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Second Stage Edition
Leg 04  メリクローンの基本



◆ メリクロンは、、、 ◆
お久しぶりです(笑)何度この言葉を書いたでしょうか、、。
今回はメリクロンについてですね?

蘭栽培のベテランが、蘭初心者にこのように聞かれました、、。
初「メリクロンってなんですか?」
ベ「同じ個体のクローンなんですよ?」
なんて会話があるかと思います。

蘭を含めメリクロンとは何なのか!?
蘭以外の知識も含め、その辺を中心に書いてみたいと思います。
今回はそれを重点的に、、っということです。
次回は一般的な培養、その次で蘭の培養とします。
ですので3ページにわかれます、、。

これを実際に試すとなると、ここで説明しただけでは難しい。
培養に携わって、経験を養う必要もあるからです。
素人考えではとても困難。
お遊びではなく、真剣勝負なのですヨ。
特に貴重な蘭の新芽を使うので、安易な気持ちや考えで挑戦して欲しくない。
書いてしまうと、やっぱり自分には出来ない技なんだ!なんて思われたくないし、、。
っというわけで、失敗しても文句ナシですよ?(笑)



メリクロンってどんな感じ??
メリクロンとは、蘭の世界では今や当然のように飛び交う言葉。
今更誰かに聞くのは恥ずかしいぞ!って人は必読です。
この言葉は2つの言葉が合体しています。

私が習ったのは、メリ=大量 クローン=同じ物
遺伝的に同じ物を大量に増殖する。という意味です。
辞書では、メリはmeristemから来ているようで、分裂組織(植物の細胞)って書いてありました。
私は今まで間違った解釈をしている気もしていますが(笑)
具体的には茎頂の事なのでしょうか、、?

クローンと言うだけに、コピーと言ってしまっても良いでしょう。
クローンというのは、遺伝的に同じもの。
つまり生物の設計図でもある遺伝子が同じだということです。

遺伝子は標本などで良く見る二重螺旋構造をしています。
不規則によれたハシゴをイメージしてもらえればわかりやすいです。
その遺伝子の中身(?)をDNAと呼んでいます。
DNAの情報集合体が二重螺旋になっており、それらを大きな意味も含めて遺伝子と呼びます。
遺伝子は次世代に情報を伝えるもの(子)と覚えましょう。
さらに遺伝子が詰め込まれているものを染色体と呼んで良いです。
細胞分裂をする時は、この染色体が2つにわかれるわけです。
ちなみに、何気なく使っているDNAという言葉ですが、
デオキシリボ核酸の略で、Deoxyribonucleicacidの頭文字から。
DNAと聞くと、未知の物でとても神秘的な何かのように思えますがただの核酸です。

核酸は、糖、塩基、リン酸で構成されたヌクレオチドというものが
エステル結合によって連なった高分子の生体物質なのです。
ヌクレオチドっていう名前のユニットがいっぱい合体しているんです。
しかも、生物の設計図と呼ばれる塩基の種類は4種類しかありません。
塩基はアデニン、グアニン、シトシン、チミンでA・ G・ C・ T と呼びます。
この4つの組み合わせでだけで、生物の遺伝情報を構成しているのです。
しかも、この組み合わせのコンビは既に決まっているのです。
簡単に言えば、AとB、CとDのコンビを作ってそれらを並べて
パスワードを組上げているいうことです。
意外と単純な組み合わせで構成されているんですね、、、。
しかし、この高分子生体物質が地球上に存在する
すべての生き物の遺伝情報を記録するメディアなのです。

この4つの塩基配列を正確に複写したものがクローン
そしてクローン植物を大量に増殖したのが、メリクローンというわけです。



メリクローンと実生
これでメリクローンの意味がだいたいわかったと思います。

さてさて、蘭の世界ではメリクローンと相反するような意味の存在
だと思われがちな実生(みしょう)との比較です。
自花受粉の実生では、メリクローンと同質の遺伝情報を持っている。
と解釈しても良いと思います。

ここで実生の話をしましょう。
知らなくて今更誰かに聞けないよぅ〜!なんて人は必読です。
実生は「じっせい」や「じっしょう」などとは言いません(笑)読み方は「みしょう」です。
ようするに、種(種子)から生えた!という意味です。
交配されて種が出来て、種から育てた物が実生株ということです。

話を戻します。
通称セルフ交配と言われる自花受粉ですが、、
当然、同じ花の花粉を、同じ花のめしべに付けるわけですから、
クローンに似たような狙いがあります。
しかし、種は子供なので、自分の姉妹や双子が増えるという事で、
遺伝形質は似ていますが、コピーではなく微妙にみんな違います。



蘭の世界でメリクローンとセルフ実生は、具体的にどう違うのか?
そこを論点に話を進めたいと思います。

○作業の違い
実生とメリクロ−ンでは、培養過程がまったく違います。

実生は比較的簡単で、ある程度決まった期間内で苗を揃える事が出来ます。
培養方法も比較的簡単です。
しかし、増殖数は有限種子の数=個体の数となり、
種が少量しか取れない場合は生産数が限定されてしまいます。
生長は出来不出来があり、優劣が付きやすいです。
実生苗は早期販売時の思い立った時が買い時でしょう。

