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Second Stage Edition
Leg 02 無菌移植



◇◆◇今回のテーマ◇◆◇
お久しぶりです。半年以上更新が滞り申し訳ありませんでした。
なにぶん個人サイトで本人のやる気のもとで作ってるもんで、、。
って事で励ましのお言葉など、掲示板やメールで貰えると嬉しいですけどね。

今回のお題は移植(継代)です。
ただこのテーマって第1章で語り尽くしてしまったような感じですので
どう一歩突っ込んだ内容にしようか悩んでます。
と、とりあえず思い付きで書いていきまふので、よろしくお願いします。



◇◇ 移植とは? ◇◇
移植する意味などは前章で勉強済みという前提で話しを進めます。

無菌移植のメリットとデメリット

メリットは当然ご存じでしょうが、デメリットは意外と知られていない
これに着目して説明します。

○ 多少なりとも苗を移動させるのでリスクがある。
○ タイミングが難しい(葉が長いもの、根が伸びているもの。)
○ 培地の選択によって生育が変化する。(良くも悪くも)
○ 意外と手間が掛かる。(手間を掛けないケースもありますが)
○ 多少なりとも経験がものを言う。
○ 生長の効率を上げる事と、1ビンに多くの苗を生産する事を
両立するにはそれなりの技術が必要。
○ 移植したからといって、必ずしもベターな結果が得られない場合もある。

正直なところデメリットはあまり思い付きませんでした。
最大のデメリットはやはり手間が掛かる(面倒)って事でしょうか。

私が実際移植した時に困った事をいくつか書きたいと思います。
○ 葉が長いもの
これは困りましたです。
葉がビンの頂上付近まで達した苗。
シンビやジゴペタ、リカステなどの上に葉が伸びるもの。
徒長したり移植のタイミングが遅れると葉が20cm以上になります。
こうなると、シャーレも大きくしないといけないし植え付け作業も大変です。
まぁ当然の事なんですけど。
葉が長くなる前に移植すればある程度回避出来ますし、
葉が異様に長くなるまで置いておく必要もないと思うので。
葉が長くて作業しにくければ、短い時にやってしまえば解決出来ます。

○ 根が多い、長い
葉が長いより最悪です。
根が張るとビンから抜けなくなりますし、培地がごっそり引っ付いてきます。
これは最悪です。放置した自分を呪う事ですね、、、。
コンタミ率も非常に上がりますしリスクも大きい。
慣れない人は発狂しそうな勢いで投げ出したくなる状況に直面するでしょう。
あと活性炭を入れている場合は根の状態がわかりにくいですし、
根が光を嫌うものは培地の中央へ根が集まってますので、
外見だけでは判断出来ません。
根が全く出てないようでも、開けてみると根が張ってるって場合もあります。
あと根が張っているものは、植え付け時に根を切らないといけないので、
効率的にも非常に悪いです。
根が伸びるタイミングを見切って、伸びる前に移植するのが上手い人。

葉にしろ、根にしろ作業効率を上げるには
適切な移植タイミングを考え直す事ですね。
移植作業が面倒なのと「もうちょっと大きくなるまで」って気持ちが強くて
遅れがちになる人が多い。
しかし新しい培地に植えた方が格段に生長は良くなるので、
生長させたいのなら移植する事!タイミングを見切る事。

○ 生長が悪いもの
タイミングは培養する植物によって多少変わるのですが
タイミングの条件はいくつか存在します。
培地の寿命、株の状態。
培地が古く培地は移植時期を迎えているのに、
苗の生長が遅く移植タイミングに達していないもの。
またその逆。
移植しても生長が遅いと効率の良い移植とは言えないからです。
移植する意味にも関わってきます。

放置しても駄目、移植しても駄目、、その微妙なジャッジが難しい。
生長が良すぎる物は移植回数を減らし、調整するんですが、
培地の寿命もあるので最後まで培地の養分が続かなかったり。
目先の行き当たりばったりの移植では駄目です。
播種してプロトコームが出来た段階で、移植計画を立てる事が重要。
品種の生長サイクルを把握し、臨機応変に対応。
このことはちゃ〜んと次のページで説明しますから、
頭に置いておいて下さい。


自分で出来る移植の最大のメリット
なにも移植は播種からフラスコ上げを行うだけのテクニックではありません。
それは巷で販売されているフラスコ苗をさらに良く、大きく育てる事です。
たまに見掛けませんか?
欲しいフラスコがあるけど、ちょっと苗が小さく
そのまま上げる(出す)のはちょっと心配なビン。
蘭展時期に購入し時期が真冬で上げるには中途半端な時にどうにかしたい。
ビンの苗の生長にバラツキがあって、
上げたいのけど、そのまま培養もしたいの苗が混ざって存在する。
メリクロン苗などでPLBを自分を殖やしたい(笑) などなど。

