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JR三島会社の「隠れた事業」に光を当てよう!

−JR北海道・JR四国が東京に出店した飲食店を訪ねて−



TAKA  2007年04月15日


 今年はJRが誕生してから20年の記念の年です。旧国鉄の財政的破綻・経営の崩壊を打破する為に「国有鉄道の分割民営化」と言うこの当時世界でも類を見ない斬新な改革の成果として登場したJR各社ですが、発足当時は特に北海道・四国・九州の三島会社は先行きを危ぶまれながら現在各社とも企業規模・経営状況・成長の度合い等に差が有りながらも、地域の公共交通を担う企業として立派にその役割を果たして居ます。
 その中で旧国鉄時代と一番変わった事と言えば、旧国鉄時代には 日本国有鉄道法第三条 で「鉄道事業及びその付帯事業」と限定されている事業範囲の制約が分割民営化で解除され、普通民営鉄道並みに他の事業を営む事が出来るようになった点です。その結果JR各社で多種多様な事業を営む本島3社・地域に根ざす関連事業を営む三島会社等差は出てきている物の、大手民鉄各社に近いレベルの関連事業が直営・子会社等で行われる様になりました。

 今回はそのJR各社の関連事業のうち、特に地方で厳しい経営状況に置かれながら地域の公共交通を維持する為に頑張って居るJR北海道・JR四国の関連事業を取り上げます。
 鉄道事業者の副業と言えば、バスやタクシー等の自動車輸送・百貨店やスーパー等の物販業・レストラン等の飲食業がメジャーですが、その内「地域の個性」が一番出るのが飲食業です。今東京では地方の色々な食べ物のブームが起きています。その内「北海道のジンギスカン・香川の讃岐うどん」は東京での地方の食べ物ブームの大御所と言える物となっています。
 その東京での「ジンギスカン・讃岐うどんブーム」に乗り遅れまいと、JR北海道はジンギスカン店・JR四国は讃岐うどんの店を東京に出店しています。これらは東京ではなかなか感じることが出来ない「JR北海道・JR四国の風」を感じる事のできる数少ない場所で有ると言えます。
 今回は「交通論」からちょっと外れる事は承知の上ですが、グルメ好きの私の趣味も兼ねてJR北海道・JR四国が行っている「地元名産の飲食店」を訪問して見ることにしました。


 ☆ JR北海道の東京の橋頭堡?「 成吉思汗(ジンギスカン)ひつじぐも 吉祥寺店」

 先ずはJR北海道が東京の吉祥寺に開業した「成吉思汗(ジンギスカン)ひつじぐも」に寄って見ました。吉祥寺自体は東京23区西側に住んでいる私に取り馴染みの有る繁華街でラーメン屋や沖縄料理店等良く行く店が有る街でしたが、恥ずかしながらJR北海道ジンギスカンの店が吉祥寺に有るとは知りませんでした。
 しかしジンギスカン自体は前回 北海道訪問時 にその美味しさを教えられ虜になってしまい、その後東京で美味いジンギスカンの店を探していたのですがなかなか見つからず段々ジンギスカンから遠のいていたのですが、先日「吉祥寺にJR北海道経営のジンギスカン屋が有る」と友人に教わり早速久しぶりのジンギスカンを楽しむ為に訪問し、実際に食べて見てジンギスカンの味が非常に良く美味しく気に入り今回取り上げて見る事にしました。
 店の場所はJR吉祥寺駅の南側にあり駅から徒歩5分ぐらいです。吉祥寺自体は「中央線有数の繁華街」で武蔵野の中心地と言う規模の街で若者の街として知られていますが、やはり都心や山手線沿線の繁華街に比べると集客力で落ちる感じです。「ひつじぐも」はその吉祥寺でも賑やかさで一歩落ちる南口の外れに近い場所にありしかも建物の地下1階に有り店自体は分かり辛い場所に有ります。
 多分この場所であれば店の敷金・礼金・家賃等も抑えられ出店に伴うリスクも最低に抑える事が出来たでしょう。リスクと言う側面で見ればこの立地の選択は正しかったと思います。けれども折角「東京進出の第一歩」として出店したのですから、「宣伝効果」と言う点からリスクを負ってももう少し目立つ場所に出店しても良かったと感じます。

