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第9編 海洋の区分(7):排他的経済水域

第1章 経緯

 「沿岸国に海洋資源の排他的管轄権を認めよう」という考え方は古くは17世紀のイギリスにも存在していたが、19世紀後半から20世紀にかけて、沿岸国は、自国沿岸の漁業管轄権を拡張するために、領海幅の拡張(3カイリ以上)を度々主張した(領海拡張論、海域別方式)(※注1)。しかし、こうした主張は先進海洋国の受け容れるところではなく、代って登場したのが「魚種別方式」であった。これは、回帰性、溯河性、定着性などを根拠として、生物資源に対する管轄権を主張するもので、1911年には、回帰性のあるオットセイについての「オットセイ保護条約」が締結された(※注2)

※図1 新海洋法秩序(再録)

 第二次大戦後、公開漁業資源について管轄権を設定した1945年9月のトルーマン宣言(アメリカ大統領トルーマンの「大陸棚の地下および海床の天然資源に関する合衆国の政策、大統領宣言第2667号」「公海水域における沿岸漁業に関する合衆国の政策、大統領宣言第2668号」)は、これを契機として各国の大陸棚に対する管轄権の主張を誘発した。我が国近海では、我が国がサンフランシスコ平和条約に基づき主権を回復する(4月29日)直前の1952年1月18日、韓国の李承晩大統領が、朝鮮半島周辺(最大200マイル)の水域内に存在する全て天然資源、水産物に対する権利を主張、「隣接海洋に対する主権宣言」(※参考参照)(いわゆる「李承晩ライン」(後に「平和線」と改称))を一方的に設定。日本漁船を締め出し、韓国警備艇と海上保安庁巡視艇が睨み合うこともあった他、同ラインが竹島(島根県隠岐郡五箇村(2004年10月から隠岐郡隠岐の島町)に属する我が国固有の領土。韓国名「独島」)を韓国領として内側に含めていたことから、後の竹島問題に発展した。李ラインによって、1953年1月から1965年の日韓国交正常化(日韓基本条約)、日韓漁業協定の締結(李ライン廃止)までに、日本漁船328隻が拿捕され、船員3929名が抑留、死傷者44名を生じた(※注3)

※図2 李承晩ライン

赤線が李ライン。黄線は朝鮮国連軍が定めた防衛水域で、
国連軍総司令官クラークの名をとって「クラークライン」と呼ばれた

 しかし、自国沿岸にほとんど大陸棚の無いチリ、ペルー、エクアドルの南米三国は、大陸棚に代って沿岸の海域そのものに対して管轄権を主張することとし、1952年のサンチャゴ宣言で「領海200カイリ」を宣言した(海域別方式の再生(※注4)。現在の経済水域の幅「200カイリ」は、このサンチャゴ宣言に由来している。
 他方、同じく沿岸管轄権の拡大を主張しはじめていたカリブ海諸国は、1972年6月のサント・ドミンゴ宣言で、沿岸国がその世襲海Patrimonial Sea)」の資源に主権的権利sovereign right)を有することを謳い、1973年5月にはアフリカ統一機構(OAU)が「200カイリの排他的経済水域に対する永久的主権」を謳ったアジス・アベバ宣言を採択した(※注5)。こうした動きは、資源ナショナリズムの下「天然資源に対する永久的主権」の概念が確立されていった1960年代以降、発展途上国を中心に急速に進んで行った(※注6)。海洋資源の利用による経済発展を目指した第三世界諸国の主張は、 国連海洋法条約 を審議した第3次国連海洋法会議でも大勢を占め、半ば国際慣習法化した。
 こうした動きに対して、先進遠洋漁業国である我が国は終始反対の姿勢を示していたが(※注7)、1976年に欧米・ソ連各国が「200カイリ漁業水域」を設定したのを受けて、1977年漁業水域に関する暫定措置法(昭和52年法律第31号)(施行、昭和52年7月1日政令第211号)による200カイリ漁業専管水域を設定(漁業水域法第3条③)(※注8)。更に、漁業以外の海中・海底資源に対する管轄権を追加して、1996年「 排他的経済水域及び大陸棚に関する法律 」(平成8年法律第74号)による200カイリ排他的経済水域Exclusive Economic Zone, EEZ)」経済水域法第1条 )を設定した(※注9)。但し、従来適用除外海域とされていた竹島付近の海域については改めて韓国側と協議し、新しい日韓漁業協定(「漁業に関する日本国と大韓民国との間の協定」、平成11年条約第3号)を締結(1999年1月)したが、このとき暫定水域の広さを巡って、資源豊富な大和堆を含めるか否かで日韓双方の漁業関係者が対立した。