フラスコの中では生長が非常に早いので、
不安な小さな苗をビンから出して育てるより、引き続きフラスコの中で
十分大きくしてから出した方が結果的には早くなる。
急いで小さな苗を出す事も無くなるので枯れる確率も減る。
ビンなので場所も有効に使えるし、蛍光灯の光でも育つので実に合理的。
育て上手は培養上手!
育種家や時代に乗り遅れたくない方は、もはや必須になりつつあります。
逆に私は趣味家に言いたい、蘭を2号ほどの苗から育てるのに
なぜ蘭を培養して育てる事はしないのだろう、、っと疑問に思うほどですね。
まぁ手間やお金が掛かったり難しく失敗するという考えがあるのでしょう。
その点は私も否定しません。そのために活動してるこのページですので。
でも立派な温室を建てるよりは安いんですけどね。
クリーンベンチとオートクレーブ合わせて3〜40万ほどあれば新品が揃いますし。
それ以外の容器や培地は必要経費的な感じなんで、、、。
鉢や肥料、温室の燃料代、電気代と同じようなもんでしょう。
かく言う私も愛車の足回りだけで50万ほど注ぎ込んだので、
本当に興味があり、視野に入れて本気で考えてる方には
趣味といえども出してみてもいいかも、、な〜んて思います。
いえいえ私の見解なので聞き流しておいて下さい。



移植の基本的な方法

今回も写真ありません、、すいません。
説明している言葉の中に微妙な用語が含まれていますがあまり気にしなくてOK!
例:(プロトコーム・PLB)(フラスコ・ビン・瓶・培養ビン・容器)(苗・株)(移植・継代)などなど
厳密に言うと私的に違う意味の表現なのですが、、、。

1.ターゲット捕捉

とりあえず詳しくは次項で書くので、今は方法だけ説明します。
今回は苗4cm程度のシンビを例にしてやりましょうか。
一般的な移植知識を書いていくので品種などはあまり気にしないで下さい。
2.準備

マザーフラスコ(ビン)・培養ビン(移植するビン)・
苗の大きさに見合う滅菌シャーレ×2・その他作業に必要な器具など。
(バーナー、ピンセットなど)
3.マザー → シャーレ

マザーから苗を引き抜き、シャーレに入れる。
シャーレを使う上での基本的な注意は前回していますのでそちらも参照。
苗は傷つけないように優しくつまみ上げる。
葉の組織は大変デリケートで葉がプチッっと根元から取れる場合もある。
傷はもちろん強くつまむと細胞が破壊されるので、
その部分だけ葉が白くなり死ぬ。
苗をつまむ場所は基部付近の丈夫そうな場所。
慣れてない人は怖がって葉の先をつまんでしまう
場合があるのですがそれはNG。怒りますよ?

あと、ピンセットを炎滅菌した直後に苗を掴まない。
手で持っている場所は熱くなくても、先は熱くなっている事がある。
当然苗は高熱にさらされ葉が枯れてきたり、死んでしまいます。
火傷のように部分的に茶色くなる事も。


シャーレに入れるわけですが、シャーレの蓋は直前まで開けないのが鉄則。
開ける方向は必ず手前へスライドさせる。
ベンチは常に上から手前へ風が流れているのでそれをお忘れ無く。
大事なものは風上。汚い物は風下へ。
コンタミの危険度が高いものほどベンチの奥へ。

慣れない人はすぐ手前の方で作業してしようとする場合があるんですが、
出口付近はコンタミの危険が潜んでいるので奥の方でやる事。
ベンチ内がすべて安全だとは考えない。
あと肘をしっかり付けて腕を安定させる事。肘が極端に曲がる場合もNG。
腕全体を動かすのではなくて、肘を支点に手首を使って作業する。

苗を移す時の注意は、シャーレのフチに葉を付けない。
シャーレの安全地帯は内側のみだと考える。
もちろんシャーレからはみ出て床に着いた場合はその苗は捨てた方が良い。
シャーレ内の面積には限界があるので、入れる苗はほどほどにした方が良い。
またシャーレに入れていくだけではなくて苗の方向を決めて並べると○。
移し終えたら速やかにシャーレの蓋をする。

