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Devise 05
殺菌した種子



◇ いよいよ無菌播種 ◇

さてさて、今回は無菌播種(むきんはしゅ)を行います。
無菌播種とは、無菌の中で種を蒔くことです。(そのままやん、、)
しかし、ただ無菌の中で種を播種してもうまくいきません。
種子を消毒して、種子も無菌になければならないからです。
前回作った無菌箱を使い、培地に播種します。
通常無菌播種には2通りあり、完熟播種未熟播種があります。
今回は主に完熟播種の説明をしていきたいと思います。
未熟播種の仕方が知りたい方は、当サイトの第2章を参照。

世の中に出回っている実生(みしょう)と呼ばれている蘭はほとんどが
この無菌播種で増殖されています。




◇◇ やっと出来るの? ◇◇

■ ほな、準備するものな。

培地・滅菌水・試験管・アルコールランプ・播種する種子
種子消毒液・燃焼用アルコール(ランプ用)・消毒用エタノール
液体の薬品を計量するためのピペット


■ やるまえに準備せなあかん。

1.作った培地を用意します。


まぁこれは当たり前ですが、、


2.滅菌水を作ります。

滅菌水とは、水をオートクレーブなどで滅菌したものです。(そのまま、、)
容器に水を容積の3分の1ほど入れ、培地を滅菌する要領で滅菌します。
(これはしっかり滅菌して下さい)

容器はジュースのビンで十分です。ただ、口の大きなジャムビンは不向き。
スイートキッスのビンなんて最高です。(古すぎだ、、今もうないし、、)
オロナミンCとか栄養ドリンクのビンがあれば最適。
水を多く入れすぎると、滅菌不足になるので最低でも容器の半分だけ。
1回で使い切る量がベターです。
1本播種する毎に新しい滅菌水を使います。


3.アルコールランプや試験管を準備

2つとも、大型のホームセンターで取り扱っているので作業前に
入手しておいて下さい。
試験管は直径1.5〜2cm×長さ10〜15cmが良い。
ただし、普通は長さ15cmの試験管はあまり売ってないので
最悪の場合は長いのでもOKでしょう。
直径も2cmφより太いと使いにくいですよ。
もし出来るようなら、試験管も空っぽの状態でアルミキャップをして
滅菌しておけばなお良いです。空の滅菌試験管ですね。


4.種子の消毒液を作る
(ここ大切!)


今回は家庭用キッチンブリーチ剤を使います。
家庭用漂白剤を5分の1希釈します(これは出来ますね?)
30〜50ml作れば十分余る量です。これで完成。
そうそう、塩素ガスはよくないので容器にフタをしておきます。

他の薬品などを使われる方は、、
有効塩素濃度0.5〜1.0%になるように調整します。
有効塩素とは、液体に含まれている塩素の濃さの事で
水溶液の濃度ではありません。
次亜塩素酸ナトリウム原液では、有効塩素約10%ですから
10〜20分の1に希釈すれば完成。
※濃度計算は培地の作り方で説明しています。


※塩素の取り扱いについては前回で説明しているので
必ず読んでから作業して下さい。
右上から 
薬包紙で包んだ種子・培地・試験管・滅菌水

下段 
アルコールランプ・消毒液



▽ 前 回 の 復 習 ▽


前回と同じ事を書きます。無菌箱の初期消毒です。

作業する前に「ただの箱」「無菌の箱」にする必要があります。
そこで作業前に箱の殺菌を行います。

殺菌灯を装備している方は、作業する前に一晩殺菌灯をつけたまま
にしておいて下さい。
ただし、殺菌灯を直視する事はもちろん、視界に入る場所は危険です。
周囲にも悪影響を及ぼします。

そして最大の問題があります。
それは箱内にマザービン培地苗の植えたビンが入っている場合、
紫外線の影響をモロに受けてしまいます。
しかし、紫外線は付けたい、でも植物も入れておきたいっと思うでしょう。
その場合は、入れたいビンに軽くアルコールをまんべんなく吹きかけ
それを、アルミホイルで隙間が出来ないように包み、入れておきます。
そうすれば、紫外線の影響を受けずに殺菌灯が付けられますね。

次に、部屋を締め切り外気が入らないようにします。

また、作業前に掃除機で床のホコリを掃除しておくのも有効です。
特に髪の毛の長い人は特に、湿らせたタオルを頭に巻いて作業しましょう。
髪の毛には、ホコリや雑菌がまとわりついていますので。

石鹸で自分の手を丁寧に洗います。(かなり違ってきます)
の辺りぐらいは箱の中に入るので、腕や肘の辺りも丁寧に。

自分の手や腕に軽く70%エチルアルコール
ハンドスプレーで吹きかけ、塗ります。(自分の手ってわざわざ言う事か?)
(だってさ、どこに吹くねん!って言われそうだし、、)
(石鹸で他人の手洗ってたら怖いわ!)