一方メリクローンは、少数の細胞から増やすため、培養方法は実生より難易度が高い。
増殖順に苗が育っていくために、生長に差が出る事もある。
理論上では半永久的無限に近い数の苗が生産出来るので
ある程度増殖させてから苗を培養する方法もあります。
メリクロン品はトップ苗を購入するのがクレバーでしょう。


○遺伝の違い
セルフ実生とメリクロンでは意味合いがまったく違う

実生では、種から増えているため、遺伝子がそれぞれ違い、遺伝情報もバラバラです。
セルフ実生では、似たような遺伝形質を保有していますが、似ているだけで違いますね。

一方メリクローンは、同じ遺伝子を増やしているので、理論上は完全なコピーです。
実生から増やされていれば、1株ずつに個体差が出るので、
蘭の世界などでは、オリジナル株として個体名が付けられます。
メリクローンでは、当然コピーなので、個体名はメリクローンされた株に準じます。

実生で出来た苗は、コピーを作らない限り、世界に2つとない個体になります。


○株や花の違い
蘭コレクターには非常に気になることです。

実生では1株1株に個性があるので、上でも書きましたが、
似ているようでも遺伝子は違います。
似たような花が咲く事は多いですが、やはり違います。
メリクローンでは、株の性質や花も理論上はまったく同じです。

ここまでの説明で「そんな事わかってるわい!」っていう人が大半だと思います、、。
ここで、「なるほどなるほど」と思った人は、今日から蘭中級者を名乗る資格を得ましたよ(笑)
クラス別に、蘭初心者(入門クラス)、蘭初級者(Eクラス)、
蘭中級者(Cクラス)、蘭上級者(Aクラス)があり、
それを越えると超蘭人(凌駕Sクラス)になります。
ちなみに、蘭好き、蘭マニア、蘭狂などは別カテゴリー。
(勝手に作っただけですので、真に受けないで下さい)


そんな事はさておき、
今度は実生とメリクローンの価値観を考えたいと思います。
蘭を集めている方々には、ここが一番のポイントになると思います。

○価値観の違い
ん、、これは難しいぞ、、。価値観なんて人それぞれだ、、。
中級者や上級者は当然とも言える知識ですが、蘭初心者〜初級者は、
これらを知っていないと、メリクローンと実生の違いもわかっていない!
という事になります。
よって、どんなものをメリクローンすれば効果的で良いのか?
という重要な意味にも関わってきます。
隙があれば優良花を狙う、蘭上級者の場合で説明してみしょ〜。


□セルフ実生
キーワードは「夢」「宝くじ」「オリジナル」

セルフ実生は、上でも書きましたが、自花受粉された交配です。
ですので、遺伝的には親に近いものが得られる可能性があります。
蘭の世界では、親株を越える驚異的で身近な存在になります。
何代もの交配された品種なら可能性は低いですが、それが原種に近いと
可能性はグンと上がります。
しかし、もちろん親を越えられない者も多いのも事実です。
大半は親と同等かそれ以下なのですが、遺伝子は違うので可能性は楽しさ無限大です。
ギャンブルや宝くじにも近いものですね。

そして万が一でも親を越える者が出れば、、
それがたった1つのオリジナル株として所有出来るのです。
コレクターにとって自慢出来るコレクションの一株になるというワケ。
個体の名前は自分で好きなものが付けれるのも魅力です。
良い花の個体をセルフ実生して、趣味家の購買意欲を高める狙い。
また、良い花が咲いた株というのは、高価で希少、
当然それを買えれば願ったり叶ったりなのですが、、
小市民はそれを買えない、、、。
安価で価値性が高いと思われるセルフ実生の未開花苗を買う!
そして、夢とロマンに胸躍らせて開花するのを待つのです。
世界でたった一つの花を咲かせ、その名付親になりましょう!!
上手く育て、咲かせるのはあなた次第。

しかし!チマチマ苦労して育てたのに、、
咲いた花が目も当てられないような花なら、、
それはそれは残念に思う人もいることでしょうねぇ〜(笑)
まだ咲けば良いですが、、何度買っても咲く前に枯れてしまう、、
何年、何十年育てても咲いてくれない、、。
オレは!、、オレは!こんな物望んでいないぃぃ〜!!
っというわけで、↓に続いていくわけです。

□メリクローン
キーワードは「現実的」「自己満足」「レプリカ」

メリクローンは、上でも書きましたが、遺伝子が同じコピーです。
ですので、遺伝的にはまったく同じだという考え方です。
蘭の世界では、優良な花を咲かせる身近な存在として位置付けます。
自分で苦労して何代も交配して改良せずとも、これを使えば、オイシイ部分だけを
モノに出来る便利なものです。
それが、希少原種になればなるほど価値も上がります。

しかも、遺伝子は同じなので、親と同じ花が咲きます。
手軽に良い花が自分の物に出来る現実的で合理的な方法です。
しかし!メリクローンは大量に作られる場合が多いため、
その数も多く「オレも持ってるよ〜」「私もあります」なんて事にも。
そうなると株を持っているという自己満足性が強くなります。

