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恵那弁

恵那弁における基本文型

名詞文

恵那弁で使われているものを分類すると以下のとおりとなる。
(イ)今日はいい天気共通語(と思われている型。)
(ロ)今日はいい天気です丁寧な形
(ハ)今日はいい天気日常会話の型
(ニ)今日はいい天気じゃ日常会話の型

「だ」「です」は、話し言葉と書き言葉の両方に使われ、 「や」「じゃ」は話し言葉として使われる。「です」は丁寧に言いたいとき、 「だ」「や」「じゃ」は普通に言うときに使う。「だ」「や」「じゃ」の どれを使うかは個人の好みと気分によるが、「じゃ」はあまり使われない。

否定と過去の形を整理すると以下のとおりとなる。
  肯定否定備考
(イ)現在今日はいい天気今日はいい天気[じゃでは]ない(※1)
過去今日はいい天気だった今日はいい天気[じゃでは]なかった(※1)
(ロ)現在今日はいい天気です今日はいい天気[じゃでは]ありません(※2)
過去今日はいい天気でした今日はいい天気[じゃでは]ありませんでした(※2)
(ハ)現在今日はいい天気今日はいい天気やない 
過去今日はいい天気やった今日はいい天気やなかった 
(ニ)現在今日はいい天気じゃ今日はいい天気じゃない 
過去今日はいい天気じゃった今日はいい天気じゃなかった 

(※1)(イ)の否定に関して、「今日はいい天気でない。」「今日はいい天気でなかった。」と言うこともあるが、 粗雑な印象を受ける。書き言葉の場合は「今日はいい天気ではない。」、話し言葉の場合は 「今日はいい天気じゃない。」とするのが自然である。

(※2)(ロ)の否定に関して、「今日はいい天気でないです。」「今日はいい天気でなかったです。」 と言うことも観察されるが、敬語になれていない者の発言に聞こえる。

動詞文
恵那弁の動詞文の否定と過去の形を整理すると以下のとおりとなる。
(五段動詞)
肯定
否定
現在
書く
書かん
書かない
書[か|きゃ]へん
過去
書いた
書かんかった
書かなんだ
書かなかった
書かへんかった
書かへなんだ
(一段動詞)
肯定
否定
現在
見る
見ん
見ない
見[ら|や|い]へん
過去
見た
見んかった
見なんだ
見なかった
見[ら|や|い]へんかった
見らへなんだ
「する」(サ変)
肯定
否定
現在
する
せん
しん
しない
せやへん
しやへん
過去
した
せんかった
しんかった
せなんだ
しなんだ
しなかった
しやへんかった
しやへなんだ
「来る」(カ変)
肯定
否定
現在
くる
こん
こない
こやへん
きやへん
過去
きた
こんかった
こなんだ
こなかった
こやへんかった
きやへんかった
こやへなんだ
きやへなんだ
過去の形の作り方

一段動詞の場合は語幹に「た」を付けるだけである(語尾の「る」の代わりに「た」を付ける)。 五段動詞の場合は、一部の例外を除き下記の表のとおりに置き換える。また、語尾が「す」となるもの(サ行五段動詞) の一部は イ音便(※)の形をとる こともある。
 言い切りの形の語尾付ける語尾
k− く− いた書く書いた
s− す− した貸す貸した
s(※)− す− いた出す出いた
t− つ− った勝つ勝った
n− ぬ− んだ死ぬ死んだ
m− む− んだ咬む咬んだ
r− る− った刈る刈った
w− う− った買う買った
g− ぐ− いだ嗅ぐ嗅いだ
b− ぶ− んだ飛ぶ飛んだ

例外
行く行った
問う問うた
乞う、請う乞うた、請うた

否定の3型

恵那弁で動詞の否定を表す表現は、「ん」型、「ない」型、「へん」型の 3つに分類できる。 「ん」型は、通常の会話に使われる型で最も頻繁に使われている。 「ない」型は、共通語と同型で、書き言葉または改まった場で使われる。 「へん」型は、「ある」の否定(あらへん)や強く否定する場合、文に非難の感情などを含ませるなど特殊な場合(書きゃへん、見やへん)に 使用される。「書けへん」と言った場合には「書くことができない」と理解されるが、自分から使うことはない。 「書くことができない」は「書けん」という。

