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東 武 3 月 ダ イ ヤ 改 正 の 効 果 は ?

−特急の新宿・池袋乗り入れの効果が明らかに−



TAKA  2006年04月16日





JR⇔東武間の連絡線である栗橋連絡線で乗務員交換をしているJR485系直通特急



 私も「 東武3月ダイヤ改正は何をもたらしたのか? 」で取り上げた、3月18日の東武鉄道の白紙ダイヤ改正ですが、その幾つかの「大改革」の一つである「栗橋連絡線を用いたJR〜東武間直通の新宿・池袋〜日光・鬼怒川間特急列車の運転」ですが、その直通運転の成果が明らかになってきました。
 「 日光・鬼怒川への直通特急の利用状況について  (東武鉄道4月11日プレスリリース)」
 「東武鉄道の歴史上有数の大変革」と言っても過言ではない今回のダイヤ改正ですが、未だダイヤ改正から約1ヶ月なので結論を出すのは早いと言えますが、ダイヤ改正の目玉の一つである「新宿・池袋〜日光・鬼怒川間直通特急」の成果について、速報値を元に検討をして見たいと思います。


 ☆ 「新宿・池袋〜日光・鬼怒川間直通特急」は上々の発進

 今回東武鉄道から発表された資料を見ると、3月18日〜4月9日間の利用状況は1日平均1,400人で平均利用効率は約60%との事です。又観光特急ですから平日と土日で利用率に差が出ることは想定の範囲内でしょうが、私が思ったより差が無く平日1,300人:土休日1,700人との事で平日も思ったより利用されています。
 又今までの最大の利用日は私が利用した4月1日との事で、この状況から考えて「当日慌てての旅行予定」でなく数日前に計画してチケットを手配すれば、少なくとも「土日でも何時も満席で利用するのが困難」と言う状況までは行っていないと推察されます。

 利便性が改善された新観光ルートであり、JR東日本が私鉄と新たに直通運転を行ったと言う、新プロジェクトの滑り出しとしてはまずまずの成果であると考えます。
 この利用率の速報を見て驚くべきは「差があると言えどもかなりの利用率が有る平日の利用」です。4月5日午前中に池袋駅で日光行きの特急を見ましたが、その時には池袋出発時点で20%〜30%位の乗車率で「これから先どうなるのだろう」と言う危機感を持ちましたが、実体はそれ以上の利用率が有るようです。
 実際の降車駅や列車毎の利用率等のデータが無いので私の推測でしか語れませんが、観光地への利用だけでなく手前の栃木・新鹿沼などへの利用客が平日の利用客を支えているのかも知れません。
 

 ☆ 特筆すべきは「新宿・池袋〜日光・鬼怒川間直通特急」の波及効果

 この速報で一番驚いたのは、「浅草からのスペーシアの利用率」です。今回「東武3月ダイヤ改正が何をもたらしたのか?」でも述べましたが、東武・JRがタイアップして首都圏で「PREMIUMJAPAN日光鬼怒川」キャンペーンを盛大に行っています。速報では「その成果」との事ですが、前年増減比+6.4%と言う数字が出ています。
長期低落傾向からやっと近年回復してきた「東武の日光・鬼怒川特急」( 特急・急行利用客 96年6022千人→2003年5238千人→6043千人 :17年6月2日東武鉄道FACTBOOK6ページ)ですが、此処に+6.7%を足してきたと言うのは特筆すべき効果であると言えます。正しくダイヤ改正とキャンペーンの波及効果でしょうが、東武としては「ホクホク顔」と言う事でしょう。
 
