このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください


Devise 02
お料理教室に似たそれら



負けるな!ようらんせいじん by弥夜こだわりの一品



お さ ら い

培地(ばいち)とは、培養ビンの中に入れる様々な養分が含まれた
寒天
のことです。
ビンの中は無菌状態を保つためにによる滅菌がされています。
植物は無菌状態の隔離された環境内で培地の養分と僅かな空気だけで
育つことができます。
培地を固めるのは普通の寒天ですが、、寒天状にしない液体培地も存在します。

前回の内容はおぼえてるでしょうか??
『ラン科植物は、胚乳がありません。』って内容ですよ、、、

自然界ではラン菌の共生によって発芽は可能なんですが、、、
何千〜数百万粒の種の中から成株になれるのはほんのわずかなんです(涙)

そ・こ・で「人工的に殖やそうぜぇ」っと誰かが考えた技術が無菌培養なんです。



■□■ 培 地 の こ と ■□■
ビンの中はちっちゃな無菌の地球


今回は、培地の作り方!

無菌播種(種まき)までに作れるようになってると嬉しいですね。
ちなみに今回の培地は主に播種用に使います。
播種用は一般より少し低濃度で、生長して大きくなってくるにしたがって
濃度少し上げていくと上出来です。

少し知識がある方は培地と聞くと、ハイポネックス培地MS培地
ホワイト培地、ガンボルグ培地、VW培地など色々思い浮かべると思いますが、
大きく分けて2種類あります。
1つは、簡素なタイプで簡単に早く作れ、主に増殖用に使いローコスト。
無機塩類も普通に用いる肥料(液肥)で代用するもの。
今回作るのもこのタイプです。ハイポネックス培地など。

もう1つは、化学薬品を順番に溶かし込んだ通称透明な培地というやつです。
20種類以上の薬品を溶かし込む本格的な実験用
自分なりに組成を微調整でき、知識があればオリジナル培地が作れます。
植物が特に好んで吸収する成分を入れて専用の培地ができますね。
イネなどはケイ素、ポインセチアはモリブデンが好物。
蘭にも好物がきっとあると思うんですか、私はまだ知りません。
しかし、培地のほとんどが1960〜70年代に作られた組成を未だに使っています。
Knop培地に至っては1884年に作られた、たいへん古くさいものです。
よく見掛けるものでMS、VM、ホワイトなど多数あります。

「なんで、新しい組成の培地を作り出さないんだ!?」って思うでしょう??
なぜかと言いますと、使う用途が研究や実験に主に用いられるという
事だと思います。
研究ですから特に正確なデータを必要とします。
同一な条件=同じ培地や環境を作り出す事が必要になってくるわけですね。
だから昔から使われてきているようです。
今では新培地など作られて、研究されているんでしょうかねぇ。


培地の成分は主に、水、無機塩、有機化合物、天然有機物、
植物体を支える支持材
で構成されます。
植物が育つには、必須16元素というものがあります。
H O C(空気・水) N P K(大量要素) Ca Mg S(中量要素)
Fe Mn Zn Mo B Cl Cu(微量要素)

(全部わかるかな??これは基本ですよ。微量要素がわかりにくいかな?)

一般に植物が吸収する要素は、1平方メートル四方で大量要素は年間5kg以上
中量要素は年間2kg前後、微量要素は年間.100g以下だと習いました。
これ以上の話はアボガドロ定数やモル濃度、イオンの話になるので、、
やめておきましょう、、、


言えることは、同じようにビンの中でもそれらをほとんどクリアしている
必要があると言うことですね。


では!具体的に考えていきましょうね。

まず空気はクリアしてますね?