しかし、実生とは違い、親を越えることは理論上不可能です。
個体もメリクローンされた遺伝子と同じなので、
個体名が付いていれば、それに準じる必要があります。
それがたとえ購入時に個体名が付いていなくても、
後日、メリクローンの元親に個体名が付けられたら同じように、
同じ名前を付けなければいけません。
まぁ所詮は他人の物だという事ですね、、。

クローンと言っても、完全なコピーではない物もあり、
大量に増やされたため、遺伝子に変異を起こしている株もあります。
(これは後々に下の方でご説明しますので、、。)
メリクローンを行った元のオリジナル株を入手出来れば、
星の数ほどあるレプリカの頂点に君臨する存在になれます。
これまさに、自己満足の優越感に浸れまくれる事でしょう、、。
「あなたのはクローン?私はオリジナルですのよ。おほほ」なんてね、、。
しかし、そうなってくると、大変高価で希少、
当然それを買えれば完全な遺伝子を所有出来るので、
願ったり叶ったりなのですが、、小市民はそれを買えない、、、。

安価で生産価値が高いと思われるメリクローン苗を買う!
そして、期待と優良花の魅力に胸躍らせて開花するのを待つのです。
上手く育て、咲かせるのはあなた次第。
・・・・
・・
一長一短、、価値観なんてこんなものなのですよ(笑)
書いてる文章も、パクリ(コピペ)で済んでいることですし。

チマチマ苦労して育てても、咲いた花は確実なので、
実生のように目も当てられないような事はあまりならないでしょう。
苗から咲かせた時は、その達成感に満足する事と思います。
しかし!株が十分に育てられず、全開の満作状態の花にならず、
ひょろひょろのが咲いたら、それはあなたのウデかな?(笑)
それはそれは、自分の不甲斐なさにヘコんでしまうことでしょうね。
クローンと言っても、育てられた環境で優劣は出ます。
下手だと証明されて、ショックも大きいでしょうなぁ〜。
オレは!、、オレは!こんなの認めないぞぉぉ〜!!
っというわけで、、蘭を育てるのが上手い人は、なんでも来い!なわけですヨ。



○予備知識&用語知識
『オリジナル株』
これは、蘭園のカタログに記載されているような文字の
「当園オリジナル品種!」などとは、意味がまったく違います。
この場合のオリジナルというのは、クローンなどの元株
つまりコピーではない、オリジナルの遺伝子だという意味です。
大量に分け株がされたものについても、
最初に分けた元株を入手した持ち主が所有する株をオリジナルなどと呼びます。

株分けされたものもクローンです。
培養されたメリクローンよりも確実で正確な同じ遺伝子を保有し、
メリクローンよりも高価な物とされて扱われます。
遺伝子構造という面ではメリクローンと同じですが、その信頼性の高さが評価されます。
メリクローンでは納得がいかない人は分け株を求めるのがセオリー。

『個体名』
個体名は、人間1人1人に名前があるのと同じように、
1個体に1つの名前が付けられます。
どんなものにでもオリジナルなら個体名は付けられますが、
蘭の世界では、特に優れた花や特徴のある花に、「この株は特別だ!」
と言う風に個体名が名付けられている場合が多いです。

属名や品種名(原種)はラテン語が使われますが、
個体名は英語またはローマ字を使います。
例えば、Cymbidium sinense ‘Eternal Breeze’のように。
シンビジュームは属名、シネンセは品種名、その後‘’が個体名。
日本人で例えれば人類の中の日本人という仲間で名前が琴川弥夜、という感じになります。

ちなみに、原種は品種名の頭文字が小文字で、交配種は大文字の英語で
原種はラテン語が使われます。
なぜラテン語なのかと言うと、すでに使われなくなった滅びた言葉だからです。
滅びた言葉は、現在使われている言葉のように、意味が年月によって変化しないからです。
日本語でも今では「ゑ」なんて文字使われないでしょう?
腹立たしい時に使う言葉の「ムカツク」や激怒する時の「キレる」
などなど、、昔に使われた言葉とは違う意味を含んでしまっている。
そういった言葉を永久に残る種の名前に使うのは不都合もある。
っというわけで選ばれたのがラテン語、、っと習ったんですが、、。
ただ単に誰かが最初にラテン語を使っただけっていう感じも、、。
日本には、科名や和名なんてのもありますしね、、、。

『銘品』
蘭園のカタログやDMなどにこの言葉が使われることがあります。
つまり、特に花が優れ、価値のある物がこう呼ばれます。しかし定義はありません。
希少度や生産価値というよりも、知名度や収集価値の高さ重視で
非常に趣味的な言葉です。ネームバリューと言っても良いでしょう。

