このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

表紙に戻る   目次に戻る   健論時報目次へ   2001年8月へ   2001年10月へ


健論時報
  2001年9月  


■「親の都合」の名の下に子供に犠牲を強いる夫婦別姓
 内閣府、夫婦別姓に関する世論調査の結果を公表(8月4日)
 報道によると、内閣府は4日、5年に一度実施している「選択的夫婦別氏に関する世論調査」(全国5000人の成年男女、有効回答率69.4%)の結果を公表した。それによると、結婚した夫婦が希望に応じて旧姓を名乗ることができる「選択的夫婦別姓」の法制化について、これを正面から認める人が42.1%(前回比9.6%増)、職場での通称使用に限って認める人が23.0%(同0.5%増)、法改正は必要無いとする人が29.9%(同9.9%減)となり、賛成と反対の比率がはじめて逆転した。また、「夫婦別姓になっても家族の一体感には影響がない」と答えた人は52.0%(同3.3%増)と半数を超えたが(但し、「一体感に影響あり」と答えた人も41.6%あった)、「婚姻によって姓が変わったことに違和感を持つと思う」と答えた人も24.7%(同5.7%増)となり、また「夫婦別姓は子供にとって好ましくない影響がある」との回答も66.0%(2.1%減)と多数に上った。更に、婚姻に伴う改姓で「仕事上何らの不便も生じないと思う」と答えた者の割合は52.9%に上り、「何らかの不便を生ずることがあると思う」と答えた人(41.9%)を上回っている。政府は、今回の調査結果を踏まえて民法改正を検討する方針を示している。
 人の名前が重要性を持つことは論を待たない。しかし、「人の姓が重要である」ということと「夫婦別姓を推進すべきである」という議論は必ずしも等号では結ばれない。何故ならば、ある結婚した人にとって自己の姓が大切であるならば、それと同様に、その夫婦の間に出来た子供にとっても重大な問題なはずだからである。結局この問題の本質は、「自己の都合で婚姻前と同一の姓を名乗る利益(それに伴って親子間で姓が異なる不利益)」と「夫婦・親子間で同一の姓を名乗る利益(それに伴って夫婦の一方が婚姻の前後で姓が異なる不利益)」のどちらを選び取るのかというところにあるのであり、少なくとも別姓推進論者は、親の都合のために子供に不利益を強いるものであることを自覚すべきである(ちなみに私は、子供のいない夫婦については別姓を容認する)。