無機塩類とは主に肥料成分の事ですね。
今の肥料は優秀ですから、中量&微量要素も含まれているものも多いです。

有機化合物というのは、主に砂糖などの炭水化物の事です。
アミノ酸イノシトール植物ホルモンなども含まれます。

天然有機物というのは、バナナジュースジャガイモジュース
ココナッツミルクココナッツジュース、ペプトン、活性炭素などが含まれます。
「なんでこんなもん入れるねん!」って突っ込まれそうですが、、
後で説明してますから、、とりあえず今は読んでね。

植物体を支える支持材とは、読んで字のごとく、植物を支える用土です。
用土と言ってもビンの中では、寒天が適切として今まで使われてきました。
ただし、スポンジのような物やバーミキュライト、ろ紙にロックウール
などに液体培地に染み込ませてやる方法も工夫次第で出来ると思います。

私も似たような実験は行ってきましたし、もしアイデアなどあれが相談に乗りますよ。
メリットデメリットをわかる範囲でお答えします。
やってみないとわからない事が多いですからね、手助け出来れば幸いです。




●○● や る 気 出 て き た? ●○●


■ まず! 準備するものです。

(1リットル分作る時)
1リットルが計量できるメジャーカップミキサー圧力鍋
量り(出来たらg刻み)・培養ビン(ガラスが良い)・アルミホイル
またはビンにはまる専用キャップ粉末ハイポネックス(普通の液肥で可)
砂糖(グラニュー糖)・寒天粉末バナナ


■ 準 備 運 動

1リットルのメジャーカップは、電子レンジ対応メモリ付きが良いです。
金属製でもOKですし、電子レンジに掛ける時&1リットルに合わせる時
以外は、容器の種類は問いません。

量りは料理用の物で十分です。もっと細かく量りたい方は、
レター用の量りなどを使うと良い。100円ショップでも売ってるよ。

培養容器は、圧力鍋の大きさで決まります。
素材はガラスが良い。ポリプロピレン製でも可能です。
ジャムのビンやワンカップなどのお酒ビンでもOK。
100円ショップでジャムビンなども売ってました。
三角フラスコはホームセンターで売ってます。
もっと究めたい方は理化器械取り扱い代理店などで入手可。
キャップも、ジャムのビンに付いてる金属のものをそのまま使用でOK。
ポリプレピレン製ならさらによし、アルミホイルを3重掛けでも大丈夫。
ジャムの金属キャップは長期間使うと錆びてくるので注意。
あと、ジャムのビンなどの口が広い場合はアルミでは信頼性が落ちます。
作業する時も、口が広いので、雑菌を受ける面積が大きく不利です。

ハイポネックスがなければ普通の液肥で十分ですよ。
ただし、油粕などの固形有機肥料は駄目。できれば化学肥料。
砂糖はグラニュー糖で問題なし。

バナナは普通のバナナ。青いバナナが良いとか完熟の物が良いなど色々です。
私は貯蔵の面から出来るだけ青いバナナを買ってきます。
余った分は皮を剥いて、半分に切り、ラップで包んで冷凍保存
できるだけ新鮮な状態の物を使いたいですね。
半分に切るのは、計量時や保存の時に出来るだけ無駄のないようにしてます。
小分けに出して解凍した方が何するにも良いでしょ?

寒天は、出来れば粉末が使いやすいですよ。
伊那食品工業さんのかんてんぱぱがおすすめでしょうかね、、
棒寒天で行う場合は、乾燥状態で計量し、いったん水で戻し、
ダマが出来ないように完全に溶かします。
粉末以外は電子レンジより、鍋でやった方が溶けやすい。
直火だと焦げるので、できるだけ湯銭がいいですよ、、
作業の簡素化にはやっぱ粉の方がいいんだけどなぁ〜



■ 算数のお勉強の時間

さて、、培地などには濃度があります。
あなたは、濃度計算最低限必要な単位はご存知?
「いや!忘れたぞ」っという方のために、算数をしましょう。

まず単位から!
主に使う、(パーセント)の他に、ml(ミリリットル)、(リットル)
(表示の関係で大文字のLとします)
mg(ミリグラム)、(グラム)、kg(キログラム)、
ppm(ピーピーエム)(たしかパーツパーミリオンの略)

ちょっと難しいかもよ?
100分の1の単位ppm100万分の1の単位という事を覚えて下さい。
ppmは家庭の培養程度では滅多に使いませんが、
汚染物質などの単位として新聞でも取り上げられてますから覚えなさい。
(命令か?)