※注釈
1:山本前掲書、380ページ。また、波多野前掲書、159ページ。
2:山本前掲書、380〜381ページ。
3:波多野前掲書、191ページ。また、
全国漁業共同組合連合会ホームページ
  中には、第一大邦丸のように乗組員が韓国艦艇からの射撃で射殺されるという事件(1953年2月4日)や、あろうことか海上保安庁の巡視船「さど」が韓国警備艇に拿捕される(1954年2月20日)といった事件も発生した。また、韓国は、当時竹島だけでなく対馬の領有も狙っていたとされている。
4:栗林前掲書、289ページ。
 この「200カイリ」という幅は、三国の沖合いを流れるフンボルト海流の幅に相当し、三国で盛んなアンチョビ(カタクチイワシ)漁を保護する狙いがあった、とされる。
5:栗林前掲書、289〜290ページ。
6:但し、1970年代には「
12カイリ漁業水域」を制定する国が多かった。
(:山本前掲書、382ページ。)
7:1974年の第3次国連海洋法会議第2会期で、「経済水域200カイリ」に積極的に反対の演説をしたのは我が国だけであったという。
(:栗林前掲書、291ページ。)
8:「この法律において
『漁業水域』とは、我が国の基線から、いずれの点をとっても我が国の基線上の最も近い点からの距離が二百海里である線(その線が我が国の基線から測定して中間線を超えているときは、その超えている部分については、中間線(我が国と外国との間で合意した中間線に代わる線があるときは、その線)とする。)までの海域(領海及び政令で定める海域を除く)をいう。」(漁業水域暫定措置法第3条③)
 但し、我が国暫定措置法は、漁業資源の保存・管理上の管轄権を定め、外国船は許可制とし、海洋法条約上の権利(「主権的権利」)よりもゆるやかな管轄権の主張となっている。
(:山本前掲書、387ページ。)
9:栗林前掲書、291〜292ページ。

(参考)李承晩韓国大統領の隣接海洋に対する主権宣言

 国務会議の議決を経て、隣接海洋に対する主権に関し次のごとく宣言する。

                                                    1952年1月18日
                                                    大統領 李承晩
 確定された国際的先例に依拠し、国家の福祉と防禦を永遠に保障しなければならないという要求によって、大韓民国大統領は次のごとく宣言する。
1.大韓民国政府は、国家の領土である韓半島および島嶼の海岸に隣接する大陸棚の上下に既知され、または将来発見されるあらゆる自然資源鉱物および水産物を、国家にもっとも利するように保護、保存および利用するために、その深度の如何を問わず隣接大陸棚に対する国家主権を保存し、かつ行使する。
2.大韓民国政府は、国家の領土である韓半島および島嶼の海岸に隣接する海洋の上下および内に存在するあらゆる自然資源および財富を保有、保護、保存および利用するのに必要な左記のごとく限定する延長海洋にわたって、その深度の如何に拘わらず、隣接海洋に対する国家の主権を保存し、かつ行使する。特に魚族の類が減少をきたす恐れのある資源および財富が、韓国国民に損害となるように開発され、または国家の損傷となるように減少、あるいは枯渇することのないようにするため、水産業と漁撈業を政府の監督下に置く。
3.大韓民国政府は、これを以て、大韓民国政府の管轄権および支配権がある上述の海洋の上下および内に存在する自然資源および財富を監督し、かつ保護する水域を限定する左記に明示された境界線を宣言し、かつ維持する。この境界線は将来に究明される新しい発見、研究または権益の出現によって発生する新情勢にあわせ、修正することができることも併せて宣言する。大韓民国の主権および保護下にある水域は、韓半島およびその附属島嶼の海岸と左記の諸線を連結することによって組成される境界線間の海洋である。
 (イ)咸鏡北道慶興郡牛岩嶺頂上から北緯42度15分、東経130度45分の点に至る線
 (ロ)北緯42度15分、東経130度45分の点から北緯38度、東経132度50分の点に至る線
 (ハ)北緯38度、東経132度50分の点から北緯35度、東経130度の点に至る線
 (ニ)北緯35度、東経130度の点から北緯34度40分、東経129度10分の点に至る線
 (ホ)北緯34度40分、東経129度10分の点から北緯32度、東経127度の点に至る線
 (ヘ)北緯32度、東経127度の点から北緯32度、東経124度の点に至る線
 (ト)北緯32度、東経124度の点から北緯39度45分、東経124度の点に至る線
 (チ)北緯39度45分、東経124度の点から(平安北道竜川郡薪島列島)馬鞍島西端に至る線
 (リ)馬鞍島西端から北へ韓満国境の西端と交差する直線
4.隣接海洋に対する本主権の宣言は,公海上の自由航海権を妨害するものではない。