■実現不可能な「核廃絶」より、「核と上手くつきあう方法」を考えよう
 広島、56回目の「原爆の日」(8月6日)
 広島は6日、核攻撃(原子爆弾投下)を受けてから56回目、21世紀最初の「原爆の日」を迎えた。広島市の平和記念公園では午前8時から平和記念式典(原爆死没者慰霊式・平和祈念式)が行われ、人類初の核攻撃で犠牲になった人々を慰霊。式典には被爆者や都道府県の遺族代表、市民ら約5万人の他、小泉純一郎・首相や秋葉忠利・広島市長が参列した。
 昨今の核兵器廃絶運動の抱える問題点は既に昨年の 「健論時報」9月分 で指摘したが、1年たった今、その問題点が改善されたようには思えない。むしろ、最近の反核運動は、アメリカのミサイル防衛構想を批判することに勢力を注ぎ、東西冷戦が終結したのになお反米イデオロギー的な体質一種を受け継ぎ、一種の政治運動に近づきつつあるような気がしてならない。核兵器に一切の価値を認めない純粋な核兵器廃絶論者は本来、核兵器を無力化する意義を有するミサイル防衛構想に諸手を挙げて賛同すべきであるのに、実際には、「ミサイル防衛は新たな核軍拡を招く」という理屈でブッシュ政権を批判しているのは誠に奇妙な現象である(純粋な核兵器廃絶論者はミサイル防衛に対抗する核軍拡をも等しく否定べきだし、またブッシュ政権は、ミサイル防衛の実施と引き換えに一方的な核軍縮を主張している)。これは、「頑丈な金庫を設けると泥棒がより高度な盗難技術を開発するから、お金は金庫に入れてはならない」というのと同じ論理なのであって、これを正当化する論理は反米イデオロギーでしかない。また、「核兵器廃絶の約束や世界の流れに背をむけ」、核軍縮論者から建国以来一貫してその核戦力を強化している中華人民共和国や大陸間弾道弾を新規開発しようとしている北朝鮮(自称「朝鮮民主主義人民共和国」)を厳しく糾弾する言説を、私は寡聞にして聞いたことが無い。
 50年前は極めて高度な技術を要した核兵器開発も、今では、理論上はマサチューセッツ工科大学の卒業生なら誰でも可能な技術になっている。であるならば、これからも時間が1年経つ毎に、潜在的核保有国は確実に増加していくことは避けられない。この冷厳な事実からして「核廃絶」は実現不可能であることは容易に想像がつくことである。
 そもそも、我々人類の英知や科学技術は、我々を幸福にも不幸にもする。現在の我々の近代文明は「戦争の世紀」の死闘無くしては成立し得ないものだったのであり、その意味で20世紀を「戦争の世紀」等として完全に否定的に捉えることは出来ない。例えば、今我々が利用しているインターネットはそもそも核戦争対策として運営されていたアメリカの軍事システムであったし、我々が手頃な価格で航空機を利用できるきっかけとなったボーイング747ジャンボジェット機は、アメリカ空軍が自国兵力を迅速に欧州に派兵するために開発を命じた大型軍用輸送機に由来する(原子力発電を核兵器開発の申し子として否定する論者は、同様の理由でジャンボ機やインターネットの利用も拒否しなければ筋が通らないのである)。軍事技術を全否定するのではなく、そうした技術と如何に上手につきあっていくのか、ということこそが重要なのではないだろうか。

■捕鯨問題でも「条約無視」の米国
 米国務省、日本の調査捕鯨に対して制裁措置を検討へ(8月9日)
 報道によると、アメリカ国務省のリチャード・バウチャー報道官は9日、捕鯨問題に関する声明の中で我が国の調査捕鯨の継続を厳しく批判し、この問題に関して対日経済制裁の可能性を検討する旨表明した。声明は、我が国政府が今年5月から約160頭を捕獲する調査捕鯨を実施したことを受けたもので、アメリカ政府の捕鯨反対の立場を強調しつつ、7月の国際捕鯨委員会(IWC)年次総会で採択された日本の調査捕鯨の中止を求める決議をアメリカとして支持していることを表明したという。調査捕鯨問題については、環境団体を支持基盤とするクリントン前大統領が制裁措置を検討したことがあったが、結局次期政権に委ねたという経緯があった。
 本コーナーで繰り返し述べてきたことだが、我が国の調査捕鯨は捕鯨取締条約上明文で認められた正当な権利であり、これを論難するのは条約無視の態度に他ならない。反捕鯨国が調査捕鯨を否定したいのであれば条約改正を目指すべきであり、そうした努力を怠って制裁措置をちらつかせる等というのは国際法や文化の多様性に対する挑戦である。