『セルフとシブリング』
セルフ実生は上でも説明しましたが、この言葉をよく耳にするようになると、
シブリングという言葉もよく聞くようになるかと思います。
セルフは自家受粉に対し、シブリングは他家受粉。
他家受粉と言っても、同じ品種どうしの交配です。
それをシブリングクロスなどと呼ぶ場合もあります。
品種もセルフと同じになるのですが、違う株どうしの交配となります。
原種で行われた場合でも、原種には変わりないので表記は同一。
しかし他からの違う遺伝子を子孫に取り込めるために、
あえてセルフとシブリングを分けている場合も多いです。
ラベル上の表記では、間違いを無くすために、
○○×seif、○○×○○など、使い分けている業者もいます。
セルフでは種が付きにくい株も、シブリングなら種が付きやすくなったり、
さらに優れた同一品種と交配する事によって、品種名を変えずに
価値性のみを高める事が出来るのです。
またセルフよりもバリエーションが増えて変化があるのも面白いです。

『原種間交配』
原種どうしを交配したものにこう呼びます。
しかし「原種間」なので、異なった品種どうしを交配した場合。
通称「F1」(第一回目の交配)と言われます。
蘭の世界では「最初」という意味から「プライマリー」とも言います。
異種間交配というわけです。

ちなみに、地震の時に使われる用語でP波とS波があります。
このP波は地震の初期に来る細かな波で、
「最初」という意味のプライマリーのPからきています。

『交配種』
蘭の中級者〜上級者ともなれば、よく使われる言葉。
それが交配種という言葉です。これは、原種ではない何か。という意味も含みます。
混じり物というニュアンスもあります。人によってとらえ方が違うので、難しいのです、、。
実生なら交配されている株なので全て交配種と呼べなくもない。
純血の遺伝子を持っていない、という解釈が適当だと思われます。
原種の場合でも、栽培目的に交配された物や、栽培品など、、
定義はかなり曖昧です。

原種の審査会では、当然交配種なのか原種なのかで、
属するカテゴリーや審査基準にも大きく影響します。
いわゆるズルをしているか!?という問題にも発展してきます。
「こんな花が咲くなんて、これは交配種じゃないか??」
な〜んてクレームが付く事もあるかもしれません。

この定義は「雑草」という言葉にも似ています。
雑草とは、目的としない植物に使われる言葉です。
ダイコン畑にダイコンしか育てないように栽培しているのに、
カブが生えてきたら、そのカブラは雑草ということになります。
雑草を育てている人は、それは雑草ではなくなります。
昭和天皇が雑草という言葉を嫌ったというのもわかりますね。

目的としていない蘭。つまりラベルと違う品種の花が咲いたら、、
目的の花ではない何か。と疑うのです。
原種を買ったはずなのに、近代的な花が咲いた。
でも品種がわからない。そういう時に曖昧さも含めて使う時もあります。

育種という点から言えば、原種は切っても切れない関係です。
交配種も元々は原種から作られています。
ですので交配種を知るは原種も知る。いう考えがあるので、
別に交配種には興味持たなくて良いという意味でもありません。
原種だから意味がある!蘭の世界ではそんな考え方をする人も多いのです。

『ハイブリッド』
今では、色々な意味で使われている言葉です。
私が好きな自動車産業では、ハイブリッドカーなんてのもあります。
プリウスやシビックなど、CMなどで大々的になっています。
蘭の世界では、交配種と似たような意味を持ちます。
しかし、もっと上位な交雑種の事をこう呼びます。
交配種の進化形とでも言いましょうか、、。ハイブリッドのもともとの意味は、
動植物の雑種や、異なった質を持つものの混在、
電気的信号をお互いの干渉なく処理する。そういう意味です。
異なった品種を混ぜ合わせた結果たどり着いた交配など、、。
3属間交配の大輪整形カトレヤや丸く大きな花を安定して咲かせるパフィオなどは、
このハイブリッドという言葉の代表ではないでしょうか。

『実生(交配)と山採り(野生)』 
原種と一言で言っても色々あるのです。
遺伝子上は同じでも、育った環境や育種された株など多種多少。
蘭園のカタログなどに、原種なのにわざわざ「山採り」
なんて書いてあるのはこれのためです。
蘭の世界で大事なのは、野生や栽培種ではなく遺伝子なのです。
交配され、優良な花を咲かせる遺伝子を持った原種は
苦労して現地から採ってきた野生種よりも価値があるという事です。
ですので、巷で売られている原種の大半は、栽培種です。

自然界ではイチョウの木は完全に絶滅したと言われています。
日本にある大半の広葉樹が絶滅危惧にされデッドデータに載ってます。
しかし、実際は身近な街路樹や公園などで植えられているのを
よく目にすることが出来ます。
蘭では、イワチドリやウチョウラン、アツモリソウにクマガイソウ
さらにエビネなどなど、も絶滅危惧種です。
人間の手が入っていない野生環境で自生している。
という定義なので、栽培されたものでは意味がないのです。
人間が立ち入らないジャングルの森は日本にどれだけ残っていますか?