1kgは1000gこれはOK? 
では1gは1000mg、これもOK?
1kgは1'000'000mg、わかる?
1L1000ml、これもOKね。
(たま〜に1グラムを100ミリグラムだと思ってる人がいますが、、)

ではいっくよ〜
1000ml中10g入れたら??  答えは1%
1000ml中1g入れたら  答え0.1%
1000ml中1mg入れたら 答え1ppm
1ppmは0.0001%

%(パーセント)は、100分の1の単位。
ppm(パーツパーミリオン)は、100万分の1の単位。
ミリは1000分の1の単位です。
ミリオンセラーとか、ミレニアム、ミレナリオとかよく言いますよね?

0.001%=10ppm
0.01%=100ppm
0.1%=1000ppm
1%=10000ppm
っとなるわけですね。
つまり地球の二酸化炭素の濃度は0.03%=300ppmとなるのですよ。
どうだまいったか!理解出来るまでキミは居残りだ!




♪ では培地作り開始!!
まずは計量の準備今回作る培地は播種用です。
移植用とは組成が少し違います。


今回準備したものの一部
 左上から・・・寒天の粉末・ハイポネックス・液肥・砂糖
 左下から・・・バナナ・天秤・メジャーカップ

べつにこれらすべてがなければ出来ないわけじゃ
ないので家庭であるものを使えばなんとか、、
出来ません??        
薬品を計量画像の量を参考にしてね。
ちょうどこれで3gですよ。
ただし、薬品によって比重が
違うので注意です。
1.カップに水を入れます。
6〜700mlをカップに入れます。(水道水で十分可能)
(こんなのは正確に量らなくていいですぅ。楽勝でしょう)
水のかわりに熱湯を使えば薬品も溶けやすいし
沸騰も早いよ。

2.薬品を溶かしていきましょう。

ハイポネックス3g(0.3%)
砂糖(グラニュー糖)20g
計量は『小さじ一杯』程度の感覚でやれば十分)
数字は目安です。
※ハイポネックスがない場合、代用で普通の液肥でも大丈夫。
洋蘭の液肥を3ml入れてもOKです。 今回はフジ園芸さんの液肥を使いました。
私はいつも、このフジさんの洋蘭専用液肥を使っています。
このジュース誰が飲むんや!おまえか!!?3.バナナをミキサー
バナナ約30gをミキサーでジュース状になるまで行い
それを培地に入れます。
バナナと適量の水を入れ丁寧に作りましょう。
(30gは市販のバナナの約3分の1と
おぼえておきましょう)
ただし、ミキサーする時に水を入れ過ぎると
1リットルをオーバーしてしまうので注意。
画像を参考にやって下さいね。
※余った物の保存はミキサー前なら皮を剥いた状態でラップに包み冷凍保存します。
ミキサーしてしまったら、バニラエッセンスと牛乳を入れて飲んでしまいましょう。
※バナナジュースはpH値(酸〜アルカリ性の数値、pH7が中性)を安定させ
緩衝作用もあるので使うと良いと思います。ジャガイモでも可能です。
一般に培地のpHは5.5〜6.0の間、標準では5.8で無難。
pHによって、寒天の硬さが若干変わります。

今回の播種には、バナナジュースは直接的に関係はしてないです。
もともと、播種にはあまり問題とされないと思いますし、私が播種作業を行う時も
バナナやジャガイモが入っていない培地を使用します。
では、なぜ今回はバナナを入れるのか!?っというと、
上でも書いていますがバナナは、pHを引上げ緩衝作用があります。

通常、pHを調整するには、水酸化ナトリウム塩酸を使います。
なぁ、水酸化カリウムやクエン酸でも出来ると思いますが、、、
危険な物のために、家庭ではとても扱えるような薬品ではありません。

