このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください


オーシャン東九フェリー
(北九州〜徳島〜東京)

徳島港に入港するおーしゃんいーすと

 その名の通り、東京と九州を結ぶ航路。今回の利用は、徳島〜東京間の利用となった。
 徳島港の船着き場は、和歌山・泉佐野〜徳島航路のちょうど対岸に位置する。時間帯が合えば、南海フェリーの対岸に巨大なフェリーが横付けされているのを見ることが出来るだろう。2時間程度の短い船旅と、一昼夜を超える長い航海との違いが、このような船体の差に現れていることがよく分かる。
 この航路に就航している船は、スタンダードタイプとカジュアルタイプに分けられている。カジュアルタイプは寝台をメインにして、オープンスペースとプライバシーの両立を目指したつくりになっている。それに対してスタンダードタイプは、従来通りの2等船室がメインの船となっているが、2等船室が最上階デッキに設けられているのがありがたい。通常最上階は、特等などの「特別船客」の専用スペースとされている船が多い中、このような客室配置をしている船というのは貴重な存在だ。しかし私の乗った船は、給湯設備が船の振動で壊れたままになっていたので、カップラーメンを作ることが出来ないままになっていた。残念といえば残念なことである。それはさておき。
 満員の2等船室から、最上階のオープンデッキに避難する。昨日の大雨が嘘のような、すばらしい快晴だ。雨に濡れてしまったブーツや上着をデッキに広げて乾かす。もう季節は夏なのでは、と思ってしまうくらいの眩いばかりの日の光が降り注いでくる。この様子だと、程なく乾いてしまいそうだ。
 広げたブーツの横で、冷たい缶ビールを開ける。明るい日射しの下で飲むビールの味はまた格別だ。これが仕事をしている平日なら、きっと「人間のクズ」呼ばわりされて、白い目で見られていることだろう。しかしフェリーの上には、何人もの人間のクズが徘徊している。そしてそれが当たり前の風景として受け入れられている。やはり旅というのは、人の何かを変えてしまう力をもっているのだろうか。それはさておき。
 しばらくしてから乾いたブーツを手に部屋に戻る。空調がよく効いているので、蒸し暑さなどは感じないが、それでも満員の船室というものは、何となく雑然としていて過ごしにくいものだ。GW最終日なのだから、混雑しているのが当然と言えばそれまでかもしれないが、やはり船旅というのは程良く空席が点在している程度の混み具合がもっともすばらしい旅になるように思われる。
 酒の力を借りた深い眠りのあとは、何度か浅い眠りを繰り返しているうちに、室内の灯りが一斉に灯された。現実の世界が一気に目前にせまる。昼間に日の光の中でビールを飲んでいたのと同じ船に乗っているとは、とても思えない。
 早朝の東京港に上陸する。この日の勤務開始時間まではあと3時間。帰宅までに残された時間は2時間あまり。旅のハイテンションな気持ちと、現実世界へ戻るという重苦しい気持ちが交錯する複雑な気持ちの中、バイクを家へと向けて走らせるのだった……。



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