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「破綻からの再生」が地域にもたらした効果とは?

−「コトデン」各路線を訪問して−



TAKA  2007年02月20日




スーパー・コミバスのバス停・駐輪場・駐車場が一体の新設駅@長尾線学園通り駅


※本記事は「 TAKAの交通論の部屋 」「 交通総合フォーラム 」のシェアコンテンツとさせて頂きます。


 本年の正月旅行は「松山道後温泉&金比羅さん初参り」でしたが、この地域は人口50万クラスの地方の中核都市と言える松山を中心に走る伊予鉄道・高松を中心に走る高松琴平電鉄(以下「コトデン」と略す)が走り、個性的な地方私鉄が地域の公共交通の中核として活躍している地域として有名な地域です。
 その四国の民鉄である伊予鉄道・コトデン共に日本の地方鉄道全体の中から見ると極めて健闘している地方民鉄で有ると言えます。両社とも中規模都市圏を根拠地としてその都市圏の公共交通のかなり大きな部分を担っています。両社とも地方鉄道としては「ラッシュが有るほどの利用客が有る」鉄道であり、地方鉄道では伊予鉄道・コトデンは長野鉄道・遠州鉄道・静岡鉄道等の他の健闘している地方の中核都市の鉄道と並んで「地方都市内で大きなウエイトを占める公共交通」として十二分に機能している鉄道と言えます。

 今回は四国訪問記シリーズの第2弾として「コトデン」を取り上げようと思います。
 コトデンに関しては1月1日金比羅宮参拝後宿を取った高松瓦町までの交通手段として琴平線琴平〜瓦町間を使用し、2日朝瓦町〜仏法山間を乗った後に「 交通総合フォーラム 」で御馴染みのKAZ様・とも様と御一緒にコトデンを含む高松都市圏を見て回った時に長尾線・志度線を乗ることが出来て全線一通り乗ることが出来ました。
 先ほど四国の地方鉄道である伊予鉄道・コトデンは「地方鉄道全体で見ると健闘している」と表現しましたが、実際の経営的側面で見ると似たような地域環境下にありながら「天国と地獄」「明と暗」と言える程の差がついてしまっています。伊予鉄道に関しては鉄道の着実な整備に加えて「いよてつ高島屋」に代表される副業が成功し「地方鉄道の優等生」と言える経営内容ですが、それに対しコトデンは鉄道事業でも設備投資が進まず良く言えば「古典電車の楽園」悪く言えば「おんぼろ電車の集合体」と言う状況であり、副業も百貨店展開がバブル崩壊と重なり「コトデンそごう」は経営破綻してしまいその結果コトデン自体も2001年12月7日に民事再生法を申請し経営破たんまで経験するなど、正しく「天国と地獄」を経験しています。
 今回の四国旅行では「天国」の伊予鉄道「地獄」のコトデン両方を利用しましたが、先ず第1弾として地方鉄道初と言える「民事再生法適用」と言う経営破たんのどん底から再生したコトデンを取り上げます。
 鉄道業界では「鉄道廃止」と言う事業の消滅やそれによる会社の消滅と言う「消え去る事」や「経営危機からの経営努力での再生」と言う事例は今まで数え切れないほど経験しています。しかし「公共交通を維持しながらの企業の法的再生」と言う事例は今まで殆ど有りません。今回コトデンは民事再生法申請で「経営者の交代」「自治体等の協力による設備更新」「高松財界(加ト吉・香川日産・百十四銀行・JR四国等)の協力による再生計画の策定」・「真鍋康彦氏の社長就任による「 ことでん100計画 」による経営・サービス改善」等を経て、2006年3月には無事再生計画を終了するまでに立ち直っています。
 その過程で「コトデンの鉄道輸送は必要だがコトデン自体は要らない」とまで言われたコトデンがどのように再生し地域に受け入れられる鉄道会社に変身したのか?今回は訪問記を元に「コトデン再生によりもたらされた変化」について考えて見たいと思います。

 ※高松琴平電鉄の略称は「ことでん」と平仮名に変わってますが、本文は見易い様に「コトデン」と昔のカタカナ表記にします。ご了解ください。

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 「基礎的資料」

 「コトデン 主要指標」
年度営業キロ輸送人員輸送密度職員資本金営業収益営業費用営業損益全事業経常損益
H13年60.0km13,876千人5,575人/日308名504百万円2,841,743千円2,917,900千円▲76,157千円▲324,443千円
H15年60.0km13,364千人5,416人/日266名250百万円2,735,955千円2,706,605千円29,350千円▲88,841千円
H16年60.0km13,114千人5,366人/日269名250百万円2,670,794千円2,708,733千円▲37,939千円▲133,936千円
 ※上記表数値は「数字で見る鉄道2003(H13年度)・2005(H15年度)・2006(H16年度)」から引用しています。

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 (1)  コトデン発祥&根幹の路線琴平線を訪問して

 (2)  改良・近代化が急速に進む長尾線・志度線を訪問して

 (3)  経営破たんと破綻からの再生がコトデンにどのような変化をもたらしたか?

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 今回コトデンを訪問して見て「高松と言う都市圏交通」と言う中で見ると、「コトデンは必要か?」と言うと「半分Yes・半分No」と言う状況で有ると思います。その意味では「改革しないと生き残れない鉄道」で有ったと言えます。その意味においては「民事再生法」適用によりショック療法で経営改革・設備更新・意識改革を行った事は非常に重要で有ったと思います。
 一般的に鉄道企業は「受身の姿勢」での経営と言うのが一般的であり、同時に「電車を動かしていれば客は乗る」と言う意識が何処かに有り世間一般のサービス業に比べるとサービスレベルが劣る事が有るのは残念ながら否定できません。しかし設備に関しては「サービス改善の設備投資」と言う対応で改善できますが個々の社員のサービス意識は「サービス向上の運動」をしても社員の意識改革は一朝一夕に変る物では有りません。
 (例えば京成電鉄では「 BMK推進運動 」を行っているが、私の個人的意見として利用者の視点で見ると「目に見えて接客態度は変ったか?」と言われると「?」である)
 
 しかし今や鉄道とて激しい競争に曝されており利用者に「選択される」立場にある交通機関です。利便性やサービスが悪ければ直ぐ乗客は逸走してしまいます。その様な状況に有る以上「サービスレベル改善は一朝一夕には難しい」などと言っているほどの余裕は有りません。利用者に支持される為のサービス改善は今や「待ったなし」の必要事項で有ると言えます。
 同時に需要の根源で有る人口が減少する時代を向かえ鉄道企業は事業の根幹で有る鉄道事業で成長を望めない時代に入っています。その傾向は地方に行けば行く程強くなっていると言えます。その様な状況から考えると今の時代の民鉄経営に昔の様な「ドンブリ経営」が成り立つ余裕は無くなってきていると言えます。その点からも「効率的な経営体制の確立」も又急務となっています。

 その様な時代の急激な変化の中で、コトデンは極めて「古典的な殿様商売の経営」を今まで行っていたと言えますが、「経営破たん」と言う荒波の中で生き残る為に「改革せざる得ない」状況に追い込まれ、その崖っぷちの状況で経営改革・サービス改善の為の「ことでん100計画」が上手く行き、今や地域の公共交通を担う地方鉄道として地域の中で生き残れるだけの基盤を築きつつ有ります。
 コトデン自体は地方鉄道の中で「輸送密度5000人/日以上」と言うレベルは、極めて恵まれた状況で有ると言えます。これより厳しい鉄道は日本の地方には沢山有ります。コトデンは「直接的には百貨店事業の失敗」で破綻しましたが、その裏には「根幹たる鉄道事業のレベル低下による停まらない減収基調」と言う問題が存在していた事は間違い有りません。
 そのコトデンの経営悪化の根っこに有った「根幹たる鉄道事業のレベル低下による停まらない減収基調」と言う問題は、設備投資が儘ならなくてサービスレベルが低下している多くの地方鉄道に共通の問題で有ると言えます。コトデンの場合「民事再生法下での再建」と言う企業存続前提の再生が行えたので、鉄道と言う公共交通は維持されましたがもっと条件の悪い地方鉄道の場合「経営破たん即鉄道廃止」と言う状況が発生しても全く可笑しく有りません。
 企業たる物は永遠の存続の為に最大下の努力をするのが経営者と社員の義務です。自立経営による存続が断たれると言うのは経営者と社員の怠慢とも言えます。まして鉄道の場合公共交通と言う公共性が強いのでその罪の影響は地域社会全体に広がると言えます。ですから鉄道会社はその様になる前に労使一体となり最大限の努力を行わなければなりません。「刀折れ矢尽きて玉砕」と言うのは致し方ないと言えますが、其処に至るまでは有りとあらゆる方策を用い存続の努力をするのが鉄道会社労使の社会的義務と言えます。
 実際「鉄道の特性が生かせる程の沿線人口・輸送量・輸送密度が有る鉄道」であれば、設備改善による利便性向上と徹底的なサービス改善で乗客は有る程度戻ってきてくれて、民間鉄道による経営でも鉄道存続の可能性が有ると言う事を、極めて低いサービスレベルに有ったコトデンの再生が示してくれたと言えます。
 経営の厳しい地方鉄道の場合、先ず行うは自助努力でそのフォローに公共交通の活性化で恩恵を受ける地方自治体が行うのが必要と言えます。それで有る程度の「沿線人口・輸送量・輸送密度」の有る鉄道は、最低限の税金投入で公共性と効率性を両立しながら再生する事ができると言えます。そのことを良く考え実行する必要が有ると言えます。

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 「参考資料・参考HP」
 (参考資料)
 ・鉄道ピクトリアル1993年4月増刊号「四国の鉄道」 ・琴電−古典電車の楽園(後藤洋志 著 JTB 発行)
 ・鉄道ジャーナル2004年3月号「瀬戸内海をめぐる鉄道」
 (参考HP)
 ・ ことでんグループHP  ・ 高松琴平電鉄HP  ・ 高松市HP  ・ 天満屋HP
 ・ 高松市 (wikipedia) ・ 高松琴平電気鉄道 (wikipedia)
 ・四国新聞社シリーズ追跡
 コトデンそごう破綻1ヶ月 (01/02/19)」「 琴電支援、首長インタビューの波紋 (01/10/29)」「 琴電支援は決まったが・・・記者座談会 (02/02/18)」
 ・ことでん各路線利用状況 「 全体・路線毎 」「 琴平線 」「 長尾線 」「 志度線

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