ですから、pHを調整する=バナナやジャガイモを使う。っという事なのです(どうよ!)
だから今回のバナナの目的はpHの調整なわけですよ。
それと、寒天の固まり具合もありますからね。

でも、なぜジャガイモではないのか!?っというと、、皮を剥くのがめんどくさいからです(笑)

私は、ジャガイモとバナナを使い分けていますが、、経験やカンの部分が多いので
ここに書くのは止めておきます(すいません、、、)
pH測定。pHの「p」は小文字でねすっごいわかりにくい画像
真ん中のちょっと下が
5.8付近になってます。
実際に同条件でpHを調査しました。
約5.6でした。
ハイポネックスや液肥の種類によって、
もともとのpHが違うので注意が必要ですが、
普通のものならまず心配ないです。
pHも特に測る必要もないです。
普通はpH4〜5ぐらいの液肥がほとんどです。

4.寒天8〜9gを入れる。
寒天は粉末が計量しやすくてベターですが、
なければ棒寒天でOKです。
粉末の場合、よく攪拌しながら
少しずつ溶かして下さい。
ダマが出来ないようにします。
普通の水では寒天は5gほどで固まりますが
培地
ではその2倍ほど入れないといけない。
それは、加熱やpHの影響、培地に含有する成分に影響するからです。
有機酸塩、尿素、粘土鉱物などは、寒天の固さを強める役割もある。

培地の硬さは、寒天の量でも変わりますが、pHでも若干変化します
中性
に近づくほど固くなる。
熱する時間が長すぎたり、放冷温度が高く、ゆっくり温度が下がった
場合は柔らかくなる。時々固まらない場合もあるかも、、
培地を調合して寒天を入れて、1日おいてから加熱した場合も失敗する時がある。

また、寒天の他にゲル化剤として、ゲランガムがあります。
実験用の薬品ですが、少々扱いにくいので慣れるまでは寒天にしておきましょう。
ゲランガムと寒天の違いは固まるメカニズムが違います。
ゲランガムは2価の金属イオン(Ca++ Mg++)などで硬化するため、
液肥などの種類によっては硬化しない場合もあります。
フジ園芸さんの洋蘭専用液肥では硬化しないです。
私がやる時は、硝酸カルシウムを1Lに0.5〜1gほどいれて硬化させてました。
あと、塩化カルシウムを入れるのもいいと思います。
溶かす時もダマになりやすいので、コツが必要ですね。(なかなか溶けない)
あと違うところは硬化温度範囲が狭く30〜45℃の間で狭く急速に硬化します。

あと、よく言われるのが、寒天は原料が天然の物なので、不純物が含まれる。
特にナトリウムなどが含まれると植物の生育を阻害する場合があり、
それを心配してゲランガムを用いる場合もあります。
私も、経験上ゲランガムを使用する方が発根が良く、生育は良好でした。
なぜなのかは未だに不明ですが、とにかく変化はありましたよ。
5.1リットルに定量
もし定量する時に目盛りなどがない容器は、裏技として重さで計量するのもアリ。
あらかじめ、水1リットルを量っておいて、重さで計量する技。
でも家庭のお料理で使ってるものがあればそれで十分です。