植物が持つチカラ
動物になくて、植物が持っている力。
それは分化全能性という、大変素晴らしい機能です。
動物の細胞は、皮膚は皮膚、骨は骨のという感じで、
別々の役割をする細胞で作られています。
簡単に言えば皮膚の細胞を増やしても、皮膚しか作れないのです。
しかし植物は違います!!
1つの細胞からでも、元の植物の体になれるのです。
この台詞を思い出すと、某妖怪人間の早く人間になりたい!
という言葉が頭に浮かんでくるのですが、、(笑)
たった1つの細胞でも根や芽や茎や花、全ての部分に育つ事が出来るのです。
まさに読んで字のごとく、分化全能性という力です。
全機能に分化出来る力を持つ性質。

株分け=クローン株という考えも成立します。
挿し木で殖やしたものも、同じようにクローンです。
植物の分野では、クローンというのは、案外身近にある事だというのがわかります。

園芸界でも、優良な品種を挿し木で殖やせば、
安定した良い性質をそのまま引き継ぎ増殖出来るのがメリット。
営利的にも大変優れた方法です。
しかし、親株などがウイルス感染していたり、病弱になってしまっている場合は、
同時にその性質も受け継がれるので、健全な親株の保存が課題になってきます。



どの部分を用いるのか!?
上でも説明しましたが、植物には分化全能性という能力が備わっています。
ですから、メリクロンに用いれる部分は、理論上は全て可能です。
文字通り葉の先から根の先まで、どこでも使える事になります。
蘭中級者の方々は「そんなわけない!!」「初耳だ!!」
っと口を揃えて私に抗議するでしょう。
理論上ではと言う事なので、実際問題はやはり違います。
植物によって出来る部分、出来ない部分があるのです。
正確には、成功しやすい部分、しにくい部分とでも言いましょうか。
私の先生は、無知な生徒への例え話として、こんな事を言いました。
「培養に使うのは、ぴちぴちギャルでなければいけない!!」
じつにセンスのない例えのネタです。
和まそうと思って、ギャグを言うにしても、あんまりの出来、、。
ま、まぁいらぬ話を書きましたが、そういう事です。
活発に細胞分裂が行われる生命力が強い部分です。
代表的な部分が、「茎頂」(けいちょう)と呼ばれる部分です。
頂芽優勢理論に基づいています。
蘭栽培経験者でもこの2つの言葉はあまり耳にしないと思います。
頂芽優勢というのは、ん〜〜どう説明すればわかりやすいか、、
頂点に位置する芽が一番勢いがあって優れている、、。
とにかく、一番頂点に位置する芽に多くの養分が回されるということです。
頂芽優勢という文字をよく考えて解釈してもらったら、そのままの意味。
蘭では、新芽が出だすとバックバルブはあまり育たないっちゅ〜こと。
茎頂というのは、一番生長が活発な生長点のこと。
つまり、一番先端の生長点の事で、茎頂は1株に1つという事です。
蘭では2リード以上の場合でも、養分が多く配分される方向があります。

話が長くなりましたが、結論を言うと
メリクローンがもっとも効率よく出来る部分は生長点!!
ファレ系では花茎培養で殖やすのも有名です。
根端の生長点を培養する研究もあります。
確実なところでやっておきましょう!

しかし!蘭以外の植物では意外と生長点以外も出来るんです。
葉、茎、つぼみ、花茎、球根、リン片など。
もう少し詳しく書くと、葉片、葉茎、花糸、葯、花粉、、、。
マイクロプロパゲーションは様々な部分で実際に行われています。
ユリなどは、ほとんどの部分で培養が可能です。
植物によっては、適当に取ってきた葉でも可能。
ニンジンなんてのはスーパーで買ってきたものを切って植える。
超お手軽な培養練習の素材としても知れています。
っという感じで、実績やセオリーがあれば、本当にどこでも使う事が出来るのです。
もちろんチャレンジャーの方は独自の部分で培養されてる人もいます。

培養の入門者には、ニンジンのカルス培養や、イチゴやキクの茎頂培養、
キクの葉片培養、ユリの器官培養などがポピュラーで登竜門とされています。
スーパーや花屋で買ってきた野菜や花を使って生長点、組織培養の練習を行う。
なんてのも良いです。
実際に私はスーパーでアスパラを買ってきたり、
農場の片隅に生えているアジサイで練習したりしていました。



では、、なぜ蘭は生長点以外の部分では出来ないのか!?
大切な新芽(生長点)を潰してしまうので、他の場所でしたい!!
みんなそう思うはずです、、。そこで、なぜなのか考えてみましょう。

まず組織培養には、活発に生長する細胞組織が必要です。
そして、とても強い生命力も必要です。
分化全能性という能力にも優れている必要もあります。
また、それ以外に根本的な相性なども必要です。
生長点以外の部分である葉片や茎を培養する場合は、
非常に強い生命力と活発な細胞分裂、さらに培養の相性が良くなければ実現しません。
蘭は植物の中でも進化の頂点に位置する存在ですが、生長する速度は遅いので
同時に細胞分裂も遅いのです。
新芽以外の茎の部分であるバルブも、養分の貯蔵庫になっていて、
活発に活動するような細胞もありません。
蘭を育てている人なら、その生態系から、培養が難しい事は容易に想像できるでしょう。
バックバルブから新芽を吹かして育てる事も他の植物のように簡単に出来ない
事を考えれば、培養に関しても一筋縄では出来ないと考えられます。
ですから少しでも活発な細胞を選び、培養しなければいけません。
そこが生長点なのです。



