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果たして「安直な手段」で継続的に人の注目を集められるのか?

−西武鉄道の「銀河鉄道999ラッピングトレイン」を見ての雑感−



TAKA  2009年 06月 21日



西武池袋線に走り始めた「銀河鉄道999」ラッピングトレイン@練馬


 ※本記事は6月12日にmixiの日記に書いた物を(かなり大幅に)加筆・修正の上再掲載しています。予めご承知置きください。


 ☆ 「アニメ・街の活性化」をキーワードに自治体と鉄道会社がコラボレート?

 「アニメーション」と言えば、今や日本が世界に誇る文化で有り、「鉄腕アトム」から始まり現在まで数多くのアニメーションが放映され、30歳台半ばの私もそうですが大人から子供まで多くの人達が親しみ馴染んで居ます。
 今その「アニメ」を使っての「街の活性化」が色々な所で行われて居ます。
 私の住んで居る練馬区はアニメ界の名門東映アニメーションが有り、東京都の中でも杉並区(サンライズ)・世田谷区(円谷プロダクション)と並んでアニメ産業が盛んな所です。
 その中で練馬区ではアニメ産業の活性化やアニメの観光資源化を狙い「アニメフェスティバル」を開いたり西武線各駅に「アニメ観光サイン」を置くなど、街の活性化・知名度向上の施策は行っていますし、杉並区では西武鉄道と組んで上井草駅にガンダムの銅像を置いたりしており、世田谷区も祖師ヶ谷大蔵では地元の商店街がウルトラマンを取り上げ商店街で色々イベントを開かれて居るなど、「アニメを活用した街の活性化」という施策が行われて居ます。

その様な中で、「アニメを活用した街の活性化に鉄道会社が協力する」という施策が幾つか実現しており、例えば「祖師ヶ谷大蔵でウルトラマンを用いた街の活性化にコラボして小田急電鉄が発車ベルをウルトラマン・ウルトラセブンに変える」とか「杉並区・地元・西武鉄道が組んで上井草駅にガンダムの銅像を置く」など、幾つかの事例が既に行われて居ます。
 その流れに、我が地元の練馬区も「バスに乗り遅れるな」という訳では無いでしょうが、練馬区と西武鉄道と練馬区在住の漫画家の松本零士氏がコラボレートして、新しいイベントが行われる事になりました。それが、5月1日より西武池袋線に走りだした「銀河鉄道999のデザイン電車」です。

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2009年5月1日(金)より西武線に松本零士さんがデザインした銀河鉄道999のデザイン電車が走り出します。 (西武鉄道ニュースリリース)
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 私自身、西武池袋線沿線の練馬区に居住して居るので、練馬区が駅に「アニメ観光サイン」を置いたり、練馬区と商店街が組んで商店街の街灯に「アニメキャラクター」のペナントを付けたりしていたので、練馬区が「アニメで街の活性化を図る」と言う施策自体は知って居ました。
 又テレビアニメといえば「宇宙戦艦ヤマト」「銀河鉄道999」と言う世代で(ガンダムも小学校時代だが「人気でプラモデルが買えなかった」暗いイメージしか無い)、私に取り幼稚園の時に「銀河鉄道999」の玩具を買ってもらったのが数少ない「父に玩具を買ってもらった記憶」と言う様に、私に取っては「銀河鉄道999」は非常に馴染みが深いアニメと言えます。
 その中で「銀河鉄道999ラッピングトレイン」が走るとなればやはり多少は興味が湧きますし、実際問題日常的に西武池袋線を利用して居るのでその様な列車は必然的に目に入り利用する事になります。そういう訳で今回は地元の話題ですが、西武鉄道の「銀河鉄道999ラッピング列車」について取り上げて見たいと思います。


 ☆ 「銀河鉄道999ラッピングトレイン」をメインにした練馬区と西武鉄道のコラボレートは?

 さて、その様な「銀河鉄道999」を核にした練馬区と西武鉄道のコラボレートは、前述の「銀河鉄道999ラッピングトレイン」と(東映アニメーションの最寄駅で松本零士氏も住んで居る)大泉学園駅での「発車ベル変更」や「銀河鉄道999に因んだ装飾」などです。

「銀河鉄道999」ラッピングトレイン 左・中:車両の前後を飾るメーテルと車掌 右:車内は普通で有るのは松本零士氏のサインだけ

 この「銀河鉄道999ラッピング列車」ですが、その絵柄を見ると私はチョット違和感を感じます。
 その違和感は写真を見れば分かりますが、ラッピングトレインの絵柄が原作の漫画の絵柄を基にして居り、「アニメの銀河鉄道999」の絵柄に馴染んだ私にして見ると「マンガバージョンの銀河鉄道999」の絵柄には、何かイメージ的に個性が強すぎる為大きな違和感を感じるのです。
 元々、漫画の松本零士氏の絵柄は(特に女性画で)非常に個性が強く見えます。その為か、松本零士氏の絵を用いたラッピングトレインは今回の西武鉄道以外にも上信電鉄・伊賀鉄道にも有りますが、アニメの絵柄を用いた上信電鉄はまだ良い物の、そのままの絵柄を用いた西武鉄道・伊賀鉄道ではやはり違和感を感じます。

松本零士氏の絵柄を用いたラッピングトレイン 左:西武鉄道 中:上信電鉄 右:伊賀鉄道

 私自身、アニメに馴染んだ世代と言う事も有るのでしょうが、個人的には松本零士氏の漫画の絵柄を用いたラッピングトレインにはチョット馴染めません。昨年上信電鉄のラッピングトレインを見た時には「まあまあ良いんじゃない?」と思って居たのですが、今回西武鉄道のラッピングを見て「何か違うな〜」とチョットガックリしてしまいました。
 今回のラッピングトレインには、私のような「銀河鉄道999のアニメ」に馴染んだ世代も違和感を感じるでしょうし、其れ以外の世代もこの絵柄だと「チョット・・・」と感じる人々も多数出て来るでしょう。そういう意味では「効果に疑問符が付くかな?」とは感じました。
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 ラッピングトレインの絵柄以上に、私がもっと違和感を感じたのは、ラッピングトレインと同時に行われた「大泉学園駅の発車ベルの変更」です。
 今回ラッピングトレイン運行開始に合わせて、大泉学園駅で発車ベルがゴダイゴの「The Galaxy Express 999」(劇場版「銀河鉄道999」のテーマソング)に変えられて居ます。地元とタイアップして発車ベルにアニメの主題歌を使う事は、祖師ヶ谷大蔵(ウルトラマン・ウルトラセブン)・高田馬場(鉄腕アトム)・上井草(ガンダム)などの先例が有り、此れ自体は私も好きです。
 しかし、私の馴染みの有る(携帯の着メロにも使って居る)ゴダイゴの「The Galaxy Express 999」なので、思い入れは強いのですが、これ又「違和感満点」といえる物です。

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 ● 大泉学園駅発車ベル (YouTube) ●(原曲の) 銀河鉄道999  ゴダイゴ(YouTube)
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 最初にこのメロディを聞いた時に、ゴダイゴの「The Galaxy Express 999」とは判らず、良く聞いて「あ・・・編曲して有るんだ」と気が付きましたが、思わず「う〜ん」と首を捻りたくなりました。正直言ってこの発車メロディは「良い出来」とはとても言えません。
 先ず間違い無く言える事は、「編集の仕方」が下手なのです。原曲を生かして編集をして居ないと感じます。そういう点では先行して居る高田馬場・祖師ヶ谷大蔵・上井草の各駅のアニメソングを用いた発車ベルを採用して居る駅は有りますが、それらの駅と比べると正直言って「失敗作」と言えるでしょう。
 確かに発車ベルに使う音楽と言うのは色々難しいと思います。ゴダイゴの「The Galaxy Express 999」はテンポの速い曲なので下手をすると「テンポが良く駆け込み乗車を助長する」可能性も有ります。その為「編曲に苦労をした」という話も聞きます。そういう点ではこのゴダイゴの「The Galaxy Express 999」は「発車ベルに使い辛い」曲なのかも知れませんが、その点を割り引いてもこの発車ベルには「何故こんなに下手に編集したのか!!」と文句の一つも言いたくなります。



 ☆ 果たして「安直なラッピングトレイン」で人の注目を集め沿線の活性化は図れるのか?

 と言う訳で、今回練馬区と西武鉄道が行った「銀河鉄道999ラッピングトレイン」ですが、私も非常に好きなアニメなので、4月後半に登場を聞いた段階から期待していましたが、正直言えば何か「期待外れ」で終わってしまった感じです。
 実際問題、西武池袋線はバリバリの通勤路線ですしこのラッピングトレインは特別運用が組まれず普通に運用される車両なので、内装を変えるなどの「思い切った改造が出来なかった」のは仕方ないとは思います。その中で「出来る方策」が多分このラッピング列車だったのでしょう。(実際東京都の広告条例の絡みで結構折衝に苦労したらしい)

 私の個人的意見としては、今回の取り組みを(辛口で)一言で言えば「何か中途半端」と言う感が拭えませんでした。実際「銀河鉄道999」を知っていて関心を持つ世代は、私の年代に近い30歳台半ば以上になります。その様な「高い年代」が関心を引きそうなアニメを使いイベントをしても、効果は限定的な気がします。
 それはJR東日本が行ってヒットしている「 ポケモンスタンプラリー 」の様な「子供を巻き込む⇒家族も巻き込む⇒必然的に注目度が上がる」と言う様な「家族ぐるみで多くの人々に参加をしてもらう」スキームが出来て居ない事です。
 正直言って「ラッピングトレインを走らせました」だけでは、最初は注目を集めます。実際5月初旬には携帯のカメラ等で撮影をしていた「普通の人達」も沢山居ました。しかしもう今ではそんな光景も見かけません。完全に人々の注目から外れてしまったと言えます。そういう意味では「毎年夏に子供を連れた家族連れが大挙して押し寄せる」ポケモンスタンプラリー程の効果は元より期待出来ないと言う事になります。

 でも・・・。私は今回のような中途半端な施策でイマイチの物を出すのは「逆効果」のような気がします。
 西武鉄道は「沿線の魅力アップをはかりたい」意図が有るようです。その意識は非常に高く評価出来ると思いますし、実際西武鉄道は「西武線で行く!沿線地酒めぐり スタンプラリー」の様な地域とコラボレートするようなイベントも開いています。これは昔の西武鉄道では考えられない物でした。そのから「地域との協働」に汗を流すようになった事は、近年起きて居る「 西武鉄道の変化 」の成果として非常に評価出来ると思います。
 しかし問題は、東京でこの様なイベントを打っても、「ポケモンスタンプラリー」の様に、用意周到な仕込みをしないと効果は限定的と言う事です。では「どんな仕込みが良いのか?」と言われると、その回答は非常に難しいですが、祖師ヶ谷大蔵の様に「地域と上手くタイアップ」する「泥臭い」道か、JR東日本の「ポケモンスタンプラリー」の様に「子供を引きこみ大人を連れ込む」イベントにしないと、その効果は限定的な気がします。
 そういう意味では、練馬区と西武鉄道が今回見せた「沿線の魅力向上と活性化を図りたい」と言う「やる気」は評価しても良いとは思いますが、実際のイベントのやり方が「下手だな〜」と感じるのは私だけでしょうか?。もう少し考えた方が良いと思います。

 此の頃は鉄道会社も「座して手を拱く」という訳でなく、「何か人の注目を集めて鉄道に興味を持ってもらい利用して貰おう」「地域とコラボレートして鉄道と共に地域も活性化させよう」という動き自体は、弊サイトでも幾つか取り上げて居ますが、色々な所で行われてきて居ると言えます。
 その動き自体は評価出来ると思います。公共交通たる鉄道は地域と共に歩む事が宿命付けられていると思いますし、鉄道会社も此れだけ色々な交通モードが有る今の世の中では、利用を引きだすには「人々に注目を集め存在を認識してもらい興味を持って貰う」事が非常に重要だと思います。
 そういう意味では、鉄道会社の「努力」自体は評価出来ると思いますが、逆に言えば「有名なアニメのラッピングでもすれば人の注目を集めるだろう」と言う様な「安直な試み」が多くなって居るような気がします。実際同じ様な「銀河鉄道999ラッピング列車」を走らせて居る上信電鉄では、「新型電車を導入しました。有志の寄付で銀河鉄道999のラッピングをしました。以上!」で終わってしまい、今では殆どその話を聞かなくなって居ます。又西武鉄道の「銀河鉄道999ラッピングトレイン」でも同じ道を歩んで居ると言えます。
 しかしそれでは拙いのです。今の人々の注目は直ぐ移ってしまう物で、幾らラッピングトレインを造っても、関心が継続する様な「二の手・三の手」が無いと最初に打った手も「無意味」になってしまいかねません。そういう意味では、何年も続き子供達の関心を集め増収にも繋がって居るJR東日本の「ポケモンスタンプラリー」や、今やローカル線のスーパースターで全国区になった和歌山電鐵の「 スーパー駅長たま卿 」等は、非常に上手く考えて手を打って居る「成功例」と言えます。
 其処から考えると、この手のイベント的な「人の注目を引き付ける方策」を行うに際して、如何にすれば「成功して効果を継続できて成果が挙がるか?」の成功の経験則の「水平展開」が出来て居ない様な気がします。その事が「人の注目を集め(結果として)鉄道と沿線の活性化に寄与出来るイベント」の成功の為に必要なのでは無いでしょうか?




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