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Devise 06
やらないといけないのか!?




● 播種して発芽したら移植を ●


今回は継代培養(移植)です。
もう知っている人も多いと思いますが、説明しておきます。
どんな作業なのかと言いますと、植物が育ってくると、
当然ビンの中の養分が少なくなり、培地が駄目になってきます。
そこで、新しい培地に苗を移し、植直してリフレッシュさせる作業の事です。
株の植え替えと同じようなものですね。

一般に、業者さんが販売されているような苗になるまでは、
何回かの移植を経て、外環境でも育つぐらいの苗にしなくてはいけません。
播種をして、一切移植を行わない苗は、養分が1本1本に十分
行き渡らずに、徒長してひょろひょろの苗になってしまいます。
しっかり移植している業者さんはも2〜3回は行っていると思います。


 「苗半作」
この言葉ご存じですかぁ??
苗作りは大切で、株の運命をも半分決めてしまう!って意味です。
今回の行程は培養中もっとも重要な作業です。
今までは序の口!今回は難しいですよ。
どんどんやってチャレンジしてみましょう。



● 継代移植の苦労 ●


経験者の人は、出来れば移植しないで、ビンで苗を完成させたい!
っと思うはずです。
それはなぜかと言うと、余計な作業が増えたり、時には移植に失敗して
今までの苦労が水の泡になる場合もあるからです。(けっこうなったり、、)

簡易無菌箱では、ビンのフタを開けるのは自殺行為だと考える人も
多いでしょうね。それだけリスクが伴う作業なのです。

播種の時は塩素加減でわりと大丈夫だったかもしれませんが
今回は無菌状態→無菌状態なわけです。
マザービン→無菌箱→滅菌シャーレ→植え付け→新しい培地
っと、作業も複雑で、雑菌に触れる危険が多くなります。


しかし、同じ培地で育て上げ、苗を完成させるのは難しいと思います。
少なくとも、うちの画像に載せているような苗は出来ないでしょう。
しっかりした苗が作りたい人は、是非ともコンタミを恐れずに
チャレンジして欲しいと思います。

また、やっぱり出来ないって言う人がいるでしょうが
苗半作の言葉を思い出してみて下さい。
ひょろひょろの弱い苗を作り、ビンから外へ出し、そのまま育て、
大半を枯らしてしまうのか?
移植を頑張ってやって良い苗を作るか!?
それに悪い苗は、良い苗に比べて2〜3年ぐらいの差は
出てくる場合もあるでしょう。私なら何度失敗しても、移植します。
それは避けては通れない道だと思うからです。

ただし例外もあります。1ビンに苗が数本しか発芽しない場合は
十分に養分が行き渡るわけですから、培地が新しければ、
場合によっては、移植はしなくていい事になりますね。
苗の完成の有無やビン出しが可能かどうかは次回で説明しています。

さて、逆に絶対移植しなければいけないものもあります。
播種した量が多すぎて、発芽した時に培地の表面が
緑色でびっしり覆われたり、培地が長期間経っているもの、
苗が育つにつれて培地の養分が激減しているものなどは
移植の必要があります。
生育が早いものほど当然培地の養分の減りは早くなりますので。
あっという間に、移植のタイミングを逃してしまう事もありますよ。
このタイミングが培養の最重要!まさにターニングポイント。

経験上、生長の良好なリカステ苗で、画像に何度か登場している
縦長のジャムビン正確には450mlマヨネーズビンと言いますが。
(略してマヨビンと呼んでいます。)
(これは、ほとんど共通の呼び方になっています。)
そのビンに100mlの培地を分注し、(それぞれに入れる)
苗18本植えで直径2mm通気口(フィルターや綿の栓)
がある環境なら、約5〜6ヶ月問題なく元気です。
ただ、品種の特性や培地の量、容器の大きさ、苗の入っている数、
培地の濃度、温度、光などでも変わってくるので
経験とカンでしか言う事が出来ませんけどね。

書いているこの条件が下の方で重要になってくるので参考にして下さい。



■ 家庭でやるには具体的にどうするか ■


しっかりした苗を作ろうと思うと、播種してからだいたい3回の
移植を経て、ビン苗が完成している事はもうわかりましたね?