  
左:ひつじぐも吉祥寺店 中:アイスランド産羊肉ジンギスカン 右:北海道美瑛産羊肉ジンギスカン

 店に入るとカウンターで10席位とテーブル席で12席位有り、店の広さはそんなに広くない感じがします。只ジンギスカンですから混雑して賑やかな雰囲気と言うイメージが有りますが、私みたいに「一人で行った時位シッポリ飲食したい」と言う人間にしてみると、これ位の規模で一人で座れるカウンターが有る店舗の方が助かります。
 此の頃「ひつじぐも」には何回か出没していますが、大概の場合ビール+味付きラム&アイスランド産ラム(野菜付)でジンギスカンを摘まみにしてゆっくり食べた後、「お店お勧め」の美瑛産ラムとラムソーセージを焼きながらライスを食べて〆ると言うのが一般的な流れになっています。只この量は「大食漢」の私だから食べる量で普通の人ならライス無しで肉2皿+野菜位が適量でしょう。
 このお店の売りはちょっと値段は張りますが美瑛産羊肉や野菜等の北海道産の食材です。美瑛産羊肉は脂も載っており羊特有の臭み等も感じず非常に美味しいですし食べやすいです。又野菜でも特に玉ねぎは美味しく、普通の玉ねぎは良く火を通さないと「涙が出る」刺激を感じますが、此処の玉ねぎは生で食べても刺激が無く美味しく食べる事が出来ます。これらの北海道産の美味しい食材は東京ではなかなか食べれません。
 少なくとも今ジンギズカンがブームの東京では色々なジンギスカンの店が登場していますが、やはり北海道の美味しい食材を東京に運んで店で出してくれると言うのは「北海道に交通事業で根を張るJR北海道」が運営するメリットで有ると言えます。この様な北海道の名品を東京で売ることが出来るというのは地域にとっても活性化に繋がる事であり、それでJR北海道も収益を上げる事が出来るのであれば色々な意味で効果が有ると言えます。ですから「北海道産品のアンテナ店」としてどんどん北海道の食材を紹介して繁盛してもらい2号店・3号店と展開して欲しい物です。
 只店で「北海道」を感じる物が少なく感じるので、折角JR北海道直営の店なのでもう少し「北海道」を前面に出しても良いのではと感じます。それに付帯して是非生ビールは北海道限定ですが「 サッポロクラシック 」にして欲しい物です。ジンギスカンにサッポロクラシックとなれば正しく「北海道・札幌の味」と言う感じなのですが・・・。其処だけは惜しいと言えます。


 ☆ 讃岐うどんブームに乗り東京進出?「 めりけんや大泉学園駅店

 続いてはJR四国の関連会社である「 めりけんや 」が経営する讃岐うどん店「めりけんや大泉学園店」です。
 「めりけんや」はJR四国の子会社で、讃岐うどんの製造販売・うどん店経営・「さぬきうどん職人」フランチャイズチェーン事業を営んでおり、東京ではJR東日本グループの NRE (日本レストランエンタープライズ)がJR東日本駅構内でフランチャイズ展開をしていますが、めりけんやの直営店舗として運営されている店舗は関東では西武池袋線大泉学園駅コンコースに有る「めりけんや大泉学園店」が唯一になります。
 大泉学園は丁度「ひつじぐも」の有る吉祥寺と私の家との間の複数のルートの内の一つ西武バス吉61系統〜西武池袋線と言うルートの乗換点に位置しており、「めりけんや大泉学園店」が有る大泉学園駅橋上駅舎コンコースは丁度そのバス〜鉄道の乗換経路上に位置しており、約80,000人/日の人が通る場所で立地としてはかなり良い所に立っています。

