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「土休日高速道路ETC1000円」は一体何をもたらしたのだろうか?
− 高速道路ETC使用1000円政策を個人的に「中間総括」してみよう −
TAKA 2009年 08月 02日
毎週末?のように「渋滞数十キロ」では・・・ |
☆ ま え が き
今年も「暑い夏」がやって来ました。まあ夏は暑いのは当然の事ですが、今年の夏は温度の「暑さ」の他に別の「熱さ」が有ります。それは今月21日に衆議院が解散され8月30日には衆議院議員選挙が行われます。正しく解散⇒選挙の期間が学校の夏休みの時期とほぼ重なり、今年の夏は「政治の季節」となり「選挙戦が熱い夏」と言う事になりました。
今回の選挙は、前回の郵政選挙が2005年9月11日で有り衆議院議員の任期が4年と言う事から考えれば、今年は「選挙の年」で有る事は誰にでも分かっていた話で有り、その為(実質的な二大政党で有る)自民党と民主党は、来るべき決戦の時である衆議院議員選挙を見据えその時に国民の支持を得る為に色々な政策で対決と競争の姿勢を強めて居ます。
その選挙を見据えた自民党・民主党の政策対決の中で、政策の出し合いを行って居る分野の一つが「高速道路料金」に関する問題です。
高速道路料金に関しては、民主党は以前から政策として「高速道路無料化」の構想を打ち出しており、参議院議員選挙に勝利した上に衆議院議員選挙が迫り「政権獲得」が現実化した、今年の3月にも「
民主党高速道路政策大綱
」を発表して、『高速道路無料化』を前面に出しています。
それに対して政権与党で有る自由民主党は、政権政党で有るメリットを生かして景気対策の「総合経済対策」の中で高速道路料金値下げが行われており、実際2008年8月の「
安心実現のための緊急総合対策
」で、高速道路料金値下げとして「東日本・中日本・西日本の3高速道路会社全線で ●土日祝日の午前9時〜午後5時の間の100キロ以内の利用者の料金5割引。 ●夜間割引拡充、午後10時〜午前0時にかけて東名・名神で実施されている料金2〜3割引を全線で3割引。午前0時〜午前4時は全線で4割引を5割引。」という高速道路値下げが行われており、それに続いて麻生内閣の追加経済対策で、所謂「大都市圏を除いた高速道路料金を土・日・祝日は原則1000円で乗り放題」という「
高速道路料金の引き下げ
」が行われる事になりました。
さて、正しく衆議院議員選挙を控えて「政策論争の前面」に立った趣のある「高速道路料金」の問題ですが、「土休日高速道路ETC1000円」が実際に行われてから約4ヶ月が経過して、正確な効果は未だにしてもイメージ的には大体の状況が掴める状況になってきた感じがします。
其処で、前に弊サイトで昨年11月に書いた『
「高速道路乗用車休日何処まで乗っても1,000円以下」は本当に効果有るのか?
』を受けて、土休日高速道路ETC1000円の運用開始後約3ヶ月の現在の状況を踏まえながら、(私の主観・見た物が多くなってしまいますが)此処で現状を踏まえての一度「中間総括」を行って見たいと思います。
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「参考資料・サイト」 ○
高速道路料金の引下げの実施について
(国土交通省HP) ○ 政策解説「
高速道路料金が大幅に安くなります!
」(自由民主党HP)
○
民主党高速道路政策大綱
(民主党HP) ○
「高速道路乗用車休日何処まで乗っても1,000円以下」は本当に効果有るのか?
』(TAKAの交通論の部屋)
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☆ 今も続く高速道路「ETC1000円」渋滞の状況は?
さて、開始から約4ヶ月経過した「土休日高速道路ETC1000円」ですが、果たして高速道路の状況はどんな状況なのでしょうか?
高速道路自体は3月28日の「土休日高速道路ETC1000円」が開始された後、(特に)関東周辺の高速道路では普段の土曜日・日曜日でも「数十キロ渋滞」というのが何処ででも発生して、有る意味「土日には高速道路は半分マヒ状態」となって居ました。
実際、下の写真は開始から約2週間経過した4月11日の中央高速高井戸IC〜調布IC付近の状況ですが、この土曜日も「渋滞30km」という激しい渋滞が発生して居ました。
この時は渋滞の最後尾が稲城IC付近で、私の目的ICが国立府中だったので、渋滞に掛かるか掛から無いかの稲城ICで渋滞を嫌い高速を降りて多摩川沿いの抜け道を目的地の立川へ向かいましたが、稲城IC以西が大渋滞と言う状況で、東京都内〜多摩地区を結ぶほぼ唯一の高速道路が駐車場に代わってしまい使えない状況になり、「土休日高速道路ETC1000円」の副作用として「都市の高速道路が麻痺」という弊害が明らかで出て居るといえる状況でした。
2009年4月11日の中央高速の「ETC1000円渋滞」の状況 左:中央高速に乗った段階で「激しい渋滞」の予告が・・・ @高井戸〜三鷹間 右:その先に行くと「5km先・30km・120分」の表示にゲンナリ @調布
この状態は、最初は「土休日高速道路ETC1000円」のブームが一巡すれば「普段の状況+α」の渋滞に戻るかな?と楽観視して居ましたが、必ずしもその見方が「楽観視」に過ぎない事を感じる状況が7月になると廻りで起きてきました。
7月には丁度東名高速方面に仕事が多く、土日に仕事関連で東名高速を東京IC⇔厚木IC間で利用しました。先ず7月4日に熱海のホテル改修工事の現場に行った後午後から
富士山静岡空港訪問
で東名高速を東京⇒厚木・沼津⇒吉田・吉田⇒東京間で利用した時には、殆ど渋滞にも当らず普段と変わらない状況でした。
しかしその後に「悲劇的状況」に巻き込まれます。翌週の11日は社員が仕事で小田原に向かったものの東名で渋滞に巻き込まれ現場に1時間遅刻・その翌週の18日は厚木で現場だったのですが、東名東京IC〜厚木IC間に2時間以上も掛かり1時間半の遅刻で現場が終わらず21日の月曜日にも再度行く羽目に陥り、25日の土曜日は私が海老名の現場に材料を運ぶ為に高速を使おうとしたら「綾瀬BSを先頭に19km渋滞」という案内を見て、池袋から「首都高〜東名高速〜国道246号」のルートを、遠回りの「首都高〜首都高湾岸線〜新保土ヶ谷バイパス〜二俣川から一般道」という迂回ルートに変えて混雑を回避する羽目に陥りました。
まあ7月の18日〜20日は「夏休み突入直後」の3連休でしたから、有る意味大渋滞は必至でその後も学校が夏休みに入って居る為、「土休日高速道路ETC1000円」をキッカケにして家族連れの旅行等が増えて渋滞が発生する可能性は有ると思います。
多分GW以降は沈静化していた(と思われる)高速道路の渋滞も、夏休み突入で復活して来たと言う事なのでしょう。しかし(日曜日は休みでも)土曜日・祝日は未だ仕事をしている中小企業は沢山有ると思います。そういう人達には「土休日高速道路ETC1000円」は「迷惑」以外の何物でも有りません。
しかも東名高速では「割引区間は厚木以西なのに渋滞は「長距離需要+割引特需+近郊利用」が集中する厚木以東のネックポイント(大和トンネル等)で発生し、「割引の恩恵を蒙れないのに被害だけ蒙る」という最悪の状況に追い込まれて居ます。少なくとも(全てを見て居る訳では無いので)全体的なコメントは難しいですが、私の見た範囲で「土休日高速道路ETC1000円」の影響は「激しい渋滞」としか言えない状況でした。
☆ 果たして「土休日高速道路ETC1000円」はどの様なメリット・デメリットをもたらしたのか?
この様に、私の知る限り・体験した限りの「土休日高速道路ETC1000円」の影響について見てみましたが、果たして「経済対策」として行われた「土休日高速道路ETC1000円」はどの様な「メリット・デメリット」をもたらしたのでしょうか?
未だ政府などから全体的な経済効果等の公式かつ詳細の分析は出て居ない様ですから、正直言って「詳細な点でのメリット・デメリット」は批評する事が困難で有ると思います。なので「中間総括」と言う形で、とりあえずこの施策が「何をもたらしたのか?」。此処では私が見える範囲での「土休日高速道路ETC1000円」の直接的な範囲での「今の段階でいえる事が出来る」評価・総括を行って見たいと思います。
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○ メリットの面 〜まあ此れだけ人が動けば・・・〜
先ずはメリットの面です。そのメリットですが、まあ一言で言えば表題の通り「此れだけ人が動けば何か効果は有る」と言う事になります。
(超)直接的に言えば、割引がETC限定だった為ETC取付の需要が急速に普及が進んだ(
2009年7月20日に3200万件を突破
)点や、3月の割引直後でも「
松山道松山ICで36%増、天橋立などがある舞鶴若狭道舞鶴西の35%増、米子道蒜山と高松道善通寺の33%増。観光施設入場者数では、広島県の国営備北丘陵公園(70%増)、佐賀県の吉野ケ里遺跡(55%増)などで増加。東日本高速道路会社の観光施設への聞き取り調査では、対象58施設のうち26施設で前年より増えたと回答、「変わらない」は21施設、減ったと答えた施設も11あった。中日本高速道路会社の調査では、18施設中「大幅に増えた」「増えた」が6割超の11カ所だった。
」等々、今までの色々な報道を見れば、其れだけの経済効果が有ったのは明らかで有るといえます。
実際の所、「費用が低下すれば需要が増加する」のは経済的には一般的な話で、その効果が「グロスで存在して居るのか?」という事は、その「増加分の中でどれだけ純増が有るか?」という点に依存して居ますし、その純増分が高速道路以外の所で「どれだけ金を落としたか?」という点が、この施策の評価の根本になると言えます。
その視点で考えて見れば、一時期は減ったが夏休みに入り此れだけ土日休日に乗用車で高速道路が渋滞する状況を見れば、「土休日高速道路ETC1000円」により高速道路の利用量(人々の移動量)が施策実施前より増えて居る事は間違いと言えます。又「土休日高速道路ETC1000円」による誘発効果の全てが「他交通機関からの転移」でなく、「需要その物の誘発」が起きて居る以上「土休日高速道路ETC1000円」の効果は有ると言えます。
あと効果としての問題は、「実際に移動が誘発されて、その移動がどれだけの消費を生み出したか?」という点ですが、実際の所「観光地における観光客の入りが増えて居る」状況も有りますし、国交省が算出した「土休日高速道路ETC1000円」の経済効果は2年間で7300億円と試算が出て居る事からも、其処まで行かなくても状況を見ればそれ相応の経済効果が有ったと考える事は出来ると思います。
○ デメリットの面 〜世間を騒がす「デメリット」は数知れず?〜
さて、その「土休日高速道路ETC1000円」の施策のデメリットは一体なんでしょうか?。
デメリットに関しては、既にこの4ヶ月間の報道で明らかになってきて居ると言えます。正直言って報道で流れて居る内容に加え、実際に体験した渋滞等の状況を見れば「土休日高速道路ETC1000円」のデメリットはかなり大きいのでは?と感じます。
先ずは、当然の話ですが「交通集中に依る渋滞発生に依る経済損失」です。実際問題今回の施策でかなりの渋滞を発生させた事は間違い無く、それが物流・バス交通等の「高速道路を利用して商売をして居る事業者」のビジネスに大きなマイナスを与えた事は間違い有りませんし、それは「平日3割引」におけるメリットと相殺してしまう可能性も有りますし、私のような「土日休日に仕事で高速を使い渋滞に巻き込まれ大都市圏で割り引き設けられず損だけした」と言う様な例も有るでしょう。この様な「土休日高速道路ETC1000円」実施の波及効果である渋滞による「経済的な損失」は間違い無く「かなりの量」で有ると言えます。
加えて、この「渋滞」と「自動車交通量増加」は、渋滞に依る直接的経済損失だけでなく、「環境負荷の増加」という点でマイナスの効果を引き起こして居ると言えます。車自体は「CO2排出量」が多く環境負荷の高い交通機関で、その使用量増加で環境負荷的には大きなマイナスとなりますし、渋滞に巻き込まれればより環境負荷が高まる事になります。今や「CO2削減」が国家的な命題となって居て多額の費用を投じて「CO2削減」を行おうとして居る状況の中で、「CO2が増加してしまう施策」は「CO2削減により投資が必要になる」必要性が発生する点で、よりマイナスの効果を引き起こしてしまうと言えます。
又間接的な側面で「公的補助が高速道路交通にだけ投じられた不平等の弊害」も出てきて居ます。
実際、「不平等な税金投入」で自動車による高速道路利用だけが価格負担を減らされた事で公共交通の価格競争力が低下して、「
長距離カーフェリーが苦境に立たされた
」状況も有り、このままでは海運業界は「座して死を待つ」状況になりかねません。
同時に「土休日高速道路ETC1000円」は「不況」とダブルパンチとなりJR各社にも襲い掛かり、「
JR東日本のGW期間中の新幹線・特急・急行列車の利用状況は463.3万人、前年比94%%
」という状況で有り、JR各社は公的資金が投じられた「土休日高速道路ETC1000円」に対抗して、「
お得なキップ
」を発売し、自己資金を投じての価格競争を挑む状況に追い込まれて居ます。加えてこの落ち込み傾向は「お盆輸送」でもJR東日本の新幹線での7月末時点での予約状況が「
東北44.6%(52.7%)、秋田45.2%(54.9%)・山形42.7%(51.1%)と、いずれも前年を大きく下回っている。
」と報道されており、「土休日高速道路ETC1000円」だけで無く不況の要因や9月の5連休との分散等の要因が有るにしても、燦々たる状況です。
此れは「由々しき問題」です。何が問題と言えば「国の政策で不平等・不公平な競争が生み出されて居る」と言う事です。これは「鉄道が云々」という趣味論の前に、根本論として「国が不平等な競争を生み出す補助金政策を行い民業を圧迫して居る」と言う所に問題が有るのです。少なくとも「何で高速道路料金には補助が投じられ、海運・JRには補助が無いのか?」という事に説明が全く有りません。有る意味「補助金設計の根本に有る問題」であり補助金の正当性を疑う話になりかねません。これが有る意味「最大のデメリット」かも知れません。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
実際問題、統計的資料を持ち合わせる公的セクターから「土休日高速道路ETC1000円」の効果について公式の効果分析が出て居ないので、詳細な「メリット・デメリット」を分析する事は、残念ながら今の段階では難しいと言えます。
しかしこの「土休日高速道路ETC1000円」を期間中の2年間実施させる為の予算として「
平成20年度2次補正予算に5,000億円を計上した。補正予算の主な財源は、「霞が関の埋蔵金」といわれた財政投融資特別会計の積立金を活用
」と言うように、5,000億円の税金を投入して今回の施策を実施しています。
その成果としての「経済効果が2年間で7,300億円」と言う事なので、直接効果で見ると「5,000億円の投資で7,300億円の経済効果で1.46倍の乗数効果」という事になります。
けれども、今回見てみた様に、「土休日高速道路ETC1000円」の施策による「間接的な損失」という側面も有ります。実際税金投入と経済効果の差が2,300億円有れども、「渋滞による損出・環境面での負荷増大・他交通機関事業者の波及損出」と言う側面を考えると、「実際は税金を投じても殆ど効果が無いor下手したら総合的効果はマイナス」という「洒落にならない」状況になる可能性もあると言えます。
この様に政策の効果について考えると、只単純な効果だけで無くメリット・デメリットを含めた「総合的な効果」という側面を冷静に見て、政策効果を分析する必要が有ると言えます。そうすると・・・、今回の「土休日高速道路ETC1000円」政策について「副作用・環境問題・制度的問題等の大元から有る問題点」が総合的な効果にマイナスを及ぼして居る可能性というのも見えてくるのかな?と言う感じはしました。
☆ (あとがきに替えて) 「ビジョンの無いバラマキ政策」で本当に良いのだろうか?
さて、この「土休日高速道路ETC1000円」政策ですが、昨年のリーマンショック以来の100年に一度の恐慌に対応する為の「景気対策」の側面が有る事は間違い有りません。
それ自体は正しい事です。実際前に「
「高速道路乗用車休日何処まで乗っても1,000円以下」は本当に効果有るのか?
」で書いた通り、此れだけ酷い不況に直面した状況では1929年のフーバー大統領の様に自由放任を信じ無為無策で過ごす訳には行きません。そういう意味では今回の施策も「とにかく打てる手を打つ」という点では行った事自体は否定で来ません。
又施策に関しては、実施する前に「予測」をする事は出来ても、幾ら予測しても問題点などを完全に「読み切る」事は出来ないので、実際に施策を行った段階で色々な所に予想外の悪い意味の影響が出て来る可能性が有る事は仕方ないと言えます。
そういう意味では、今回の「土休日高速道路ETC1000円」という施策に関しても「打てる景気対策の一つ」として行われた物で有り、確かに実際に運用して見て上述のような「プラス面・マイナス面」が出て居るのは、残念ながら仕方ない側面も有るのは事実です。
しかし、この施策が行われた事に関して、別の面で問題が有る事も指摘せざる得ないと思います。それは民主党が打ち出して居る「高速道路無料化」政策への対抗策として打ち出された「選挙対策」の側面が有るのでは?と言う点です。
まあ、これは前から言われていた事ですが、確かに状況証拠しか無い物の民主党が「高速道路無料化」を打ち出して居たのが随分前からの事で有り、その後参議院選挙での大敗・政権与党の自民党の支持率の低下・迫り来る逆風下での衆議院議員選挙等の厳しい状況下で、「何とか民主党の政策に一泡吹かせる政策を政権与党の立場を生かして先に実現させたい」という自民党の下心が、2回の経済対策で五月雨式に「高速道路料金優遇施策」を打たせる事になり、その最後に「土休日高速道路ETC1000円」が有ったのでは?と言う「勘ぐり」になります。
今回の場合、この政策の視点が「民主党の高速道路無料化」政策への対抗策と言う視点しか無かったからこそ、「高速道路の料金値下げ、しかも普通の人(=有権者)が利用する自家用車の値下げにインパクトが必要」と言う点が前面に出てしまい、簡単に予想できた「他の交通機関への影響への対応」等「きめ細かい政策的フォロー」が出来なかったと思います。
正しく政策が実施され時間が経って、「経済対策では有るが実体は選挙対策が主眼でビジョンが無いバラマキ」と言う裏の側面が、炙り出されてしまったのでは?と感じます。
まして問題は此れだけでは収まりません。既に8月30日には衆議院議員選挙が確定しております。この選挙の結果は流石に未だ分かりませんが、今の情勢を見れば民主党を中心とした政権が樹立される確率は高いと見る事が出来ます。そうなると如何なるか?民主党の主張で有る「高速道路無料化」が実現に向けて動き出す事になります。
しかし民主党の「高速道路無料化」が実現した場合、確かに色々なメリットも期待出来る事は間違い有りません。しかし同時に今回発生した問題がより大きくなって発生する可能性が高くなります。その対策を果たして本当に考えて居るのか?と考えると、私は正直言って危惧を抱きます。
民主党の「高速道路無料化」政策は、経済評論家山崎養世氏の「
日本列島快走論
」の影響を受けて居ると言われて居ますが、日本列島快走論を見ても民主党の高速道路政策大綱を見ても、今発生して居る「土休日高速道路ETC1000円」による弊害の詳細の解決策が提示されて居ません。このまま行ったら今の状況の拡大再生産になり、一部の高速道路には車が集中し大混雑になり、公共交通機関からは客が離れ破綻する可能性も高まる事になります。そうなったら一体どんな状況になってしまうのでしょうか?
この様に考えると、結局の所は「土休日高速道路ETC1000円」も「高速道路無料化」も有権者に耳障りの良い話で、結局は「日本の総合的交通体系を如何造り上げるか?」という視点に立った政策では無く、「有権者に金を撒く」バラマキ政策に過ぎない可能性が高いのでは?と感じます。
しかも福田内閣時の「高速道路値下げ」の財源は道路特定財源ですが、麻生内閣での「土休日高速道路ETC1000円」の財源は財政投融資特別会計運用益積立金のうち金利変動準備金の準備率の上限を超える金額の一般財源参入で、民主党の高速道路無料化の財源は保有機構債務の国債化と一般会計からの返済という様に、土休日高速道路ETC1000円と高速道路無料化の財源は実質的に「車も使わない人も負担をする」に等しい埋蔵金と一般財源の投入で有り、「国民の血税を使い高速道路交通だけが優遇される」状況が加速する事になります。
この様に「道路交通」だけが財政的に優遇を受ける中で、その他の鉄道・船舶・航空等の公共交通は「インフラに関して自己の投資や費用負担が発生して居る」という極めて不平等な状況が現出される事になり、日本の公共交通体系に取って極めてアンバランスな体系を作り出してしまう事になります。
確かに「高速道路無料化」は耳障りの良い政策に聞えますが、それが今のまま「土休日高速道路ETC1000円」のデメリット面が考察されずそのフォローがされずに実施されたら、全体で見れば日本の(特に地方の)公共交通体系に「破滅的な破壊」をもたらす可能性が有ります。
選挙前であれば、その様な「政策の問題点」に触れる事は心情的に難しい点も有るのでしょう。しかし今のままでは与党の「土休日高速道路ETC1000円」政策も民主党の「高速道路無料化」も、その政策がもたらすデメリットを検証されずに、衆議院議員選挙という名の「国民の審判」を受ける事になります。
その選挙により、「今の政策orそれより過激な政策」が選挙の審判を受けてしまい正当化されて今のまま進んでしまったら一体日本の公共交通体系は如何なってしまうのでしょうか?その点を本来は政策効果を分析してから国民の審判を受けるべきなのにその部分が完全に欠落して「政策」のみが一人歩きしてしまって居ます。
私はその点に非常に危惧しています。本来は話題が極めて政治的な話なので書く事に躊躇いも感じましたが、今回の衆議院議員選挙は「政権選択の選挙」で有りながら、今のままでは自民党・民主党どちらを選んでも日本の公共交通の面で見れば、将来的に極めて大きな悪影響を与える可能性が高いと言わざる得ません。
そういう思いから、今回「土休日高速道路ETC1000円」の私なりの「中間総括」を書きました。願うべくは今の「問題を抱えた状況」を解決する施策が打ち出されて、真に国民全体に等しく利益をもたらす道路・鉄道・海運・航空全体をバランス良く組みこんだ交通体系を作り出す政策が出来る事だと思います。その日が来る事を願わざる得ません。
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