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知事が首を差し出して完成させた「最後の地方空港」の将来は如何に ?

−6月4日開港の「富士山静岡空港」訪問記&感想記−



TAKA  2009年 07月 06日



富士山静岡空港 「開港」その物は祝いたいが、将来を考えると・・・


※本記事は「 TAKAの交通論の部屋 」「 交通総合フォーラム 」のシェアコンテンツとさせて頂きます。


 ☆ ま え が き

 今政治の世界では、「任期満了を目前にして、何時麻生総理が衆議院を解散するか?」と言う事に注目が集まって居ますが、その10月迄には必ず行われる衆議院議員選挙の前哨戦の一つとして注目を集めて居るのが、7月5日の静岡県知事選挙と12日の東京都議会議員選挙です。その2つの選挙ですが、東京都議会議員選挙は「議員の任期に従った選挙」で「予定されていた選挙」ですが、静岡県知事選挙は予定されて居なかった「不意の選挙」で有ると言えます。
 では何故「不意の選挙」が行われる事になったのか?それは「静岡空港の立ち木問題(空港開業に際して、空港反対派が所有する航空法の高さ制限を超える立ち木が有り、その伐採及び空港の滑走路を短縮して暫定開業をした問題)」解決の為に、 石川嘉延静岡県知事 が反対派の立ち木所有者の求めに応じて、今年3月に辞意を表明し伐採が完了して暫定解消に目処を付けた 5月19日に辞表を提出 した事を受けて行われた選挙で有った為に「不意の選挙」で有ると言えます。

 この知事辞職の直接的原因となった「立ち木問題」の経緯は、テレビ東京で5月28日に放送された「ルビコンの決断 知事はなぜ辞任するのか!?〜静岡空港 250日の攻防〜 」で詳しく放送され、私も此れを見て問題の詳細を知り、今回の題名に敢えて「知事が首を差し出して」と言う一言を付けました。
 私自身、丁度4年前の2005年に建設中の静岡空港を訪問して、交通総合フォーラムに「 静岡空港建設予定地を訪問して 」という一文を書いており、その時にも「反対運動の存在」については少々触れて居ますが、反対運動の展開が「まさかこんな展開になって居たとは!?」というのが私の偽らざる心境です。

 しかしながら、「最後の地方空港」と言われる富士山静岡空港ですが、必ずしも「反対運動に起因する暗い話題」だけでは有りません。富士山静岡空港開港に伴い、地元静岡県清水に本拠を構える地元の大企業「 鈴与グループ 」が、航空事業に参入して「フジドリームエアラインズ」を設立し静岡空港を本拠地として路線展開をするなど新しい動きも有ります。
 又「フジドリームエアラインズ」も「富士山静岡空港」もそうですが、静岡・浜松という2つの政令市に挟まれ周辺人口も多く、スズキ・ヤマハ・ヤマハ発動機etc世界に冠たる上場製造企業が本拠地を置き、人口・産業集積的にも「非常に恵まれた環境」に有りながら、東名間に有るが故に「東に羽田・成田が有り、西にセントレアが有る」と言う挟み撃ち状態の中で、「如何にして空港・航空事業を成り立たせるのか?」と言う点では非常に重い課題を背負った空港で有るといえます。

 今回前述のテレビ放送を見て「立ち木問題の深刻さ」を知った上で、しかも「地元の名企業」が地元の新空港を本拠地に航空事業に参入し、しかも過去に見た事有るプロジェクトが問題をクリアしての竣工と言う事で私も非常に関心が有り、しかも4年前と同じく丁度静岡県の端の熱海で午前中用事(4年前と同じホテルの改修工事)が有り午後フリーになる状況になる事が出来て、「静鉄を訪問するか?遠鉄を訪問するか?」チョット迷いながら、「近々に来れるとは限らないから、やはり此処は午後の限られた時間でも静岡空港訪問かな?」と思い、出来上がったばかりの静岡空港を訪問して来ました。

「 富 士 山 静 岡 空 港 の 概 要 」

☆ 施 設 概 要
○敷地面積:約190ha ○運用時間:午前8時〜午後8時 ○滑走路:2500m*60m 1本(9月までは暫定2200mで運用) ○総工費:約1900億円 

☆ 運 行 会 社 ・ 就 航 路 線
○日本航空(JAL):福岡線⇒1日3往復・新千歳線⇒1日1往復 ○全日空(ANA):那覇線⇒1日1往復・新千歳線⇒1日1往復 
○フジドリームエアライン(FDA):小松線⇒1日2往復・熊本線⇒1日1往復・鹿児島線⇒1日1往復 ※FDAは7月23日より就航開始の予定 
○大韓航空:ソウル(仁川)線⇒1日1往復 ○アシアナ航空:ソウル(仁川)線⇒1日1往復 ○中国東方航空:上海(浦東)線⇒週4往復(日・月・水・金)

☆富士山静岡空港開港までの流れ(島田市HPより抜粋改稿)
○1987年⇒空港建設予定地を現在地に決定 ○1991年⇒第6次空港整備5ヵ年計画に予定事業地して組み入れ ○1993年⇒運輸大臣に「飛行場設置許可」申請(96年認可) 
○1998年⇒本体工事着手 ○2003年⇒空港運営会社の中核企業3社決定 ○2006年⇒空港の愛称が現在の名前に決定 
○2008年⇒3月に用地取得完了・7月にANAが8月にアシアナ航空が10月にJALが就航を表明 
○2008年⇒7月にFDA事業計画を公表し就航を表明・10月に「立ち木問題の依る暫定運用」と2009年3月の開港を4ヶ月延期 
○2009年⇒3月滑走路に支障の立ち木伐採の交換条件として石川知事が辞意を表明・5月19日辞職・6月4日富士山静岡空港開港 

※ 参 考 書 籍 ・ 参 考 H P
☆ 参考書籍 : 月刊エアライン2009年8月号
☆ 参考HP : ・ 富士山静岡空港HP  ・ 富士山静岡空港株式会社HP  ・ 静岡県空港部HP  ・ 島田市空港振興課HP
        ・ 富士山静岡空港利用促進協議会HP  ・ フジドリームエアラインズHP  ・ 難産のすえに開港の静岡空港 早くも不測事態の前途多難 (6月19日:ダイヤモンドオンライン)
        ・ 静岡空港建設予定地を訪問して (交通総合フォーラム) ・ 空港はいらない静岡県民の会HP  ・ 静岡空港 (wikipedia)



 ☆ 最後の地方空港?「富士山静岡空港」の概要 (7月4日現地訪問)

 さて、その富士山静岡空港の概要ですが、7月4日午後3時〜6時の3時間程現地を訪問する事が出来たので、その限られた時間の中で「駆け足」ですが空港を有る程度見て来ました。
 前回は「熱海から一般道で沼津⇒東名高速で吉田ICへ⇒一般道で空港(予定地)へ」というルートでアクセスしましたが、今回も同じルートで富士山静岡空港へ向かいました。アクセス道路に関しては空港構内以外は殆ど変化が有りません。この4年間で「隘路部分の改修」等は進んで居ますが、島田市内で「これから建設するの?」と言う様なバイパス予定地が有るなど、アクセス道路に関しては「未だ此れから」と言う点も有るのかも知れません。
 東名高速吉田ICから、普通に走って大体10〜15分で有る事を考えるとアクセスは決して「良い」と胸を張る事は出来ません。しかも東から来た場合は吉田ICからだと、東名高速の「牧の原の急坂&急カーブ」を通過しない良い変わりに「空港を廻り込む」感じで少々遠回りです。
 将来は第二東名が2012年度には暫定開業して金谷ICが出来ます。ここが出来ると国道473号線を使ってアクセス出来ますが、国道473号線は南側はバイパスが有るが北側はバイパスが有りません。車での静岡空港へのアクセスを考えるならば、第二東名金谷ICまで国道473号バイパスを延伸して広域アクセスの改善を図る必要が有るかも知れません。

富士山静岡空港の全景

 吉田ICから空港へ向かう途中のアクセス道路から、空港が有る程度広い視野で見る事が出来る場所が有り、其処から空港全体を見渡して1枚写真を撮って見ました。
 当然空港ですから、離着陸に支障が無いように滑走路には支障物が無く「広く平らな空間」が広がって居ます。まあ空港自体が標高132mの高台に190haの土地を造ったのですから、4年前には「完了間際」の状況を見ましたが大規模な造成工事が行われえ居たのは容易に想像出来ます。
 又滑走路の正面方向から撮った写真で右端に滑走路が写っていますが、それにしても余りに物が有りません。実際編集上カットした写真の左側にも草原しか写って居ません。普通は滑走路の延長上には進入灯等の誘導機器が有る筈ですが、其れが写真には写って居ません。何故なのか?それは「立ち木問題」による暫定開業で、南側が標準式の進入灯になって居るのに対して北側は簡易式の進入灯になっています。
 実際この「進入灯」だけで無く、ILS(着陸誘導装置)も暫定開業中は未使用で、開業後に 悪天候で運休・ダイバードが発生 するなど、色々な困難に直面しています 。8月27日には2500m滑走路・ILSの完全運用開始 が決まっては居ますが、其れまでは今しばらく「天候を気にしながらの運行」が続きそうです。