第2章 経済水域の幅

  国連海洋法条約第57条 は、「効排他的経済水域は、領海の幅を測定するための基線から200海里を超えて拡張してはならない。」と定めている経済水域法第1条②基線Baselines)については、領海と同じである。
 
経済水域法 によって我が国の排他的経済水域となったのは、下図の海域である(※注1)

※図1 我が国の領水及び経済水域(再録)

我が国の領水及び経済水域

 
領土Territory
領水Territorial Waters:内水+領海12カイリ)
接続水域Contiguous Zone:基線から24カイリ)
経済水域Exclusive Economic Zone:基線から200カイリ)
それ以外(公海、他国領水)
他国領土

 なお、北方領土周辺海域での漁業に関する管轄権について、ウタリ共同事件札幌高裁判決(判例国際法43事件)は、我が国領海法及び漁業水域暫定措置法が及ぶと判断した(※注2)

※注釈
1:海上保安庁水路部ホームページより引用、加筆修正。
2:『判例国際法』、186ページ。

第3章 沿岸国の権利義務

第1節 沿岸国の権利
 (1) 国連海洋法条約 第57条 (我が国 経済水域法第3条 )は、経済水域内において、沿岸国の(1)海中・海底の天然資源探査、開発、保存及び管理のための主権的権利、(2)探査・開発のための他の活動(エネルギーの生産等)に関する主権的権利、(3)海洋の科学的調査に関する管轄権、(4)海洋環境の保護及び保全に関する管轄権など、比較的広汎な権利を有する(※注1)外国船が経済水域内で海洋科学調査を行うには、沿岸国の許可が要るが、専ら平和目的で全人類の利益になるようなものであれば、原則として同意を与える義務を負う(※注2)。もっとも、実際には「資源探査」と「科学調査」は区別し難いという。
 
(2)沿岸国は、経済水域内において、人工島施設及び構築物の設置及び利用に関する管轄権を有する( 海洋法条約第57条 )。(1)これらの施設の上では、沿岸国は通関上、財政上、保健上、安全上及び出入国管理上の法令に関する管轄権を含む排他的管轄権を享有し( 海洋法条約第60条② )、(2)その周囲に、距離500メートル以内で「適当な安全水域を設定することができる」( 海洋法条約第60条④⑤ )。(3)施設等及びその安全水域は、「国際航行に不可欠な認められた航路帯の使用の妨げとなるような場所に設けてはならない」( 海洋法条約第60条⑦ )。

第56条 排他的経済水域における沿岸国の権利、管轄権及び義務
 1   沿岸国は、排他的経済水域において、次のものを有する。
 a 海底の上部水域並びに海底及びその下の
天然資源(生物資源であるか非生物資源であるかを問わない。)の探査、開発、保存及び管理のための主権的権利並びに排他的経済水域における経済的な目的で行われる探査及び開発のためのその他の活動(海水、海流及び風からのエネルギーの生産等)に関する主権的権利
 b この条約の関連する規定に基づく次の事項に関する管轄権
 c
人工島、施設及び構築物の設置及び利用
 d 海洋の
科学的調査
 e 海洋
環境の保護及び保全
 f この条約に定めるその他の権利及び義務
 2   沿岸国は、排他的経済水域においてこの条約により自国の権利を行使し及び自国の義務を履行するに当たり、他の国の権利及び義務に妥当な考慮を払うものとし、また、この条約と両立するように行動する。
 3   この条に定める海底及びその下についての権利は、第6部の規定により行使する。

 (3)沿岸国は又、以上の主権的権利及び管轄権を行使するにあたり、必要な法令を制定立法管轄権)・執行強制管轄権)することが出来る( 海洋法条約第73条① )。(1)これには「乗船検査拿捕及び司法上の手続」が含まれるが、(2)罰則には身体刑を課してはならず(関係国の別段の合意があれば拘禁できる)( 海洋法条約第73条③ )、(3)拿捕・抑留があった場合は、旗国に速やかに通報し( 海洋法条約第73条④ )、(4)拿捕された船舶・乗組員は、合理的な保証金(ボンド)その他の保証を提供した後「速やかに釈放される」( 海洋法条約第73条② )。

第2節 沿岸国の義務
 沿岸国は、自国の権利義務を行使しするに当たり、「他の国の権利及び義務に妥当な考慮を払うものとし、また、この条約と両立するように行動する」( 海洋法条約第56条② )ものとされ、他国の権利義務が明記されている( 海洋法条約第58条② (※注3)
 
(1)沿岸国は、自国の経済水域において、生物資源の保存の義務を負っている。即ち、(1)沿岸国は、「生物資源の漁獲可能量Total Allowable Catch,TAC)を決定」し( 海洋法条約第61条① )、(2)最大持続生産量maximum sustainable yield)を維持できるように「適当な保存措置及び管理措置を」行う( 海洋法条約第61条②③ )。魚類の保存に関連するデータは、定期的に提供され、交換される( 海洋法条約第61条⑤ (※注4)
 
(2)沿岸国はまた、自国の経済水域において、生物資源の最適利用optimum utilization)を促進する義務を負っている。即ち、(1)沿岸国は、生物資源についての「自国の漁獲能力を決定」し、(2)「自国が漁獲可能量のすべてを漁獲する能力を有しない場合には」、内陸国・地理的不利国・開発途上国、これによって生じる経済的混乱等を考慮しつつ、裁量で「漁獲可能量の余剰分surplusの他の国による漁獲を認める」( 海洋法条約第62条② (※注5)。この規定は、沿岸国に優先的漁業権を与えるに留めようとした日、米、ソ、蘭などの遠洋漁業国の主張が一部取り入れられたものである。
 
(3)更に、沿岸国は、自国が設置した人工島施設及び構築物について、(1)その存在の通報・注意喚起をしなければならず( 海洋法条約第60条②前段 )、(2)放棄された施設は、「・・・国際的基準を考慮して、航行の安全を確保するために除去する」( 海洋法条約第60条②後段 (※注6)

※注釈
1:
栗林前掲書、292ページ。また、香西他前掲書、154ページ。山本前掲書、379ページ。
2:山本前掲書、405ページ。
 この規定は、「海洋科学調査の自由」を主張した先進国と、国家的安全と資源を保護しようとした途上国
妥協の結果であるという。
3:山本前掲書、389〜390ページ。
4:栗林前掲書、293〜294ページ。また、山本前掲書、385ページ。
5:栗林前掲書、294ページ。また、山本前掲書、386ページ。
 但し、従来の非沿岸国の漁獲実績が考慮される余地はあまりないし、その決定は沿岸国の裁量に任されているので、漁獲量を巡って外国が沿岸国の決定を強制的解決手続に付することは出来ない。例えばアメリカは、1980年漁業保存管理法改正法により、余剰分割当てに際して貿易摩擦問題をからめて判断するようになった。
6:栗林前掲書、293ページ。

第4章 他の国の権利義務

第1節 他の国の権利
 
(1)「すべての国は、・・・ 第87条 公海の自由)に定める航行及び上空飛行の自由並びに海底電線及び海底パイプラインの敷設の自由並びに・・・海洋の利用・・・の自由を享有する」( 海洋法条約第58条① )。排他的経済水域において沿岸国が及ぼすことが出来るのは限定的・機能的な管轄権に過ぎず、基本的な性質はあくまでも公海high seas)である以上、当然のことである(※注1)
 
(2)また、他国の「排他的経済水域において漁獲を行う他の国の国民は、沿岸国の法令に定める保有措置及び他の条件を遵守する」義務を負う( 海洋法条約第62条④ (※注2)。経済水域の趣旨からして当然である。