家庭ではとても3回の移植は無理でしょうし、リスクも大きい。
そ・こ・で、私なりにある方法を提案します。
3回の移植を、家庭用に1回で終わらせる方法を伝授。
(そんな大袈裟なものでもないけど)
ただし、デメリットもあります。

どんな方法かと言いますと、1ビンに苗を少ししか植えない事です。
(誰でも思い付きそうな事で申し訳ないです。)
1ビンの苗の数が少なくなるのがデメリットですが。

まぁ趣味でされる方は1ビン5本ほど苗あれば十分ではないでしょうか?
(どうです?ダメですか??納得出来ません?、、それは困りましたね、、)
もっと多く苗が欲しい方は、多くのビンを作ればいいんですけどね。




◇■ 焦らずにいきましょ ■◇


■ よっしゃ!準備するのだぁ。

バナナジュースを50〜100g入れた培地アルコールランプ
アルコール(ランプ用)・エタノール(手を消毒用)、あればシャーレ
(蒸気で滅菌してある事)シャーレはなくても出来るけど、あった方が良い。


■ いつもとちょっと違うところ(重要!)

今回の準備はちょっと違うところがあります。
それは培地です。
培養している品種にもよりますが、播種の時よりもすこしバナナの量を
増やした方が良いでしょう。他の成分は同じでもかまわないでしょう。
詳しくは下の方で説明していますが、、
普通は、1リットルの培地に50〜100g入れれば大丈夫。



作業前にもう一度

1.移植の必要なビンを見てましょう

マザービン選びです。

マザービンとは、移植などをする時のもととなった培養ビンの事です。
播種や初代培養をした培養ビンの事をマザー(マザースラスコ)と
言う場合が多いです。
もし、移植に失敗しても、マザーを捨てずに残しておけば、再移植が出来ます。
移植したら「こいつはもう用はねぇ〜」という感じで捨てないで下さい。
モヤシ直行コースビン一面に緑だらけ、、、
これは要注意です。
このままにしておくと、培地の養分が足りずに
徒長してしまい、モヤシ状態になってしまいます。
すぐに移植した方がよさそうですね。
そのまま放置すると次の画像のようになります。
猫の草まがいコースこれは、、上の状態で放置したもの
養分がみんなに行き渡らずに徒長しています。
こうなってしまうと、回復にも時間が掛かります。
移植も1回ぐらいでは駄目かも、、
これじゃ良い苗を作るのは難しいですよ。
培地からからコース見た目には問題なさそうですが、培地が古い。
作られて長時間経過していて、
よく見ると培地が蒸発して減っています。
これではビン内の環境も良いとは言えませんね。
しかし、このぐらいの状態なら移植してやれば
すぐに元気になってくるでしょう。
順調ですが移植にはまだ早い綺麗に発芽し、PLBを形成したもの。
ただし、移植にはまだ早い段階です。
今回は、芽が出て2〜3cmの植物体に
育ってからのものを植えます。
2回移植するつもりの方はベストタイミングですが


2.植える苗を選別する。

ほとんどの洋ランの種は発芽した後、上の画像で紹介したような
プロトコーム(PLB)と呼ばれる不定芽球体になります。
(正確には、プロトコームとPLBは違うのですが。)
この状態は、植物の細胞には変わりないですが、葉や根などの
区別はなく、ただの細胞の塊りです。
しばらくして、プロトコームからが出てくれば植物体を形成し出します。

東洋蘭、シュンラン・カンランなどは発芽するとリゾームと呼ばれる
不定根になります。その姿は蜘蛛の足のような面白い形をしています。
リゾームから芽を出さすには、サリチル酸などを用います。


