このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |
さてさて、今回は無菌播種(むきんはしゅ)を行います。 無菌播種とは、無菌の中で種を蒔くことです。(そのままやん、、) しかし、ただ無菌の中で種を播種してもうまくいきません。 種子を消毒して、種子も無菌になければならないからです。 前回作った無菌箱を使い、培地に播種します。 通常無菌播種には2通りあり、完熟播種と未熟播種があります。 今回は主に完熟播種の説明をしていきたいと思います。 未熟播種の仕方が知りたい方は、当サイトの第2章を参照。 世の中に出回っている実生(みしょう)と呼ばれている蘭はほとんどが この無菌播種で増殖されています。 |
◇◇ やっと出来るの? ◇◇ |
■ ほな、準備するものな。 培地・滅菌水・試験管・アルコールランプ・播種する種子 種子消毒液・燃焼用アルコール(ランプ用)・消毒用エタノール 液体の薬品を計量するためのピペット ■ やるまえに準備せなあかん。 1.作った培地を用意します。 まぁこれは当たり前ですが、、 2.滅菌水を作ります。 滅菌水とは、水をオートクレーブなどで滅菌したものです。(そのまま、、) 容器に水を容積の3分の1ほど入れ、培地を滅菌する要領で滅菌します。 (これはしっかり滅菌して下さい) 容器はジュースのビンで十分です。ただ、口の大きなジャムビンは不向き。 スイートキッスのビンなんて最高です。(古すぎだ、、今もうないし、、) オロナミンCとか栄養ドリンクのビンがあれば最適。 水を多く入れすぎると、滅菌不足になるので最低でも容器の半分だけ。 1回で使い切る量がベターです。 1本播種する毎に新しい滅菌水を使います。 3.アルコールランプや試験管を準備 2つとも、大型のホームセンターで取り扱っているので作業前に 入手しておいて下さい。 試験管は直径1.5〜2cm×長さ10〜15cmが良い。 ただし、普通は長さ15cmの試験管はあまり売ってないので 最悪の場合は長いのでもOKでしょう。 直径も2cmφより太いと使いにくいですよ。 もし出来るようなら、試験管も空っぽの状態でアルミキャップをして 滅菌しておけばなお良いです。空の滅菌試験管ですね。 4.種子の消毒液を作る(ここ大切!) 今回は家庭用キッチンブリーチ剤を使います。 家庭用漂白剤を5分の1に希釈します(これは出来ますね?) 30〜50ml作れば十分余る量です。これで完成。 そうそう、塩素ガスはよくないので容器にフタをしておきます。 他の薬品などを使われる方は、、 有効塩素濃度が0.5〜1.0%になるように調整します。 有効塩素とは、液体に含まれている塩素の濃さの事で 水溶液の濃度ではありません。 次亜塩素酸ナトリウム原液では、有効塩素約10%ですから 10〜20分の1に希釈すれば完成。 ※濃度計算は培地の作り方で説明しています。 ※塩素の取り扱いについては前回で説明しているので 必ず読んでから作業して下さい。 | |
右上から 薬包紙で包んだ種子・培地・試験管・滅菌水 下段 アルコールランプ・消毒液 |
▽ 前 回 の 復 習 ▽ 前回と同じ事を書きます。無菌箱の初期消毒です。 作業する前に「ただの箱」を「無菌の箱」にする必要があります。 そこで作業前に箱の殺菌を行います。 殺菌灯を装備している方は、作業する前に一晩殺菌灯をつけたまま にしておいて下さい。 ただし、殺菌灯を直視する事はもちろん、視界に入る場所は危険です。 周囲にも悪影響を及ぼします。 そして最大の問題があります。 それは箱内にマザービンや培地、苗の植えたビンが入っている場合、 紫外線の影響をモロに受けてしまいます。 しかし、紫外線は付けたい、でも植物も入れておきたいっと思うでしょう。 その場合は、入れたいビンに軽くアルコールをまんべんなく吹きかけ それを、アルミホイルで隙間が出来ないように包み、入れておきます。 そうすれば、紫外線の影響を受けずに殺菌灯が付けられますね。 次に、部屋を締め切り外気が入らないようにします。 また、作業前に掃除機で床のホコリを掃除しておくのも有効です。 特に髪の毛の長い人は特に、湿らせたタオルを頭に巻いて作業しましょう。 髪の毛には、ホコリや雑菌がまとわりついていますので。 石鹸で自分の手を丁寧に洗います。