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なぜ主流ではないのか?〜〜空港アクセスバスの不可思議





■高速バスは強い……けれど

 筆者は高速バスに乗車した経験がそもそも少ない。それゆえ、高速バスに対する認識が的確でない面が、多々あるかもしれない。

学園都市駅 鳴門BS
神戸−徳島間高速バス  左:@学園都市駅前  右:@鳴門BS  (平成15(2003)年撮影)

 一般論としていえるのは、高速バスの高速性は新幹線と比べかなり劣り、在来線特急と比べ同等程度かそれ以上のこともある、ということである。通勤鉄道と比べれば、高速性はまったく懸絶しており、高速バスが明らかに有利である。

長野県庁
長野−松本間高速バス@長野県庁(平成15(2003)年撮影)

 地理を大幅にショートカットする高速道を走り、さらに在来線の規格が低すぎるため、本州−四国間を結ぶ高速バスなどは相当な発展を遂げている。JR四国の経営が厳しさを増しているというのは、高速バスとの競合に劣後していることも一つの主因として効いている可能性が高い。

徳島大学前 三本松BS
左:神戸−徳島間高速バス@徳島大学前  右:徳島−高松間高速バス@三本松BS
(平成15(2003)年撮影)

 しかしながら、高速バスが在来線(特急)を駆逐した、という例は寡聞にして知らない。高速バスは一般に運賃も安いから、ある程度以上の高速性が担保されていれば、かなりの競争力を有するはずなのに、独壇場が形成されないというのはむしろ不可思議でさえある。おそらくは大阪・神戸−徳島間が唯一の事例で、その他の区間では鉄道もそれなり以上の存在感を示している。





■空港アクセスバスも同様

 赤い砂兎様から御教示があったように、水戸−羽田空港間でも高速バスが実は相当有利、というのは意外であった。相手は在来線最高レベルを誇る「スーパーひたち」なのに、である。「意外」と簡単に記したけれども、筆者が認識していなかったからといって、空港アクセスバスが以前から存在していたことは事実としてある。そして、その特性が劇的に変化したわけでもない。首都高の渋滞の隘路が徐々に解消され、平均的には時を追うごとに高速性・定時性は向上されつつある、というのが実態であろう。

東京駅八重洲口
東京−鹿島神宮間高速バス@東京駅八重洲口(平成14(2002)年とも様撮影)

 筆者はしっかり認識しておくべきであった。渋滞の(少)ない高速道を使うという前提において、自動車・高速バスは在来線よりはるかに優る高速性を備えていることを。この点を主題として、現実世界で平成12(2000)年、筆者はある論文を世に問うたこともあるし、空港タクシーを素材にした記事( 初編続編 )を提供したこともあるのだから。些か甘かったと自戒する。

成田空港第二ターミナル
長野−成田空港間乗合タクシー@成田空港第二ターミナル(平成13(2001)年撮影)

 速く、安く、時間がある程度確実に読めて、しかも大荷物を気にせず乗ることができる……。これほど優れた特性を備える空港アクセスバスが、なぜ主流とならないのか。高速バス以上に不可思議千万である。あるいは、運行本数が少ないとか、知名度が低いなどの不利な要素が効いているのかもしれない。バスは全般に、ダイヤと停留所の場所がわかりにくく、利用者への案内は不利である。さりながら、優れた交通機関の案内がいつまでも不調法、というのもおかしい。コマーシャル・メッセージによる宣伝や、利用者の口コミなどで、その良さは十分に浸透していなければならない。

千歳空港
札幌−千歳空港間高速バス@千歳空港(平成17(2005)年撮影)

 重ね重ねながら、表題の疑問がどうしても拭えない。まったくの謎だ。この現象を説明しうるおそらく唯一の解答は、空港アクセスバス・高速バスには固有の(ひょっとするとキャプティブな)利用者層がついていて、鉄道と対等以上の選択肢にのぼっていない、ということくらいしかない。しかし、これはいくらなんでも乱暴すぎる要約であろう。鉄道による空港アクセスがむしろ例外であることは、かつて 記事にした ことがある。地方空港ではそもそも、アクセスバスが採算点に乗っている事例は稀少、というのが筆者の実感でもある(自動車アクセスが本当に圧倒的に強い)。バスが空港アクセス手段として主流でないことについては、いま少し時間をかけて分析したいテーマである。

松本空港
松本空港−松本IC乗換−長野間高速バス@松本空港(平成15(2003)年撮影)





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