否定形の形による意味の違い具体例

筆者の勝手な作文なので参考までに。

  1. 雪のせいで電車が来ん。(a)(単に来ない事実を言っている)
    雪のせいで電車が来やへん。(b)(来ないことに不満を持っている感じがする)
  2. そんな話は聞いとらんよ。(a)(単に聞いていない事実を言っている)
    そんな話は聞いとらへんよ。(b)(全く初耳でびっくりした感じが伝わる)
  3. うちの坊に綴り方書けと言っても書かへん。(a)
    うちの坊に綴り方書けと言っても書きゃへん。(b)(aよりもbの方が困った感じが出る)
  4. 時間に行ったけど 人がおらんで どうしようもないに。(a)(文全体としてあきらめを表す感じ。)
    時間に行ったけど 人がおらへんで だちかんに。(b)(文全体として非難する感じ。)
「んかった」と「なんだ」

「ん」型と「へん」型の過去の形については、「んかった」と「なんだ」の形の両方が使用されている。 若い世代になるに従って、「んかった」の形を使用する傾向がある。 これは、書き言葉として使用する「なかった」の形に引きずられて変化しているものと考えられる。

丁寧な言い方

語尾に「ます」をつける形は、共通語と同じであると思われるが、参考に掲載する。
 肯定否定
現在書きます
書きません
過去書きました書きませんでした

形容詞文

形容詞文の過去と否定の形を整理すると以下のとおりである。
 肯定否定
現在新しい
新しくない
新しょ(う)ない
新しいことない
過去新しかった新しくなかった
新しょ(う)なかった
新しいことなかった
 肯定否定
現在白い
白くない
白(う)ない
白いことない
過去白かった白くなかった
白(う)なかった
白いことなかった

書き言葉または改まった場では、「新しくない、新しくなかった」を 使用するが、日常会話では「新しょうない、新しょうなかった」(※1) 「新しいことない、新しいことなかった」を使用することが多い。 また、「白うない、白うなかった」は、「白ない、白ぅなかった」という形で 使われることが多い。「赤(aka)い」「高(taka)い」など語幹がア段の音で終わる 場合(ただし「わ」で終わるものを除く)には音便が見られる。例えば、「あさい[浅い]→あそうない」「かたい[固い]→かとうない」「きいない→きいのうない」 「うまい→うもうない」「はやい[早い、速い]→はようない」「からい[辛い]→かろうない」となる。そして、 「こわい[怖い、恐い、強い]→こわない」「よわい[弱い]→よわない」となる。
 肯定否定
現在あかい
あかくない
こうない
あかいことない
過去あかかったあかくなかった
こうなかった
あかいことなかった

(※1)共通語では「新しゅうない、新しゅうなかった」となる。

「新しいことない」は「新しいことあらへん」「新しいことあらすか」など 否定に若干の意味付けをした派生型がある。

丁寧な形

共通語と同じである(「ございます」を付ける形を除く)。 「です」をつける形は明快であるが、否定の形に「です」を つけるのは不自然な感じが拭いきれない。「新しゅう+ございます」を活用するのが 本来の形であろうが、持って回った印象を受ける。「新しいです、新しくありません、 新しくありませんでした」が書き言葉においても無難に使えるものと言える。 現状では、どうしても書き言葉で過去を表したいときは「新鮮だった、斬新だった」など 形容詞を使わずに言い換えることになるのだろう。
 肯定否定
現在新しいです
新しゅうございます
新しくありません
新しくないです
新しゅうございません
過去新しゅうございました
新しかったです
新しくありませんでした
新しゅうございませんでした
新しくなかったです
 肯定否定
現在白いです
白うございます
白くありません
白くないです
白うございません
過去白うございました
白かったです
白くありませんでした
白うございませんでした
白くなかったです


阿木村総合案内板 2000年3月29日設置 E-mail: agi_jin_sa@yahoo.co.jp
2005年1月6日作成

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