■東京・愛媛での健全な教科書採択に敬意を表する
 東京都・愛媛県の養護学校の一部で「つくる会」教科書を採択(8月9日)
 報道によると、東京都教育委員会(清水司委員長)は7日午前、都立の盲・ろう・養護学校で来春から使われる教科書を選ぶ審議を行い、病弱な生徒のための2校1分教室と知的障害生の一部(青鳥養護学校梅ケ丘分教室)の養護学校中学部で、扶桑社の歴史と公民の教科書が採択された。同教科書が公立校で正式に採択されたのは、全国で初めてという。また、愛媛県教育委員会(土居俊夫委員長)は8日、県立の養護学校2校と1分校、ろう学校2校で扶桑社の「新しい歴史教科書」を使うことを全会一致で決定した。記者会見した同県教育委員らは「学習指導要領に沿った最もふさわしい教科書と判断した」「指導要領に沿った教科書を選ぶのが私たちの職務」「事実を多面的にとらえている」と理由を説明。また、吉野内直光・教育長は同教科書に対する韓国・中国の反発について、「検定済みの教科書であり、どれを採用しても適切だと思う。国際間の問題については別の次元で考えてもらわなければいけない」との考えを示したという。
 扶桑社の中学校教科書を巡っては当初から教育当局に対する激烈な抗議運動が行われ、内容も詳しく検討されないまま近隣諸国からの批判を浴びてきた。7日夜には同社の教科書を執筆した「新しい歴史教科書をつくる会」本部(東京都文京区)に極左過激派が放火するというテロ事件も起きており、これまで一旦採択を決定した採択区でもこれを撤回するといった異常事態になっていた。そうした中で今回、東京都と愛媛県の教育委員会が、「事勿れ主義」に陥らず独自の見識を披露したことは称賛に値すると言えよう。
 なお、この採択に対して、一部では「病気やハンディを持っている子供への配慮を欠く」といった反対意見が出されているが、不可解な議論という他ない。例えば、ノーベル文学賞受賞者の大江健三郎氏は、「朝日新聞」の取材の中で、「検定を通った以上、どんな考え方の教科書にしろ、採用する公立学校が出るのは仕方がない。」としつつも、「養護学校に使わせるのは、抵抗の弱い相手への狙い撃ちです。権力を持った者と、その意を体する者らの、勘定合わせにすぎません。どこに障害者への教育的配慮がありますか?」と述べ、「東京都教委のやったことは、もっとも弱い部分に向けられた、むごいご都合主義です。」と結んでいる。また、『沖縄タイムズ』の「配慮欠き批判は免れぬ」と題する9日付け社説は、「どこが、病気やハンディを持っている子どもたちの教科書にふさわしいと言えるのか、極めて疑問である。」「本当に子どもが理解できるのかと悩む父母や、実際に教科書を使って教える教師の不安や疑問を払しょくできたとは思えない。」「反対の声を押し切る形で、あえて養護学校へ「つくる会」教科書を採用した意図は、公立学校での「採択の実績づくり」を狙ったものと受け止められても仕方あるまい。」等と主張している。しかし、障害者であってもなるべく健常者と同じように扱う「ノーマライゼーション」の観点からは養護学校とその他で採択に差別を設けることは疑問だし、その他の反論も結局は「新しい歴史教科書」に反対する政治的立場を隠蔽するための、「ためにする議論」「感情的な議論」でしかない。大江氏の見識を多いに疑わなければなるまい。むしろ、一部市民団体の抗議行動に屈服する形で教科書採択を歪めた一部教育委員会のほうが、よほど「むごいご都合主義」なのではないだろうか。

■信賞必罰と情報公開は信頼回復の第一歩
 外務省、在パラオ大使館職員を公金横領で懲戒処分(8月13日)
 報道によると、外務省は13日、大臣官房付で前在パラオ大使館理事官の宮崎文美義事務官(31歳)を、公金約1万ドル(約120万円)を私的に流用(その後、弁済)したとして1年間の停職処分(他に、村山比佐斗・駐パラオ大使は事務次官名による厳重注意処分、同大使館の長谷川恵一・参事官は官房長名による訓戒処分)にしたことを発表した。これらの処分は8月1日付で行われたが、これまで公表されず、また田中真紀子外相にも報告されていなかったという。
 今回の不祥事は被害額も約120万円と、大々的に報じられた機密費流用事件に比べれば少額だが、それでも「公金を横領する」という行為の犯罪性はかわらない。一体なぜこの処分が8月1日の時点で公表されなかったのか厳しく問われるべきだが、その点、これを断固公表した野上義ニ事務次官の判断は時宜にかない適切であった。少額でも公金横領は公金横領である以上処分は当然であり、野上新次官らによるこうした信賞必罰と情報公開の精神は外務省に対する信頼回復の重要な第一歩となるであろう。

