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「民意の矛盾」を如何にしてすり合わせて行くのか?
-新幹線南びわ湖駅建設問題と栗東市長選挙の結果を考える-
TAKA 2006年10月23日
7月の滋賀県知事選挙の結果で、東海道新幹線南びわこ駅建設に関して「建設凍結」を訴えた嘉田知事が当選して以来、私もこの問題に非常に興味を持ち自分のサイト「
TAKAの交通論の部屋
」でも積極的に追いかけてきました。
7月の滋賀県知事選挙では南びわこ駅建設問題で「もったいない」と言って建設凍結を主張して嘉田現知事が当選して、「滋賀県民は南びわこ駅は不要だ」と言う民意を示したと反対派を活気付けましたが、この建設問題で「滋賀県知事選挙と並ぶもう一つの民意を問う機会」と言われた22日の栗東市長選挙でもう一つの民意が示されました。
今揺れに揺れている「東海道新幹線南びわこ駅建設問題」ですが、今後の新幹線駅建設問題の行方を左右する栗東市長選挙の結果と、今後の新幹線新駅建設問題の進むべき道について考えて見たいと思います。
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☆ 「栗東市長選挙」の結果
10月22日投票の栗東市長選挙では『「推進」の現職・国松正一氏(無=自民推薦)・「凍結」の前市議・田村隆光氏(無=民主・社民推薦)・「中止」の市民団体事務局長・杉田聡司氏(無=共産推薦)の3候補』が立候補していましたが、開票の結果「
新幹線駅推進派の現職・国松氏再選
(22日:毎日新聞)」と言う結果になりました。
栗東市長選挙の公式結果
と新聞報道によれば、「投票率は63・93%で前回51・95%を上回り」「推進派の現職の得票より凍結・反対派の2候補の得票が上回った」と言う状況に有り、新幹線南びわこ駅建設問題が得票率を押し上げ(選挙に注目が集まった結果、多分栗東駅周辺の区画整理地内のマンションの新住民が選挙に行った結果だろう)その上がった分の得票が凍結・反対派の2候補に流れたが、反対派の分裂に助けられ結果として推進派の現職が当選したと言うのが、今回の選挙結果の実態と言えます。
この結果は「制度的には推進派が勝利したが、実際的には凍結・反対派が勝っても可笑しくは無かった」と言う「推進派の戦略・戦術的勝利」と言える物であり、推進派は「これで南びわこ駅建設へフリーハンドの手形を得た」と手放しに喜ぶ事がとても出来ない、極めて厳しい結果で有ったと考えます。
☆ しかし「選挙が示す民意」は選挙の結果が全てである
この様な「南びわこ駅建設推進派の現職の1000票差での辛勝」と言える結果ですが、誰が何を言おうと選挙は結果が全てです。「推進派が勝った」と言う事実だけで今の段階では「栗東市民の民意は新幹線南びわこ駅建設推進」に有ると断言できます。
これは7月の滋賀県知事選挙の時の「投票率が44.94%であり明確に反対を表明したのは有権者の44.94%の約6割に過ぎなく、現実に有権者の44.94%の約4割の人々は「南びわこ駅」建設に賛成の候補に投票して賛成の意思表示をした事と、この選挙結果の先には投票に行かなかった約55%の「滋賀県民の声なき声」が有る」と言う選挙結果の裏に有る「選挙の表に出ない真実」に目を向けずに、「新幹線駅建設凍結は民意」と反対に突っ走る嘉田知事の考え方と同じですが、残念ながらこれが現実です。
南びわこ駅建設に凍結・反対を主張する嘉田滋賀県知事のやり方が正しいと思いません。しかし凍結・反対派がこの「選挙の結果が全て」と言う考え方を「錦の御旗」としている以上、推進派も「栗東市長選挙で推進派現職が当選した」と言う選挙の結果を「錦の御旗」として今後の南びわこ駅建設問題に対応していかなければならないと言えます。
☆ 問題は「二つの矛盾」を如何にするか?
やはり此処で問題は「1人を選ぶ首長選挙では落選の2位以下候補の得票が死票になる」と言う矛盾と「上位の首長選挙と下位の首長選挙で同じ争点でも結果が異なる」と言う矛盾、つまり今の首長選挙で往々にして発生する矛盾が、今回の「新幹線南びわこ駅建設問題」を争った7月の滋賀県知事選挙と10月の栗東市長選挙で発生してしまい、一連の7月〜10月の混乱を解消する事が出来ずにより混乱を過激化したという状況に有ると思います。
今回栗東市長選挙で推進派現職が勝利した事で、「栗東市民は新幹線南びわこ駅建設にYesと言った」事になり、選挙結果で民意を示した事になり栗東市の「新駅建設推進」と言う動きをより加速させる事になります。
又嘉田滋賀県知事は栗東市長選挙への介入とも言える「
10月分の滋賀県分負担金支払い拒否
(10月20日毎日新聞)」と言う発言を行っており、今回当選した国松栗東市長が「
一方的な発言で遺憾
(10月21日毎日新聞)」とコメントしており、国松陣営後援会も「
候補者の主張への攻撃であり選挙妨害
(10月20日京都新聞)」と抗議している事から、嘉田滋賀県知事と国松栗東市長との新幹線南びわこ駅建設問題に関する対立は深刻化し、矛盾が解消される所かより深度化されてしまうことになります。
この矛盾を解消するには滋賀県及び栗東市で「首長リコールor新駅建設住民投票」を行い、もう一度民意を問うしか有りません。どちらも合法的に選出された首長が背負う民意を背にして行動する以上、矛盾を解消するにはもう一度民意を問うしかありません。しかし首長は「当選後1年間はリコールできない」ので来年7月以降のリコールになる上に、住民投票は栗東市議会では一回否決されていますし滋賀県議会では推進派の自民党が多いため住民投票条例の通過が困難で有ると考えます。
ですから「首長リコールor住民投票」では「二つの矛盾」を解消する事は困難で有ると言えますし、もしどちらかが実現したとしても滋賀県と栗東市で「異なった民意」が繰り返し選ばれる可能性も存在すると言えます。
この点から考えると、新幹線南びわこ駅建設問題は「二つの矛盾」に挟まれて、今や完全に「袋小路」に入って仕舞ったと言えます。この「袋小路」を如何にして解消するか?が今の段階で一番大切な問題で有ると言えます。
☆ 今や「矛盾解消・袋小路脱出」には「新スキーム構築」しかない?
