このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください


九州郵船
(小倉〜比田勝)

小倉港に入港するフェリーあがた

 北九州・小倉港と、韓国に一番近い港・上対馬町比田勝港を結ぶ航路。比田勝から韓国・釜山までは小倉よりも遙かに近い距離にあり、正に国境へ通う船である。
 港湾地区の再開発が進む中、港の一番奥まったところにある桟橋から、このフェリーは発着している。同じ小倉港から松山へ向かうフェリーも就航しているが、こちらに比べるとその寂しさは何とも言いようのないものを感じさせる。最果ての地に向かう航路の哀愁なのだろうか。
 雨模様の空がますます黒さを増し、ただでさえ強かった風がさらに強さを増してきた頃、小さなフェリーがゆっくりと近づいてきた。対馬まで日本海の荒波を乗り越えていくのだから、こんなに小さいはずはない、と思って見たが、他にこの時間に到着するフェリーはない。桟橋に横付けになったのは、「大丈夫か?」と心配になってしまうような小さなフェリーだった。
 時折小雨のパラつく中乗船開始。船内放送で、「外洋は時化ているので揺れる」とあらかじめ断られてしまう。これはかなりの覚悟が必要になるかも知れない。
 出航してしばらくすると、確かに揺れ始める。これまで何度も天気の悪い時にフェリーに乗ったことがあるが、今回の揺れはそんな中でも揺れた方から数えて何番目か、といった感じの揺れだった。左右、前後、そして上下。船を支えている水というものがどのようなものかを実感させてくれるような揺れ方だ。横になっていても絶えず船体が動いているのが分かる。立ち上がると、歩くのにも苦労するくらいに大きく揺れている。到着までずっとこれなら、かなりこたえるかもしれない、と少し心配になった。
 夜行フェリーのため、道中の大半を眠って過ごすことが出来たが、それでも絶え間ない揺れは気持ちのいいものではない。何度か目を覚ますたびに、その何とも言えない気持ち悪さにぞっとして、また再び眠りにつくのだった。
比田勝港にて
 まだ朝日も差さない午前4時半。上対馬・比田勝港に到着。ここまで来るのに6時間近くもかかっている。比田勝から韓国・釜山までならば、3時間もかからないくらいで行けるというのに。このあたりの人にとっては、日本の大都市・福岡や小倉よりも、韓国の大都市・釜山の方が「ずっと近い」のではないだろうか。それはさておき。
 私がこの対馬を訪れたのは、実は比田勝で行われるマラソン大会に参加するためだった。当初はバイクで訪れて、バイク・フェリー・マラソンという、私の三大趣味(?)を一気に楽しんでしまおう!という計画だった。しかしバイクが思わぬアクシデントで使用不能となり、今回は歩いての乗船となった。結果的に天気が思わしくなかったので、バイクで来なかったことは正解だったかもしれない。人生というのはどこでどうなるか分からないものである。それはさておき。
 同じ船で対馬にやってきた、マラソン大会参加者達と一緒に、会場までの道を歩き始めた。雨はやんでいたが、空はまだ暗い。初めて訪れるこの島の印象が、天気で悪くなってしまうことだけは避けたいが……。



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