■次は多国籍軍・国連軍への参加だ
 政府、PKF凍結解除のための法案提出へ(8月18日)
 報道によると、政府は18日までに、国連平和維持活動(PKO)に一層参画するため、現行PKO協力法を改正して国連平和維持軍(PKF)本体業務への参加凍結を解除し、併せて「PKO5原則」や武器使用基準の緩和を行う方針を決定した。今回の改正は、1992年のPKO協力法制定時に、野党に対する妥協策としてPKF本体業務が「別に法律で定める日まで」凍結するものとされていたのを解除するもので、東ティモールにおけるPKOに積極的に協力することを念頭に置いたものであるという。本件法改正については公明党が一部で難色を示しているといわれるが、野党でも民主党や自由党は賛成に回るとされている。
 既に多くの有識者が指摘してきたように、我が国の現行PKO協力法では、PKF本体業務の凍結によって停戦監視や武装勢力が放棄した武器の収集などの任務には参加できず、また武器使用基準が厳格すぎて同行する他国のPKO部隊や国連職員すら警護できないといった欠点があった。また、これまでの「参加5原則」(①停戦合意、②紛争当事者の同意、③中立的立場、④以上のいずれかが満たされない場合の部隊撤退、⑤武器使用は要員の生命、身体防護のため必要最小限に限定)は厳格に過ぎ、紛争当事者が民兵や武装集団といった特定困難なゲリラ勢力である場合には原則自体が成立し得ず、自衛隊派遣の障害になっていた。今回、小泉純一郎首相の指示を受けてこうした点が改善されるのは、我が国の国際社会における地位向上の点からも、極めて有益である。一部にはこの法改正に憲法上の問題点を見出すむきもあるが、PKO任務中の他国軍隊や国連ボランティアが攻撃を受けた際に、同行する自衛隊部隊がこれを見殺しにする(防護できない)というのは不合理であるし、それを認めたからといって我が国が侵略国家になるわけでは全く無い。PKO活動は軍事的要素を含むが、これは国際紛争を軍事的手段によって処理せんとするものではなく、むしろ国際紛争平和的処理の環境整備を行う行政警察的活動であって、集団的自衛権の発動とは異なる。
 国連平和維持活動は、それが海外で我が国軍事力を行使することになるため一部に反対意見もあるが、憲法第9条が禁じる「国際紛争解決手段としての戦争」と、国連平和維持活動・国連平和維持軍や多国籍軍・国連軍はその性質が全く異なるのであり、問題は無い(後者は、いずれも紛争を直接処理する手段としての軍事力ではなく、現在の秩序を維持し当事者間の平和的解決を側面支援する行政・警察的作用である)。その点で今回の法改正は一歩前進であるが、国際社会の平和と安定が国益に叶う我が国としては、更に国連安保理決議の下で武力行使を許可された多国籍軍や国連軍への参加も容認されるべきである。