空港の外部施設 左:空港ターミナルビル 中:約2000台の乗客用駐車場 右:展望広場

 空港のターミナルビルは「普通の地方空港」というレベルの建物です。しかし空港の周囲にはターミナルビルと空港関連の施設しか建物は有りません。一番大きいのは「約2000台収容」という駐車場です。この空港は駅から遠いのでバス・車でのアクセスがメインになりますが、バスが必ずしも便利とは言え無い(静岡・浜松・島田共に出発・到着便に合わせてしか無い)ので、この駐車場と隣接のセルフGSは静岡空港へのアクセスの為に非常に重要な施設と言えます。
 又訪問したのが「開業から未だ間もない土曜日」と言う事も有り、数多くの「空港見学客」で賑わって居ました。特に新しいFDAのエンブラエル170が停まっていた場所の近くの展望広場は多くの子供連れの人達が飛行機を見に来て居ました。空港見学客はマニアでは無く「如何にも地元の人」と言う人達なので、そこから静岡空港への関心は高そうに見えます。
 しかし、静岡空港には空港関連の施設以外は殆ど見当たりません。この状況では暫くすれば、空港利用客以外は全く空港に来なくなるでしょう。静岡空港の立地は「完全な田舎」という訳では無いので、活性化の成功例と言われる 能登空港 の様に「空港ビルと行政機関が合築され、道の駅に登録して観光情報拠点となり、空港アクセスにバス路線を集め交通拠点とし、日本航空学園輪島校を誘致し航空学校の学生も招く」様な、積極的に空港に人を集める施策を取らないと、開業人気が一巡した後に「空港は利用者しか来ない暗い街」になる危険が有ります。此れは将来的には憂慮すべき事項になるのでは?と思います。

空港ターミナルビル内部の施設 左:チェックインカウンター 中:お土産物中心の2階売店 右:展望デッキ

 空港の内部に入って見ると、1階にチェックインカウンター・コンビニ・到着客出口が有り、2階に出発客の保安検査スペース・土産物主体の売店・静岡県のPRゾーン「スカイフォレスト」が有り、3階に展望スペース・フードコートが有る構造になっています。
 1階のチェックインカウンターは、左側が国内線会社(JAL・ANA・FDA)のチェックインカウンターで右側が国際線会社(大韓・アシアナ・中国東方)のチェックインカウンターとなっています。訪問した日は午後に行ったので2本のソウル便が午前中に出た後だったので国際線のチェックインカウンターは閉まって居ましたが、この規模の空港で国内線と国際線のチェックインカウンターの大きさが変わらないと言うのも驚きですし、開業当初の地方空港でソウル便が1日2便もある(福岡に次ぐ本数・新千歳並み)と言うのも驚きです。まあこの辺りは「地域的には国際線需要が有りながら成田とセントレアに挟まれた空港」と言う立場から「ソウル(仁川)線を増やして、仁川をハブ空港として使い国際線客を取り込もう」という、静岡空港の「苦しい?」考え方が見えてきます。
 2階の売店・3階のフードコート共に、福岡・新千歳便に乗る団体観光客の姿(如何にも大きな荷物を持って居る)がチラホラ居る中で、客の大部分は「地元の見学客」です。今の土日は「見学客ブーム」で良いですが、そのブームの去った後ビジネス的に如何なるか?心配です。
 静岡空港自体は、「必要な物が揃ったコンパクトなターミナルビル」であり、空港利用客が使う施設と考えれば「それなりに完成して居る」と評価出来ます。しかし今は見学客で賑わいが出て居ますが、その「ブーム」が去った後、今後これらの施設が一体如何なるのか?、普通の他の地方空港よりマシとは言えますが12往復24便の航空機の利用客しか利用しない「閑古鳥の鳴くターミナルビル」になるのか?、航空利用客以外に「集客の仕掛けが無い」現状においてはチョット危険な気がします。「セントレア」まで行かなくても、何か普通の地元の人が集まる商業施設でも誘致して「地域の核として空港に人の集まる仕掛け」を作っておいても良かったのかな?とは改めて感じました。


 ☆ 「富士山静岡空港」に離発着する航空会社と乗客の利用状況は?(7月4日現地訪問)

 さて、成田・羽田・セントレアが至近に有る地方空港で有りながら、人口約380万人で全国10位の人口と160,689億円の県内総生産(此方も全国10位)で東西両方に静岡・浜松と言う2つの政令市を抱える富士山静岡空港には、「最後発の地方空港」で有りながら、その可能性を感じたのか?国内会社のJAL・ANA以外にも新規参入のFDAと海外航空会社の大韓・アシアナ・中国東方が乗り入れて居ます。
 まあ実際の所、地方空港で乗入会社6社・12往復24便(+週4便の中国東方上海便)・しかもソウル線が2社で1日2本運行と言うのは、東京・名古屋・大阪・福岡以外では有りません。そう見れば富士山静岡空港は、成田・羽田・セントレアに挟まれた空港で有っても其れだけの需要のポテンシャルが有ると航空会社が考えて居る事は状況証拠から見て間違い無いと思います。
 訪問した日は午後から行ったので、午前中〜昼頃の韓国系2社の飛行機は見る事が出来ませんでしたが、夕方発着の那覇発ANA784便・新千歳発JAL2858便・新千歳行ANA781便・福岡行JAL3818便の4便の離発着・出発・到着風景を見る事が出来ました。

那覇14:40⇒静岡16:55 ANA784便 左:到着風景 右:ターミナルに駐機中の状況

 全日空は新千歳⇔静岡で1往復2便・那覇⇔静岡間で1往復2便の合計2往復・4便を運行しています。この路線は「朝に新千歳(9:40)⇒静岡(11:25)で運行された機体が、静岡(11:55)⇒(14:20)那覇(14:40)⇒静岡(16:55)と1往復して夕方静岡(17:30)⇒新千歳(19:00)で戻る」と言うかなりタイトなスケジュールで運行されています。
 ANAの運行機材は、富士山静岡空港に就航して居る国内線の機材の中では真ん中のクラスになるB737-700(120席)で運行されていて、ANAの便名でANAの名前で運行はして居る物の乗員・機材共に系列会社のエアーニッポンが運行しています。
 運行機材・運行形態を見る限り、ANAはかなり慎重に考えて居るのは間違い有りません。確かに他社が興味を示して居る以上「陣地は確保して起きたい」中でリスクは負いたく無いので、今は「低コストの関連会社で最大限効率よく路線設定をして何とかリスクを減らそう」というANAの意図が見え隠れして居る気がします。

新千歳15:10⇒静岡17:05 JAL2858便 左:到着風景 右:ターミナルに駐機中の状況

 日本航空は、静岡空港の建設中の時期から静岡県と密接な関係を築いていて、当初平成17年に両者で「静岡空港の整備・利活用推進に向けて」と言う覚書を交わし、その後07年10月に「 富士山静岡空港の利活用推進に向けての覚書締結について 」と言う覚書を再度交わし、そこで静岡⇔福岡線3往復・静岡⇔新千歳線1往復の運行を表明し、現在ではFDAと並んで静岡空港に一番多く就役する航空会社となっています。
 現在の日本航空グループの静岡空港発着路線は、福岡線3往復の内2往復と新千歳線の1往復⇒JALのMD-90(150席)で運行されていて、昼の福岡便1往復がジェイ・エアのエンブラエルE170(76席)で運行して居ます。只日本航空の方が全日空みたいに「効率最優先のダイヤ」では無く、新千歳線はANAの裏返しの「朝:静岡→新千歳・夕:新千歳→静岡」と言うダイヤが組まれ、福岡線は朝夕に1往復と昼に1往復という様にバランスを取ったダイヤが組まれて居るなど、利用し易さには配慮されたダイヤと言えます。
 しかし、日本航空の福岡線は『開港後数日の搭乗率が新千歳・那覇・ソウル線が80〜90%と言う高い数値を打ち出しているが、新幹線と競合する福岡線は平均70%を下回っており』(エアライン8月号記事より)と言う状況で有り、福岡線には静岡県とJALの間の「搭乗率保証」の覚書が有るためこの路線はかなり厳しい状況に陥って居る可能性は高いと言えます。日本航空自体は福岡線に「搭乗率保証」という保険を掛けて居る以上撤退はしないでしょうが、逆に静岡県に取って「今後常時補償金を払う金を垂れ流す」お荷物路線となる可能性が高いと言えます。

富士山静岡空港を本拠地とする「フジドリームエアラインズ」(FDA) 左:1号機 右:2号機

 さて、今の静岡空港見学の目玉は、富士山静岡空港を本拠地として運行開始準備を進めていて、6月4日の富士山静岡空港開業には間に合わなかった物の7月23日運行開始を目指して誠意準備中のフジドリームエアラインです。この会社は静岡空港から小松(2往復)・熊本・鹿児島へ路線運行を予定していますが、その為の機材である2機のエンブラエル170は2月と6月にデリバリーされており、現在その2機が富士山静岡空港に駐機されて居ます。
 フジドリームエアラインは、リージョナルジェットの定番機で有り、日本航空グループも採用したエンブラエル170を採用しています。この飛行機は昔のYS-11とほぼ同じ定員64席で、有る意味「日本のローカル線を運行するには最高の機体」と言える物です。元々「静岡から地方都市へ飛ぶ」と言う事になれば需要は限られて居る事は明白です。その様な「ローカルtoローカル」輸送で必要になるのは「効率的な機材を中心とした高効率オペレーション」です。その中でビジネスを成り立たせる為にFDAは新しい挑戦をする事になると言えます。

 又フジドリームエアラインの特徴は、地元静岡の名門企業鈴与グループが全面的にバックアップして設立した新規航空会社で有る事です。今までの新規航空会社は、市民の草の根的動きから出来た北海道国際航空や新興旅行会社からインターネット会社に筆頭株主が移ったスカイマークなど「拠点地の中核企業が金を出して旗を振った」例は殆ど有りませんでした。しかし今回フジドリームエアラインは静岡中央部では誰でも知って居る地元の大企業鈴与グループが運営して居るという点で、今までと決定的に条件が違います。
 今まで、弊サイトでも スカイマーク路線廃止問題機長退職による運休問題 など「新規参入航空会社の問題」を取り上げて居ますが、今までの新規参入航空会社とフジドリームエアラインズは「地元への経済的根ざし方」で根本的に異なります。今までの会社は就航元に根ざした大企業がスポンサーと言う訳では無いですが、今回は富士山静岡空港の地元静岡の大企業鈴与グループが新規参入しています。鈴与グループは静岡(清水)を地盤に物流業を営んで居る大企業です。その会社が「大旦那」的にスポンサーとして金を出す訳で無く、自らリスクを負い富士山静岡空港を拠点に航空事業に参入したのです。もしフジドリームエアラインが社会的に非難を受けるような事が有れば鈴与グループ自体が大きな傷を負う事になるのです。そういう意味では「大きなリスクを取った」と言えますしその本気度が分かります。鈴与グループ本体の為にフジドリームエアラインは変な事がで来ません。
 そういう意味では日本の航空業界に取って、98年のスカイマークエアラインズの新規参入以来進んで来た「航空市場の開放・新規参入促進」の動きの中で、やっと「真に望ましい新規参入」が実現したといえるかもしれません。そういう意味では今後ともに非常に注目すべき航空会社かな?とは思って居ます。

 左:チェックイン中の状況 中:那覇便・新千歳便の到着状況 右:ANAの新千歳便・JALの福岡便出発時の保安検査場状況

 さてさて・・・、肝心な静岡空港発着便の利用率はどんな物なのでしょうか?。今は未だ開港1ヶ月で航空利用客でも「御祝儀相場」が続いて居る事は間違い無いと思います。実際、静岡県も官が主導の「富士山静岡空港利用促進協議会」と協議会募集の「サポーターズクラブ」等を作り、利用者開拓に努力をして居る状況です。実際富士山静岡空港利用客の貸切バス利用に補助を出したり「教育旅行利用促進事業」等の利用促進策を打ち出したり努力をしています。
 その為か?今回の訪問時に到着便2便(新千歳・那覇)と出発便2便(新千歳・福岡)の利用客の客層を見ていたら、見に行ったのが土曜日と言う事も有るのか、かなりの部分(3分の2以上?)が大きな荷物やお土産の紙袋を持ち普段着で飛行機に乗る観光客でした。又「富士山でも見に来たのか?」福岡線への搭乗客には乗ってきた貸切バスに「種子島高校同窓会」と札を出したバスも有りました。今回見た所ではこれ以外にも貸切バスから降りてきたグループも複数有り、観光系の需要の方が多いのかも知れません。

 まあ前述の様に、静岡空港発着便の搭乗率は「新千歳・那覇・ソウルが80〜90%台」で「福岡が70%以下」で、比較的観光利用の方が多そうな新千歳・那覇線が順調でビジネス向けが多そうな福岡線が不調の様です。実際「搭乗率保証(搭乗率70%以下の場合、下回った分1席15,800円JALに支払う)」を静岡県とJALが取り決めて居ますが、開業当初にも拘らず昼便の搭乗率が悪く、早速JALへのお支払いが発生したとも聞きます。
 又国際線も仁川国際空港のハブ性が高く乗り継ぎ路線として世界に繋がって居るソウル線は好調なのに対して、上海線は「豚インフルエンザの影響(予約キャンセル等)で6月の一部の便を欠航し中部国際空港路線に客を振り向ける」事が行われ、7月以降は「利用率を見ながら運行について検討する」という噂も聞き、ナカナカ苦戦して居るようです。
 実際問題、 ダイヤモンドの記事 に有る様な『開業開港から4日間で約4万6800人が空港ビルに入館したのに対し、搭乗客は約6800人。空港に詰めかけたのは見物客がほとんどで、本来のにぎわいとは異なる。』と言うのは、「其れは当然でしょう。賑わいの大部分が見学客なのは仕方ない。粗探しだ。」と言えますが、『開港後4日間の定期便とチャーター便の平均搭乗率は76.3%』と言うのは、御祝儀相場が有った時期で有ると考えると非常に厳しいです。6月4日の新千歳・福岡行きも観光客が多くても「見た感じ両便で200名を切る位の乗客かな?」と言う感じでした。この様な利用率を見ると、富士山静岡空港の先行きに暗い物を感じざる得ません。


 ☆ 「最後の地方空港」と言われる「富士山静岡空港」が抱える前途多難な問題とは?

 さて、苦難の末にやっと開業した富士山静岡空港ですが、開業は喜ばしい事ですが残念ながら手放しで喜ぶ事は出来ません。実際の問題として現在の富士山静岡空港は「2つの問題を抱えた上での船出」をしたと言う事が出来ます。
 その問題とは「富士山静岡空港建設時の「県の失敗」がもたらした数多くの傷跡」と、実際問題の「富士山静岡空港の開港後の利用不振」がもたらす空港経営その物の困難さと地元参入企業FDAの経営上の問題」という問題です。これらの問題は静岡空港だけで無く静岡県政全体に大きな傷跡と影響を与えた事は間違い無いと言えます。
 その2つの問題が、今後の富士山静岡空港の運営と静岡県自体にどの様な影響を与えて、其れを解決する為にはどの様に対策を取りリカバリーをすれば良いのでしょうか?。此処で結論に変えて問題の解決と今後富士山静岡空港の発展の為にはどうすれば良いのか?考えて見たいと思います。

 (1) 最後は「知事の首を差し出して」開港させた空港だが・・・。失策がもたらした「ツケ」とは?

 一つ目の問題は、富士山静岡空港開港までに建設主体の静岡県が行った「失策」のもたらした対立と県政の混乱と言う問題です。
 静岡空港は、地元との対立と地元の反対運動の中で「土地収用法」に基く土地収用を行い、最終的に用地を確保して建設を行って居ます。「空港建設と土地収用」に関しては、成田空港建設の時に反対運動が激しかった中で土地収用を行い、結果として過激派が反対派に加わり「成田闘争」という激しい対立となり大きな禍根を残した為、成田空港建設以来日本では「海上空港建設」の数が多くなって居ました。その中で地元で「無駄遣いの空港」という反対が有る中で強行された静岡空港建設でも、やはり反対派が建設地内で土地を所有しており、最終的にこの土地を確保する為に「土地収用」を実施し空港建設を行って居ます。
 これ自体は法的に問題の有る話では有りませんが、この時測量ミスで航空法に抵触する「立ち木」の収用を怠り、しかも所有者に事実を隠し「地滑り防止対策として立ち木の伐採を地権者に求めて、結果として地権者に発覚し大きな抵抗を引き起こした」と言う決定的な「失策の重ね塗り」を行ってしまい、結果として「空港が開業延期」になり、しかも「暫定開業」を迫られ、所有者との交渉の結果責任を取って「知事が辞職する」事にまで発展しています。
 最終的に、この問題が「県政史上例が無い」大きな問題として、県の空港部と建設事務所には「 県監査委員による行政監査 」が入り、又石川静岡県知事も5月19日に辞職し7月5日に(丁度この文を書いて居る時)知事選挙が行われ、新しい知事が選出され、その知事も(此れだけ問題になった話ですから)県職員に対し一定の「ケジメ」を付ける事になる可能性が高く、それで有る程度の「幕引き」になるとは思います。

左:「立ち木問題」に依る滑走路短縮区間を行く全日空機 右:「首を差し出した知事」の後任となる川勝平太氏は「失敗の遺産」を乗り越えられるか?

 しかし空港建設の最終盤の時期に「立ち木問題」の対応に右往左往した「ツケ」は、此れから重く圧し掛かってくる事になります。
 結局、強行突破した挙句に失策で墓穴を掘ると言う「最悪のパターン」になった結果、反対派に「大きな正当性」を与えた事になりますし、成田闘争の様に「将来への禍根」が現在現地に残って居る訳では有りませんが、空港に対して「白けムード」と「無関心」を加速させてしまった様に私は感じます。
 加えて、空港の利用促進に一番重要な「開港直前の時期」を「立ち木問題解決の為」に費やしてしまった為に、富士山静岡空港の利用促進に向けて「官民一体の利用促進策」を広げる事が出来ず、結果として(豚インフルエンザ問題や不況が有ったと言えども)「開業当初のチャーター便によるツアー」ですらチャーター便が満席にならず、「開港後4日間の定期便とチャーター便の平均搭乗率は76.3%」という燦々たる状況になってしまって居ます。

 開業後4日間の状況がこの様な感じですから、これから「開業後の御祝儀相場」が去った後は一体如何なるのか?正直言って「怖い物」を感じます。しかも富士山静岡空港は「国内線需要予測が108万人/年に対して国内線全便乗っても約68万人/年」で「現状では搭乗率100%でも赤字」の状況です。空港は社会インフラですから「赤字でもやらなければならない」事も有りますが、(幾ら比較的健全と言われる静岡県の財政と言えども)貴重な県民の税金を投入して居る以上、赤字は減らす努力をしなければなりません。しかしその道乗りは現状を考えると「非常に厳しい物が有る」といえます。
 (この原稿を執筆中の)5日の知事選挙で選出された、次期静岡県知事の川勝平太氏は前知事時代の「失政のツケ」を是正して戦略を建て直し、「出来た富士山静岡空港を如何にして活用し運行本数と利用客を増やして行くか?」と言う難題に取り組まなければならなくなります。

 (2) 場当たり的な「航空会社対策」の結末は果たして如何なるか?

 もう一つは「富士山静岡空港に就航する航空会社との関係」という問題が有ります。
 現在、富士山静岡空港には、JAL・ANA・FDA・大韓・アシアナ・中国東方の6社が就航しています。その内JAL・ANA・FDAは空港建設主体の静岡県から「特別な補助」を受けて居ます。それはJALは「 富士山静岡空港の利活用推進に向けての覚書 」に基く福岡線での70%搭乗保証を受けて居ますし、ANAは「JALの補助は不公正だ」と主張して結局那覇線の着陸料を減免してもらって居ますし、地元企業のFDAは「 国の「ふるさと融資制度」を活用した機材購入に対する無利子融資 」を行って居ます。
 加えて、静岡県はそれらの財源として「2008年度から運航に対する支援、補助のために6000万円の予算を計上」して対応して居ますが、その静岡県の航空路線補助政策は「焦点が絞られておらず総花的」でしかも「地元企業への配慮が乏しい」と言わざる得ません。

左:本来は「空港の本命」の筈のFDAだが、美味しい路線は大手に取られてしまった? 右:県の無策で「3社で熾烈な生残り競争」と言う事になるのか?

 実際の所、静岡県は2005年(平成17年)に日本航空(JAL)との間で「静岡空港の整備・利活用推進に向けて」という覚書を交わして、富士山静岡空港の航空路線就航に関して日本航空と全面的に協力する事をその時に決めて居ます。しかしその後、2007年10月に日本航空と再度「富士山静岡空港の利活用推進に向けての覚書」を交わして新千歳・福岡線に就航する事を決めて居ますが、その直前の2007年7月に静岡県の大企業鈴与グループが「静岡空港を拠点とするリージョナル航空の事業化に単独で取り組む方針」を決めて富士山静岡空港を拠点とした航空事業への参入へ向けて動き出します。
 鈴与グループの航空事業参入と静岡県と日本航空との覚書の再締結の間に3ヶ月の時間差しか無いため、「その3ヶ月間で前の覚書を白紙化して地元の鈴与グループの航空事業を富士山静岡空港の中心に据える」事は難しかったかもしれません。しかし地元の大企業が行おうとしていた「県が建設して居る施設使用を前提とした新事業の存在に気が付かなかった」と言うのも可笑しな話です。静岡県の空港関係者がそれに気が付かなかった(or気が付いても対応しなかった)事が、大きな禍根を生む事になります。
 それは、2008年6月に鈴与グループがフジドリームエアラインを設立し、自己で「株式の含み益」を投入して富士山静岡空港を拠点とした航空事業に参入した時には、只ですら「羽田・関空・伊丹・セントレア」等の大都市空港への路線展開が困難な富士山静岡空港における数少ない優良路線となるべき新千歳・福岡・那覇線に2007年7月に全日空が2007年10月に日本航空が就航を表明してしまい、地元企業のFDAには「ローカルtoローカル」の小松・熊本・鹿児島などの路線しか残らなくなり、FDAは船出から「ローカルtoローカルの路線主体」という厳しい状況に追い込まれて居ます。