奥さんに「そんな得体の知れないモノを量らないでよ〜」っと怒られた場合は、
ペットボトルを用意し、1リットルを予め量って、マジックでラインを引き、
自作のメスボトルを作りましょう。500ミリリットルの線も引いておけばさらに便利!
※定量後に寒天を入れても問題ありません。
定量後に寒天を入れた方が作業しやすいかもしれませんね。
6.電子レンジで沸騰・溶解
寒天が完全に溶けるまで加熱します。
コツは定期的にかき混ぜ攪拌すること、ダマが出来るとなかなか溶けません。
水からなら13分程度で沸騰!お湯なら7分(自分はお湯からやってます)
※レンジ専用容器がない方は、、、鍋で沸騰・溶解して下さい。手間ですが。
※バナナジュースが入っていると、吹きこぼれる場合があります。
熱くなってきたら絶対目を離さない事!
熱い培地を容器へ培地の量は画像を参考に7.分注
培養ビンは特に指定の物はありません。
ジャムのビン・ジュースのビン・ワンカップのビン・
三角フラスコなどなど。
ちなみにフラスコはホームセンターなどで売ってました。
ジャムのビンとかは100円ショップで見つけた。
専用器具が欲しい方は、タウンページなどで理科器械店を
調べれば見つかると思います。
分注する培地の量は適当でOK。
300〜400mlのジャムの容器やフラスコの場合は
100mlぐらい分注すればいいと思います。
※分注量や容器によって苗が育つ本数などが決まります。
大きな容器で培地も多ければ沢山の苗が育ちますね?
(100℃以上120℃に耐えられる物が条件です。)
ここまで密着出来たらプロ並みか!?8.アルミホイルでキャップ
画像の様に軍手でシールするように
密着させるのがコツ。
ここから雑菌入り込むわけですから
シッカリと。
上部がカップメンのフタみたいに
シワがない
のがベスト。
素手よりも、出来るだけ軍手で擦るように。

折り目を付けながらアルミを何回も折り返して
傘の様にフタをしていけば、外す時も簡単です。
グシャっとやってもいいけど外す時に大変です。
この時おもいっきり振ったよ。わかってると思いますが
毎回振って確認する必要は
ないですよ、、、


こんな感じでしょうか
9.高圧蒸気滅菌
培地が固まり出したら成功!
画像の様にフリフリ振っても崩れない!
(でもカチカチではないプリンプリン状態
この様な状態になったらいよいよ最も重要な行程、
滅菌です。
(固まってから滅菌した方が利口ですよ。)
ここでは圧力鍋を使います。
培地などを滅菌する場合は
120℃/1.2気圧/15分
というのがセオリーです。
ただ鍋ではそこまでわからないので、
弱火で始めて、蒸気が勢いよく出始めてから
20〜30分程度。
圧力の急な変化は大変危険ですので
焦らずゆっくり

圧力鍋やオートクレーブ(圧力殺菌釜)の使い方は
蒸気で滅菌するわけですから、
適量の水を底にはり、その蒸気で滅菌します。
多い分には大丈夫ですが、少なすぎると空焚き
してしまい、鍋が高温になり、焼き付きます。
「ビンが水に浸かるけど大丈夫?」って意見も
ありますが大丈夫だと思います。
圧力鍋に、水温計や圧力計が付けられれば良いんですけど、、、
車(レーシングカー)についてるようなものなら、ドレンコックみたいに取り付けも
出来るんでしょうかね?
鍋に穴開けて、ナットを溶接すれば、取り付けは簡単だと思いますが。
温度計がついている圧力鍋があればそれで済むんですけど、、売ってないんでしょうか??


※なぜか圧力鍋なのか!?
カビや雑菌は100℃では死滅しません、、、
120℃以上で滅菌する必要があります。
さて、、ビンの中は密閉されていますが、中は寒天と言えども水です。
通常の大気圧では水は100℃で沸騰してしまいます。
しかも、培地は真水ではないので、100℃以下で沸点を向かえます。
ちゅ〜ことは、圧力を上げれば沸点を120℃に出来るわけです。
いくら外が100℃以上になっていても、ビンの中は100℃以上にはなりません。

ピンセットやメスは金属なので、アルミホイルで隙間なく包み
オーブンで滅菌できますよ。
試験管やシャーレなどの水が入ってない物は、オーブンで滅菌出来るかな??