■この件は同情の余地あり、住居手当制度の「歪み」を改善せよ
 在ニューヨーク総領事館の荒川首席領事、住居手当不正受給で処分(8月24日)
 報道によると、外務省は24日、住居手当等を不正受給していたとして、荒川吉彦・前在ケニア大使館公使(現・在ニューヨーク総領事館首席領事)、前川 光・同書記官、出木場 勝・前同書記官(現・邦人保護課長補佐)らを懲戒減給処分(20%を3カ月)にしたことを発表した。また、青木盛久・在ケニア日本大使も監督責任を問うて厳重注意処分にした。荒川前公使は、在外公館勤務時に支給される住居手当の仕組みを利用し、本来手当の対象とならない家具のレンタル代金月額約8万円を家賃約16万8000円に滑り込ませて受給。合計225万円を得た。更に、光熱水道料が家賃に含まれている場合には家賃から1割引で手当が支給されるところ、荒川前公使らは「光熱水道料は含まれていない」として全額受給していた(なお、出木場・前書記官は、住居防犯対策費を不正受給していた)。この問題は98年3月の査察では発見されなかったが、今年4月、大使館の内部告発で発覚したという。3人はいずれも全額を弁済している。
 最近不祥事続きの外務省だが、20日にも欧州局西欧第一課の56歳の課長補佐が、国際会議などで使用した「ホテルニューオータニ」など都内高級ホテルに代金を水増し請求させ、公金約3000万円を詐取していた疑惑が報じられており(警視庁捜査二課と検察当局は来週にも強制捜査に乗り出す見通し)、信頼回復には至っていない。一連の事件を大別すると①ノンキャリア職員による本省主催の国際会議関連経費の不正(機密費事件、ハイヤー代水増し事件、ホテル代水増し事件)、②在外公館における公金取扱いの不正(デンバー総領事事件、パラオ大使館事件、オーストラリア大使館事件)の2つにわかれるが、いずれに対しても具体的な対策はまだこれからといった感がある。
 もっとも、今回の荒川前公使らによる事件については、それまでの一連の詐欺事件とは異なり、大いに同情すべき点もある。報道によれば、在外公館の住居手当は任地ごとに限度額が定められており、①家具が付いていない住居の場合は家賃全額、②家具付きの場合には家賃の9割が支給されるという。つまりは、「家具賃借代の家賃に占める割合は凡そ1割である」という前提に立って制度が設計されており、家具なしの家を借りて別の業者から家具だけレンタルしても、家具レンタル代については支給対象にはならない。だが、世界に190もの国、そしてそれより多くの文化や風俗がある中で、画一的に「家具賃借代の家賃に占める割合は凡そ1割」という硬直的な制度を維持すること自体無理があるのであって(どうしてアパートがたまたま家具付きだと家具代も含めた家賃の9割が支給されるのに、家具がついてなければ家賃だけしか支給されないのか、合理的な理由が無い)、見方を変えれば荒川前公使らはこの制度の歪みの被害者である。実際、荒川前公使の例で言えば、家具つきの家であったならばはじめから24万8000円の9割(22万3200円)を貰えたところ、たまたま前公使が住んだ家賃16万8000円の家が家具なしであったがために前公使は自腹で8万円を支払って家具を調達しなければならなかった。そう考えてみると、家具付きの家の場合の自己負担額2万4800円まで得ていたことは不正だが、その他の事実はそこまで破廉恥なものではないのではないだろうか。光熱水道料の場合も同じで、何故光熱水道料が大家から家賃込みで請求されるとその9割が支給されるのに、電気・水道会社から別建てで請求されると全く負担されないのか、疑問が残る制度設計になっている。家賃は家賃、家具代は家具代として別途に手当の上限を設け、家具つき賃貸物件の場合は両者の合計金額を上限とすればよいだろう。

■人気タレントにも「ノブレス・オブリージュ」はある
 稲垣吾郎、いしだ壱成ら芸能人、不祥事で逮捕(8月24日)
 報道によると、警視庁は24日午後8時45分頃、人気アイドルグループ「SMAP」の稲垣吾郎容疑者(27歳)を公務執行妨害と道交法違反の現行犯で逮捕した(後で傷害罪も追加)。稲垣容疑者は、東京都渋谷区道玄坂二丁目の路上で駐車違反をし、取締りにあたっていた渋谷警察署の婦人警察官が反則切符を切ろうとすると、制止を振り切って乗用車を婦人警察官の膝に接触させつつ急発進。10メートルほど走行したところで停車し、その場で現行犯逮捕されたという。また、厚生労働省近畿厚生局麻薬取締部(旧・厚生省地区麻薬取締官事務所)は20日、人気タレントのいしだ壱成(本名・星川一星)容疑者(26歳)を、大麻取締法(昭和23年法律第124号)第24条違反(大麻単純所持罪)の現行犯で逮捕した。家宅捜索ではこの他に吸引具等も押収されており、同容疑者が大麻を常用していたものと推測される。いしだ容疑者は今月7日から大阪松竹座「大江戸ロケット」に出演しているが、同講演は今後代役を立てて続行される。また、SMAPのコンサートツアーについては、稲垣容疑者を除いた4人で行われるという。
 稲垣容疑者やいしだ容疑者は若者に人気のタレントであり、人気タレントには一般人以上の「ノブレス・オブリージュ」に類する社会的責任を負っている。その点、いしだ容疑者は、かつて仲間のロック演奏者が大麻所持で逮捕された後も、バンドの同僚が公開のコンサートでステージから薬物使用を露骨に肯定するシュプレヒコールを連呼しても黙認する等軽薄な態度を示しており、悪質極まりない。稲垣容疑者のほうは、一瞬慌てて逃亡を企てたものの直後に冷静になって逮捕されているが、交通反則金という行政処分で済むはずが刑法犯として罪を重ねることになってしまった。いしだ容疑者の大麻所持事件について父親で俳優の石田純一氏は「会ったら、怒ります。反省だけではすまない。父親として支えにはなるが、今後どうつぐなっていくか、当人が頑張らないと」と語っているが、石田氏といえばかつて「不倫は文化だ」等と反社会的な主張をブチ上げたことで有名なタレントであり、「この親ありてこの子あり」といった感がある。
 なお、上記の記事とは何等関係無いが、同じ24日には人気歌手グループ「ココナッツ娘。」のアヤカ氏(19歳)が24日、報道の質問に答え、休学中のハワイ大学に代って上智大学比較文化学部を受験し合格していたことを明かにしたという(日本の歴史を勉強したいという)。ファンとしては、嬉しいニュースである。

