このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |
(別府〜大阪) |
「関西汽船」というよりも、「さんふらわあ」の会社と言った方がよく分かるのではないだろうか。船体にデカデカと描かれたあの巨大な太陽を眺めたことのある人は、数多くいることだろう。私も大阪湾を行き交う中小フェリーに乗った時に、遙か前方を悠然と横切っていく、水面に浮かぶ太陽を何度か見たことがある。旅行中のバイクのトラブルという思いもかけないアクシデントのために、別府からさんふらわあに乗り込むことになった。
昼間の別府港には、2隻のさんふらわあが横付けされている。一方は6千トンクラス、他方は1万2千トンクラスの巨大船だ。1万5千トンを超える船が2隻並ぶ小樽港には及ばないにせよ、その眺めは圧巻だ。少し離れた所から出航する宇和島運輸のフェリーが、やけに小さく見えてしまう。これも中型のフェリーであるのは間違いないのだが。それはさておき。
午後3時頃に切符を購入。朝に予約を入れたときには2等で受け付けてくれたのに、窓口で「2等寝台しか空いていない」と言われてしまった。それではあの朝の予約はいったい何だったのだろうか。普段ならキャンセルしてしまうところだが、バイクトラブルを抱えた身の上とあっては動くことも出来ず、やむなく2等寝台を購入することとなってしまった。
午後6時。大阪直行便の乗船が始まる。車両甲板は広く、何も停まっていなければ奇声を上げて走り回りたいくらいの広さだ。にもかかわらず、バイクが縛られるのは甲板の隅。一度でいいからど真ん中に置いて欲しいものだ。バイク専用のフェリーというものはないのだろうか。それはさておき。
陸地からわずかにスロープを登っただけに思っていたが、甲板は1階と表示されていた。客室は3階にある。狭い階段を何度も回りながら登る。けっこうな距離だ。部屋に着いてから忘れ物に気がつき引き返す。この階段を往復するのはけっこうな運動になる。
運動のあとはビールがおいしい。4階の展望サロンに陣取り、よく冷えた缶ビールを飲む。いつも2階か3階からの風景しか見ていないので、この高さからの眺めは新鮮なものがある。何度か眺めているはずの別府の街並みが、今回はいつもと違って見えたのは気のせいだろうか。
心地よい酔いに身を任せて、夕食の準備に入る。フェリーでの食事の定番と言えばやっぱりインスタントラーメン。普段家では滅多に食べないが、調理設備の無い船の中では貴重な食料品だ。お湯さえあればすぐに食べられるのだから。
しかし、この船の中には給湯室がなかった!新日本海フェリーでは大賑わいの給湯室が、ここにはない!私の見落としかも知れないが。暖かな太陽を船体に描いた「さんふらわあ」は、実は貧乏人に冷たい船であったのか!ラーメンすら食べられないと言うのは、「レストランでメシを食え!」と言うことではないか。自前の食料を食べる自由くらいは認めて欲しいものである。そのようなものを持ち込むのはせいぜい2等の客くらいなのだから。それはさておき。
失望のなか、さらにビールをあおった私は、そのまま眠りについてしまった。時刻はまだ午後9時前だったような気がしている。それから後のことは、眠っていたので何も知らない。
目が覚めると、時計は午前5時半を指していた。航行時間の大半を眠って過ごしていたことになる。夜行フェリーでは眠る以外にすることが無いとは言え、これだけ眠ったのは初めてだ。2等寝台の設備が、2等に比べていいからだろうか。それとも単に疲れていただけなのだろうか。それはさておき。
免許を取って以来、7年以上に渡り、延べ5万3千㎞余りを走ってきた初代バイクを手放すときがついに来てしまった。実質的なラストランとなる家までの道を走る。このバイクにとって最後のフェリーとなった関西汽船。これからもあの太陽を見るたびに、初代バイクのことを思い出すだろう。
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