このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

今日も晴れて暑そうな日だ。ここのところの旅は天気には恵まれている。
全日空ホテルの豪華な朝食を済ませ、9時に出発。まずは北陸自動車道
を目指す。富山インターから滑川インターを経て、「穴の谷の霊水」へ
到着した。ここは万病に効くという霊水が湧く名水の地。駐車場に車を
置き、しばらく歩いて行く。ポリタンクを運んでいる人が何人もいる。
階段を降りていくとお堂の中に名水があった。ただ、他の名水と違うのは
蛇口を開いて水を汲むというところであった。水は甘くうまい。

滑川インターまで戻り、次に親不知へ向かった。「廃線跡」に興味を持った
あの親不知へ行き、トンネルを歩いてみたかったのである。もちろん、
登山で使うヘッドライトを持参した。(笑) 親不知インターで北陸自動車
道を降り、国道に出てしばらくしたところでいきなり廃線跡のトンネルを
発見した。前にもここは通ったことはあるのだが、興味を持っていないと
そのようなものは目には入らなかったのだろう。トンネルは向こうが見
えて抜けられそうだったが、時間の都合上、次を目指す。

「親不知観光ホテル」のある「天険コミュニティ広場」の駐車場に車を
留め階段と坂道を降りていくと海岸に出る。「ヒスイ海岸」だ。この途中に
初めて見た廃線跡のトンネルがある。「親知らず子知らず」という歌を
思い出した。夏の日本海は概して穏やかであるが、冬になれば季節風
が吹きつけ海が荒れる。海が荒れたときにここを通るのは命がけ以外の
何ものでもない。そんなことを考えながらしばらく海を眺めたあと、いよい
よトンネルへと進んだ。

ここが私の廃線跡歩きの原点。旧北陸本線の「親不知トンネル」。この
トンネルをバックに家族で写真を撮ったことがある。この反対側は「風
波トンネル」が続く。ヘッドライトを点けてトンネルの内部に進入する。
いきなり天然のクーラーという感じでひんやりする。それまで流れていた
汗がすーとひいていく。しかし、進行方向は思いのほか真っ暗で、登山
用のヘッドライトでも足元を照らすのがやっと。反対側を向けば、まばゆ
い外界の光が差し込むのだが。何百メートル歩いただろうか。思いのほ
か歩くのに時間がかかり、引き返すことにした。しかし、原点に返ってそ
こを歩くことができたという満足感があった。外に出るとまたうだるよう
な暑さが全身を包んだ。

天険トンネルを抜け、市振駅へ向かった。地図で見ると海からすぐの駅
だったが実際そうであった。

冬に海から吹きつける季節風や波しぶきを防ぐシェルターであろうか。
これがあるために駅のホームからは海は見えない。しかし、この駅を
実際に冬に使うことを考えれば「海が見える」とか「見えない」とかの問
題ではないだろう。

あらかじめ地図で調べておいた、この市振駅より少し親不知方面へ
戻った陸橋の上より写真を撮ろうかと思っていたがカメラを構えて
みると意外にも架線が邪魔をして良い構図が決められない。
しかし、まもなく列車がやってくる時間なので仕方なく海が入る構図
で写真を撮る。

次の列車までは時間があったので、良い場所はないものかと国道を
富山方面へ車を走らせた。北陸の夏はやはり海をテーマにしたい。
海と列車が一緒の入るよい場所はないものかと・・・。しばらく走って
いくと富山県と新潟県の境に「境川」という川が流れていた。
その橋梁の上が海をバックに列車を入れられることに気づく。
今は廃業したと見られるドライブインがあったので、そこの人に
断り、車を置かせてもらう。いそいそと三脚を取り出し、橋の上で
列車が来るのを待った。