※よくある?キャップ跳び現象の謎
特に減圧状態で(滅菌終了してから90℃ぐらいの時)フタを開けたり外気に
触れると、中では再沸騰が起こり、勢いでキャップが跳んでしまう事があります。
アルミキャップではあまりないですが、ポリプロピレン製などは多いです。
今ではあまりないですけど、古い滅菌釜を使った時に栓が跳んだ経験をしました。
プラスチック類はガラスの10倍ほど熱で膨張すると聞いたことがあります。

またガラスビンの底が割れて綺麗に抜ける場合が多いです。
滅菌開始時も弱火でするのもその為です。強火厳禁
なぜ、瓶が割れるかというと、ガラスの厚みが厚いからです。
実験用のガラスは薄く作ってあるので激しい温度差や熱の膨張にも耐えられる。
しかし、普通の瓶は厚みがあるために、急激な熱による膨張収縮をすると
耐え切れず割れてしまいます。

1升瓶をスパッと輪切りに切りたい場合は、切る部分をバナーで良くあぶり
一気に水や油にジュッっと浸ければあら不思議。
水面部分の境目からスッパリ切れているはずです。
これは、ガラスの性質を利用した瓶を切る方法です。
この事が、培養ビンでも起こる場合があるのですよ。
コンタミの例。腐海か?(ネタふる!)10.静置と保存
約20℃の場合、1週間〜10日静置して
カビやバクテリアが発生しなければ中は
無菌状態が保たれています。
滅菌は成功!
もし画像の様にカビが発生したら使えませんし、
他のビンも滅菌不足が予想されますので
注意して下さい。
※画像は、コンタミ(コンタミネーション)
(カビが生えること)の例です。
画像左:ちょっとやばいバクテリア。
画像右:道端でよく見掛けるカビ君。
最後に培地の保存方法です。

管理場所はお約束の冷暗所です。
光は長期間当たると成分が分解される場合があります、
まぁあまり気にしなくていいですが、、
それよりも温度ですね。光が当たると温度が上昇してしまいます。
今問題にしてるのは温度差です。激しい温度差の場所は避けて下さい。
いくら無菌状態のビンの中でも温度差によって空気
膨張収縮を繰り返します。
密閉された空間なのに、膨張収縮をすれば、どうなるでしょうね?
膨張時にビンの中の空気を外へ押しやり
再び収縮時には外気の雑菌まで吸い込む
何ともなかったはずのビンがある日突然カビだらけに!!って事も。
経験上の事ですが、、10℃以上の差は危険かも、、
もちろん培養中にも常に注意しないといけないですよ。

ただし、空気抜き弁を培養ビンにつければ、かなりコンタミは防げます。
大袈裟に聞こえますが、なぁ〜に簡単。
綿で詰めた栓や特殊な雑菌を通さないメンブレンフィルター
シールの事です。
空気は通せど菌は通さず、、って物ですよ。
培養中に不足しがちな新しい空気も常に取り入れる事が可能です。
ただし、そのシールは高価なので趣味で行うには考えてしまいますね。
理化器械店で販売していますよ。紙のような質のものや、
テフロン製のものなどもあります。
安い物があれば是非装備させたいものですね。
ゴム栓なら、ドリルで穴を開けて綿を詰めれば簡単にできます。
業者さんからフラスコを購入すると、よく見掛けるはずですよ。

話を最初に戻しますが、結果的に一番良い置き場所は冷蔵庫ですね。
(説明ばっかりで早く言えって?)
スペースがあれば是非。なければ上記をふまえてそこらへんにでも、、
戸棚の中とかね。




 

◆ 暇なら読んで下さい。参考になるかもしれませんよ ◆
暇ではなければ読まなくてもいいんですよ。
無菌環境について少し書いてみましょうか。

無菌状態(培養ビン内)では植物は基本的に無機物を吸収します。
簡単に言うと水に溶けたものが大好きなのです。

だから本来植物はバナナやジャガイモなどの有機物は吸収出来ない理論です。
ただ、本当の事は私にはわかりません。たぶん何らかの形を変えて
吸収していると思っているんですが、、どうなんでしょうね。