 確かに、鈴与グループの「2007年〜2008年の出遅れ」と言う状況は、幾ら「地元優先」を県が志向しようとしても其れへの大きなハンデとなった可能性は否定出来ません。しかし過去を振り帰って愚痴を言っても仕方ないですが、「もう少し何とか施策を出来なかったのか?」と言うのが偽らざる心境です。
 実際鈴与グループは、静岡県に税金を落とす地元企業でその雇用も大きな物が有ります。この会社を中核に据えて路線展開を行い其処に集中的に税金を投入する事は、「収益が上がれば税金として県に返って来る」という点でも効果が有りますし、地元の大企業を補助で積極的に取り込む事で利用促進に対しても大きなプラスになった可能性も有ります。
 そのチャンスを逃して、総花的な航空会社対策を取る事で「全てが中途半端になり結局支出と損失が最大化した」という可能性は否定で来ません。実際JALの福岡線は就航当初から「搭乗率保証」で税金投入がされて居ますし、FDAも「ローカルtoローカル」路線で苦戦する事が想像出来ます。この様な厳しい状況の中で、如何なる次の手を打ち富士山静岡空港とその就航路線の活性化を「最低限の税金投入」で果すか?静岡県には重い課題への解結策が求められて居ると言えます。

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 今回、富士山静岡空港の現地を訪問して、その状況を見て来ましたが、確かに今は空港に「賑わい」が有ります。しかし此れが「開業御祝儀と開業関心景気」で有る事は間違い無く、既にその相場の時期から「搭乗率が振るわない」と言う極めて厳しい状況に追いこまれています。
 この要因に付いて考えれば考える程、富士山静岡空港建設の途中から繰り返されてきた「静岡県の失策」という問題の大きさを考えさせられました。テレビ東京の「ルビコンの決断」で放送された「立ち木問題と知事の辞職」はその問題の「ごく一部」に過ぎません。今回述べた様に、其れ以外にも「路線展開と就航航空会社への補助政策」でも、「戦略的に地元の会社と空港を活性化させる」施策を積極的に考える事が無く、前例を踏襲して一般的で無難な政策を行う姿勢に終始していたのでは?と感じるのは私だけでしょうか?
 確かに、富士山静岡空港は、他の地方空港から見れば「地元の大企業が航空会社を作って拠点にしてくれた」「幹線と足り得る路線が無いのに12往復24便+αも就航してくれた」という恵まれた状況に有るのは間違い有りません。しかし特に国内路線への政策に関して地元重視と一環性を感じられず、「場当たり的な対応で最悪の結果が迫って居る」う感じがします。

 本当は「公務員だからダメだ」的な世間に良く有るステレオタイプの話を、私はしたく有りません。実際今まで講演を聞いた交通系の公務員の方々で「流石だ・素晴らしい」「こんな人に政策を立案して欲しい」と感じる方も沢山いらっしゃいます。
 しかし、今回静岡県の空港関連の公務員の人々に対しては、色々な所で取り上げられて居る「立ち木問題」に対する対応にしても、空港関連に対して取られた施策を状況から類推しても、その様な「素晴らしさ」を感じるのでは無く「一体何を考えて行動して居るのか?」「無為無策・前例踏襲が好ましいのでは無いのだ」と言いたくなります。
 有る意味富士山静岡空港を取り巻く問題の中で一番深刻なのは、「静岡県の空港関連の公務員の質」では無いかと感じます。今のままでは富士山静岡空港は「チャンスとポテンシャルを活かせず策を持たない公務員と心中」という事になりかねません。その危惧を感じるのは私だけでしょうか?
 この様な「負の遺産」となりつつ有る富士山静岡空港の状況を打破する事が出来るのは、立場的にも今回の知事選挙で新しい知事に就任が決まった川勝平太氏しか居ないのが実状でしょう。空港が開業してこの選挙が終わると、静岡県民の中には「富士山静岡空港を取り巻く厳しい状況とその問題」は「過去の問題」となってしまうかも知れません。
 しかし「富士山静岡空港の危機」は此れから深刻化するのです。その事を川勝新知事と静岡県の職員と静岡県民は深刻に考えて本腰を据えなければならないと言えます。先ずはその事を深く認識して「危機に備える対策」を考えなければならないと言えるのでは無いでしょうか?




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