このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |
恵那弁で使われているものを分類すると以下のとおりとなる。
(イ) | 今日はいい天気だ。 | 共通語(と思われている型。) |
(ロ) | 今日はいい天気です。 | 丁寧な形 |
(ハ) | 今日はいい天気や。 | 日常会話の型 |
(ニ) | 今日はいい天気じゃ。 | 日常会話の型 |
「だ」「です」は、話し言葉と書き言葉の両方に使われ、 「や」「じゃ」は話し言葉として使われる。「です」は丁寧に言いたいとき、 「だ」「や」「じゃ」は普通に言うときに使う。「だ」「や」「じゃ」の どれを使うかは個人の好みと気分によるが、「じゃ」はあまり使われない。
否定と過去の形を整理すると以下のとおりとなる。
肯定 | 否定 | 備考 | ||
(イ) | 現在 | 今日はいい天気だ。 | 今日はいい天気[じゃ|では]ない。 | (※1) |
過去 | 今日はいい天気だった。 | 今日はいい天気[じゃ|では]なかった。 | (※1) | |
(ロ) | 現在 | 今日はいい天気です。 | 今日はいい天気[じゃ|では]ありません。 | (※2) |
過去 | 今日はいい天気でした。 | 今日はいい天気[じゃ|では]ありませんでした。 | (※2) | |
(ハ) | 現在 | 今日はいい天気や。 | 今日はいい天気やない。 | |
過去 | 今日はいい天気やった。 | 今日はいい天気やなかった。 | ||
(ニ) | 現在 | 今日はいい天気じゃ。 | 今日はいい天気じゃない。 | |
過去 | 今日はいい天気じゃった。 | 今日はいい天気じゃなかった。 |
(※1)(イ)の否定に関して、「今日はいい天気でない。」「今日はいい天気でなかった。」と言うこともあるが、 粗雑な印象を受ける。書き言葉の場合は「今日はいい天気ではない。」、話し言葉の場合は 「今日はいい天気じゃない。」とするのが自然である。
(※2)(ロ)の否定に関して、「今日はいい天気でないです。」「今日はいい天気でなかったです。」 と言うことも観察されるが、敬語になれていない者の発言に聞こえる。
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一段動詞の場合は語幹に「た」を付けるだけである(語尾の「る」の代わりに「た」を付ける)。 五段動詞の場合は、一部の例外を除き下記の表のとおりに置き換える。また、語尾が「す」となるもの(サ行五段動詞) の一部は イ音便(※)の形をとる こともある。
言い切りの形の語尾 | 付ける語尾 | 例 | ||
k | − く | − いた | 書く | 書いた |
s | − す | − した | 貸す | 貸した |
s(※) | − す | − いた | 出す | 出いた |
t | − つ | − った | 勝つ | 勝った |
n | − ぬ | − んだ | 死ぬ | 死んだ |
m | − む | − んだ | 咬む | 咬んだ |
r | − る | − った | 刈る | 刈った |
w | − う | − った | 買う | 買った |
g | − ぐ | − いだ | 嗅ぐ | 嗅いだ |
b | − ぶ | − んだ | 飛ぶ | 飛んだ |
例外
行く | 行った |
問う | 問うた |
乞う、請う | 乞うた、請うた |
恵那弁で動詞の否定を表す表現は、「ん」型、「ない」型、「へん」型の 3つに分類できる。 「ん」型は、通常の会話に使われる型で最も頻繁に使われている。 「ない」型は、共通語と同型で、書き言葉または改まった場で使われる。 「へん」型は、「ある」の否定(あらへん)や強く否定する場合、文に非難の感情などを含ませるなど特殊な場合(書きゃへん、見やへん)に 使用される。「書けへん」と言った場合には「書くことができない」と理解されるが、自分から使うことはない。 「書くことができない」は「書けん」という。
筆者の勝手な作文なので参考までに。
「ん」型と「へん」型の過去の形については、「んかった」と「なんだ」の形の両方が使用されている。 若い世代になるに従って、「んかった」の形を使用する傾向がある。 これは、書き言葉として使用する「なかった」の形に引きずられて変化しているものと考えられる。
語尾に「ます」をつける形は、共通語と同じであると思われるが、参考に掲載する。
肯定 | 否定 | |
現在 | 書きます | 書きません |
過去 | 書きました | 書きませんでした |
形容詞文の過去と否定の形を整理すると以下のとおりである。
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書き言葉または改まった場では、「新しくない、新しくなかった」を 使用するが、日常会話では「新しょうない、新しょうなかった」(※1) 「新しいことない、新しいことなかった」を使用することが多い。 また、「白うない、白うなかった」は、「白ない、白ぅなかった」という形で 使われることが多い。「赤(aka)い」「高(taka)い」など語幹がア段の音で終わる 場合(ただし「わ」で終わるものを除く)には音便が見られる。例えば、「あさい[浅い]→あそうない」「かたい[固い]→かとうない」「きいない→きいのうない」 「うまい→うもうない」「はやい[早い、速い]→はようない」「からい[辛い]→かろうない」となる。そして、 「こわい[怖い、恐い、強い]→こわない」「よわい[弱い]→よわない」となる。
肯定 | 否定 | |
現在 | あかい | あかくない あこうない あかいことない |
過去 | あかかった | あかくなかった あこうなかった あかいことなかった |
(※1)共通語では「新しゅうない、新しゅうなかった」となる。
「新しいことない」は「新しいことあらへん」「新しいことあらすか」など 否定に若干の意味付けをした派生型がある。
共通語と同じである(「ございます」を付ける形を除く)。 「です」をつける形は明快であるが、否定の形に「です」を つけるのは不自然な感じが拭いきれない。「新しゅう+ございます」を活用するのが 本来の形であろうが、持って回った印象を受ける。「新しいです、新しくありません、 新しくありませんでした」が書き言葉においても無難に使えるものと言える。 現状では、どうしても書き言葉で過去を表したいときは「新鮮だった、斬新だった」など 形容詞を使わずに言い換えることになるのだろう。
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