(かなり違ってきます) 肘の辺りぐらいは箱の中に入るので、腕や肘の辺りも丁寧に。 自分の手や腕に軽く70%エチルアルコールを ハンドスプレーで吹きかけ、塗ります。(自分の手ってわざわざ言う事か?) (だってさ、どこに吹くねん!って言われそうだし、、) (石鹸で他人の手洗ってたら怖いわ!) そして70%エチルアルコールをハンドスプレーで 箱内の空気中へ十分に吹き付けます。 空気中に浮遊するホコリを落とすためです。 この時、服の袖を腕まくりして、服が箱の中に入らないように注意!! 作業中はずっと腕まくりが基本。(今度は自分のって書かないんだ) (まぁわかるでしょ、、ふつうなら) そして箱を70%濃度のエチルアルコールで清潔なティッシュなどを 使い丁寧に拭きます。(特に内側が大切。) しばらく間をおいて、次に次亜塩素酸ナトリウム(カルシウム) を希釈した水溶液でさっきと同じ要領でふきふきして下さい。 (今度は軽くで) 塩素で拭いて、再びしばらく間をおいた後に アルコールランプを入れ、中で火をつけてしばらく経てば準備完了。 これで、すぐに作業出来る状態ですよ。 火をつけている時は絶対その場を離れない事。 着火の時は完全にアルコールが乾いてからにして下さい。 また気化したアルコールが抜けてから着火するのも忘れずに。 完全密閉した無菌箱は気化したガスが抜けにくいので、 アルコールスプレーなどで作業した後は、少しだけ隙間開けても 良いと思います。ちょっとだけですよ。 安全第一!ですからね。 気分が悪くなったら直ちに中止する。 熱中するあまり、知らず知らずのうちに塩素ガスの中で 1日中過ごしてしまう場合もあります。 狭い閉め切った部屋で作業する場合、中で火などを使用するので、 眠くなってきたら、ひと休みすること。原因は酸欠です。 |
C A U T I O N
作 業 突 入!
1.ベンチの内側を塩素やエタノールなどで拭く。 きれ〜に拭いて下さい。 また、アルコールや塩素などの薬品を使いますので 取り扱いには十分注意して下さい。 ガスを吸い込まないように、、、 | |
2.種を試験管の中に入れる。 欲張って種を沢山入れないように、、、 容器の大きさ、消毒液の量や濃さ、種の量 で消毒の効き方が変わってきます。 沢山入れればいいってもんでもないですよ。 種が多い場合は2回(2本)に分けてやります。 画像の種の量を参考にしましょう。 ※この画像はすでに消毒液が入っています | |
3.消毒液を入れる。 注意!これも沢山入れては駄目です。 種が液に浸かって十分馴染むぐらいの量。 逆に少ないと種が消毒液を吸って なくなってしまいます。 太い試験管の場合は特に多く 消毒液が入りがちなので注意します。 画像を参考にしてみて下さい。 | |
4.シェイク!! 消毒時間は約5〜10分。 アルミでしっかりフタをして、親指でフタを押さえながら思いっきり振る! とにかくシェイク!!超音波洗浄器があれば便利です。 あと、家庭用キッチンブリーチ剤を使用している場合は 界面活性剤(つまり泡の洗剤)が入っているので種が馴染むのが早いです。 | |
↑サムネイル開きます | 5.種が馴染む ふりふり振っていると、消毒液を弾いていた 種が徐々に馴染んできます。 馴染みやすい種とそうでない種があります。 馴染みにくい種は消毒を長めにすると 良いでしょう。 (っといっても1分とか、それぐらい) 馴染んでないうちは、消毒液が 十分染み込んでない証拠です。 1%の塩素で順調にいけば5分程度でOK。 よ〜く見たい人は、サムネイルが開き 拡大画像が見れます。 |
6.滅菌終了→すすぎ 滅菌水を試験管の8分目ほど入れて 塩素の濃度を薄めます。 この時、手などに液がついたり、 こぼしたりしないように!! もう無菌状態に入ってますので、 わずかなミスも許されない事を忘れないように。 | |
あと、事前に胚があるかどうか ルーペで確認するのも良い 方法ですよ。 | 7.静置 しばらくおいていると、種が沈んできます。 浮く種もあると思いますが、 それは胚がなかったり、 殺菌不足の種なので使いません。 消毒した全部の種が浮く場合がありますが、 すべて発芽しないわけじゃないのでとりあえず 播種してみましょう。中には例外もあります。 ディサの種子はなぜか全部浮きました。 |