そして70%エチルアルコールをハンドスプレーで
箱内の空気中へ十分に吹き付けます。
空気中に浮遊するホコリ落とすためです。
この時、服の袖を腕まくりして、服が箱の中に入らないように注意!!
作業中はずっと腕まくりが基本。(今度は自分のって書かないんだ)
(まぁわかるでしょ、、ふつうなら)

そして箱を70%濃度のエチルアルコールで清潔なティッシュなどを
使い丁寧に拭きます。(特に内側が大切。)

しばらく間をおいて、次に次亜塩素酸ナトリウム(カルシウム)
を希釈した水溶液でさっきと同じ要領でふきふきして下さい。
(今度は軽くで)

塩素で拭いて、再びしばらく間をおいた後
アルコールランプを入れ、中で火をつけてしばらく経てば準備完了。
これで、すぐに作業出来る状態ですよ。

火をつけている時は絶対その場を離れない事。
着火の時は完全にアルコールが乾いてからにして下さい。
また気化したアルコールが抜けてから着火するのも忘れずに。

完全密閉した無菌箱は気化したガスが抜けにくいので、
アルコールスプレーなどで作業した後は、少しだけ隙間開けても
良いと思います。ちょっとだけですよ。
安全第一!ですからね。


気分が悪くなったら直ちに中止する。
熱中するあまり、知らず知らずのうちに塩素ガスの中で
1日中過ごしてしまう場合もあります。
狭い閉め切った部屋で作業する場合、中で火などを使用するので、
眠くなってきたら、ひと休みすること。原因は酸欠です。




C A U T I O N
作 業 突 入!

1.ベンチの内側を塩素やエタノールなどで拭く。

きれ〜に拭いて下さい。
また、アルコールや塩素などの薬品を使いますので
取り扱いには十分注意して下さい。
ガスを吸い込まないように、、、
種子と消毒液は適量2.種を試験管の中に入れる。

欲張って種を沢山入れないように、、、
容器の大きさ、消毒液のさ、種の量
で消毒の効き方が変わってきます。
沢山入れればいいってもんでもないですよ。
種が多い場合は2回(2本)に分けてやります。
画像の種の量を参考にしましょう。
※この画像はすでに消毒液が入っています
消毒中3.消毒液を入れる。

注意!これも沢山入れては駄目です。
種が液に浸かって十分馴染むぐらいの量。
逆に少ないと種が消毒液を吸って
なくなってしまいます。
太い試験管の場合は特に多く
消毒液が入りがちなので注意します。
画像を参考にしてみて下さい。
4.シェイク!!

消毒時間は約5〜10分
アルミでしっかりフタをして、親指でフタを押さえながら思いっきり振る!
とにかくシェイク!!超音波洗浄器があれば便利です。
あと、家庭用キッチンブリーチ剤を使用している場合は
界面活性剤(つまり泡の洗剤)が入っているので種が馴染むのが早いです。
種子が馴染んだ画像
 ↑サムネイル開きます

左:消毒液入れてすぐ 右:10分後
5.種が馴染む

ふりふり振っていると、消毒液を弾いていた
が徐々に馴染んできます
馴染みやすい種とそうでない種があります。
馴染みにくい種は消毒を長めにすると
良いでしょう。
(っといっても1分とか、それぐらい)

馴染んでないうちは、消毒液が
十分染み込んでない証拠です。

1%の塩素で順調にいけば5分程度でOK。
よ〜く見たい人は、サムネイルが開き
拡大画像が見れます。
滅菌水を入れてすすぎ6.滅菌終了→すすぎ

滅菌水を試験管の8分目ほど入れて
塩素の濃度を薄めます。

この時、手などに液がついたり、
こぼしたりしないように!!

もう無菌状態に入ってますので、
わずかなミスも許されない事を忘れないように。
あと、事前に胚があるかどうか
ルーペで確認するのも良い
方法ですよ。
7.静置

しばらくおいていると、種が沈んできます。
浮く種もあると思いますが、
それは胚がなかったり、
殺菌不足の種なので使いません。

消毒した全部の種が浮く場合がありますが、
すべて発芽しないわけじゃないのでとりあえず
播種してみましょう。中には例外もあります。
ディサの種子はなぜか全部浮きました。
余分な水を流します画像の量を参考にして下さい。
ただし!全部流しちゃだめ。
8.ここから特に慎重!

