:マジカル・オズ・ゴーラウンド他
20:35
20:40<合流>スヌーピー・プレイランド20:55
21:00退場・夕食21:40
21:41 桜島線・大阪環状線直通 (ユニバーサルシティ→大阪)21:53
22:00新快速(大阪→新大阪)22:03




 USJの巧妙なところは、混雑をうまくコントロールしている点に尽きる。筆者家族の経験でいえば、二日目のジョーズで「シングルレーン」と「エクスプレス・パス」が競合し長時間の行列を強いられた(おかげでターミネーターⅡを見損なった)失敗例が生じたものの、全般には長時間行列を避けるオプションが豊富に設定されている。勿論、長時間行列せざるをえない観客も多いのだが、彼らは家族・カップルなど一緒にいることじたいが楽しいという階層であり、行列の途中にも飽きさせない工夫がされているから、長時間行列を許容できるはずである。



【二日目】

開始時刻イベント終了時刻
8:22宝塚線直通(新大阪→大阪)8:26
8:30 大阪環状線・桜島線直通 (大阪→ユニバーサルシティ)8:41
8:50入場8:55
9:05 バック・トゥ・ザ・フューチャー・ザ・ライド 10:30
10:50彩道(昼食)12:05
12:10男: ハリウッド・ドリーム・ザ・ライド ×5回
女:ペインティング他
13:40
14:00<合流> ピーターパンのネバーランド 14:20
14:50(開演15:15) ウオーター・ワールド 15:45
15:55 バックドラフト 17:00
17:20 ジョーズ 19:00
19:10 アメージング・アドベンチャー・オブ・スパイダーマン・ザ・ライド 19:50
20:30 マジカル・スター・ライト・パレード 21:10
21:10買物21:25
21:40退場・夕食22:40
22:53 桜島線 (ユニバーサルシティ→西九条)22:58
22:59「はるか60号」(西九条→新大阪)23:08


 混雑コントロールが最もうまいのは「シングルレーン」で、単独行動(団体行動でも席が分散することを許容すれば利用可)の方がシングルレーンに並べば、ほとんど待たずに搭乗することができる。筆者親子の経験ではハリウッド・ドリーム・ザ・ライドに90分で 5回も搭乗し、まさに「お腹一杯」になるまで乗りつくした。ちなみに、当時の待ち時間表示は90分であり、まともに並んだ方々の 5倍も楽しめたことになる。ただし「シングルレーン」の設定は長時間行列を必須条件としており、常に利用できるわけではない。

Universal Stadios Japan
正門付近の混雑


 「たべ乗りセット」も巧妙な設定である。彩道あるいはディスカバリー・レストランで「たべ乗りセット」を注文すると、いくつかのアトラクションの「エクスプレス・パス」がついてくる。この設定を知らないと、レストランでも行列し、アトラクションでも行列するという、たいへん辛い思いをすることになりかねない。筆者家族の経験では 10:40頃彩道の前に行列ができ始めていたのを目にし、その時点で既に30分待ち以上になると判断(実際にそうなった)、早めの昼食と割り切って並び、「たべ乗りセット」を注文した。目当てのウオーター・ワールドは遅い回の空きしかなかったが、日に一度のみ上演されるピーターパンの前にハリウッド・ドリーム・ザ・ライドを堪能したのは前述のとおりで、時間を有効活用できたわけである。

 もう一丁「エクスプレス・パス」があり、人気4〜7アトラクションで長時間行列を回避できる。ただし「エクスプレス・パス」はかなり高額の設定(日によって違うがBooklet7で一日券なみ)となっており、妻にはきわめて不評で(笑)、筆者家族は利用しなかった。

Universal Stadios Japan
ピーターパンを見守る十重二十重の観客


 目立たない要素としては、建前 8時開門であるのに早い時刻に開門し、アトラクションが動き始めているところも、うまい工夫である。夜を徹して早朝到着という、文字どおり「弾丸ツアー」の観客も少なくないわけで、開門時刻に混雑を集中させない配慮はさすがである。

 参考までに記しておくと、一日目は標準的に60分以上待ち、二日目に至っては標準的に120〜180分待ちというはげしい混み具合だった。さすがはシルバー・ウイークとあって大混雑で、特に二日目は混雑コントロールがなければ耐えかねるものがあった。そのような状況のなかで、「疲れた〜」というぼやき以外の苦情が出なかったことから、筆者家族はまずまず楽しめることができたようである。





■京都名刹(三十三間堂と清水寺)