  
左:めりけんや大泉学園駅店 中:同店 店内 右:釜玉うどん&イカ天&たまご天

 今回正月の 讃岐訪問 時に讃岐うどんを食べましたが、今や東京でも色々な讃岐うどん店が出店しており讃岐うどん特有のうどんメニューやセルフサービス的な注文の仕方等は珍しくはなくなってきました。しかし未だ「蕎麦文化」がドンと居座っている関東の鉄道駅に出店したからか店頭には「うどん」の暖簾と並んで「そば」の旗が立っています。メニューを見る限り「蕎麦」は見当たらなかったので何故「そば」の旗が立っていたのかは不思議ですが、やはり関東で駅でのファーストフード的食べ方で「うどん」を普及させるのは時間が掛かるのかもしれません。
 取りあえず中に入りジンギスカンを食べた後にも関わらず、讃岐うどん店で何時も頼む「かま玉うどん」を頼みます。只讃岐うどんの店では数多いトッピングをセルフサービスで取る事が出来るのでついつい多く取ってしまい、この時もイカ天とたまご天を取ってしまいます。商売的には「トッピングを多く取ってもらう事で単価を上げる」と言うメリットが有りますが、私的にはついついトッピングを取ってしまい(私の決意が鈍いだけですが)「ダイエットの大敵」と言えるシステムです。うどん自体は「腰が有る典型的讃岐うどん」であり、東京では珍しくはなくなってきたとは言えども特徴の有るうどんで、腹に溜り一寸した食事には文句なしです。
 JR四国グループの「めりけんや」の場合、関東進出は同じJRグループ内のNREと組んでのフランチャイズ展開がメインであり、JR四国と言う名を表に出さない物のJRグループとしてのネットワークを使い、既に1等地の駅ナカに7店舗も進出と低リスクで上手く進出していると言えます。
 確かに讃岐うどん自体が単価の低い食材で既に先行者が居る状況ですので、東京で知名度の低い「JR四国」ブランドを前面にだしても効果は低い状況で独立路線で東京で戦うのは得策とは言えません。その点「自社ブランドのアピール」「地域の特産のアピール」による効果は低いですが、同門で東京の大企業で有るJR東日本グループと手を組み事業展開をするのは事業の成功と言う側面から考えると「最善の選択」であると言えます。
 その様な事から考えてJR四国グループの「めりけんや」事業展開は、目立たない物の堅実に進んでいると言えます。今後とも後発でもJR東日本グループとの連携を生かして東京進出を確実に進めて行くでしょう。それによるメリットは「ブランドイメージ戦略」を捨てるデメリットと比較しても割が合うほど大きい物であると考えられます。


 ☆ JR三島会社が関連事業で東京進出のメリットとは?

 今回この様にJR北海道・JR四国の運営する飲食店を訪問しましたが、私の様に社会生活の基盤が東京にあり仕事・プライベートを合わせて年に数回の旅行しか東京圏外に出ることが無い人間にとって、東京からの直通列車の運行が殆ど無い「地方の鉄道会社」を身近で感じる機会は少ないと言えます。
 その中で今回取り上げた飲食店は地方のJR会社の存在を感じると言う点で、どちらも「JR」と言う名前を前面には出していないですが、知る者として意識して見ているならば、「地方」「JR三島会社」を感じる重要な拠点で有ると言えます。
 これらの拠点は「東京で事業をする事で需要の多い所でのビジネスで収益を上げる」と言う収益効果の側面と、「食べ物から地域の魅力を知ってもらう」事での「地域全体のアピール」とその波及効果としての北海道・四国への興味の増大による地域への入れ込み客の増大の可能性と言うアピール効果の2つの側面から、活用する事が出来れば大きな可能製の有る拠点で有ると言えます。
 その「アピール」と言う側面で考えると、本当なら「宮崎県をアピールした東国原知事」ほど強烈なキャラクター&マスコミ報道でアピールしないと効果が無いのかもしれませんが、継続的な効果と言う側面で考えればJRが出店した様な「美味しい食べ物を影響する飲食店をアンテナ店的に広める」と言う方策もアピール策として一つの方策で有ると思います。

 この様に見れば「鉄道会社を感じる」事は「訪問する・鉄道に乗る」と言う行為だけでは有りません。遠く離れた東京で「話題のグルメ」を食する事でも間接的では有りますが北海道・四国の鉄道会社の存在を感じることが出来ます。
 JR三島会社の経営が厳しいのはJR発足当時から予見されていた事ですが、バブルと言う経済拡張の時代を過ぎデフレによる経済縮小の時代に入った現在では経済の衰退が著しい北海道・四国を基盤とする交通事業者のJR北海道・JR四国の経営は極めて厳しい状況に陥る事は誰が見ても明らかです。
 その状況を打破する為には、苦境に置かれている鉄道事業に軸足を据えている現状から徐々にでも関連事業や不動産・物販・飲食・宿泊等の副業に力を入れ収益源を多様化すると同時に、地域に拘束される交通事業の様な制約の無い副業は購買力の強い地域つまり東京に打って出る事で少しでも新たな収益源を確保すると同時に観光客の供給地となる東京での知名度を上げる必要が有ります。
 実際JR三島会社では収入面で関連事業のウエイトが大きくなり「総合生活企業」への変身が進んでいて、鉄道運輸収入比率がJR北海道44%・JR四国48%・JR九州47%まで低下しています。しかし現在営業損益で未だに赤字基調が消えず「経営安定基金運用収益」で収支バランスを保っているJR北海道・JR四国に取っては今後の経営に取り成長の可能性が有る副業の強化は絶対必要です。
 その中で日本最大の需要地東京へ打って出たJR北海道の「ひつじぐも吉祥寺店」、JR四国グループの「めりけんや」は、沿線に軸足を置く副業から一歩踏み出し他地域へ打って出ると言う点で正しく「副業の東京進出の橋頭堡」であると同時に、一般に分かりやすい事業と言う点から「副業のシンボル」であると言えます。