第2節 内陸国・地理的不利の権利
 内陸国及び地理的不利国(沿岸国であって、その地理的状況のため自国民の栄養上の目的のための魚の十分な供給を同一地域の他国経済水域に依存し、又は自国の経済水域を主張することができないもの)(※注3)は、「自国と同一の小地域又は地域の沿岸国の排他的経済水域における生物資源の余剰分の適当な部分の開発につき、・・・衡平の原則に基づいて参加する権利を有する」( 海洋法条約第69条①・第70条① )。但し、そうした国が先進国である場合は、「自国と同一の小地域又は地域の沿岸国である先進国の排他的経済水域においてのみ生物資源の開発に参加することができる」( 海洋法条約第69条④・第70条⑤ )。開発途上の沿岸国を圧迫しないための規定である。

第3節 他の国の義務
 (1)いずれの国も、排他的経済水域においてこの条約により自国の権利を行使し及び自国の義務を履行するに当たり、沿岸国の権利及び義務に妥当な考慮を払うものとし、」(2)「また、この部の規定に反しない限り、この条約及び国際法の他の規則に従って沿岸国が制定する法令を遵守する」( 海洋法条約第58条③ )。

※注釈
1:
山本前掲書、389〜390ページ。
2:
山本前掲書、387ページ。
3:
海洋法条約第70条②

第5章 魚種別規制

 魚の中には、海で成長した後生まれた川に戻ってくるものや、渡鳥のように広い範囲を回遊するものがある。そこで、 国連海洋法条約 では、こうした特定の魚種については、特別の規制方法をとっている(※注1)

※表1 魚種別規制

種 類規 制
 高度回遊性の種 
第64条
マグロ、カツオ、カジキ類、サンマ類等。
経済水域内では、沿岸国が権限を有する。
経済水域外では、沿岸国と漁業国が最適利用の為協力する。
海産哺乳動物
第65条
クジラ、イルカ等。
第62条 の適用を排除でき、経済水域制度による制限を受けない。
沿岸国・国際機関(IWC)が専ら制限・規制。
溯河性資源
第66条
サケ、マス等。
母川国が第一義的利益及び責任を有する。
漁獲は母川国経済水域で行う。
降河性の種
第67条
ウナギ等。
沿岸国が当該魚種の管理について責任及び利益を有する。
漁獲は母川国経済水域で行う。
定着性の種族
第68条
エビ、カニ、貝、サンゴ等。
大陸棚に対する主権的権利(
第77条④ )。
入漁を認めないでよい。

 高度回遊性魚種については、沿岸国が(1)経済水域内では他と同一の権限を持ち、(2)経済水域外では漁業実績国との協力で保存・最適利用する。
 溯河性魚種について、その発生する河川の所在する国(
母川国State of origin)が規制権限(総漁獲可能量決定、資源保存)を有することを「母川国主義」という(※注2)。溯河性・降河性魚種の漁獲は、母川国の排他的経済水域でのみ行われるが( 海洋法条約第66条③ )、「母川国以外の国に経済的混乱がもたらされる場合は、この限りでない」。その場合、関係国は、保存上の要請及び母川国のニーズに妥当な考慮を払って、漁獲条件に関する協議を行う( 海洋法条約第66条③但書 )。溯河性・降河性魚種が他国の経済水域を回遊する場合は、その国は、保存・管理について母川国と協力する( 海洋法条約第66条④ )。
 なお、経済水域と公海にまたがって棲息する
ストラドリング魚種stradling fush stocks(※注3)については、過当競争を防止するため関係沿岸国又は漁業国が保存・開発の調整・確保のため「必要な措置について合意するよう努める」ものとされ( 海洋法条約第63条①・② )、これを補充する形で「ストラドリング魚種及び高度回遊性魚種の資源保存及び管理に関する1982年12月10日付国連海洋法条約の規定の実施に関する協定」が締結された(1995年8月4日)(※注4)

※注釈
1:
栗林前掲書、294〜295ページ。また、山本前掲書、388ページ。
2:栗林前掲書、295ページ。また、山本前掲書、388ページ。
 なお、アメリカは、魚の所在海域に関わらず排他的漁業管轄権を主張している(1976年米漁業保存管理法第102条)。
3:200カイリ時代に入って沿岸国に締め出された遠洋漁業国の漁船は、こうした魚種を求めて殺到し、紛争が頻発するようになったという。
(:栗林前掲書、295ページ。)
4:栗林前掲書、296ページ。


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