これから次の事に注意して最後まで行って下さい。
・手に液などをつけない。こぼさない。
・ビンの口どうしが触れないようにする。
・培養ビンのフタを開けている時間は短く。


沈んだ種を残して、水を捨てます!
ビビってチョロチョロやってるとダメ。
一発で流すのがベター。
多少は水の多い少ないは気にしない。
培地に播種!ちなみにこの画像は、
一人でやってて、写真も自分で
撮っているので右手は
カメラを持っています。
9.フタ開けたら、だぁぁ〜っとォ

培地のキャップを左手で持ち上げ
(事前にフタは緩めておく)

左手でキャップ持ったまま、
右手素速く液ごと種を流し込む!
180度一気に回転させて「だぁぁ」っと。
そして左手のキャップを素速くフタする。
キャップを開けて閉めるまで約2秒間で完了。
後は、しっかりキャップを締めて、日付や名前
品種名を書いて作業終了です。
お疲れさまでしたぁ。
ところで、アルコールランプは?

炎はいつどこで使うんですか??って意見がですが、
これらの作業にミスがあった時に使います。
だから私は、アルコールランプはいつも使っていません(ぉぃ)
(滅多に失敗しないから、、、)

どのような時に使うのか!?ですが、
例えば、ビンの口を誤って手で触れてしまった。
培養ビンの口にビンが触れた、などなど。
炎の熱でビンやアルミを滅菌するんですね。
もちろん安全のために、炎の熱でビンの口をあぶる事は良い事だと思います。
やりすぎて手で持てないほど熱くしないように、火傷するだけで意味ないです。
置き場所

温度変化の少ない場所。直射日光が当たらない場所。
でも基本的にはですから、普段の温室の日が弱い場所でもOK。
温度変化の少ない室内で、ワーディアンケースに蛍光灯をつけて
育生させるのも良いですね。

ちなみに、一般的な培養室では、温度20〜23℃で16時間照明
(蛍光灯の光)で行っています。



§ 今回のポイント §

種を消毒してすすいだ時、完全に消毒液消えたわけじゃなくて
薄めただけなんですね。
種子影響が出ない程度に消毒液残っているんです。
だから培地のビンの中に多少雑菌が入ってもビンの中が
弱く殺菌されているんです。
今回行った播種も『消毒液の量:種子の量:水の量』をおおまかに
計算して行っています。だいたい、0.05〜0.00数%になる計算でしょうか。
ただし、いつも厳密にやってませんから、経験とカンですが。
0.1%ぐらいでも、大丈夫なんじゃないでしょうかね。

塩素というのはとても不安定です。
温度空気でも分解されてしまうので、原液でも正確な濃度
はわからないんです。
逆にそんな性質を利用しているんです。
播種した直後弱く消毒液が効いているんですが、ビンの中で
光や温度、空気で分解され、数日のうちに成分がなくなり
種子に悪影響が出る前に消えてしまうんです。
でも、安心だからっていい加減な作業してるとコンタミ出ますよ。

ですから、消毒液の量、種の量、すすぎの水の量は非常に重要な
要素になってくるので、間違えないように!
画像を参考にして下さいよ!




◎◎ 塩素とは、、なんぞや? ◎◎

黄緑色の刺激臭をもつハロゲン属の常温常圧でも気体。
酸化作用が激しく漂白・殺菌に使用。

原子番号17 元素記号はCl 原子量35.5
気体密度3.214 比重2.486 空気よりも重い。
代表的でよくわかりやすい例えは、学校のプールのにおい。
っていうか、水道のカルキ臭ですけどね。

塩素は特有の臭いとヌメリがあります。
いつもよりヌメヌメが弱かったり、臭いが弱いときは、塩素が分解されて
濃度が低下している証拠です。
上でも書いたように、不安定な薬品なので保存には特に気を付けましょう!
保存方法は、冷蔵庫などの低温で温度変化が少なく、光も当たらない
場所が良い。素直に冷蔵庫に入れておいて下さい。
家庭用漂白剤も出来れば冷蔵庫がいいですけど。
ただし、誤って口にしないように、、、

また、消毒に使う時は作ったその日に使います。
それと、低濃度の作り置き保存には適しません。
使う分だけ薄めて使う!これ基本ね。




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