移植の回数を出来るだけ減らすには、今植えている培地の環境で
ギリギリまで苗を大きくする必要があります。
ビンいっぱいに発芽すると、嬉しいと思うのが正直なところでしょうが、
逆に発芽量が多すぎてうまくいかない事もありますよ。
発芽したPLB左の画像のように1ビンに10〜20個程度の
PLBの数なら、もう少しおいておきます
芽が出て植物体になってから行います。
「ちょっと徒長してきたかなぁ〜」
ぐらいでもOK!
もし10本以下だったら、そのまま最後まで
移植なしでやっても大丈夫な場合もあります。
背比べ今回は左の画像のような苗を
植えました。

播種してから、このぐらいの苗が出来れば文句なし。
植える苗の基準はPLBから
しっかり出ているもの。
当たり前ですが元気で株元が太そうな
苗を選ぶことが大切!
また、大きくしっかりした球体のプロトコームは
苗も元気で大きく育ちますよ。

ただし、大きく球体をしていても、ボコボコと
火山の溶岩ドームのように細かい凹凸
があるPLBは、芽が素直に伸びず
変異したような苗しか出来ませんので注意
※タイミングを逃したものはどうなる

タイミングを逃すと、どんどん徒長してきたり、
が出てしまったり色々と大変な事になってしまいます。

徒長した苗は塊りになっていると思うので、1本ずつ引き離して植えます。
この場合、シャーレの上で作業する事になるので、
コンタミ率は相当アップします。

根が出てしまった苗も、滅菌したシャーレを使いシャーレの上で
根を切るか、根ごと強引に植えてしまうか、、どちらかです。
ただし、根が絡み過ぎて、苗が引っこ抜けるかどうかが問題。
まず無菌箱では無理で、クリーンベンチがないと出来ないでしょうね。

ダメもとでそのまま培養続行で最後までいくのも手段の一つですね。

あと、これは裏技なんですが、、培養液を追加するテクニックです。
大量要素やショ糖を溶かした液体の培地を、ピペットなどでビンに
添加してやるのです。
そうすれば、移植時ほどの大きな効果はありませんが、
培地の養分が増えるため、ある程度生長してくれます。
もうちょっとで完成だけど、もう培地が持ちそうにない時に有効です。
ただし、例えれば応急処置のようなものなので、
あまりおすすめは出来ませんよ。
それに、培養液とピペットは滅菌しておかなければなりません。



作業突入!
ちょっと気合入ってます

移植作業の様子※苗は深く植えすぎない。
小さい苗は上にのせるだけ
で十分です。
「植える」というより「のせる」感覚
3.植え付け作業

1ビンに5本ぐらい植えます。
(これ重要、多すぎるとダメ)
画像のようにスタンドにビンを乗せて
作業すれば工夫次第で楽に出来ますね。
ビンの口が上を向かないので
上手に作業できます。

スタンドは自作です。針金をペンチで曲げれば
簡単にできますよ。
炎滅菌4.炎滅菌

ビンの口やピンセットは、
毎回炎であぶり滅菌します。
手で触れなくなるほどやらなくても大丈夫です。

アルコールランプのキャップは、
もしもの時に必ず、側に置いておきます。
これは基本。

(3.と4.の画像は苗を多めに入れています。)
マザービンと移植したビン5.作業終了!

左側の画像はマザーフラスコ
(移植する前のフラスコ)
右側の画像は苗を移植し終えたフラスコ。

左のビンの苗→右のビンへ

品種日付け、キャップもしっかりと!
(←苗の大きさ植え方など参考にして下さい)
左:約数ヶ月経過 右:半年以上経過画像の左側のビンが
数ヶ月後の苗の大きさの見本
画像の右側のビンは
半年以上経過した苗の大きさ

作業が成功し、順調にいけばこれぐらいの
大きさになっていると思います。
着生蘭や長期間培養されるあなた。

ファレノプシスなどを培養していると、があまり大きくならずに、
新しく出てきた白く真上に伸びてくる時があります。
カトレヤでもなる時はありますが。

これは、密閉しているとよく起こり、ビン内の空気が古くなっています。
狭いビンの中の空気を吸って、苗は育っているので限界があるのです。
一度そうなってしまうと、なかなか回復してくれない場合があるので
早めに移植をした方が良いですね。

また対処法は、綿の栓やフィルターをビンに装備させて空気を通す事。
または、数ヶ月に一回、ビンを開けて空気を入れ替えてやる事。
などですね。


パフィオペディラム系を培養しようと思うあなた。

蛍光灯などだと光が弱く、知らず知らずのうちに苗が徒長します。
パフィオは一見単茎性のように見えますが複茎性なので
匍匐茎のようにランナーが出る場合があります。
徒長してくると、茎の節と節の間が伸び、ビンから出しても
頂芽優生(漢字違うかも)で最下部の根が生長しない
場合があるからです。高芽ならず高根?
見た目ではわかりにくいので注意が必要ですよ。
作業に慣れてきたら

自分なりに試行錯誤してみましょう。
今回は植える苗を5本としていますが、培養する品種や環境などによって
違ってくる場合があります。
うまくやれば1ビンで10本ほど植えても支障が出ない場合もありますので
そこは自分自身のテクニックとして技を磨いていくところですよ。
移植作業はまさに腕の見せ所というやつですよ。

ご質問などがあれば、出来るだけあなたのお力になろうと思ってます。
なんなら連絡を頂ければ、画像で送ってもらってもけっこうです。
アドバイスなど出来ればこちらも嬉しいので。
気軽に掲示板へ書き込んで頂いてもけっこうです。

「うまくいったよ」や「これは難しい」や「新しい方法を考えました」などの
情報もお待ちしております。
置き場所について

管理方法は播種したものと同様の場所で大丈夫です。
ビン苗がある程度大きくなってきたら、蘭を栽培している温室
などに移しても大丈夫です。
ただし、清潔な場所じゃないとコンタミしやすくなります。
温室のスペースを少し開けて、スチール棚などに遮光ネットを掛け、
専用の場所を作る事をお勧めしたいです。

しかし、培養ビンは蘭の株のように、育てる場所を選ばないので
(この場合、水やりの場所や衛生面での事です)
部屋の片隅にスチール棚を置き、蛍光灯をつけていれば、わりと育ちます。
本棚みたいに棚を切ってやれば、小スペースで数百本は置けるはずです。
中は無菌なので汚い物を置くのではないですし、ビンに入っていますので。
なんだったら部屋のインテリアにもなるかも、、
訪問されたお客さんは珍しいって喜ぶかもね。
いや、けっこう近所のおばちゃんとか面白がって見て帰って行くよ。

以前、玄関にコルク着けのブラサボラとかシュンランを置いていると
来た人が喜んで会話も弾んだ。近所のいいおにいさんになりましたわ。

また培地の作り方でも説明しましたが、温度差がある場所は
ビン内の空気が収縮膨張を繰り返すために、外気の雑菌
を吸い込んでしまい、突発的にコンタミが出る場合がありますので注意!
できたら移植用のビンには綿の栓やフィルターを装着させ
空気の通気を促がしてやれば、少しは改善されます。
他でも説明しましたが、着生蘭を培養される方も装備すると◎。




♪ 容器選び、植え方選び、工夫次第 ♪

ここでちょっとした工夫を、、
限られた空間、つまりビンの大きさ培地の量の中で、苗は育ちます。
以前もお話ししたように、ビンの中は無菌で全ての要素が干渉しあい
影響を与える、1つの世界なのです。
お互いが閉鎖された環境の中で暮らしているわけですね。

ビンが小さければ中の空気は少なく、、ビンが大きければ空気も多い
っという事になってきませんか??カンの良い人はわかるでしょう
ビンも大きく、培地も多く、そして中の植物は、少なくする。
そうすれば、どうなると思いますか?

たとえば、、(具体例ですが)今使っている容積450mlのマヨビンを
600mlの容器に。
これで空気150mlアップ

培地の濃度は変えず分注量100ml→150mlに。
培地50mlアップ

20本植えていた5本だけに、、。
1本ずつ養分の配分が4倍にアップ

やってみる価値はあると思いませんか?
思ったなら実行あるのみ!工夫あるのみ!


私は、これらをデータ化して、苗1本に必要な養分を計算し、
どんなビンでも品質が変わりにくいように工夫しています。
簡単に説明すると、、培地100mlに苗30本なら、
1本の苗約3mlの養分が配当されますね。
逆に言うと、例えば6ヶ月間苗を一気に生長させるには
どれだけの培地が必要か?って事も・・・

100ml分注の培地・1フラスコ18本植え×3 (3回分の移植)

1回分の移植に計算し直すと、、
3回で100ml分注18本植え=1回では300mlの培地18本植え
=100mlで1回の計算では、苗6本植え

ね?簡単に計算しても出来る出来ないかぐらいはわかってきますよね。
まっ今回は空気量や品種の事や他のもっと色々な要素も入ってないので
ただ簡単に計算してみただけですが、、
遠回しですけど、わかって頂けましたね。

あと、容器は実際の作業をする時も大きく影響を及ぼします。
ジャムビン、マヨネーズビン、三角フラスコ、ジュースのビンなどなど。
まず、当然ですが、口が大きなビンの方が作業しやすいですね。
しかし、口が大きいという事は、、雑菌を受ける面積も大きくなります。

また、丈の低いジャムのビンは高さがないので、落ちてきた雑菌が
すぐに培地に直行するので、あまり背の低いビンも
どちらかというとコンタミしやすい。(慣れれば同じか!?)
ビンの丈が高い方がコンタミはしにくくなる場合があります(たぶん)

じゃジュースビンは入り口がすごく小さいので
コンタミしにくい事になりますねぇ。
でも、ちっちゃなビンの口では作業するのは大変です。

では三角フラスコか!!
って事ですが、、ビンの中いっぱいいっぱいに苗が
大きくなってしまったら、上にいくにしたがって狭くなっている
わけですから、とり出したり、ビン出しする時に引っ掛かって
苗を傷つけたりしてしまう可能性もあります。
その結果、私はある程度高さがあり、円筒形で密閉しやすい
マヨネーズビンを使っていたのです。

細い試験管に苗1本だけ植えるって方法も面白いと思いますよ。
移植の方法も簡単だし、リスクも少ない。
でも、大量に植える場合は大変だ(汗)

そのようなところまできちんと考えて、容器選びはした方が良いですね。
たくさん培養する場合、適当に家にあったから、って理由で
やっていると、自分で墓穴掘るような事にもなりかねません。




○蘭の種類に合った培地とは○

まずこれを読まれる前に、みなさんにご理解して頂きたい事があります。
これから書く内容は、ほとんど試行錯誤で経験やカンなどを頼りに
行ってきた事で、絶対や確実といった事は言えないのが正直なところです。


播種には、バナナやジャガイモは必要ない!?

培地作りの時にも説明して書きましたが、実際に私が播種をする時は、
ジャガイモやバナナは添加しません。
基本的に発芽には、関係ないからです。
ですから入れる必要はないのです。
しかし、今回はご存知のように入れていますね。
それはなぜかというと、ひとつはpHの調整です。
pHを調整するには薬品が必要で、家庭で行う場合は難しいので、
バナナなどを代用として使いました。
バナナを入れるとpHが少し上がり薬品を入れなくても済むからです。
(ただし、限界はあります)

もう一つ重要な事は、
もしも播種用培地で長期間培養する場合になった時、
有機物の入っていない培地では、長期培養は難しく、
さらにそのままビンの苗を最後まで生育させる事は
非常に難しくなるからです。
移植を必ず行うつもりでいるのであれば大丈夫ですが、
誰もが、そのまま移植せずに最後まで育てたいと思っているはずです。
つまり移植の失敗の危険を回避したいと思う気持ちを考慮して
バナナを入れています。(培地の半分は優しさで出来ています)パクリかぃ!


バナナやジャガイモ以外のものでも出来るのか!?

