このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

書評(平成18年10月02日)

『蛍の行方—お鳥見女房—』(諸田玲子著・新潮社)

  お鳥見女房シリーズの第2弾である。第一弾( 『お鳥見女房』 )も、以前この書評で紹介している。最近、諸田玲子さんの本を時々読むようになった。他にも、 『あくじゃれ』『其の一日』 などもこの書評で紹介したりもしている。

 こういったシリーズものは、間隔が開きすぎると、前の話を忘れてしまい、読んでいてちょっと不快になる。かと言って、既刊のシリーズ全てを続けて読もうとすると、疲れてしまうことも多い。これくらいの間隔で読むのが一番いいのかもしれない。

 インターネットでちょっとこの本の案内を調べてみた。(ハハハハ、また手抜きです)
内容(「BOOK」データベースより)
密命を帯び、主どのが消息を絶って一年余り。御鷹場を巡邏し、かげで諸藩を探る幕府隠密お鳥見役。留守を預かる女房珠世に心休まる日はない。身近で暮らす子供たちのひと知れぬ悩み、隠居となった父の寂寥、わけあって組屋敷に転がり込んだ男女と幼な子の行く末。だから、せめて今日一日を明るく、かかわりあった人の心を温めたい—。人が人と暮らす哀歓を四季の移ろいのなかに描く連作短篇集。

内容(「MARC」データベースより)
気苦労や不安の種はつきない。ならば、せめてかかわりあった人を温かい気持ちで満たしたい。幕府隠密お鳥見役の妻、珠世の愛情あふれるシリーズ第2弾。人が人と暮らす哀歓を四季の移ろいのなかに描く連作短篇集。

 これだけではあまりにも手抜きなので、私も少し紹介文を。
 前作で、幕府御家人お鳥見役・矢島伴之助の家に居候する石塚源太夫と、彼を父の敵として狙うが女剣士・沢井多津が、彼女も矢島家に源太夫共々居候し暮らすうちに、心が変わり、夫婦となる話まで進んでいた。公儀隠密の使命を受け沼津藩に出向いていた矢島伴之助が失踪し、なかなか消息がつかめなくなると、息子で次男の久之助が家出し、消息をつかむために沼津に向かう。また源太夫も、子供五人まで一緒にやっかいになっている恩人矢島伴之助のことであるので、松前藩に仕官が決まるが、それを捨てて、彼も沼津へと向かう。・・・・

 今回は、8話が収められ、矢島伴之助の妻で主人公の珠代が、留守を預かる彼女の身の回りで起こる事件を描いている。また勿論、沼津から久之助の便りや源太夫の一時帰還による報告などで、夫・伴之助の消息・動向なども時々伝わり、話が並行して進む。

 夫は沼津水野家と老中・水野忠邦との政争に関わり、危険な状況に陥る。珠世に心休まる日などないが、そんな心労を出来るだけ表に出さず、夫や久之助、源太夫(後には、沢井多津も沼津へ出向く)の無事帰還を願い鬼子母神などへ願掛けに参詣しつつ、留守を預かる珠代。その上、少禄で大所帯のため、自らの暮らしは苦しく貧しいが、それでも思いやりと愛情に溢れた慈悲の心で人々と接し、前向きで明るく生きようとする彼女の生き方には、じーんと胸にくるものがある。最後に、苦難を乗り越え、夫・伴之助はじめ、皆無事に帰還して、わたしもハッピーエンドを心から祝う気持ちになれた小説でした。

 今後も、このシリーズは読み続け、ココでもできるだけ紹介していきたいと思ってます。

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