リスクとスキル
ここまでの説明で、何となくメリクローンがどういうものか
少しずつわかってきたと思います。
自然の摂理をねじ曲げ、神の領域をも越える人類の文明が生み出した技の結晶!
みたいに若干夢見がちに思われるのですが、、(冷汗)
夢見がちなのは乙女チックな少女だけで十分です。
(特に美少女なら申し分ない条件なのですが、、、)
しかし、挿し芽や挿し葉で殖えたものもクローンなので、
まぁ身近と言えば身近な事だと認識できます。
メリクロンは少なくても万能の技術ではありません。当然リスクも負います。

蘭にとっては貴重な生長点を失ってしまいます。
蘭の新芽花芽などの構造をよくよく観察して下さい。
どこから出ているか、どうやって花芽分化し花茎が伸びるのか。
観察すれば、あなたはその重要性が理解出来るはずです。
どこから花芽という生長点に似たものが発生するのか?
新芽の生長点はどこにあるのか?
通常バルブには、茎頂と呼ばれる生長点と予備の生長点があり、
翌年にバルブが前へ形成する方向に、左右1つずつあります。
普段は2つしかないのに花を咲かせる花芽はどこにあるのでしょう?
花茎はどこから伸びるのでしょうか?これは宿題にしておきます。

貴重な新芽を折って培養したとしても、やはりメリクローン苗を作れない場合も多いです。
皮肉な事に、培養が困難な品種で、虚弱株ほど難しい。
所詮自然の摂理には敵いません。
今まで散々書いていますが、培養は特別な事ではありません。
地球上の生物ですから、買ってきた蘭を育てるのと同じようなもの。
畑に種を蒔いたり、植え替えしたり、肥料や水をやったり、生物が生れ育つための
お手伝いにすぎないのです。

全然話は違うのですが、、宇宙とは未知の世界!
な〜んて思ってみたりもしてますが、、その特別視している宇宙の中にあるのは、
地球であり、人間であり、私であるのです。
そう考えると、これほど現実的なものはないな、、っと思ってみたり。
太陽だって神話や昔話では、誰もがウソだと思うお話ばかりで、
言っちゃ悪いが、水素の核融合反応なわけであり、、。
宇宙空間だって、真空でヘリウムや水素が大半を占める空間。
火星人がクラゲみたいなわけがない!!(古ぃ、、)
火星人はどんな物質でどんな元素でどんな分子で構成されているのか!?
教えて欲しいものです。
神秘的と言われるものでさえ、科学的に証明されればそれまで。
今では些細な当たり前の知識でも大昔は神秘だったのでしょう。
非科学的な事はあまり認めませんが、神秘は大好きです。
そのわりに非科学的なファンタジーは好きです。
非科学なりにも考え方や解説があればそれで満足OK!

なんだかわけのわからない、薄い内容で終ってしまいましたが、、、
とにかく、良い材料と高い技術で少しでもリスクを減らすという事です。
なんでもかんでも出来る!と思うと大間違い。(そんな事どこにも書いてないし、、)



コピーなのに、コピーではない
理論上ではメリクロンは完全なコピーとされています。しかし、それは理論上の話。
現実問題、完全なコピーではないものもあります。メリクロン変異と呼ばれるものです。
良い意味でも悪い意味でも使いますが、それは別で説明します。

メリクロンは全く同じ遺伝子を受け継いだクローンと考えるのがセオリーですが、
その通りにいかない場合があります。
遺伝子の「複写」や「コピー」などと言ったデジタルで機械的な
表現で書いていますが、実際は同じ細胞がたくさん分裂する過程に
同じ体が出来上がるというだけなのです。
当然の事ながら生物ですから、たまには細胞分裂を失敗します(笑)
人間だって生活習慣病やガンなどになることもありますからね。
不完全な細胞からは正常な遺伝子が出来ず、不完全なままの体しか作る事が出来ません。
それを大きくまとめて、(メリクロン)変異と言います。

特にメリクロンの場合は、生長点付近の少量の細胞だけで植物体にまで
細胞を殖さないといけないので限界もあります。
ましてや、人工に殖されるわけですから、その確率は自然界の何倍もの高確率になってしまう。

よくSFモノで、人間が人間のクローンを作った結果、生殖機能が低下し、
子孫を残せなくなってしまった。虚弱体質の子供や奇形児ばかりが「生産」される。
クローン人間のはずなのに、似ていない者が多く生産される。
そういった空想世界の物語があったりします。
しかし、あながちウソではなく、どちらかというと本当の事なのです。
現実にオリジナル親株は交配しても種が容易に着くのに、
メリクロンされたコピーを交配に用いても種が着きにくかったり、、。
コピーのコピーでは、すでにオリジナルとは違う別モノで扱われたり、、。
将来性の危険を感じる場面にも遭遇しています。

メリクロンと言っても、外見などの見た目は同じでも、
僅かにコピー出来なかった誤差やズレが生じるのです。
クローンを繰り返し、子孫になればなるほど、誤差は大きくなり、遺伝子が弱くなる。
ただし、株分けされたものや、挿し木で殖されたものは、外的要因で変異を起こす事はあっても、
株分けや挿し木が原因によって変異することはほとんどありません。
メリクロンを行う時は、決してデジタルのデータをコピーするような感覚で行わない事です。