■歴史認識是正は韓国中心史観の受容と同義ではない
 金鍾泌韓国元首相、歴史認識の是正を迫る(8月25日)
 報道によると、我が国を訪問中の金 鍾泌・元韓国国務総理(韓日議員連盟会長)は25日、山口県下関市内で開かれた「朝鮮通信使上陸記念碑」の除幕式で講演し、歴史教科書問題や靖国問題について「歴史を正しくする意味において、未来のためにこの現実をどのように認識すべきかについて重要な示唆を与えている」「韓国と日本は永遠に平和共存を土台にして協力し合わなければならない間柄だ。我々の子孫を正しく教育し、韓日両国の協力を永遠に受け継ぐためには、最近の日本の歴史認識の視点を深刻に考え直し、問題を解消すべきではないか」と述べ、我が国の歴史認識を改めるよう求めた。また、この後行われた安倍晋三・内閣官房副長官との会談では、「韓国には小泉政権に厳しい見方がある。サッカーのワールドカップを控え、問題を引きずらないよう互いに努力しなければならない。小泉首相は、韓国国民に『誠意ある努力を行う』というメッセージを発するなど、知恵を出してもらいたい」と要請。これに対して安倍副長官は「首相の靖国参拝には、韓国国民を傷つけたり、過去の戦争、植民地支配を正当化する意図は毛頭ない」と説明した。
 我が国と韓国とが平和共存してゆかなければならない、との論旨には賛同できる。我が国も韓国もアメリカの同盟国であり、民主的政治制度を持ち、広い分野で国益が合致する場面がある。しかし、そうだからといって、我が国が、先頃の韓国側教科書修正要求の如き韓国中心史観を受容しなければならない、ということにはならない。現に、最近ベトナムを訪問した金 大中・韓国大統領は、ベトナム戦争に参戦した過去を振り返りはじめて「反省」したというが、逆にいえば、それまで韓国も、ベトナムに対してそうした言明はこれまで全くしてこなかったということである。韓国側が我が国の「歴史的事情」を理解できてはじめて、真の相互理解、真の友好関係が樹立を語ることが出来よう。