私はやった事ありませんが、リンゴジュースやトマトジュースなどを
入れ研究されている人もおられます。
使用出来ないわけではないようですよ。
使ってもなんら悪影響も与えないと思います。
リンゴジュースを入れるのはよく聞きますし、本にも記載されています。
しかし、経験上やっぱりバナナかジャガイモが良いように思えます。

バナナとジャガイモのどこが違うのかというと、、(本当は説明する気なかった)
バナナはpHの緩衝作用の他に、なにかがあるようです。
培地の吸収が激しい蘭、つまりシンビやジゴペタラム、リカステなどは、
最終段階の移植時にバナナを入れると、同量のジャガイモよりも
成績が良いように思えます。(気のせいかもしれませんが)

一方ジャガイモは、緩衝作用はバナナよりも少しだけ強く、
pHも上がりやすいような気がします。
長期培養や自力で生育する着生蘭、つまりカトレヤやファレノプシスは
ジャガイモの方が良いように思えます。

まぁどれも実験して比べた事ないので、わかりませんし知りません。


苗の生育段階で培地を変えた方が良いのか!?

もちろん!
苗が大きくなるにつれて、培地の濃度も少しずつ上げていくと良いです。
リカステの場合は、
1回目の移植段階でバナナ濃度2%ジャガイモ2%、ショ糖2%含有
2回目の移植段階でジャガイモ5%、ショ糖2%含有
最後の移植段階の定植作業では、
バナナ10%、ショ糖3%含有まで上げます。

動物や人間と同じで、ビン苗も大きくなるにつれて、
多くの養分を吸収出来るようになるからです。
この説明は、生育と共に培地を変えていく、っというところに
ポイントをおいていますので、この濃度では育ちにくい蘭もあります。
濃度の説明は下でやってます。


蘭の種類によって培地は変えるのか!?

ある程度変えます。
本などによっては、バナナの量や砂糖の量がバラバラで
悩んでいる方もいるかもしれませんが、
これからその話をしてみたいと思います。

蘭を育てていると、○○の種類は肥料を多めに、だとか、、、
○○の品種は肥料を少なめで、、、
っといった事を耳にした経験があると思います。
考えてみれば当然ですよね?これと同じ事が培地にもいえます。

肥料をよく吸収する蘭は培地の濃度も少しあげてやります。
肥料をあまり吸収しない蘭は当然、濃度を下げる考え方になりますね。


比較的濃度が高くても出来る蘭
シンビジュームやデンドロビュームの交配種、大輪ジゴペタラム、
オンシジューム、リカステ、

中濃度で出来る蘭
オンシジューム系、リカステ、カトレヤ系、バンダ系、パフィオペディラム

低濃度で出来る蘭
パフィオペディラム系、マスデバリア系、デンドロ原種系、
カトレヤ原種系、ファレノプシス系、野生蘭や雑多な原種、
東洋蘭、風蘭、セッコク、ウチョウランなど。

※ダブっている種類は中間に位置しています。

具体的に説明しますと、
高い濃度で出来る蘭は、バナナなどの果汁20%未満、ショ糖3%未満
私が思うに、けっこう濃度高いと思います、、、
まぁ人によっては、もっと濃い人もいるかもしれませんが、、、

中濃度では、バナナなどの果汁5〜10% ショ糖2%程度
まぁ標準ってところですね、、、

低濃度では、バナナなのど果汁1〜3% ショ糖1%程度


あと、生育が遅いものを早く生長させるには
比較的薄い濃度の培地に植え、移植の回数を増やします。
薄く早くを原則として行うわけです。
4分の1ほどの濃度で植えて、頻繁に移植を繰り返すわけですね。
カトレヤの原種などに有効な作戦だと思います。

ビンの中では培地の浸透圧でも生育に差が出てきます。
濃度が濃いと浸透圧がうまく合わず、植物は養分を吸収できなくなります。
(よほどの場合ですが、、)

わかりやすい例えは、漬物!塩などを大量に入れて、
野菜に含まれる水を、浸透圧で抜き、シワシワにしているんですよ。
ナメクジに塩をかけるのも塩の浸透圧でナメクジの体液を外へ出して
弱らすのですね。