 この要因としては「日光・鬼怒川観光のアピール」と言う東武指摘の要因と同時に、前から一部で言われていた「今回のダイヤ改正での快速の区間快速化による長距離客の特急への誘導」が成功した可能性が有ります。
 実際に私のレポートに有る様に快速の区間快速化で快速の観光利用客が、見た目で減った感じがしていますし、東武動物公園以北の各駅停車化で所用時間も約20分程度増加しています。これを嫌った観光客が東武特急に逃げた可能性が有ります。もしそうだとすると「東武の作戦勝ち」と言う事でしょうが、これはもう少し様子を見なければ結論は出ないと言えるでしょう。
 又今回のダイヤ改正時に「平日・土休日特急料金の設定」「午後割」「夜割」と言う細かな設定の特急料金体系が効果を発揮した可能性も有ります。只何がどの様に影響したのかは今回のダイヤ改正で色々な要素が変っているので、今の段階では何も言えないと考えます。又一過性の増加と言う可能性も有るので、慎重に経過を見る必要が有ると言えます。


 ☆ 今回のダイヤ改正の勝負は「これから如何に効果を持続させるか」と言う点にある

 この様に目玉の「新宿・池袋〜日光・鬼怒川間直通特急」で順調な推移を辿っていて、今は「ダイヤ改正は成功だった」と評価する事の出来る「3月18日東武白紙ダイヤ改正」ですが、問題は「効果を持続させる事が出来るか?」と言う点に尽きると言えます。
 関東周辺の民鉄では近年観光輸送に対しての梃入れが進んでいます。小田急も箱根観光輸送活性化の為に「50000系ロマンスカーVSE」を投入しています。(詳しくは「 小田急新型ロマンスカーVSE試乗記 〜VSEは何をもたらしたのか?〜 」参照)此の頃色々な要素に押されて不調である私鉄の観光輸送ですが、企業グループ全体で「観光地で観光客の落とす金を吸い上げるビジネス」を展開している為、観光輸送で得られる運輸収入以上の効果を企業グループにもたらすので、大手民鉄はその観光客を集めてくる為の「観光輸送」への梃入れ策を行っています。小田急ロマンスカーVSE投入も東武の新宿・池袋〜日光・鬼怒川間直通特急もその一環で有る事は間違い有りません。

 今回速報値が出て「新宿・池袋〜日光・鬼怒川間直通特急」は滑り出し順調と言う事が出来ますが、問題は「この効果をどれだけ持続させるか」と言う点です。今回の速報を見る限り「利用客が一番多いのは4/1(私が利用した日)で2番目が3/18(改正当日)」との事ですが、これらは「御祝儀相場」と言う可能性も有ります。又「キャンペーンの効果が出ている」と言うのも、JR東日本も巻き込んでのあれだけのキャンペーンを行っているので、その見解も間違えていないと思います。
 但し「御祝儀相場」も「キャンペーン」も一過性の強い物であり、その効果が長続きする物では有りません。しかし今回の直通運転は色々な意味での試金石であり躓くとJR東日本・東武共に今後の事業展開に影響を及ぼす物であります。
 同時に日光・鬼怒川だけでなく、その奥に展開する南会津地域でも、今回の直通特急のもたらす効果を心待ちにしている地域も有ります。又日光・鬼怒川地域では今回の直通特急が足利銀行破綻等で痛めつけられた旅館・観光産業の再生の起爆剤になる可能性があるという「地域再生」までを視野に入れた希望が掛かっているとも言えます。
 その様な点から考えて、今回の「直通特急プロジェクト」は失敗できない物ですし、この速報で示された好調を今後とも維持していかなければなりません。その点で飽き易い都会からの観光客を惹き付ける為には、今後とも継続的に地域と協賛した観光キャンペーン等を実施すると共に、輸送を担当するJR東日本・東武共に話題になり観光客を惹き付ける第二・第三の方策を繰り出して、観光客の目を日光・鬼怒川に惹き付けなければなりません。
 新たなキャンペーンやプロジェクトを考えるにしても、今回の好調な速報値はプラス材料になると思います。これを梃子にして今後とも一層の活性化策を考えてもらい、日光・鬼怒川の観光発展に寄与して行って欲しい物です。





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