 USJで二日も遊ぶと疲れは相当なもので、三日目の行動開始時刻は11時過ぎになってしまった(苦笑)。織り込み済みの状況とはいえ、今日一日の行動をどう組み立てるか、考えどころである。もっとも、結果から先にいえば、組み立てどころではなかった。



開始時刻イベント終了時刻
12:00新快速3450M(新大阪→京都/遅延)13:00
13:10京都市バス206系統臨時増発(京都駅前→博物館三十三間堂前)13:30
13:40 三十三間堂 14:30
14:30徒歩による移動14:50
14:50喫茶店で昼食15:50
15:50徒歩による移動16:10
16:10 清水寺 17:50
17:50徒歩による移動18:30
18:36京阪電鉄(清水五条→三条)18:39
18:40鴨川を渡り西京極でウインドー・ショッピング19:30
19:38阪急電鉄(河原町→淡路→南方)20:22
21:00夕食22:00


 JRの遅延は偶然の産物とはいえ、よもや新快速が「電車の渋滞に巻きこまれる」とは完全に想定外である。遅延時間は30分程度にとどまったものの、前途に暗雲ただよう展開とはまさにこのことであろう。

 京都駅前でバスに乗るにも行列。これまた偶然ながら、臨時増発の始発便がきて、相対的に楽な状況で乗車することができた。しかし、そこから先がいけない。鴨川の手前から滞り始め、七条京阪から先はほとんど亀の歩み。清水寺入庫待ちの大渋滞がここまで影響している様子だった。

三十三間堂前の渋滞
三十三間堂前七条通の渋滞


 三十三間堂の拝観に30分程度を見込んでいたところ、堂内は大混雑でごった返しており、単に歩きとおすだけでも30分はかかりそうな状況に。さらに国宝の仏像の解説文など読みながら進んだものだから、予想をはるか上回る時間を費やしてしまった。京都ってこんなに混む街だったかなと思いつつ、今日はあと清水寺で終わりと覚悟せざるをえなくなった。

 三十三間堂から清水寺からは徒歩移動。思ったとおり道路の大渋滞はあいかわらずで、歩いた方が速かった。まだ昼食をとっていなかったので、路傍の喫茶店に入ったところ、ここでもまた滞り、注文してから食べるまでなんと30分以上を要したのであった。ランチセットを頼んだとは思えない展開ではないか。

五条坂の渋滞
五条坂の渋滞(15時近くという時間帯でこの状況)


 ようやく清水寺に着いたのは16時過ぎ。境内の混み具合がまた凄く、もう夕刻とは思えないほどの大混雑だ。清水寺では胎内めぐりで20分、拝観券窓口で10分、本堂参拝に10分、音羽の滝で30分程度を要し、境内に入ってからあちこちで時間がかかってしまった。境内から出ようかという時、ちょうど日没に出会い、美しい風景を見ることができたのは望外の余録になったとはいえ、随所で時間をとられるのは不本意というしかない。

清水寺の混雑
清水寺境内の混雑(16時すぎという時間帯でこの状況)


 ここまで混んでいると道路交通を使うのは明らかに拙策であり、残る行程は徒歩と鉄道に依ることにした。まだ混んでいる清水坂を下り、東大路を渡ると、観光客の姿は消えた。ただし、東大路に向かう道路は大渋滞である。六波羅蜜寺の脇を通り、清水五条まで歩きとおす。京阪電鉄に乗り三条まで北上。鴨川を渡り、新京極通りでいくつかの店をかまいながら南下。混んではいたものの、京都の中心街だから日常の姿といえる。阪急電鉄河原町から乗車し、宿泊先最寄りの南方で下車。清水寺から宿泊先までは、混んで揉まれても滞る場所はなかった。

清水寺
清水寺から望む京都夕景


 たった半日の経験で語るのは危うさが伴うとはいえ、京都という街は全般に、混雑対応をあまり考慮していないのかもしれない。典型例は昼食をとった喫茶店で、ランチセットを頼んでから食べるまで30分とはとんでもない不手際と評するべきだろう。勤め人の昼食混雑対応に慣れてさえいればありえない事態で、そもそも混むことを前提していないのだ。街の道路構造は交通集中に対応しているとはいいがたく、一部の渋滞が広範囲に波及してしまう。

 京都駅前や清水寺などにはシルバー・ボランティアが配置されているなど、混雑に対応しようという意図は相応に見受けられる。しかしながら、シルバー・ボランティアは所属が一目ではわからず、胡散くさく見える風体の方もおり、安心感が持てない。さらに問題なのは、シルバー・ボランティアは訓練されていないため、(本人は無自覚でも)横着な言動で人と接する方もいた。親切のつもりがかえって相手の不快な気分を惹起させるわけで、本末転倒という言葉どおりの状況といえよう。