「濃度を下げる」っと聞くと、ほとんどの人は培地の全成分の
濃度を下げる事を考えますが、全体の濃度を下げてしまうと、
けっきょく薄い培地になってしまいます。
中身が少ない培地と同じですから、いわゆる短命なのです。
すぐに移植が必要になってきますね。
そこで、効率よく濃度を、つまり浸透圧を下げる工夫が
必要になってきます。

大量要素はそのままで、ショ糖や果汁の濃度だけを
下げてやるのも有効です。
苗が大きくなってくると、ビンの中でも光合成して、
自力で生育してきますので、ショ糖は少なくてもなんとか
育っていける考えです。効果的な蘭として着生蘭などですね。


着生蘭と地生蘭で違うのか!?

違います。
上で少し触れていますが、着生蘭と地生蘭でも変わってきます。
初期の幼苗の段階ではさほど差は出ませんが、
植物体を形成し出すと違ってきます。

けっきょくビンの中で育っている苗といっても、蘭は蘭なのですよ。
ビンに入っているからといって性質まで変わるわけではありません。
ですから、地生蘭は暗い場所へ根を進め育ちますし、
養分も切れてしまうと、一気に衰え出してしまいます。
地生蘭をコルクに付けるとみるみる弱っていくのと同じですね。

いっぽう着生蘭は、濃い濃度の培地では根の生長が
鈍くなったりする事もあります。
また長期間密閉して育てていると、人間でいう酸欠状態になり、
白い根が真上へ伸び始め、葉が大きく育たない事があります。

移植の回数も、地生蘭より着生蘭の方が少なくて済みますよ。
これは、養分を多く吸収しなくても、自力で大きくなる能力が
備わっているからです。
バンダなどが、植え込み材がなくても育つのと同じですね。
培地も植えてから1年間ほったらかしでも、まだまだ元気に育つぐらいです。

よって、着生蘭は、十分な空気と適切な培地の濃度が、、
地生蘭は、タイミングよい移植と十分な養分が、ポイントです。
また粉末活性炭を入れて培地を黒くしたり、
植物が自ら出す抑制物質の吸着にも役立ちますね。
画像の培地が黒いのも、活性炭を1リットル当り
1〜2g添加しているためです。


ただし!着生蘭でも逆の性質を持っているものもあります。
地生蘭の場合も。
バルブの有無や根の多さ太さ、葉の形厚さなどで分かれる場合もあり。

蘭を育てる上で、原産地の事を知り、原産地で生息している状態を
理解する事が重要とされていますが、
ビン苗作りも、まったく同じ事が言えますね。
逆に、ビン作りの方がシビアなぐらいです。

多くの株や、たくさんの培養経験を積むと、株の形を見ただけで、
ある程度の培養環境や、培地の組成などが
自然と理解出来るようになってきますよ。
蘭を育てるProfessionalはビン苗作りもProfessionalになれる
っという事ですね。。



もう一度だけ今回の作業の説明

これは、何度も書いている事です。

この作業を成功させるには、注意しなければならない事があります。
ちゃんとした無菌の風が出るクリーンベンチがある場合、
ベンチ内はほぼ無菌状態になっています。
無菌のビンから無菌のビンへ移動するので、
特に難しい作業ではないのです。

しかし!ここで紹介して作ったような「ただの箱」の場合、
箱内には雑菌がウヨウヨしてて当然だと言えます。
ですから、たとえ箱の中でもビンの外へ苗を出す事は
かなり危険な行為になってしまうのです。

無菌播種の時は、消毒剤の残効があるので、
あまり心配しなくても大丈夫だったんですが。
今回は失敗覚悟で行って下さい。
正直今までで一番困難な作業になり、誰もが失敗を経験するでしょう。
「第4回無菌箱と無菌環境」で書いている注意やコツを
よ〜く読んでやって下さい!
わからない事や疑問があれば、ご質問のメールも受け付けます。



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