砂糖などの炭水化物や植物ホルモンなどの有機化合物は吸収出来るようです。
なんせ私は高校しか出てませんからね、そのへんの詳しいメカニズムはわかりません。

ただ、砂糖も植物ホルモンも水に溶けているので、それででしょうか、、
イオンの形になれば吸収出来そうですね、なんとなく、、。
有機肥料の液肥でも、水に溶けて分解されていれば吸収出来そうですよ。
フジ園芸さんの洋蘭専用液肥は有機肥料でアミノ酸も含まれる優れものです。
無菌培養用にも開発されたと聞いた事があるし、とても有効らしいです。
私も洋蘭専用液肥を使い、なかなか良い結果も出ていますし、実績もあります。
あと宣伝するならバイタリックもいいと思いますよ。
培地にバイタリックを少し加えてますが、わりと良い感じだと思います。
そうですねぇ〜、1リットル中に1〜2mlほどですね。培養する物にもよりますが。

また、ココナッツミルクには天然の植物ホルモン同様の成分が含まれているようで、
メリクロン培養などの時に使われたりします。
植物ホルモンを使用すると、細胞がカルス化しやすくなったり、
腋芽や眠っている生長点の働きを促進したり、根の動きを活発化させたりします。
また、葉片や花粉といった生長点がない細胞からでも増殖することが可能。
ユリなどは、ほとんどの細胞から増殖出来る事が知られていますね。

植物ホルモンの種類もBA(ベンジルアデニン)やNAA(ナフタレン酢酸)、
2.4-D(ジクロロフェノキシ酢酸)、カイネチン、ジベレリン、
野菜の分野ではトマトトーンなどがあり、
大きく分けて、サイトカイニンとオーキシンで区別されます。
作用する場所や効果も様々で、人体に影響がある物が大半。

2.4D系は除草剤にも使われ、ベトナム戦争で用いられた枯れ葉剤はこの仲間です。
薬品には発ガン性があり、植物ホルモンの中では非常に安定しているために
逆に体内などに入った場合、分解が遅くなってしまう。(んであんな始末よ、、)
また、種なしブドウなどに使われるジベレリンは1937年、東大の薮田・住木氏が
イネカバ病より採取し、発見されたとされている。(私の記憶では、、)
ただし、非常に高価なもので、薬品自体も危険なものが多いので、
家庭でやるには不向きです。

また、植物ホルモンを多用すると、突然変異が発現したりする事が多く
諸刃の剣になってしまいます。使い方次第という事ですね。

私はいつも茎頂(生長点)培養にはBA1ppmを入れてやってました。
ファレノプシスの花茎培養を行う時は、BA5ppm・NAA2ppmで行っていました。
100ppmや200ppmなどの高濃度は常識の範囲を超えてます、、
10ppmでも私にとってはわりと高い濃度だと思いますがね、、、

BA1ppm(1リットル中に1mg含有)では、0.00537mmol(ミリモル)
NAA1ppmでは、0.00443mmol = 0.0000044molとなります。
60200000000000000000000000個の世界を堪能してくれ諸君!
6千垓個(億兆京の次)のアボガドロの定数を!!
(モルやNがわからない人は無視)


話を戻しますが、バナナやジャガイモを添加するのは、
ただpH(酸度)を調整したり緩衝作用があったりする
効果を狙う場合が多いようですね。(今回の培地作りも例外ではない)
多少は上で書いたような効果はあると思いますが、私にはわかりません。

「そ、それじゃ野菜とかの有機栽培は?どうなってるの!?」って話ですが、、

たとえば、肥料として油粕を施肥しても「おいしぃぃ〜」と植物がそのまま
食べるわけではなくて、土壌に沢山棲んでいる微生物達が分解した物を
根などから吸収しているので、最終的には同じ事になるんですよ。
微生物に分解されて、初めて植物が吸収出来る形になる。

でも培養ビンの中は無菌で、分解してくれる人も死んでるので無理ですね。
ですから、培地に油粕の固形肥料を入れても、大きな効果はないと思います。

あと、微生物がいてもコレはさすがに無理ですよ、、
「鉄分が必要だから」っと言って、
植木鉢や培地に鉄釘を入れても効果はないですよ。
(薬品で溶かして入れれば効果あるかも、、水に溶けたわけだから)
またに、勘違いしてやってる人がいます。

あとは、卵の殻とかもそのままでは効果は少ないと思います。
雨や水などで、殻が徐々に溶けて分解され、カルシウム成分などが流れれば
効果は出てくると思いますよ。
ただし、今話してるのは吸収という事だけなので、他に色々な要因や
条件が重なって結果的にはうまくいってて効果が出てる場合も
多くありますから否定はしません。葉に牛乳かけたり、米のとぎ汁やったりね。
牛乳やとぎ汁もゆっくり発酵させれば効果あると思いますよ?臭いけど、、
まぁ葉にかける牛乳は、虫避けとからしいですけどね。


ちなみに、土壌1g当たり
地中動物(ミミズ除く) 大きさ100〜200μ(ミクロン)のが10〜50の数が
原生動物(アメーバなど) 大きさ10〜200μ  数1000〜100000
藻類              1.5〜50μ       1000〜100000
糸状菌(カビ)         3〜100μ       1000〜100000 
放線菌(アクチノミセス)  0.5〜50μ    100000〜1000000
細菌(バクテリア)      0.3〜10μ 1000000〜100000000
ほどが生存しているといわれています。(ミクロン=1mmの千分の1の単位)

また、低温度(10〜20℃)では腐敗菌が
中温(25〜40℃)では糸状菌、酵母、病原菌が
高温(50〜60℃)では乳酸菌が、活発に活動すると言われています。
もちろん滅菌時には、低温性のものは熱に弱く、
高温性のは熱に強いという事です。

さらに言うと、微酸性のpH4〜6では、糸状菌や酵母が
中性〜微アルカリ性のpH7〜8では細菌が増殖に最適なpHとされている。

好気性菌は(酸素がないと生育しない)糸状菌、枯草菌(納豆菌)、
通気嫌気性菌は(酸素の有無にかかわらず生育)酵母、大腸菌、乳酸菌、
偏性嫌気性菌は(酸素があると生育しない)ボツリヌス菌などが上げられます。


また、殺菌滅菌消毒除菌といった言葉。
「どう違うねん!」って意見は、薄々感じていないでしょうか??
同じようなものだと思って、意識してませんでした??
じつは違うんですよ。
ちょっと説明してみましょう。

滅菌
ここでもよく登場する言葉ですね。
空間も含めた微生物をすべて殺し、完全な無菌にする事

殺菌
微生物などを死滅させること。無菌状態にする。
滅菌と殺菌はよく似ていますが、微妙に違います
例えば、密閉した培地の入った培養ビンの滅菌の場合。
「ビンを殺菌」と表現すると、フラスコのガラスや表面だけを
殺菌する誤解をよびます。
植物の殺菌の場合。
「植物体を滅菌」と表現すると、植物自体も
死滅させるような感じの誤解をよびます。
また、ウイルスは、無菌という定義では含まれない?
無菌になってもウイルスは植物に潜んでいますからね。

消毒
目的の微生物のみ殺菌すること。
ターゲットが決まっている場合に使う言葉です。
切傷の消毒などで使いますね。
傷口に入ってはいけない悪い菌だけにターゲットを絞った言い方。
体には良い菌もいるので、滅菌と表現してしまうと、
なんでもかんでも殺してしまう事になり誤解をよびますね。

抗菌
抗生物質などでよく使われる言葉ですね。
微生物の増殖を阻害することが定義です。
殺菌剤などで、死滅させるのとは少し違います。
これも、ある程度ターゲットが絞られます。

除菌
テーブルふきんなどでよく使われる言葉ですね。
微生物を物理的に取り除くことが定義。
つまり、ふきんから菌を退かせる事ですね。
「培地を除菌」と表現すると、一時的に殺菌すれば除菌は完了なのです。
それじゃ駄目ですよね?


まぁ今日はこんなもんにしておきましょうかね、、


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