シャーレの蓋の役割はいくつかある。
もちろん蓋をする事で雑菌の進入を防ぐのですが、
他には苗を乾燥から守る事も重要な役割。
ベンチ内では炎滅菌の為にバーナーを頻繁に使う。
当然温度が上がって乾燥している。
フットペダル式では多少軽減されますが、ベンチ風によって乾く場合が多い。
バーナーの風下は雑菌が少ないかわりにかなりの温度と乾燥エリアになる。
しかも風が絶えず真上から当り、シャーレを直撃している事もお忘れ無く。
経験上シャーレの蓋をこまめに閉めて作業していても、
数十分も経たないうちに葉先が乾燥してきます。
いくらシャーレの蓋をしていても長期間(1時間ほど)の放置はNG。
4.シャーレ → シャーレ

先ほどマザーからシャーレに移動させた苗を整理します。
作業的な事を考えてもう1つシャーレを準備した方が良い。
どういう整理かと言うと、苗の大きさを揃えたり、並べたり
すぐ植えられるようにするためのものです。
この作業はべつにやらなくていいかもしれませんね。
マザーから苗を移したシャーレを仮に「A」のシャーレとします。
新しく用意したシャーレを「B」とします。
今の状態だとAのシャーレに苗が入っているはずですね?

右利きの人はナイフとフォークのように
右手にメス、左手にピンセットを持つ場合が多いので
Aのシャーレを右側、Bのシャーレを左側に並べて作業すると効率が良い。
まぁその人のクセもあるので一概には言えませんが。
ピンセットを右手、メスを左手に持った場合は逆になりますので。

メスとピンセットをどちらに持つかですが、、、
その器具の役割を考えてみて下さい。
今回のような移植の場合はピンセットの活躍が非常に多くなります。
ですから慣れていない人は右手に持った方が細かい作業が出来ます。
しかしメスというのは切る目的の物なので不器用な左手にメスを持ち
誤って切ってはいけない部分を切り落とす可能性もあります。
私の場合は右にメス、左にピンセットを持ちますが、
メスの峰を上手く使って植物を傷つけないように転がしたり
移動させたりしますし、スプーンの様に寒天を掬い上げる事もする。
私はなぜか「逆持ち」していた時期があるので、両方使いますが。
両手メス2本持ちとか両手ピンセット持ちとかしてた時期もありますし。
左手は長年の作業で器用になり、ほぼ両利き状態になっていますから
どちらを持っても影響ないのですが。
(正確には右手はよそ見してても自然と動くので、
主に左手に集中していれば作業出来るので、、。)

話し戻って、A→Bに苗を移します。
移す順番も決めておいたほうが良いです。
基本は大きい苗優先。背比べのように高いもの(良い苗)順で。
苗も一定方向に並べる方が良い。
A→Bに移す目的は素早い移植をするための準備と
苗の1本1本を吟味する事。
Aに入っている苗の中から、一番大きい良い苗を1本取りBに移す。
Bに移し終えた苗を、すぐに植えれる状態に整理します。
長い根は植えにくいので5mm程度に切り、
植えやすくするのが主な作業。

もっと詳しく書くと、右利きの人の場合。
Bのシャーレの中に苗を並べる順番は、
下の図のように、苗の先を右。根っこ側を左。
下から順番に良い苗を置いていき、
上(奥)にいくにしたがって悪い苗順。
苗を縦向きに並べ、右から順番に良い苗から置いていっても可。
っというのもシャーレは丸いので方向は回せばOK。


並べ方の例
4.シャーレ → 培地へ植え付け

さてこれで植え付け作業の準備が整った事になります。
シャーレBには、綺麗な並んだ苗が整理されてるはずです。
これは右利きの人が、右手にピンセット持った時に
最も作業しやすい苗の向き(位置)になるようになってます。
あれ!?右手はメスじゃないのかよ!っと思われるかもしれませんが
この作業ではメスを使いませんので、、、。
左手で培養ビン、右手にピンセットです。

また手前の大きな苗から順番に植える事によって、
光の当たり具合などが最適化されます。
早く丁寧、確実に植えるならこの方法が良いと思ってます。


植える方法は、深くなく浅くなくがベター。
間隔も等間隔。葉の向きも一定方向に合わせた方が良いですね。
長い根を短く切りすぎている苗は安定しなくて、
それを植え込もうとするとどうしても深植えになってしまうので、
5〜10mmは根があった方が良い。
慣れてない人は、深く植え気味になるので注意。
イメージ的には置く程度の気持ちで。
あと一度植えて失敗して培地から抜けた場合、
培地が陥没したままなので同じ場所は植えにくくなります。
慣れない人に多いのは培地に深く挿してしまい、
そして失敗して抜けてしまう、それでも同じ場所に植えようとするため、
なかなか苗が刺さらない。
植えられたと思ったらグラグラユルユルで斜めに倒れたり、、、。