この様に「二つの矛盾に挟まれ」「完全に袋小路」に入ってしまった新幹線南びわこ駅建設問題ですが、又大津地裁での「
起債問題の敗訴判決
」を如何するか?と言う問題も有ります。この問題は高裁へ控訴していますが高裁でも敗訴する可能性も有ります。事業の継続性からも「判決に左右されない事」が必要になります。加えてJR東海松本社長は「
19日の会見で「県の認可が下りないため、初期工事が進まず困る」と懸念を示した
(10月19日毎日新聞)」と言う様に工事が上手く進んでいない事に不快感を示しています。
今や新幹線南びわこ駅建設問題は「栗東市長選挙で「推進」の民意を受けた」事で「実現への大きな難関」を超えたと言えども、未だに実現に向けて極めて厳しい状況は相変わらず続いていると言えます。その最大の原因は「色々な場面で話し合いを強調」しながら実際は建設費支払い拒否など、7月に受けた民意を背に工事実質阻止への動きを強めている嘉田滋賀県知事と滋賀県の姿勢に有ります。
これらの諸問題を解決し、真に地域の為になる「新幹線南びわこ駅建設」を実現するには、今や反対派の巨頭にして「7月の選挙で反対の民意を背に受けて居る」嘉田滋賀県知事をこの事業から切離す事が必要で有ると考えます。嘉田滋賀県知事と滋賀県を切離し、滋賀県と関係6市で作られている「駅設置促進協議会」から滋賀県を脱退させ、関係自治体だけで滋賀県負担分の116.97億円を負担する事が出来れば、全ての矛盾も解消させる事が出来て南びわこ駅建設事業も実現させる事が出来ます。
その為にも今まで私が「TAKAの交通論の部屋」で提示してきている「
滋賀県以外の「新幹線新駅の促進協議会」参加自治体で第三セクター設立
」のよる南びわこ駅建設の新スキーム構築を再検討すべきであると思います。これ位思い切った方策を取らないと今や「矛盾解消・袋小路脱出」は出来ないと言えます。
この新スキーム検討には今回の「栗東市長選挙での推進の民意」は大きな後押しと切っ掛けになると思います。本来なら市長選挙で「民意の矛盾解消」を唱えて「新スキーム提示の上」新スキームの民意の禊を受けた上で新スキーム構築といければよかったのですが、今は其れが不可能になっていますので、「選挙の民意達成の為」と言う大義名分の上で新スキームを打ち出し、関係者で十分に検討の上事業の推進に万全を果たす必要が有ると言えます。
今や「嘉田滋賀県知事の妨害」「JR東海の苛立ち」をクリアして、この危機的状況を脱出するのに残された時間は多くは無いと言えます。国松栗東市長は「民意を受けて選挙に当選した」今から直ぐに民意実現への行動に着手すべきであると言えます。
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今回の選挙結果は、有る意味予想できたと言えども「民主主義と直接選挙の矛盾と限界」を白日の下に曝したと言えます。今回「矛盾・袋小路」と言う言葉を何回か使用しましたが、この「矛盾・袋小路」自体が有る意味民意で有るとも言えます。
しかしこの「矛盾・袋小路」の状況は極めて不安定な状況で有る事は間違い有りません。今回は推進派の国松市長は「反対派の敵失」で勝ったと言うのが偽らざる事実であると思います。「地元の磐石の支持」で新幹線南びわこ駅建設が支持された物では無い以上、新幹線南びわこ駅建設はこれからも幾多の困難に直面するであろうし、反対派の嘉田滋賀県知事がこの選挙結果を重く見ず今までと同じ対立的対応を打ち出して来る事は容易に想像できます。
けれどもこの様な民主主義の欠陥が生み出した「矛盾・袋小路」を、「制度の欠陥だから仕方ない」と放置する事もできません。それでは何も進歩しないですし、南びわこ駅建設事業が何も進まないからです。
この様な困難が存在していますが、人間にはこの様な状況を打破する為に「知恵」を持っているのです。今こそ「新しい知恵」を出して「矛盾・袋小路」を打破しなければなりません。そのためには「第三セクターでの建設構想」だけでなく、広く意見を集め「反対派も納得or黙認せざる得ない様な完成した計画案」を示し、事業の再構築を計り其れを元に事業の再推進を図らなければなりません。その為に推進派に残された時間は多くないと言えます。
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