画像の量を参考にして下さい。 ただし!全部流しちゃだめ。 | 8.ここから特に慎重! これから次の事に注意して最後まで行って下さい。 ・手に液などをつけない。こぼさない。 ・ビンの口どうしが触れないようにする。 ・培養ビンのフタを開けている時間は短く。 沈んだ種を残して、水を捨てます! ビビってチョロチョロやってるとダメ。 一発で流すのがベター。 多少は水の多い少ないは気にしない。 |
ちなみにこの画像は、 一人でやってて、写真も自分で 撮っているので右手は カメラを持っています。 | 9.フタ開けたら、だぁぁ〜っとォ 培地のキャップを左手で持ち上げ (事前にフタは緩めておく) 左手でキャップ持ったまま、 右手で素速く液ごと種を流し込む! 180度一気に回転させて「だぁぁ」っと。 そして左手のキャップを素速くフタする。 キャップを開けて閉めるまで約2秒間で完了。 後は、しっかりキャップを締めて、日付や名前 品種名を書いて作業終了です。 お疲れさまでしたぁ。 |
ところで、アルコールランプは? 炎はいつどこで使うんですか??って意見がですが、 これらの作業にミスがあった時に使います。 だから私は、アルコールランプはいつも使っていません(ぉぃ) (滅多に失敗しないから、、、) どのような時に使うのか!?ですが、 例えば、ビンの口を誤って手で触れてしまった。 培養ビンの口にビンが触れた、などなど。 炎の熱でビンやアルミを滅菌するんですね。 もちろん安全のために、炎の熱でビンの口をあぶる事は良い事だと思います。 やりすぎて手で持てないほど熱くしないように、火傷するだけで意味ないです。 | |
置き場所 温度変化の少ない場所。直射日光が当たらない場所。 でも基本的には蘭ですから、普段の温室の日が弱い場所でもOK。 温度変化の少ない室内で、ワーディアンケースに蛍光灯をつけて 育生させるのも良いですね。 ちなみに、一般的な培養室では、温度20〜23℃で16時間照明 (蛍光灯の光)で行っています。 |
§ 今回のポイント § 種を消毒してすすいだ時、完全に消毒液が消えたわけじゃなくて薄めただけなんですね。 種子に影響が出ない程度に消毒液が残っているんです。 だから培地のビンの中に多少雑菌が入ってもビンの中が 弱く殺菌されているんです。 今回行った播種も『消毒液の量:種子の量:水の量』をおおまかに 計算して行っています。だいたい、0.05〜0.00数%になる計算でしょうか。 ただし、いつも厳密にやってませんから、経験とカンですが。 0.1%ぐらいでも、大丈夫なんじゃないでしょうかね。 塩素というのはとても不安定です。 光や温度、空気でも分解されてしまうので、原液でも正確な濃度 はわからないんです。 逆にそんな性質を利用しているんです。 播種した直後は弱く消毒液が効いているんですが、ビンの中で 光や温度、空気で分解され、数日のうちに成分がなくなり 種子に悪影響が出る前に消えてしまうんです。 でも、安心だからっていい加減な作業してるとコンタミ出ますよ。 ですから、消毒液の量、種の量、すすぎの水の量は非常に重要な 要素になってくるので、間違えないように! 画像を参考にして下さいよ! |
◎◎ 塩素とは、、なんぞや? ◎◎ 黄緑色の刺激臭をもつハロゲン属の常温常圧でも気体。酸化作用が激しく漂白・殺菌に使用。 原子番号17 元素記号はCl 原子量35.5 気体密度3.214 比重2.486 空気よりも重い。 代表的でよくわかりやすい例えは、学校のプールのにおい。 っていうか、水道のカルキ臭ですけどね。 塩素は特有の臭いとヌメリがあります。 いつもよりヌメヌメが弱かったり、臭いが弱いときは、塩素が分解されて 濃度が低下している証拠です。 上でも書いたように、不安定な薬品なので保存には特に気を付けましょう! 保存方法は、冷蔵庫などの低温で温度変化が少なく、光も当たらない 場所が良い。素直に冷蔵庫に入れておいて下さい。 家庭用漂白剤も出来れば冷蔵庫がいいですけど。 ただし、誤って口にしないように、、、 また、消毒に使う時は作ったその日に使います。 それと、低濃度の作り置き保存には適しません。 使う分だけ薄めて使う!これ基本ね。 |
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