 ☆ あとがきに代えて

 今のJR三島会社の経営状況を見る限り、「鉄道事業を支えるのは副業」と言う状況は今後より一層強くなるでしょうし、地域経済が好調な九州ならいざ知らず未だに経済が不調な地域である北海道・四国の状況を見ると、やはりJR北海道・JR四国はリスクが有りますが「地域から一歩出る方策」を考えないと今後のJR北海道・JR四国の経営は厳しい状況になると言えます。
 実際JR北海道・JR四国の中期経営計画では(JR北海道→ スクラムチャレンジ2006 ・JR四国→ 中期経営計画2005-2007 )鉄道事業減収・関連事業増収・連結営業収益増収と言う収支予想が組まれており、今やJR北海道・JR四国の企業としての成長は副業に掛かっているという状況になっています。
 その中で将来的には「上場」を夢と掲げるJR北海道・JR四国に取り、「総合生活産業」への転換が進むと地域公共交通の根幹となって居る「鉄道事業」は「足枷」と言う状況が発生する可能性が有ります。特に副業にも波及効果を及ぼさないローカル線事業は完全に「おじゃま虫」と言う状況になる可能性は極めて高いと言えます。
 その時にJRがどのような決断をするか?今までの様に幹線鉄道輸送・副業の収益でローカル線への内部補助を継続する事が出来るか?其れこそが地域の支援と共にJR地方ローカル線の存続のための大きなキーポイントになる事は明らかです。3月31に廃止された鹿島鉄道は親会社の関東鉄道から「TX開業に伴うバス事業の収益減少で子会社への内部補助を打ち切る」と言う事が理由に掲げられて廃止されました。この様に「内部補助の財源となっていた他事業の不振が原因でローカル線を廃止する」と言う事が実際に発生してくると、JR運営の地方ローカル線に取っては「地域の努力と援助」と並んで「JRの幹線輸送・副業と言う他事業の盛業」と言う事が存続に重要になってきます。
 そうなるとJRのローカル線を維持するには「JRの副業でもお金を落としてあげる事」も内部補助と言う側面から見ると重要な事になると言えます。物事何事もリンクしていると言う事を考えると、極論すればJRが行っている副業の「ラム肉1切れ・讃岐うどん1本」も地方ローカル線と繋がっているのです。

 良く鉄道マニアは「鉄道を愛する」と言う発言をし「鉄道を廃止するのは反対」と言いますが、愛する物を支える「杖」である副業にはなかなか眼を向けません。近年では 銚子電鉄の存続問題 で銚子電鉄の副業の「濡れ煎餅」に鉄道マニアを中心に注目が集まりましたが、この様な例は希少で特に存廃問題が表面化しないJR三島会社の場合、副業の存在にも注目が集まりませんし副業の商売を積極的に支援して間接的に支えようと言う考えも乏しいと言えます。
 これは極めて視野の狭い考えであり、如何にもマニア的な考えで有ると言えます。確かに鉄道マニアとは「鉄道を愛すると自称する人たち」ですから鉄道しか眼を向けないのかも知れません。しかしその愛する対象は色々な物で支えられていることを忘れるべきでは有りません。その支える物の一つが副業ですが、其れにはマニアは殆ど眼を向けません。彼らの愛する対象である鉄道は「マニアの愛する対象物」である前に「公共交通機関」であり「経済的事業の一つ」なのです。又それらは他の色々な物とリンクして成立しているのです。真に鉄道を愛するのであればそれらの「関連物」にも眼を向けなければ片手落ちで有ると言えます。
 その点から言えば、JR北海道とJR四国が副業であれども東京に進出してきたのですから「鉄道を愛する」と表明している人たちなら、もう少し温かい目でこれらの事業を見てあげて積極的に利用してあげる位の事をしてあげるのも「鉄道を愛する」内に入るのではないでしょうか?「濡れ煎餅」を注目して支援して「ジンギスカン」や「讃岐うどん」には何も注目しないのは「変形した愛」であると言えます。その「愛」の有り方についても考える事は会社と言う事業者が営む鉄道を「愛する」上で必要なのでは無いか?とJRが売り出したジンギスカンの美味さとサッポロビールに酔いながら考えさせられました。





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