メリクロンを行う親株も、メリクロンで作られた細胞を用いるのは良くありません。



変異の原因
同じクローンなのに、なぜ株分けには変異がなく、メリクロンでは変異が多いのか?
説明します。
上でも説明しましが、メリクローンに用いる部分は生長点付近の僅かな細胞を使います。
それに、大変若い細胞で活発に分裂が行われています。
そのような細胞を人工的に急速に増殖させるわけですから、
やはりどこかにしわ寄せがきてしまいます。
その結果、正確にコピーされなかった遺伝子が増え続けてしまいます。
しかし、パッと見ただけでは判断がつかず普通に育つ苗も多い。
初心者なら、ほとんど気にせず育てられるぐらいです。



■変異を引き起こす原因は、培養方法でも大きく左右されます。

大きな原因とされるのが、植物ホルモンの多用です。

植物ホルモンは元々植物の体内で作られ植物体内の様々な部分で使われています。
有機化合物で植物の生長を促進させたり抑制させたり、
植物体の色々な部分に影響を与えたりする便利なものです。
植物が作り出した天然ホルモンは非常に不安定な物質のために
残念ながら利用出来ません。
ですので、人工的に合成された植物ホルモンが使われます。
しかし、発ガン性物質を含む有害な副産物も出来やすくなります。

有害な物質を含んだ高濃度の植物ホルモンが入った培地で
育った植物は当然ながらその悪影響を受けて変異を引き起こしやすくなりますね。

増殖数と生産量の釣り合いによっても変異は出ます。
一般的に洋蘭を増殖する場合、プロトコームやPLBと言った植物にとっては
その形態を維持させる事が困難な状態なのに、その形態を保たせながら増殖します。
不安定な状態の細胞を大量に増殖させた場合、細胞は徐々に負担が増加し、
その結果変異を引き起こしやすくなります。

■培養期間によっても変異が出やすくなります。
不安定な状態を長期間維持させている最中は、植物も生物ですから
その期間中も新陳代謝は行われます。
従って徐々に細胞は衰えを見せてきます。
プロトコームやPLBの形態を維持したまま、長期間培養するわけなので
変異を起こしやすくなります。

■生育速度も変異の原因になる事があります。
生長点などの活発に細胞分裂が行われている部分を培養し
人工的に生長を促しているので、その激しく速い細胞分裂に
遺伝子のコピーが間に合わず、正常に行われないことがあります。
植物ホルモンなどを用いると、さらに生長速度が速くなり負担になります。

■まとめ
まとめますと、植物ホルモンを使い、不安定なプロトコームなどの状態を維持させながら、
生長を促し、大量に増殖させ、長期間にわたって培養する。
メリクローンのメリットとされている事が、一方の考えではデメリットになってしまう。
デメリットを露呈させないためにも、十分な知識と心構えが必要ではないでしょうか?
生産農家や種苗家には「諸刃の剣」と言ったところでしょう。

他人の悪口は言いたくないのですが、確信犯でそれを承知で行っているところも?
その危険性が高いところも存在するようです。
すべてが変異している!と皆が薄々感じているところも、、、。
生産量や生育期間、ニーズや時代の流れで、
どうしてもそうなってしまう悲しい現実もあります。

ここまでの説明では、変異というのは悪い事ばかりのようですが、、良い例もあります。
突然変異で、花が巨大になったり、今までにはないような色の花が咲いたり、
蘭の趣味家には非常に面白い要素でもあるのです。
変異と言っても、植物体の全ての部分に悪い影響を与えてるのではないのです。
時には部分的だったりもするのです。
異変が起きたのは遺伝子のどの部分なのか!?というのが重要でしょう。
元のオリジナル遺伝子とは違うという意味で使われますので、良し悪しは別問題です。



環 境
メリクロン苗を培養したり、育てる時は、みんなが同一の遺伝子を持っていると考えるので、
苗の管理には注意が必要です。
自然界では考えられないような環境になります。
特定の病害虫が大発生した時に、防ぎきれなかったり、最悪は全滅したり、
全ての株に影響を与え、干渉します。自然淘汰も望めません。培養瓶の中でも同じ事が言えます。



危険性
上の方で少し説明しましたが、植物ホルモンには有害な物質が含まれる危険があります。
植物ホルモンではオーキシンなどの言葉を聞いた事があるかと思います。
植物に光りを当てると、茎が光の方向へ曲がっていく事から発見されたIAAなどがあります。
オーキシンは主に芽の分化や生長促進、カルス誘導、果実の肥大など、、。
しかし、人工的に用いるには非常に不安定で分解が早いため使えません。
そこで農業利用するために、合成された物が作られます。
その合成された植物ホルモンは、生産過程で発ガン性物質を作り、有害な副産物
含んでいる事が多いのです。
軽い気持ちで使って欲しくないので思い切って書きますが、それはダイオキシンです。
特に残効性がある(分解されにくい)ホルモンに、2.4-Dというものがあります。
カルス誘発などに使われる効果的な植物ホルモンなのですが、、
ベトナム戦争において枯葉剤として散布されたのがこの仲間なのです。
日本でもイネ科の除草剤としても使われています。
効果が安定しているために、使いやすく良い成果も得られます。
しかし、安定しているがために人体や植物にも多大な影響を与えます。
これでだいたい理解してもらえたと思いますが、「もっと長く効けばいいのに、、」
なんて恐ろしい事は思わないで下さい。