■米軍艦寄港反対論はもはや異端に過ぎない
 米海軍艦船、相次いで日本の港に寄港(8月28日)
 報道によると、28日午前、アメリカ海軍所属の艦船5隻が兵庫県姫路市等4つの港に寄港。一部市民団体が抗議活動を行った。寄港したのは、兵庫県姫路市にタイコンデロガ級イージス・ミサイル巡洋艦「ビンセンス」(9100トン)、和歌山県和歌山市にスプルーアンス級駆逐艦「クッシング」(9533トン)とO・H・ペリー級ミサイル・フリゲイト「バンデクリフト」(4083トン)の2隻、静岡県清水市にアーレイ・バーク級イージス・ミサイル駆逐艦「J・S・マケイン」(9700トン)で、兵庫県は核兵器を搭載していないことを証明する「非核証明書」の提出を求めたが、米軍当局は「個々の艦船について核搭載の有無の議論はしない」と回答した。和歌山市は県に対して同様の「非核証明書」提出を求めるよう要望したが、木村良樹知事は「外務省から核は持ち込まれていないと考えているとの回答を口頭で得ている」として要求しなかったという。なお、これに先立つ24日には、鹿児島市の谷山港にドック型揚陸艦「フォート・マクヘンリー」が寄港し、「平和な錦江湾が軍港化するきっかけになる」として寄港に反対する「県憲法を守る会」等が「錦江湾に軍艦はいらない!」「入港反対」「憲法改悪を許すな」等と主張した。
 今回の寄港について「朝日新聞」は、「『民間港に軍艦が来ること自体がおかしい』『非核神戸方式をなし崩し的につぶそうという米側の行為は許せない』と、米側の狙いを懸念する声も高まっている。」等として抗議活動を繰り広げた一部市民団体の声を紹介したが、「安保条約をなくし、平和と民主主義・生活向上をめざす和歌山県民会議」「ピースリンク広島・呉・岩国」「姫路港寄港に反対する市民の会」等と称するこうした反米・反安保の市民団体はもはやごく少数のノイズィー・マイノリティーに過ぎず、その動きを全国紙が詳細に報じるのは著しく均衡を失している。多くの国民はむしろ「同盟国の軍艦が寄港することに反対すること自体がおかしい」と感じているだろうし、一地方自治体が国家の外交・安全保障政策に横槍を入れる「非核証明書提出要求」はそもそも不当・不法である。鹿児島県の「県憲法を守る会」の方々には、米艦船が我が国港湾に寄港することは日米地位協定上認められており、これに反対することは国際法遵守を要求する日本国憲法に違反することをしっかりと想起して頂きたいものである。

■芸能人に特権を与えんとするテレビ朝日
 テレビ朝日、稲垣吾郎容疑者の傷害事件報道を抑制するよう圧力(8月28日)
 報道によると、人気アイドルグループ「SMAP」の稲垣吾郎容疑者(27歳)が駐車違反の取締りを振り切って逃走しようとし、警察官に現行犯逮捕された事件を巡って、テレビ朝日は事件翌日の27日、この事件を同社のワイドショー番組でほとんど取敢えず、芸能記者にも評論を控えるよう圧力を加えていたことが28日判明した。なお、この事件に関して、ある著名な芸能記者は抗議の意思を示すため生放送の番組への出演を突然キャンセルしたという。
 この事件について一部報道では、テレビ朝日が9月22日に放映する予定の2時間ドラマ『結婚の条件』に稲垣容疑者が出演しており、多額の制作費を要した同ドラマをきちんと放映できるようにするために事件の沈静化を狙った、と解説している。報道が事実とすれば、テレビ朝日は「自社の利益のために法秩序を売った」と評されても致し方あるまい。無論、人権擁護・憲法擁護を唱える朝日新聞社とテレビ朝日とでは別法人であり、今回の問題は専ら芸能界の問題ではあったが、そんなことでは憲法擁護を自由民主党に主張している場合ではありますまい。
 交通問題はモータリゼーションを迎えた我が国にあっては重要な問題であり、稲垣容疑者が著名人であればある程、「ノブレス・オブリージュ」を負担していると考えるべきであろう。釈放された同容疑者は記者会見で「早くファンの前で説明したい」と述べたというが、「ファンの前で説明すること」と「芸能界に復帰すること」を同義に考えてもらっては困る。


表紙に戻る   目次に戻る   健論時報目次へ   2001年8月へ   2001年10月へ

製作著作:健論会・中島 健 無断転載禁止
 
©KENRONKAI/Takeshi Nakajima 2001 All Rights Reserved.

このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください