広別汽船 （呉〜広島〜別府）

別府港にて　クルーズフェリー「由布」

　この航路は、別府発が「サンセットクルーズ」、広島発が「オーバーナイトクルーズ」と呼ばれている。所要時間も大きく異なり、２等運賃も異なるので、上りと下りは別の航路と言っても過言ではない。私はこの航路を２回利用しているが、いずれも広島からのオーバーナイトクルーズだった。
　一回目は、大阪から広島までバイクで走り、宇品港の駐車場にバイクを止めた。まだ周囲は明るい。えっ？これから何をするのかって？決まってるじゃあないですか。広島と言えば……、そう、お好み焼き！岡山を過ぎたあたりから、頭の中でお好み焼きが湯気を上げ続けていた私は、ウキウキする心を抑えながら路面電車に乗り込み、一路広島市内へとむかったのでした……。
　お好みと、広島限定ビール「ひろしまじゃけん」をしっかりと腹に納め、腹ごなしに平和記念公園と比治山公園を散策し、再び電車で宇品港に戻った。フェリーの出航まではまだ２時間近くある。いつものことだが堤防に登り、海を眺めていた。やがて真っ暗な海上に光の点が現れ、徐々に大きくなりながらこちらへと近づいてきたのであった……。
　２回目は、松山からフェリーで上陸。まず切符を抑えてから、やはり宇品港の駐車場へバイクを止めた。そして頭の中いっぱいにお好み焼きの湯気を立ち上らせながら、宇品駅から電車に乗り込んだのだった……。それはさておき。
　この航路の印象としては、とにかく混雑していた、の一言につきる。１回目は、やっとの思いで横になるだけのスペースは確保できたが、大人数に付き物の喧噪は途切れることがなく、大阪から走ってきた疲れがなかったら眠れなかったのではないだろうか、と思ったくらいだ。２回目は２等が満員で２等寝台を取ることになったが、それでも周りの話し声は聞こえてくる。ビールと疲れで眠ることは出来たが、８時間の航海の割には眠った感じが少なかったような気がしてならない。シーズンにはかなりの騒ぎと混雑が予想される航路であり、ゆっくりと船の夜を楽しみたい人にとっては、あまりおすすめ出来ないかもしれない。
　しかし、関西から九州、特に宮崎・大分あたりを中心に旅をしようと考えている人にとっては、広島でお好み焼きを食べてから眠る場所として貴重な存在になる。しっかり走って疲れをためて、お好み焼きで満腹になり、船でビールを飲めば、よほどのことが無い限りは眠れるだろう。
　路面電車に揺られてお好み焼きを食べる。満腹、満足。腹ごなしに平和記念公園を散歩する。運がよければ、市民球場から大歓声がわき起こるのが聞こえてくるだろう。広島の魅力を一度に味わうことの出来るひとときが待っているかもしれない。