ここで20分ほど待ち、列車を撮影したあと、ちょっと時間も気になっ
たが市振の町も少し見たいと思っていた私は市振に引き返した。
松尾芭蕉も立ち寄ったと言われる市振。どんなところなのか一目見
たかった。海が迫っているため、人が暮らしている場所は狭い。最近
では国道、北陸自動車道、北陸本線とさまざまなトンネルが掘られ
その様子も一変したのだろう。トンネルがなかったころは「天険親不
知」へ向かう最後の集落。人々のそれぞれの感慨があったに違いな
い。

市振を後にし、再び「名水めぐり」に向かう。次の目的地はJR北陸本線
の「生地駅」。この町は町のいたるところに名水が湧く。すべてを総称
して、「黒部川扇状地湧水群」と呼ばれるが、なんと駅のすぐ前にも
名水が湧き、旅人の喉を潤しているという。そのとおり、きれいな水が
湧き出しており、これがまた冷たくてうまい。この黒部川が作る扇状地
は日本最大で、そこに北アルプスの伏流水が湧き出ているようだ。
なんと地下60メートルから自噴しているというから驚く。
そして、この生地駅だけではなく、この生地地区にはなんと18箇所
もの湧水地がある。最初から全部まわることはできないと思っていた
が、まずは地図を見ながら駅から近い順番にまわろうかと思って
いた。そんなに複雑な道でもないが、なぜか道に迷い、偶然にも
行き着いた先は、日本初の片持式旋回可動橋。大きな漁船が通る
時は橋が回転するようだ。どうせなら船が通る時見たかったものだが
それは仕方ない・・・。

次に行き着いたのは「絹の清水」。町の中を行き当たりばったりで
走っていてもいずれかの名水にたどり着く感じである。こんなに海に
近いところで、ここまでたくさんの「名水」といわれる湧水があるところ
は他にはないだろう。なにか、妙に感動してしまった。今度はゆっくり
歩いてすべての名水をまわりたいものだ。

「名水百選」には選ばれていないが、生地駅と同じように魚津駅にも
うまい水が湧く。こちらも駅舎にくっつくようにきれいな水が湧いて
いた。湧水前から駅前を写した写真。地方によく見られる感じの駅
前で、商店街も広がっているが、ここにも名水が湧いているのは
なんか不思議な感じだった。

今回の旅の名水めぐりの予定はすべて終え、次は昨日に下見して
おいた常願寺川にかかる橋梁に向かった。
昨日写真撮影をした「水橋駅」の前を通り、堤防の上の道路への
分岐点まで車を走らす。そして、堤防の上の舗装された道路を
北陸本線の橋の方へ向かう。橋の下に車を留め、少し周辺を歩いて
みる。実はここも廃線跡があるのを知っていた。川の中に橋梁の
台座後などが残っているようだが、草が覆い茂りそのあたりには
行くことができなかった。ただ、現北陸本線の橋梁の脇に台座
跡をひとつ発見しただけだった。これでは「廃線跡のページ」を
更新することができないので、これであきらめることにする。(笑)

川面を渡ってくる風は心地よく、夏草の香りと土の匂いと混ざりあい
ながら顔にあたる。確かにずっと昔に旧客車の中に吹いていた
風の香りだ。そんな中列車が何本か通過していく。

何本かの列車の撮影のあと、いよいよ「トワイライトエクスプレス」が
通過する時間が近づいた。富山発16:38。その10分後ぐらいには
ここ常願寺川を通過するはずだ。刻々とその時間が近づく。
16:50。EF81のモーター音とともにその列車はやってきた。
三脚に固定したままレリーズを使い連続でシャッターを切る。
客車列車特有のモーター音のしない軽い感じの「カタンコトン」と
いう音を残して「トワイライトエクスプレス:8001」は通過した。
これからこの列車は日本海沿いを進み、津軽海峡を越え札幌まで
行くのか・・・。

機材を片付けながら、もう一度川の方を見てみる。日が西に傾き
かけている。相変わらず、心地よい風が吹いている。夏も完全に
終わったようだ。

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旅日記北陸夏2002

2日目

市振の町

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