一般に植物ホルモンは不安定で光りや温度、保存方法や期間などで分解されるので、
すべての効果を持続させるには難しいのです。
数日間で分解されたり、高温滅菌で分解されてしまう物質もあります。
正しい知識と使用方法を守って、薬品に対しての心構えがあれば、
それほど危険な薬品でもありません。だからこそ油断なく細心の注意をはらって下さい。
私は高校生の時に、ホールピペットで吸い上げた時に、
空気が入って1000ppm液をゴックンした事がありますが、、、。確か味は苦かったです。
別の実験で水銀を霧吹きで吹いていた事もありますが、、(冷汗)

しかし、ココナッツの実などには、天然の植物ホルモンが含まれており、
培地にココナッツミルクなどを添加する場合もあります。
もちろんこれは植物ホルモンの効果を狙うためです。
自然界にもそういった物は多くあり環境問題と安全性から用いられる事も多いです。

さて、気になる植物ホルモンの種類や濃度などは次回で紹介することにします。



◇大きな流れ ◇
大きな作業の流れを書いてみたいと思います。
ここではポピュラーとされる茎頂培養を例にします。
準備

器具の準備

器具の滅菌
(滅菌シャーレ・試験管)
(滅菌水)

培地の作成

消毒液の作成





初代培養

材料の調達

材料の粗調整

材料の調整

材料の消毒

材料の器官を採取

材料の生長点を採取摘出

置床

静置
(初代培養)



摘出方法

次に生長点の摘出方法です。
まずは、器官採取と生長点採取が失敗なく出来る必要があります。
テクニックが必要で練習するなどして習得しましょう。

作業前は心落ち着けて、直前に重い物などや運動は避けます。
手が震えて出来なくなります。動悸息切れの原因になる事もNG。
手先が不器用な人、集中力がない人、老眼の人、近視が強い眼鏡の人は出来るのかな〜、、。
私も近視が強く眼鏡をしていますが、作業はしにくいです。
イチゴの生長点摘出

まずは、材料選びからです。
イチゴの場合はランナーと呼ばれる腋芽を使います。
あれれ?側芽だったかな、、、とりあえず、株からニョ〜ンと伸びてくる芽です。

最適なのは、葉が展開していない芽、筆の先みたいになっている子供の芽です。

だいたい5〜6cmのところで切ります。


ピンセットやメスで回りを取り囲む葉をめくって取ります。
ポッキリ折るような感じで倒すのがコツ。

この時に、葉の出る方向や出方を良く観察します。
イチゴは3方向から葉が出るので、茎をクルクル回転させて色々な方向から
必ず外側に切り落としていきます。

葉を切り落とせたら、葉の中から小さな芽が出てきます。

そこからさらに3枚葉を取ります。
この時、葉のようで葉ではないハカマがあります。
このハカマを丁寧に切り取ります。
ハカマは葉を保護するためにあるので、ハカマを切り落とす時に失敗しやすいです。

この時点で芽はかなり小さくなってます。
肉眼で作業するのも難しくなります。
ここからは通常顕微鏡を使います。

顕微鏡を覗きながら、、さらに数枚葉を切り落とします。
葉と言っても、非常に幼い葉で取り除きにくいです。

この時点でかなり生長点付近に近づいています。
しかし、まだ生長点は露出していません。
葉の元となる器官で葉原基と呼ばれるものが左右に2つあります。
それを慎重に切り落とします。
切り落とす方向を間違えると、生長点ごと折れてしまいます。
ここまで作業を進めようと思うと、顕微鏡は必須です。

葉原基を取り除くと、茎のど真ん中の辺りに三角の細胞が見えます。
これが生長点です。私は三角山と呼んでいますが、、。

生長点の0.2〜0.3mm付近の頂上を鋭いメスで切り摘出します。

メスに乗せられたと思われる生長点を顕微鏡で確認し
形が崩れることなく採取出来ていればOK。
肉眼だと、淡い緑〜白色の粉があるような感じです(笑)


っとまぁこんな感じです。顕微鏡がない!
っていう人は肉眼で出来るところまで頑張ってみて下さい。

実際、顕微鏡を使わずに培養をやっていた事もありますし。
眼鏡の上から老眼鏡を掛けて虫眼鏡的感覚でやった事もあります。
今回はイチゴを使いましたが、実際は何でも練習出来ます。

私がおすすめするのはアジサイですが、、。
アスパラでもOK。芽が沢山あるので、1本あれば嫌になるほど練習出来ます。
これは作業に慣れるための練習なので、色々な芽にチャレンジして
是非ともスキルを高めて下さい。
慣れてくると裏側の見えない葉も切り落とす事が出来るようになりますし、
生長点を露出させる時間も数分〜数十分で出来るようになります。
スピードも重視したいです。




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