 根本的にはインフラストラクチャーが不備なのであって、シルバー・ボランティアほかソフトウエアで対応しようとしても、限界はおのずと明らかである。USJと状況が似ているというのに、京都の施策はむしろ弥縫策に近い。

 京都の交通機関のなかで唯一頼れる鉄道には、ネットワーク性が乏しく利用しにくいという弱点がある。京都には世界遺産が随所にあって、長い歴史を持つことは誰でも知っている。歴史という大きな財産に頼るあまり、混雑という今日の課題を放置したままでは、ごく近い将来(ソフトウエア的な意味でなく物理的な意味で)行き詰まってしまうのではないかと危惧されてならない。

 道路インフラの容量が絶対的に不足するなか、道路交通に依存したままで、観光振興を図るのは明らかに無理がある。仮にソフトウエアで対処するならば、自動車の流入規制に踏み切るべきであろう。少なくともバスがスムースに走行するための環境整備が必要だ。現状のように混雑対応が不備のままでは、都市政策の欠落と批判されてもしかたない。





■万博記念公園

 最終日の行動開始時刻は10時過ぎとチェックアウトぎりぎりで、疲れが色濃く出る行程になってしまった(苦笑)。前回家族旅行では通天閣や太陽の塔など「如何にも大阪!」と呼べる場所をいくつか積み残しているので、今回は行っておこうと考えていた。しかし、立ち上がりがこの時刻では片方だけしか行けないのは自明なので、付属施設が多いことを考慮し、行先には万博記念公園を選択した。



開始時刻イベント終了時刻
10:22御堂筋線・北大阪急行(新大阪→千里中央)10:35
10:45大阪モノレール(千里中央→万博記念公園)10:50
11:00生活誕生館DILIPAにてビンゴゲーム11:30
11:30太陽の塔と記念撮影など12:00
12:00国際児童文学館13:20
13:20国際児童文学館のレストランで昼食14:00
14:00日本庭園を散策15:00
15:00生活誕生館DILIPAにて福引15:20
15:31大阪モノレール(万博記念公園→千里中央)15:36
15:47北大阪急行・御堂筋線(千里中央→新大阪)16:01
16:10夕食買い出しなど帰宅準備17:25
18:07のぞみ254号(新大阪→東京)20:43




太陽の塔 太陽の塔
太陽の塔(後ろから見ると撫で肩・猫背であることがよくわかる)


 結果は正解といえるかどうか。混雑・渋滞・行列とは無縁なのどかな半日になった反面、至るところで足が止まる止まる(苦笑)。生活誕生館DILIPA(立ち寄る予定はなかった)のビンゴゲーム呼びこみに引っ掛かったのが運の尽き。国際児童文学館ではすっかり根が生えてしまい、たっぷり時間をとってしまった。日本庭園でも鯉に餌をやってみたり、鴨を追いかけてみたり、川の流れと戯れてみたり。当初構想を大幅に延引する長時間滞在とあいなった。

 もっとも、それでも時間が足りないというのが本音だ。日本庭園はじっくり味わうべき場所だし、自然文化園にはまったく入っていないしで、かえって悔いが残った感もある。太陽の塔も味わい深い存在で、特に後ろ姿は撫で肩かつ猫背気味、哀愁漂うとしか表現のしようがなく、日本社会が興隆の上り坂にあった昭和45(1670)年にこれを造形した岡本太郎の卓見には驚く。

 前述したとおり、この日はまったく空いていた。質の高い施設が多いというのに、その良さが知られていないのは勿体ない心地がする。万博の熱気を再び、とまではいわないにせよ、せっかくの素晴らしい施設なのだから、もっと多くの方に知ってもらいたい心地がする。筆者としても、次の機会あらば、一日かけてじっくり回ってみたいと考えている。

万博記念公園日本庭園
万博記念公園の日本庭園(良い造作でしかも連休中なのにこの閑散)




 帰路は新幹線。妻が豚饅頭とたこ焼きを買っている間に、筆者が自由席の席取りをしておくことにした。やはり豚饅頭とたこ焼き両方では時間がかかり、目当ての「のぞみ 252号」は逃してしまった。

 20分後の「のぞみ 254号」はN700系で、「のぞみ 252号」とあわせ、新大阪始発の列車にもN700系が充てられるとは感慨深いものがある。乗り心地が格段にすぐれているため、筆者はN700系を愛好しているのでうれしい。また、家族にとっては初のN700系乗車である。