全ての作業に言えることなのですが、
メスやピンセットは予備があった方が良いです。
何かの拍子に器具が床に付いてしまったり、
寒天が付いて汚くなってしまった場合、
すぐに予備で対応出来るからです。
一から炎滅菌して冷やしてから作業するのは時間的なロスもあります。
また使いやすいように配置する工夫も大切です。
私は常時つかうメスは最低2本、ピンセットも2本。
ベンチの逆サイドに長めのピンセット1本、やや短いピンセット1本、
合計6本を配置して万全の用意で行っていました。
それに、ピンセット1本で何本も植えていて、
万が一そのピンセットが汚染していた場合、これほど悔しい事はありませんし。

 →   

まぁ規則正しく植えるって事がコツでしょうか。
しかし厳密に規則正しくなくても大丈夫ですけど。
5.終了

とりあえずこれで作業終わりです。
最後に品種名や日付を書くぐらいです。

あんまりコツみたいな事書けませんでしたけど、、
っていうか、このぐらいしか知らないので、、、。

また作業中に気が付いた事を追記しておくことをおすすめします。
私がよく書いていたのは、コンタミしそうな怪しいビンとか、、
慣れてくると作業中に失敗しそうな心当たりがわかるようになりますので
コンタミ出るかもなぁってのは必ず書いてましたよ。
例えそのビンがコンタミしても原因が追求しやすいので、
今後の参考にもなります。
一番問題のが心当たりがない、わからない、忘れた、という事です。
他には培地の組成を変えていたりすればそれらを書いたり、
いつもより寒天が硬い柔らかいなども。
気になったこといつもと違うことは必ず書くようにしていました。
まぁすべて頭の中に記憶出来る人ならこんなことは必要ないでしょうが。
苗の大きさを揃える中級テクニック

趣味程度でやる場合はあんまりしないと思いますが、
例えば1ビンの苗の生長がバラバラの場合に役に立つ方法です。
作業的には上で紹介している方法と同じです。

まずAのシャーレにマザー3本分、出来るだけ沢山の苗を入れます、
私の場合はAのシャーレに60本ほどいれます。
そしてBのシャーレへ大きい順に整理していくと、、、。
自然と大きい苗が揃って多く取れます。
それを順番に植えていくと、綺麗に3段階に別れて
3本3段階の苗の大きさがわりと均等に揃います。
厳密にはハッキリわかれないのですが、植えてみるとあら不思議
一目でわかるほどになります。










これのメリットは、大きい苗のみを取る場合や、
大きい苗のみを先に移植したり、大きい苗のみ先にビン上げしたり、、
生育具合によって別々の管理が出来るようになるのです。
1ビンに生長がバラバラの苗が入っていると、
ビン上げのタイミングなども難しくなるし、小さい苗は枯れる危険もある。
また同じような大きさの株を1ビンに入れる事によって
お互い競い合い、弱いものも競合で負けることは少ない。
趣味家なら一本一本の可能性を考え、苗を大切にしたいと考えますからね。
ビン上げで大小の苗が入混じり、大半が枯れてしまうという
事態を回避しやすくなります。



おおまかな流れや移植作業などのコツはご理解頂けましたでしょうか?
これは実際やってみないとなかなかわからないと思いますし
上記で書いた内容を全て頭に叩き込んで取り掛かるのは難しいかと思います。
何度も書いていると思いますが、これは教科書ではありませんし
全てでもありませんので、みなさん独自のやり方で
確立して頂ければ良いでしょう。それらの足掛りにして頂ければ幸いです。

正直なところ、元々私はシャーレを使うのを嫌っていた人間です。
それはシャーレという余計な作業が入るためです。
しかしシャーレをただ使わないというだけではなく、
色々な工夫をしてシャーレを使わなくて良い作業を心掛けていました。
あとは、マザービンのキャップは開けたままで作業していました。
今はマザーの蓋を開ける時間を極力短縮するため、頻繁に開け閉めします。
これは開け閉めの余分な動きによるコンタミ防止とスピード化です。
学生時代はとにくかく量で勝負していましたら、速さ重視でした。
自分で今言うのもなんですか、もの凄く速かったのを覚えています、、。
数時間でビン百本以上やってましたし。
今思うと、、なんであんなに速かったのか、、(笑)
植え込みは当然粗かったですけど、とにかくヒートしてました。




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