 「のぞみ 252号」には相応の数の乗車があった一方、わずか20分後の「のぞみ 254号」はガラガラに空いている状況だった。連休最終日であれば混雑したかもしれないが、筆者自宅到着見込みが22時頃という列車では、空いてくるのが道理かもしれない。途方もない混雑とつきあった四日間を顧みると、最後の旅程だけは楽な状況に置かれたのは、正直なところ助かった。





■ルーヴル美術館展(京都市美術館)

 清水寺からの帰り、三条駅のコンコースで「ルーヴル美術館展」のポスターを見つけてしまった。筆者は日常、絵画に興味を持っているわけではない。しかし、フェルメールとなれば話は別である。フェルメールの美しさは、絵心がなくとも感動を催すものがある。願わくば「青いターバンの少女」を観たいのだが、「レースを編む女」をじかに観られる機会など滅多になく、欲張り過ぎてもしかたない。

レースを編む女
ヨハネス・フェルメール「レースを編む女」(チケットを複写)


 国立西洋美術館での開催を観そこなっていたので、連休の最終日、まさに最後の機会に乗じて行ってみた。これはあくまで個人的興味なので、家族とは離れ単独行動になった。

 三十三間堂拝観の際に懲りていたので、京都駅から七条駅まで歩いてみる。連休最終日とあって、道路混雑は先日ほどではなかった。さりながら、歩いてみると、京都の道路網のスペックの低さが体感できる。京都は自動車がまともに走れる街ではない。

 七条から乗車し、三条で乗り換え、東山で降車する。三条−東山間は京阪京津線だった経緯があるというのに、京阪本線では連絡乗車券を売っていないことに軽い驚きを感じた。

京都市美術館
京都市美術館「ルーヴル美術館展」の行列


 京都市美術館に到着。「行列の最後尾はこちら」という案内に嫌な予感が走る。やはりというべきか、またかと嘆くべきか、今日も一時間待ちの行列となった。率直にいって、絵画の企画展にこれほどの行列ができるとはまったく予想外で、これはルーヴル収蔵品の魅力のあらわれ、ということなのだろう。

 館内はひどく混んでいたものの、「レースを編む女」は充分に堪能できた。当日規制線が張られていた唯一の絵で、立ち止まって観ることが許されず、また分厚いアクリル板による保護が質感を損ねたとはいえ、五回も間近に観ることができたのは幸せだった。僅か24×21cmの天地のなかに美の神が宿っているかの如し、一幅の絵を目の当たりにするだけでよろこびが湧いてくる。

京都市美術館
京都市美術館「ルーヴル美術館展」


 さて、帰路である。道路状況を再確認するつもりで三条まで歩いてみる。特段の渋滞がなかったとはいえ、この道路幅員の狭さでは厳しいと改めて感じた。東山三条交差点から見渡せば、かつてここで京都市電と京阪京津線が平面交差していた事実を、今となっては信じることができないほどだ。

 京都市街は西側はともかくとして、東山方面は道路状況が悪く、しかも観光資源が集中しているため、渋滞や混雑が発生しやすい。東山は心臓のようなもので、観光客を吸っては送り出す機能を持っている一方、梗塞を起こしかねない危うさをも内包している。京都は東山の混雑をどのように扱うつもりなのか。無為を貫くようでは、いずれ観光客の反感を買うだろう。かといって、歴史ある街ゆえインフラストラクチャーの積極的整備も困難だ。

 とりあえず、観光客は自衛するしかあるまい。京都は、殊に東山は、ひたすら歩く街である。







■番外余録の小話

 清水寺から清水五条駅に向かう道すがら。「六原商店街」という表示を見て。

夫「ああ、ここが六波羅か」
妻「六原って?」
夫「六波羅探題があった場所だが」
妻「六原短大?」
夫「あのなあ。日本史の教科書には必ず載っているのに、知らんのか。六波羅探題ってのは鎌倉時代の京都奉行というべき役所で、木下藤吉郎時代の豊臣秀吉も務めたことがある……、おっとそれは京都所司代か」
妻「京都女子大?」

 ちなみに、これは実際の会話ではなく、現地で思いついた駄洒落です、念のため。





■番外余録の小話(その2)

 行列の間あまりにも暇なので、筆者の両手親指中指で輪をつくり、太さ比べをした。

長女:腰回り(小一)
長男:股回り(小五)
筆者:首回り(四十路半ばのメタボ中年)

 あぁ、若いっていいなあ。(爆)





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